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5分間の安全ミーティング:墜落防止システムの盲点
Five Minute Safety Meeting: One fallback of fall arrest

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2004年9月号 p.2-3)
(仮訳 国際安全衛生センター)



 墜落防止システムは安全には不可欠なものであるが、実際に労働者が墜落したときは、ただちに救助しないと、労働者の命を守るためのものが命を奪うものになりかねない。墜落した労働者が起立不耐性(orthostatic intolerance)、すなわち宙づりによる外傷性障害を経験することがあるのもそのためである。
 こうしたケースが起こるのは、労働者が墜落し、救助を待ちながら墜落防止装置で吊り下げられた状態が長時間続いた場合である。下肢に血がたまるために、全身を循環する血液の量が減る。すると脳の血流量を十分に確保しようとして、心拍数が上昇する。血液の供給が大幅に低下すると、心拍数の上昇だけでは対処できなくなる。やがて心拍数は下降し、血圧が下がる。重症になると、脳への酸素供給が滞って失神する。場合によっては、生命維持に必要なその他の臓器にも酸素不足の影響が現れ、致命傷になることがある。
 アラバマ州タスカルーサにあるアラバマ大学で運動学を教えているフィリップ・ビショップ(Phillip Bishop)教授はいう。「こうした外傷性障害がどの程度の頻度で起こるのか、どれだけの人が宙づりによる外傷性障害で死亡しているかはわかりません。しばしば検死官がこの外傷性障害を知らず、死因は心臓発作などとされることがあるからです」。ビショップ教授によれば、心臓が弱い労働者や低血圧の労働者では、わずか5~6分で死に至ることがあるという。一方、心臓の健康な労働者では、数時間持ちこたえることができるという。
 墜落防止システムによる宙づり状態が長引くことによるリスクを削減するため、OSHAでは、監督者から従業員に以下のことを注意事項として伝えるよう勧告している。
  • 宙づりになった労働者はできるだけ速やかに救助する必要がある。
  • 宙づりによる外傷性障害は命にかかわる。外傷性障害の徴候は、頭がふらふらする、動悸、震え、疲労、吐き気、めまい、頭痛、および起立中の失神である。
  • 低血圧や心臓病の労働者は、宙づりによる外傷性障害になるリスクが高い。
  • 一部の関係当局によれば、救助した労働者をあまり急に横に寝かすことは避けるべきである。
 ビショップ教授は次のようにアドバイスしている。「労働者には、宙づりになっているときに脚の筋肉をひんぱんに動かすように言ってください。一般にはそれだけで起立不耐性の徴候は出なくなりますし、救出までの時間稼ぎにもなります」