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緊急事態計画と障害を持つ労働者
Emergency planning and the disabled worker

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2005年6月号 p.1)
(仮訳 国際安全衛生センター)


 ここ3年で、緊急事態への備えと避難方法については関心が高まっているが、その一方で依然見過ごされている重要な事柄がある。それは障害を持つ人々に対する計画である。
  障害を持つ人々とは、一見してすぐそれとわかる障害を持つ労働者、たとえば車椅子に乗った同僚や小児麻痺を患った人、目の見えない人だけをいうのではなく、耳の聞こえない人や糖尿病患者など、どんな障害を持っているのかはたから見ただけではすぐにわからない人たちも含まれる。緊急事態が発生した際、このような見えにくい障害を持つ従業員には特別な助けが必要になることがあるが、事業者はそのことを意識していないことが多い。
  コロラド州プエブロにあるS.L.C.Communications社の認定安全専門家、シャロン・キャンベル(Sharon Campbell)氏は次のように言う。「ちょうど私自身がそうであるように、聴力損失の程度が低い、ないし軽い人がいて、毎日その人と接して会話を交していたら、ほとんどの場合、耳がよく聞こえない人を相手にしていることを忘れてしまうでしょう。けれども緊急事態が発生して、騒音のレベルが上がると、聴力に障害を持つ人は事実上耳が聞こえなくなってしまうのです」

警報器の設置

 労働者に危険を知らせるための警報システムを評価することは、事業者が障害を持つ労働者を助けるためにできることの一つである、とキャンベル氏はいう。音による火災警報は、障害者には役に立たない可能性がある。聴力に障害を持つ人や、注意力に障害のある人にも警報が届くようにするには、ストロボ式の煙感知器や火災警報装置を用意する必要がある。これらの警報器は、主な作業区域に加えて、トイレや休憩室といった場所にも設置する必要がある。
  また、緊急事態が発生したときに、そのことを障害者に知らせる人を何人かあらかじめ決めておくのもよい。多くの場合、警報音は大きすぎて、聴力に問題のある人はコミュニケーションができなくなる。耳の聞こえない人は意思の伝達が困難になる点に注意する必要がある。場合によっては筆談が必要になることもある。さまざまな種類の緊急事態を同じ警報装置で伝達するようになっている職場では、対面コミュニケーションが特に重要である。たとえば、竜巻の接近を知らせる警報がこのような警報装置から出たとしても、耳の聞こえない労働者は何が起こったのかわからない。ストロボ式の警報を目にしたら、消防訓練かと思い、建物の外に出ようとするかもしれない。
  職場の避難計画を作成する際、企業は地元の警察と消防に協力を要請するべきである。「障害のせいで避難が困難な人たちの居場所を、消防士は把握しておく必要があるからです」、キャンベル氏はいう。
  技術進歩も、緊急事態発生時のコミュニケーション手段の確保に役立っている。キャンベル氏によれば、特に耳の聞こえない人たちの間でポケットベルが使われるようになっている点は、とても歓迎すべきことだという。「バイブレーション付きのポケットベルを用意すれば、何かあったときに知らせることができます。耳の聞こえない人も、ポケットベルを見れば竜巻なのか火事なのかはすぐにわかります。コミュニケーションの困難な人にとってポケットベルは実にすばらしい道具です」
  携帯電話を従業員に持たせている企業も多い、とキャンベル氏は付け加える。しばしば携帯電話にはテキストメッセージをやり取りする機能が付いており、この機能を利用することで重要情報の伝達が可能になる。キャンベル氏はさらに、職場全体でリバース911電話(reverse 911 call)を使えるようにする方法もあるという。リバース911電話を利用すれば、地域の当局から指定区域内の電話に対し、緊急のメッセージが自動的に送られるようになる。

「…緊急事態が発生して、騒音レベルが上がると、聴力に障害を持つ人は事実上耳が聞こえなくなってしまうのです」
-- S.L.C. Communications社、シャロン・キャンベル