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22. 爆発火災の防止に関する規制(その1)


日本においては、危険物の製造中、又は取扱い中の爆発火災が毎年のように発生しており、しかも一度の災害で多くの犠牲者がでていることから、事業者に次のことを要求している。




(1) 危険物を製造する場合の措置

  1. 規制の対象と対策の基本

    (a) 爆発性の物
    • ニトログリコール、ニトログリセリン、ニトロセルローズ等硝酸エステル類
    • トリニトロベンゼン、トリニトロトルエン、ピクリン酸等ニトロ化合物
    • 過酢酸、メチルエチルケトン過酸化物、過酸化ベンゾイル等有機過酸化物
    • アジ化ナトリウム等金属のアジ化物
    (対策の基本) 火気その他点火源となるものに接近させない、加熱しない、又は衝撃を与えないこと

    (b) 発火性の物
    • 金属リチウム、金属カリウム、金属ナトリウム、黄りん、セルロイド類、カーバイド、マグネシウム粉、アルミニウム粉等
    (対策の基本) 火気その他点火源となるものに接近させない、酸化をうながす物又は水に接触させない、加熱しない、又は衝撃を与えないこと

    (c) 酸化性の物
    • 塩素酸塩類
    • 過塩素酸塩類
    • 無機過酸化物
    • 硝酸塩類
    • 次亜塩素酸塩類
    (対策の基本) 分解がうながされるおそれがある物に接触させない、加熱しない、摩擦しない、又は衝撃を与えないこと


    (d) 引火性の物
    • エチルエーテル、ガソリン、二硫化炭素等引火点が零下30度未満の物
    • ノルマルヘキサン、酸化エチレン、アセトン等引火点が零下30度以上零度未満の物
    • メタノール、キシレン等引火点が零度以上30度未満の物
    • 灯油、軽油、酢酸等引火点が30度以上65度未満の物
    (対策の基本) 火気その他点火源となるものに接近させない、若しくは注ぎ、蒸発させ又は加熱しないこと

    (e) 可燃性の物
    (対策の基本)
    常に整理整頓し、みだりに可燃性の物又は酸化性の物を置かないこと

(2) 特定の作業等における措置
  1. 引火性の物又は可燃性のガスで液状のものの注入

    ホースを用いて化学設備、タンク車、ドラム缶等に注入するときには、ホースの結合部を確実に締め付け、又ははめ合せたことを確認する。

  2. ガソリンが残存しているものへの注入

    ガソリンが残存している化学設備、タンク車、ドラム缶等に灯油又は軽油を注入するときには、あらかじめ、内部を洗浄し、ガソリンの蒸気を不活性ガスで置換する等により安全な状態とする。

  3. 酸化エチレンの注入、貯蔵

    酸化エチレン、アセトアルデヒド、酸化プロピレンを化学設備、タンク車、ドラム缶等に注入又は貯蔵するときには内部を不活性ガスで置換する。

  4. 通風、換気等の措置

    引火性の物の蒸気、可燃性ガス、可燃性の粉じんが存在して爆発又は火災の発生 のおそれがある場所は、通風、換気、除じん等の措置を行う。

  5. ガス溶接等の場合の措置

    可燃性のガス、酸素を用いて溶接、溶断、金属の加熱等の作業を行うときには、次の措置を行う。

    (a) ガス等のホースと吹管、ホース相互の接続はホースバンド、ホースクリップ等の締め付け具を用いる。

    (b) ホースにガス等を供給する時には、ガスが放出しないようにしてあることを確認する。

    (c) ガス等の供給口のバルブ、コックには、使用者の名札等を取り付ける。

    (d) 溶断の作業を行う時には、過剰酸素の供給による火傷を防止するため、十分な換気を行う。

    (e) 作業を中断し、又は終了した時には、供給口のバルブ、コックを閉止し、ホースを取り外す。

  6. ガス等の容器の取扱

    (a) ガス等の容器は、通風又は換気の不十分な場所、火気を使用する場所、火薬類、危険物、爆発性若しくは発火性の物等を製造している場所等に設置し、使用し、貯蔵し、又は放置しない。

