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根本原因を探す
Finding the root cause

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2006年6月号 p.1)
(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日2006.10.23

事故調査のチームアプローチは災害防止に役立つ

米国企業は従来も災害があると事故調査を実施してきたが、近年は事故調査に対する認識に変化がみられる。事故調査はもはやアラ探しを目的とするものではなく、事故の再発防止へ向けたチームワークと前向きの変化を促すものと位置付けられるようになっている。

フロリダ州デイトナビーチにあるエンブリーリドル大学のリサ・カルボーニ(Lisa Carboni)環境安全衛生部長(environmental safety and health manager)はいう。「私が詳細な事故調査に携わるようになった過去10年の間をみても、明らかな変化がありました。当初はとにかく責任の所在を明らかにするという傾向の強いものでした。現在では組織的な影響に着目する傾向が強まっています。つまり、企業または組織としてどのようなことをしたために災害が発生するような状況を生じたのか、その方が重視されているのです」

もちろん、労働者はミスをするものであるし、そうしたミスを特定する作業は、現在でも事故調査プロセスに含まれている。しかし事故調査はそれだけでは終わらない。「問題の全体像にも目を向ける必要があります」、とカルボーニ部長はいう。たとえば、組織や監督者が「仕事のやり方は問わない。とにかく早くやってくれればいい」というメッセージを発している場合がある。カルボーニ部長によれば、こうしたメッセージは、手っ取り早い方法を使えという暗黙の指示になるという。事故調査で明らかにすべきなのはこうした種類の問題であり、そうすることによって組織は根本原因にメスを入れることができる。

チームアプローチ

事故調査は孤立した状態で行うべきではない。事故調査にはチームで取り組む必要がある。カルボーニ部長によると、チームに含める必要があるのは、事故の当事者となった従業員、上級経営陣のメンバー、当該区域の監督者、当該区域の安全委員会代表、そして(該当する場合には)組合または交渉組織の代表である。

カリフォルニア州アーケージアにあるフンボルト大学のケビン・クリード(Kevin Creed)環境安全衛生部長(director of environmental health and safety)は、事故調査は当該企業の安全専門家が指揮するべきだという。「次に重要なのは、事故の当事者となった従業員の監督者、または危険な環境など施設全体のことが問題になっている場合には、施設全体の監督者です。従業員によっては、自分たちで構成した安全委員会でこうした任務を引き受けることがありますが、その場合もさまざまな人が事故調査に加わることが可能になります」

一つの状況を多くの人が異なる視点で検討でき、人それぞれに異なった見方が可能な点が、チームで事故調査に取り組むことのメリットだとカルボーニ部長はいう。ただし、少なくともチームの中の1人は、事故調査に関する公式な教育訓練を受けている必要がある。また、少なくともチームの中の1人は、事故の発生した工程または区域に関し、一定の教育訓練を受けているか、または知識を持っている必要がある。

上級経営陣の関与は、事故調査および安全一般に対する経営サイドの姿勢を示すものだけに重要である。

事故調査にかかわるすべての人間が明確に意識しなければならないのは、次の一点である。すなわち、事実を探り出し、原因を突き止め、是正処置を勧告することによって、同種の事故の再発を確実に防ぐことが事故調査の目的だということである。