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エルゴノミクス的問題への現実的対処
Making ergonomics practical

資料出所:National Safety Council発行
Today's Supervisor 2006年10月号 p.1
(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日2007.03.15

重量物の持ち上げや悪い姿勢、設計の不適切な作業台は、筋肉、腱、靭帯、関節への負担が極めて大きいが、こうした悪影響の蓄積によって腰痛や手根管症候群(CTS)などに苦しむ米国人労働者は100万人を超えている。実際、労働安全衛生庁(OSHA)と労働統計局(Bureau of Labor Statistics: BLS)によると、毎年60万人以上の労働者が筋骨格系障害で休業を余儀なくされているという。

監督者はこうした傷害を防いで関連費用を削減するために、エルゴノミクス的問題に対する現実的な解決策を探り、従業員と密接に協力して健康の増進と生産性の向上をはかる必要がある。ニューハンプシャー州マンチェスターにあるウィンダムグループで社会心理エルゴノミストをしているカート・リバー(Kurt Rever)氏によると、多くの労働者は長年にわたり、自らをエルゴノミクス的ハザードにばく露しているという。たとえば作業台で部品を組み立てる労働者は、手首と指を動かしやすいように、しばしば両肩の間に首を引っ込めたかっこうをしているという。「彼らはそれが自分にとって害になるということがわからないのです。脊柱は手、腕、首、肩の至るところに、炎症という警告を送っているのです。」、とリバー氏。

新しい身体力学的テクニックを従業員に教えることが、エルゴノミクス的問題の解決策になることも多い。こうしたテクニックによって、労働者は苦痛を感じることなく安全に作業を遂行することができるようになる。ロサンゼルスにあるErgoLifestyle.comのエルゴノミクス専門家でありCEO(最高経営責任者)であるアレックス・チャリッシュ(Alex Charish)氏によると、姿勢を変えるだけの簡単なテクニックでも、炎症を起こしている部分がラクになり、回復に役立つという。チャリッシュ氏は、多くの企業と協力して模索した解決策の中には、敷物を作業台に近付けて労働者が手を伸ばさなくても作業できるようにするといった簡単なものもあったという。同氏によると、手を伸ばす距離が長いと、身体の中心からの距離も伸び、筋肉の緊張度もそれだけ大きくなるという。「[作業するときに]腕が伸びきっていれば、それは物を持ち上げているのと同じです」

簡単なエルゴノミクス的テクニックの導入に成功している企業は多い。イリノイ州ショウンバーグにあるモトローラ社のレスリー・ピーターソン(Leslie Peterson)安全産業衛生部長によると、同社では以前、買掛管理部門の40%の従業員が一日の終わりに腕や手首の疲れを訴えていたという。こうした傷害を減らすため、社内のあるチームが、導入の容易な解決策をいくつか用意した。たとえば、エルゴノミクスに関する教育訓練の義務付け、従業員による作業台の評価や調整、凝りやストレスをほぐす体操の考案などである。ピーターソン氏によれば、こうした解決策を導入した結果、従業員のストレスは70%減ったという。また従業員の70%は、導入されたプログラムのおかげで以前より体の調子が良いと述べている。ピーターソン氏は、企業としても生産性が大幅に向上し、買掛管理部門でのミスの件数は減少、品質は38%改善したという。

どんなエルゴノミクスプログラムにも共通する課題は、従業員の自主参加である。チャリッシュ氏によれば、優れたエルゴノミクスプログラムを実行している企業は、さまざまな方法を通じて、エルゴノミクス的テクニックを仕事以外の生活にも関連付けているという。「エルゴノミクスプログラムは実際に導入が可能で、すぐに理解でき、人々の生活にこれまでと違うものをもたらすものである必要があります」、とチャリッシュ氏はいう。腰痛や手首の痛みを望む従業員はいないが、だからといって労災補償請求の削減では従業員を動機付けることはできないからである。「従業員の原動力になるのは仕事を離れたプライベートな生活です。これが人にやる気を起こさせます。趣味やスポーツが大切だという人もいれば、家族と一緒に過ごすことを大切にする人もいます」。従業員がなじみやすいエルゴノミクスプログラムを用意し、従業員が自ら進んで姿勢を良くしたり、適切に持ち上げたりすることができるようにすることが大事だ、とチャリッシュ氏はいう。