    (b) 容器の温度は、40℃以下に保つ。

    (c) 転倒のおそれがないように保持する。

    (d) 衝撃を与えない。

    (e) 運搬する時には、キャップを取り付ける。

    (f) 容器の口金に付着している油類、ほこり等を除去してから使用する。

    (g) バルブの開閉は静かに行う。

    (h) 溶解アセチレンの容器は、立てて置く。

    (i)

    使用前、使用中の容器、その他の容器との区別を明確にしておく。


(3) 化学設備等に対する措置
  1. 腐食防止

    化学設備又はその配管のうち、危険物又は引火点が65℃以上の物が接触する部分 については、腐食による爆発火災をを防止するため、危険物等の種類、温度、濃度 等に応じ腐食しにくい材料で造り、内張り等の措置を行う。

  2. 蓋板等の接合部

    化学設備、その配管の蓋板、フランジ、コック等の接合部については、危険物等の漏洩による爆発火災を防止するため、ガスケット使用し、接合面を相互に密接させる。

  3. 開閉方向の表示等

    バルブ、コック又はこれらを操作するスィッチ、押しボタン等については、誤操作による爆発火災を防止するため、開閉の方向を表示する、色分け、形状の区分等を行う。

  4. バルブ等の材質等

    バルブ、コックについては、次の方法による。

    (a) 危険物等の種類、温度、濃度等に応じ、耐久性のある材料で造る。

    (b) 使用中にしばしば開放し、又は取り外すことのあるストレーナー等とこれに最も近接した化学設備との間には、バルブ、コックを二重に設ける

  5. 原材料の種類の表示

    化学設備に送給する原材料の種類、送給の対象となる設備等を見易い場所に表示する。

  6. 特殊化学設備(発熱反応が行われる反応器等)に対する措置

    (a) 温度計、流量計、圧力計等の計測装置を設ける。

    (b) 内部の異常を早期に把握するための自動警報装置を設けるか、運転中は監視人を配置し、監視させる。

    (c) 異常事態発生時に原材料の供給を遮断し、又は製品等を放出するための装置、不活性ガス、冷却水等を送給する装置等を設ける。

    (d) 予備動力源を備える。

    (e) バルブ、コック、スィッチ等については、施錠、色分け、形状の区分を行う。

  7. 作業規程の作成

    (a) バルブ、コック等の操作

    (b) 冷却装置、加熱装置、撹拌装置、圧縮装置の操作

    (c) 計測装置、制御装置の監視及び調整

    (d) 安全弁、緊急遮断装置その他の安全装置、自動警報装置の調整

    (e) 蓋板、フランジ、バルブ、コック等の接合部における危険物等の漏洩の有無の点検

    (f) 試料の採取

    (g) 特殊化学設備については、一時的、部分的に中断された場合の中断中及び運転再開時における作業の方法

    (h) 異常な事態が発生した場合における応急の措置

    (i) その他爆発火災を防止するために必要な措置

  8. 退避等

    化学設備等から危険物等が大量に流出した場合等で爆発火災等による急迫した危険がある時には、ただちに作業を中止し、労働者を安全な場所に退避させる。
    また、労働災害のおそれがないことを確認するまでの間、関係者以外が立ち入ることを禁止し、その旨を見易い箇所に表示する。

  9. 改造、修理、清掃等場合の措置

    (a) 作業の方法及び順序を決定し、関係労働者に周知する。

    (b) 作業指揮者を定めて作業を行う。

    (c) バルブ、コックを二重に閉止し、又はバルブ、コックを閉止するとともに閉止板等を取り付ける。転倒のおそれがないように保持する。

    (d) バルブ、コック、閉止板等に施錠し、開放してはならない旨を表示し、又は監視人を配置する。

    (e) 閉止板等を取り外す場合には、近接した場所に危険物又は高温の水蒸気等の有無を確認する。

  10. 定期自主検査

    化学設備及び付属設備については、2年以内ごとに1回定期に自主検査を行う。検査結果、補修結果の記録は、3年間保存する。

  11. 安全装置

    異常化学反応などにより内部の気体の圧力が大気圧を超えるおそれのある容器については、安全弁、又は安全装置を備えたものでなければ使用してはならない。
    安全弁、安全装置は、密閉式の構造の物、又は排出される危険物を安全な場所に導き、若しくは燃焼、吸収等により安全に処理することができる構造とする。
(次回は、爆発火災の防止に関する規制(その2)を予定)