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作業中の墜落・転落
Falling down on the job

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2005年7月号 p.1)
(仮訳 国際安全衛生センター)



墜落・転落は労災死亡の主要原因のひとつであり、労働統計局(Bureau of Labor Statistics)の最新の「労働災害による死亡者の調査(Census of Fatal Occupational Injuries: CFOI)」によれば、2003年の全労災死亡者数の12%が墜落・転落によるものだった。墜落・転落は傷害の原因としても大きなウェイトを占めており、NSC発行「Injury Facts」2004年度版によると、2002年には低所への墜落・転落による致命的でない傷害は86,946件に達した。
  こうした統計から墜落・転落が死につながる危険性は非常に高いことがわかるが、墜落・転落防止は実は違反件数の最も多いOSHA基準のひとつである。個人用墜落・転落防止システムの不使用、開口部への労働者の転落を防ぐ手すりの不備などでOSHAが是正勧告を出したケースは、2004年度には14,362件に及んだ。
  バージニア州チェスターにあるITAC Fall Protection Services社のプログラムマネージャー、ジョン・ホイッティ(John Whitty)氏によると、問題のひとつは、墜落・転落防止に前向きに取り組む企業があまりに少ないことにあるという。「墜落・転落防止に条件反射的にしか反応しない企業がまだまだ多すぎます。こうした企業は、災害や死亡事故が発生するか、OSHAの是正勧告を受けて事態の深刻さに気付くまで、墜落・転落防止に目を向けようとしません」
  ホイッティ氏によれば、墜落・転落防止への取り組みの不在が、墜落・転落に関連する死亡事故が依然高水準で推移している原因のひとつだという。墜落・転落防止に積極的に取り組んでいないために、多くの事業者は重要なこと、すなわち教育訓練の大切さを見落としているというのである。「OSHA基準を完全に満たす墜落・転落防止システムを使っているにもかかわらず、墜落・転落したり、傷害を負ったり、命を落としたりした労働者はたくさんいます。これらの労働者は、墜落・転落システムの設計、設置、使用に関して適切な訓練を受けていなかっただけなのです」
  ただし、ホイッティ氏によると、墜落・転落防止のための方針や用具だけでは不十分という認識を持つ企業が増えているという。カナダのトロントでNorth Safety Products社の墜落・転落防止製品マネージャーを務めるガブリエラ・フスコ(Gabriele Fusco)氏は、そのことをはっきりと断言できる人物である。フスコ氏によれば、墜落・転落防止システムの購入者にとって非常に重要なのはユーザーの教育訓練であり、製品と教育訓練の一括購入は、同社に問い合わせてくる企業各社の最大の関心事だという。「用具を使うための適切な教育訓練を確実に従業員に受けさせたいという姿勢のあらわれです」、とフスコ氏。
  NSCによると、事業者は労働者に対して次のことを行う必要がある。

  • 墜落・転落のハザード、および墜落・転落防止システムがない場合の影響を認識させる。ついで、労働者が遭遇する墜落・転落のハザードへの潜在的な対策または優れた対策となるさまざまな墜落・転落防止方法について、労働者に教育訓練を実施する。この教育訓練は一般的な性格のものでよいが、これから作業に着手する場合には、現場に即した具体的なものであって、かつ実際に行う作業の内容、現場の状況、作業の順序、および作業場の構造に関連のあるものでなければならない。

  • 現場で使われる具体的な用具の適切な使い方を教え、用具の限界についても教える。固定金具の場所、および固定金具を選択する際の基準(これは規制上の要件を満たさなければならない)について、労働者に教育訓練を実施する。

  • 墜落・転落防止システムを適切に組み立て、分解し、保管する方法を教える。労働者は、墜落・転落のハザードの本質を理解するとともに、作業現場の規則の遵守はいうまでもなく、警戒を怠らないということが墜落・転落のハザードを克服するための唯一の方法であることを理解しなければならない。