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職場での新型インフルエンザ対策
Prepare your workplace for pandemic influenza

(資料出所:National Safety Council発行「Today's Supervisor」 2006年9月号 p.1)
(仮訳 国際安全衛生センター)

掲載日2007.03.13

政府機関と国際機関は、H5N1と呼ばれる鳥インフルエンザの大流行に備えて対策を急いでいる。ジュネーブの世界保健機関(WHO)によると、鳥類やその糞との直接接触が原因で、これまでに10か国で200人以上が感染し、100人以上が死亡しているという。鳥インフルエンザウイルスはヒトからヒトへは伝染しない。しかし専門家等は、ウイルスが変異すればそれも変わる可能性があり、世界的大流行によって何千、場合によっては何百万という犠牲者を出すおそれがあるという。

ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンズ大学のジョン・シェーファー(John Schaeffer)安全衛生環境副部長は、H5N1が変異するかどうかは別にして、企業ものんびり構えている暇はないと指摘、「早急に対策を立てる必要があります」という。

疾病対策予防センター(CDC)のリサ・クーニン(Lisa Koonin)官民パートナーズ部門局長代理(acting chief of Private and Public Partners Branch)は、企業規模にかかわらず、業務へのインフルエンザ流行の影響を最小限に抑えるための措置を講じることは可能だという。局長代理によれば、企業は以下に掲げる6つの点に力を入れるべきだという。

職場への影響を考慮した計画を立てる

社内でインフルエンザ対策のリーダー役を決める。業務の遂行に不可欠な従業員を特定し、そうした従業員が不在となる場合を想定した*クロストレーニング・プログラムを整備する。出張、サプライチェーン、人員配置への影響を考慮し、従業員が家で子供と過ごす場合には学校が休校になったときの影響も検討しておく。(*クロストレーニングとは:本来の職種に関連する隣接分野の技能を習得するトレーニングのこと。クロストレーニングが行われることで、本来の業務を深めたり、他職種とのチームが組み易くなったり、あるいは特別の専門分野を持つことができる。)

人への影響を考慮した計画を立てる

伝染予防および対面接触機会の削減を通じて従業員と顧客を保護する各種の手段を策定し、特別な配慮が必要な従業員を特定する。

新しい方針を策定する

病欠に関する方針も含めた効果的な人事方針を定める。たとえば、病気の従業員は出社してはならないといった規則を定める。企業は、在宅勤務を従業員に認めるなど、業務を継続する方法について前向きに検討する必要がある。

策定した方針の実行に役立つ手段を提供する

在宅勤務を容易にするためのラップトップコンピューターやサーバー群、伝染予防のための殺菌剤、石けん、手洗い場など、適切な手段を提供する。

従業員とのコミュニケーションを大切にする

従業員が事業者に期待しているのは、確実で信頼できるタイムリーな情報である。事業者は、緊急事態にあっても従業員との接触を絶やさず、ホットラインやウェブサイト、イントラネット、その他の手段を通じて、必要な情報を発信し続ける必要がある。従業員が抱く不安やおそれ、噂をあらかじめ考慮したコミュニケーション戦略を企業として策定しておく必要がある。

また事業者は、ワクチンや抗ウイルス薬、各種の伝染予防手段など、インフルエンザの流行を防ぐための対抗手段についても知っておく必要がある。

インフルエンザ用語の定義

「季節性インフルエンザ」(または「通常のインフルエンザ」)は、
ヒトからヒトへと伝染する呼吸器疾患である。ある程度の免疫はほとんどの人が持っており、ワクチンもある。
「鳥インフルエンザ」は
ヒトからヒトへは伝染しないが、研究者らによると、そうした特性も変わるおそれがあるという。鳥インフルエンザは、野生の鳥類の間で発生したインフルエンザウイルスによって引き起こされる。H5N1型のウイルスは家禽にとっては致命的で、鳥からヒトへと伝染する。ヒトはこのウイルスに対する免疫を持っておらず、本稿執筆時点ではワクチンはない。
「新型インフルエンザ」(または「インフルエンザ・パンデミック」)は、
重症者を世界的規模で大発生(パンデミック)させる高病原性ヒト・インフルエンザである。このウイルスに対する免疫を生まれながらに持っている人はほとんどいないため、ヒトからヒトへと容易に感染伝播する。新型インフルエンザの大流行は、現在のところ起こっていない。