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ショック療法:目に見えない静電気の危険を防ぐ
Shock treatment: Preventing the unseen dangers of static electricity

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2005年11月号 p.1)
(仮訳 国際安全衛生センター)


洗濯物を取り分けたときにバチバチという音が聞こえたり、子供たちが風船で頭をこすると髪の毛が逆立たったりするのは、静電気のしわざである。日常生活の中では、こうした現象は無害に思えるが、多くの職場では静電気がきわめて危険なものになりうる。しばしば隠れたハザードと形容される静電気放電(ESD)は、突然、電子部品を破損したり、労働者を負傷させたり、爆発を引き起こしたりする。

ニューヨーク州ロームにある静電気放電協会(Electrostatic Discharge Association)のエド・ウェッジランド(Ed Weggeland)会長は、静電気放電を抑えるために、次の6つの基本原則を守るよう勧めている。

1. 耐性を設計に織り込む。

できるだけ静電気放電の影響を受けないように製品や組立部品を設計する。具体的には、静電気に弱い機器の数を減らす、機器・基板・組立部品・装置への入力部分に適切な入力保護回路を設ける、などの方法がある。

2. 各環境において必要な管理レベルを定める。

使用する部品や、製造・出荷する製品の感度レベルを見極める。ANSI/ESD S 20.20では、100ボルト人体モデル(Human Body Model: HBM)に反応する部品を対象に管理プログラムを定めている。要求されるレベルは環境によって異なる。

3. 静電気保護区域を確認、特定する。

静電気保護区域とは、静電気の影響を受けやすい部品を労働者が扱う区域、さらにあらゆる導電性素材および散逸性素材を--従業員も含めて--アースに連結または電気的に接続する必要のある区域をいう。

4. 静電気の発生を排除または抑制する。

異種の素材や手近のプラスチックを接触させて離すなどして、まず第一に静電気の発生と蓄積を排除または抑制する。帯電しなければ放電もしないからである。ほかの工程や素材も同じ電位に保つ。電位が同じ、つまり電位差がゼロの素材間では、静電気放電は起こらない。リストストラップなどの接地経路を用意し、静電気の発生と蓄積を抑える。

5. 放散させ、中和する。

静電気が帯電したら、安全に放散させるか、または中和する。適切な接地を行うとともに、導電性素材または消散性素材を使用することが大切である。静電気放散性素材によって放電率をコントロールすれば、帯電した機器の損傷を防ぐことができる。

一般的なプラスチックやその他の絶縁体など、物体によっては接地しても帯電した静電気を取り除けないことがある。これは導電性経路が存在しないためである。こうした絶縁素材に対しては、イオン化によって電荷を中和する。

6. 製品を保護する。

放電が起こったときに、静電気に弱い部品や組立部品に影響が及ばないようにする。一つの方法として、部品と組立部品を適切に接地し、製品からの放電を「放散」させるやり方がある。また、製品を扱うのに適切なパッケージと素材で、静電気に弱い機器を包装、運搬する方法もある。こうした素材を使うことで、製品が帯電するのを防ぐと同時に、容器内で製品が移動することによって起こる帯電を抑制することができる。

(キャプション)

可燃性大気の中でドラムを接地する労働者