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エルゴノミクス的に危険なパターンは簡単な調査で発見可能
Simple sleuthing can uncover ergonomically dangerous patterns

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2005年1月号 p.1)
(仮訳 国際安全衛生センター)



 自分が監督している作業にエルゴノミクス的に危険なパターンがあるかどうか判断する際、最初のステップとして行うべきことは、職場を評価し、エルゴノミクス的要素と仕事のスタイルに関する要素が適切かどうかを調べることである。
 マサチューセッツ州ヤーマス・ポートにあるThe Office of Ergonomics Committee Inc.のボブ・ベッテンドーフ(Bob Bettendorf)常務取締役(executive director)によれば、上の最初のステップを行う最も簡単な方法は、職場を歩いて労働者に話しかけ、どんなことで困っているかを聞くことだという。このようなことをして初めて、問題に対する何らかの対処策を講じることができる。用具がエルゴノミクス的に適切であっても、労働者の使い方が適切でないことがわかることもある。
 評価を行う場合には労働者の作業の仕方を注視する必要がある、とベッテンドーフ常務取締役はいう。具体的には、労働者がぎこちない動きをしていないか、イスはフィットしているか、快適に作業をしているか、などである。一般に、労働者がいかにも体を動かしにくそうにしていたり、腕や体を必要以上に伸ばしたりする状況は望ましくないものである。次に、労働者に話しかけて、仕事中に不快を感じることはないかどうか尋ねる。たとえば、頭痛や腰痛に悩まされていないかどうか、である。多くの労働者と話をすれば、いくつかパターンが浮かび上がってくる、とベッテンドーフ氏はいう。たとえば、疲れ目の労働者が何人かいれば、仕事場の照明が明るすぎるという結論を導き出すことができる。細かな作業をする労働者の場合には、メガネの度数の調整が必要になることもある。視力に問題のある労働者はしばしば前かがみになったり、逆に体を後ろに引いたりするものである。
 腰痛の大部分はイスの調節が不適切であることが原因である。ベッテンドーフ氏によれば、通常はイスには問題はなく、労働者がイスの適切な位置を知らないだけであるという。
 これを見分ける方法の一つは、作業姿勢を評価するための簡易上肢評価(Rapid Upper Limb Assessment: RULA)を利用することだ、とベッテンドーフ氏はいう。RULAは、業務上の上肢障害が報告された職場に対するエルゴノミクス調査で使われる調査方法である。またRULAは、特に首、胴、および上肢に重点を置いて、全身の生体力学的姿勢負荷を評価するためのスクリーニング検査法でもある。RULAによる評価の所要時間はごくわずかで、評価の結果得られた点数によって、肉体的負荷による作業者への傷害のリスクを減らすためにどの程度の介入措置が必要かがわかるようになっている。ただし、ベッテンドーフ氏によれば、RULAはより広範なエルゴノミクス調査の一環として利用されることを想定したものだという。
 ベッテンドーフ氏は、作業環境を見回るときは、次の4つの要因を考慮するとよいという。
  • 仕事場が明る過ぎないか。明るさを調べるには照度計を使う。仕事場の間接照明は、照度計の読みで20~60フートキャンドルになっている必要がある(1フートキャンドルは1ルーメン毎平方メートル)。
  • ディスプレイの位置は高過ぎないか。ディスプレイの位置が高過ぎる場合、事務系労働者は首に痛みを感じることがある。背筋を伸ばしてイスに座ったときに、視線の位置がディスプレイの上部より少し上になるようにする必要がある。
  • マウスはどこに置かれているか。マウスはキーボードと同じ高さにあり、利き手がどちらかによってキーボードのやや右または左に置かれている必要がある。
  • イスは適切に調節されているか。労働者が作業中、前腕が床と平行になるようにイスの高さを調節する。
 RULAでは種々の図を用いてこうした作業を行う方法を規定しているが、ベッテンドーフ氏によれば、たいていの場合はちょっと注意して観察するだけで、必要な情報はすべて手に入るという。