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33. クレーン等の安全


 工場に設置されるクレーン、各種の荷役に使用される移動式クレーン等及びゴンドラは、生産性の向上等の面から多くの作業現場に採用されてきていますが、重量物を取り扱うことによる危険や墜落危険等のほか、機械の大型化、高速化等に伴って被害が大きくなるおそれがあり、また、労働災害も多発していることから、労働安全衛生法及び関連規則においては製造段階から使用段階に至るまでの機械等自体の安全性の確保や作業の安全について、事業者に多くの要求をしています。
 なお、近年では、国際情勢等を踏まえて、規制の一部が緩和されてきています。(労働安全衛生法、クレーン等安全規則、ゴンドラ安全規則)
1. 製造の許可、国の検査等
a. 製造の許可(法第37条、令第12条、ク則第3,53,94,138,172 条, ゴンドラ則第2 条)
(a) 対象
次のクレーン等については、製造を行う前に都道府県労働局長の許可が必要です。
吊り上げ荷重が3 トン以上のクレーン(スタッカークレーンは1 トン以上)
吊り上げ荷重が3 トン以上の移動式クレーン
吊り上げ荷重が2 トン以上のデリック
積載荷重が1 トン以上のエレベーター
ガイドレールの高さが18メートル以上の建設用リフト(積載荷重が0.25トン未満のものを除く)
ゴンドラ
(b) 許可の単位
製造許可の単位となるクレーン等の型式は、次のようになっています。
(天井クレーン)
天井クレーン ホイスト式天井クレーン等 6種類
ジブクレーン 塔形・門形ジブクレーン等10種類
橋形クレーン ホイスト式橋形クレーン等 5種類
アンローダ 橋形クレーン式アンローダ等 3種類
ケーブルクレーン 固定ケーブルクレーン等 3種類
テルハ
スタッカークレーン スタッカー式スタッカークレーン及び荷昇降式スタッカークレーン
(移動式クレーン)
トラッククレーン ジブが伸縮するもの及びしないもの
ホイールクレーン ジブが伸縮するもの及びしないもの
クローラクレーン ジブが伸縮するもの及びしないもの
鉄道クレーン ロコクレーン、救援クレーン、桁架設クレーン
浮きクレーン 固定式・起伏式・旋回式浮きクレーン
(デリック)
ガイデリック
スフレックデリック
鳥居形デリック
ジンポール形デリック
(エレベーター)
常設エレベーター ロープ式・油圧・ラック式エレベーター
工事用エレベーター ロープ式工事用エレベーター等5 種類
(建設用リフト)
タワーリフト
二本構リフト
一本構リフト
ロングスパン建設用リフト
(ゴンドラ)
アーム固定型、アーム伏仰型、懸垂型、デッキ型、チェア型
(c) 許可申請時に必要な書面
製造の許可申請のときには、次の書類が必要です。
強度計算の基準
製造の過程において行う検査のための設備の概要
主任設計者及び工作責任者の氏名及び経歴の概要
(d) 許可基準の概要(1972年告示第76号)
製造の許可基準は、次のようになっています。
構造規格に適合していること。
検査設備、主任設計者、工作責任者が一定の要件を満たしていること。
b. 製造時等の検査
(a) 製造検査(法第38条,クレーン則第53〜56条、ゴンドラ則第4 条)
製造の許可を得た後、移動式クレーン及びゴンドラを製造した者は、都道府県労働局長の製造検査を受けることが必要です。
製造検査に合格した移動式クレーン及びゴンドラについては、刻印を押し、明細書に合格印を押し、検査証が交付されます。
(b) 輸入時・使用検査(法第38条,クレーン則第57条, ゴンドラ則第6 条)
次の者は、都道府県労働局長の使用検査を受けることが必要です。
移動式クレーン又はゴンドラを輸入した者
移動式クレーンの製造検査を受けてから2 年以上(規制緩和によ保管状況が良好なものについては、3 年)設置しなかったもの、使用を廃止した移動式クレーンを再び設置し、使用しようとする者
ゴンドラの製造検査を受けてから1 年以上(規制緩和により保管状況が良好なものについては、2 年)設置しなかったもの、使用を廃止した移動式クレーンを再び設置し、使用しようとする者
