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国際安全衛生センタートップ海外安全衛生情報:安全衛生情報誌雑誌 「Today's Supervisor」 2006年 > 12月号 退職前にベビーブーマーから安全のノウハウを教わる

退職前にベビーブーマーから安全のノウハウを教わる
Tap baby boomers' safety know-how before they retire

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2006年12月号 p.1)
(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日2007.03.26

秘密でも何でもない。米国の労働力は高齢化が進んでいる。ニューヨークに本拠を置くコンファレンスボード(Conference Board)という非営利の企業研究組織が実施した最近の調査によると、今後十年で米国労働力のおよそ40%にあたる6,400万人のベビーブーマーが退職するという。

大規模な退職による大きな影響の一つは「頭脳流出」、すなわち熟練労働者の経験と知識が大量に失われることである。このことは、生産性や仕事の質だけにとどまらず、安全性にも影響を及ぼす。

次世代労働者の安全を確保するうえで事業者にとって好都合なのは、経験を積んだ年配の労働者が今はまだ在職していることである。新入社員向けのトレーニングプログラムに熟練労働者を参加させることは、職場の安全性向上の効果的手段になる。

トレーニングから最大の効果を引き出す手掛かりは、精力的な安全文化を職場に確立することである。全米安全評議会(NSC)のロン・ミラー(Ron Miller)労働安全衛生グループ前部長によれば、その際の最大課題の一つは、「経験を積んだ者自らが自分の作業を正しくこなすようにすること」だという。

一貫したトレーニングプロセスを導入すれば、この潜在的問題が表面化する前に解決できる。組織としては、各種の標準作業手順を定める必要があり、トレーニングプログラムもこうした標準作業手順に沿って用意する必要がある。

効果的なトレーニングで重要な要素は、指導員である。会社は、必要なメッセージを新入社員に伝えることのできる適切な人物を指導員に選ばなければならない。ミラー氏はいう。「指導員は[トレーニングの]指針と手順を守ることができ、これらを適切に伝達できる能力を持っている必要があります。また、職場の人達から尊敬される人物である必要があります」

この点に関しては、パーソナリティが大いに物をいう。トレーニングを受ける労働者の中には、人よりも習得が速い者、理解のしかたが異なる者などがいる。新入社員がトレーニングをきちんと終えられるよう、指導員は理解力と忍耐力をもって指導にあたらなければならない。

事業者も定期的にフォローアップを行い、トレーニングの内容が十分に理解されたか、それにより従業員が正しく作業をしているかどうかを確認する必要がある。フォローアップは、監督者またはほかのチームメンバーが行う必要がある。

トレーニングに加え、若い労働者や新入社員に安全の大切さを植え付けるのに役立つ他の方法として、社内指導教育プログラム(mentoring programs)がある。このプログラムでは、先輩従業員が一定期間新参従業員に付き添って一緒に作業し、作業の方法や、なぜそういうやり方をするのかを説明する。

ワシントンにある全米退職者協会(American Association of Retired Persons: AARP)のエミリー・アレン(Emily Allen)職場イニシアチブ部長(director of workplace initiatives)はいう。「このプログラムは、目標が明確に定められた、組織としてのプロセスである必要があります。つまり、誰かに面と向かって『あなたは1か月後に退職します。あなたの知識を後輩に引き継いでください』と言うことではありません」。事業者は、社内指導教育プログラムがなぜ重要なのか、プログラムを通じてどのようなことを達成したいのかを明確に伝える必要がある。

社内指導教育は、新入社員にとっては指導する側の経験・知識・アドバイスを得る貴重な機会であるが、指導する側にもメリットがある。

  アレン氏はいう。「指導する人にとっても、単に情報を伝達する以上の意味があります。社内教育指導は、自分の影響を将来の職場に残す機会になるからです」