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ストーリーを語ることで安全を教える
Using storytelling to teach safety

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2005年9月号 p.1)
(仮訳 国際安全衛生センター)


職場のハザードの重大性を伝えるうえで、ストーリーを語ることは常に重要なコミュニケーション手段であった。ストーリーにする手は、教育訓練をはじめ、これから作業のポイントを学ぶ新しい労働者や若い労働者に予防的教訓を示す際にも、しばしば利用されている。

指導員が教育訓練の中で労働者に的確なメッセージを伝えるには、意味のある情報を相手の印象に残る方法で伝達する必要がある。そのためには、何を教育訓練するのか、誰に対して教育訓練を行うのかという点を押さえて、相手に最も適した視覚的イメージを作り上げる必要がある。
  全米安全評議会(NSC)のジム・ソロモン(Jim Solomon)予防運転講習プログラム開発・訓練部長(defensive driving course program development and training manager)はいう。「ほとんどの人は視覚的イメージによって学習します。ストーリーにして話せば、話が進むにつれて頭の中で情景が浮かぶようになります」
  ソロモン部長によると、ある出来事について話す場合、細部を逐一説明する必要はなく、肝心な部分だけ細かく伝えればよいという。残念ながら指導員の中には二者択一思考の人がいて、上手なストーリーの語り方を知らない場合があるという。ソロモン部長は、そういう指導員が話をすると、「第7部署に一人の男がいた。彼ははしごを固定せず、死亡した」という具合いになるという。「これでは誰もこの事故を思い出すことはないでしょう」
  ソロモン部長は、こうした話し方をやめて、ストーリーを語ることで言葉で情景を描くようにするとよいという。「トニーという名前の男がいた。トニーは何年も第7部署で働いていた。彼は第7部署で最も優秀な労働者の一人だった。トニーには奥さんと三人の子供がいて、リトルリーグの野球チームのコーチをしていた。家族を大切にする男だった。ある日、トニーは雨漏りを直す作業に出かけた。彼はいつものようにはしごを立てかけた。手伝う人間が必要なことは知っていた。しかしそのときは彼一人で作業しなければならなかった。トニーははしごの足の周囲に柵を置くことをしなかった。作業はほんの2〜3分で済むと思ったので、はしごを固定することもしなかった。その結果、フォークリフトの運転手がはしごに気付かず、バックした際に車体がはしごにぶつかった。はしごはひっくり返り、トニーは振り落とされた。トニーはフォークリフトの一方の歯に突き刺さってしまった」
  「こんなふうに話をすれば情景が目に浮かびます。これがストーリーにすることのメリットです」
  ストーリーを語るときは、脚色したり、逆に、肝心な点をぼやかすような情報を切り捨てたりしてもよい仕立てにするとき、とソロモン部長は付け加える。指導員は、トニーという名前やその所属部署の代わりに、話を聞く相手の都合に合わせて「誰が」と「どこで」を変えることができるという。「情景は自分で作ればいいのです。身長2.25mの大男を125cmの小男にしてもいいし、青の代わりに緑を使ってもいいのです。実際にあった話で、具体的な要素がそこにあって、適切な教育訓練になる限り、それは優れたストーリーです」
  こうしたストーリーをより効果的に活用するには、経営陣が指導員のことをよく把握して、指導員を支援するコンサルタントを配置する必要がある、とソロモン部長はいう。「ほんの少し手助けすれば、指導員はやり方を理解するようになります。多くの指導員にとって、これは単に学習の問題なのです」

「ストーリーにして話せば、話が進むにつれて頭の中で情景が浮かぶようになります」
-- NSC、ジム・ソロモン