c. 設置、使用時の検査
(a) 設置届、落成検査(法第38,88 条,クレーン則第5 〜9,11,61,96〜98,111,140〜143,145,172 〜177 条, ゴンドラ則第10条)
クレーン、デリック、エレベーター、建設用リフトを設置しようとする事業者は、設置届を労働基準監督署長に提出し、落成検査を受けることが必要です。
移動式クレーン及びゴンドラを設置しようとする事業者は、明細書及び検査証を添えて設置報告書を労働基準監督署長に提出することが必要です。
落成検査に合格したものについては、検査証が交付されます。
次のものを設置しようする事業者は、設置報告書を労働基準監督署長に提出することが必要です。
吊り上げ荷重が0.5 トン以上3 トン未満のクレーン(スタッカークレーンは0.5 トン以上1 トン未満)
吊り上げ荷重が0.5 トン以上3 トン未満のデリック
積載荷重が0.25トン以上1 トン未満のエレベーター
簡易リフト
(b) 性能検査(法第41条,クレーン則第40〜43,81 〜84,125〜128,159 〜162 条, ゴンドラ則第24〜27条)
クレーン、移動式クレーン、デリック、エレベーター、ゴンドラを検査証の有効期間を超えて使用する場合には、労働基準監督署長又は性能検査代行機関の検査を受けることが必要です。
なお、それぞれの有効期間と更新の期間は、次のようになります。
種  類 検査証の有効期間 更新される期間
クレーン 2年(状況により2年未満) 2年(状況により2年未満又は2年を超え3年以内)
移動式クレーン 2年(状況により2年未満) 2年(状況により2年未満又は2年を超え3年以内)
デリック 2年(状況により2年未満) 2年(状況により2年未満又は2年を超え3年以内)
エレベーター 1年 1年(状況により1年未満又は1年を超え2年以内)
建設用リフト 設置から廃止まで
ゴンドラ 1年 1年(状況により1年未満)
(c)  変更検査(法第38,88 条,クレーン則第44〜47,85 〜88,129〜132,163 〜166, 197 〜200 条, ゴンドラ則第28〜31条)
クレーン、移動式クレーン、デリック、エレベーター、建設用リフト、ゴンドラの構造部分等の変更を行おうとする時は、労働基準監督署長に変更届を提出し、変更検査を受けることが必要です。
検査に合格したものについては、変更した部分が検査証に裏書きされます。
(d) 使用再開検査(法第38条、クレーン則第49〜52,90〜92,134 〜136,168 〜170 条、ゴンドラ則第33〜35条)
使用を休止したクレーン、移動式クレーン、デリック、エレベーター、ゴンドラの使用を再開する時は、労働基準監督署長の使用再開検査を受けることが必要です。
検査に合格したものについては、検査証に検査期日、検査結果を裏書します。
2. 使用の制限(法第37,40 条,クレーン則第17,23,64,69,104,109,148,150,181,184, 205 条、ゴンドラ則第11,13 条)


クレーン・移動式クレーン・デリック・エレベーター・建設用リフト・ゴンドラは、厚生労働大臣の定める構造規格に適合するものでなければ使用できません。
クレーン・移動式クレーン・デリックの定格荷重及びエレベーター・建設用リフト・簡易リフト・ゴンドラの積載荷重を超える荷重をかけて使用することはできません。
クレーン等を譲渡し、又は貸与するときは、検査証の添付が必要です。
3. 就業制限(法第59,61 条,クレーン則第21,22,67,68,107,108,151,183,206 条、ゴンドラ則第12条)

クレーン等の運転の業務には、次の資格を有している者等でなければ就かせることはできません。
種       類 免許 技能講習修了 特別教育
クレーン (つり上げ荷重が5トン以上) - -
(つり上げ荷重が5トン未満) -
移動式クレーン (つり上げ荷重が5トン以上) - -
(つり上げ荷重が1トン以上5トン未満) -
(つり上げ荷重が1トン未満)
デリック (つり上げ荷重が5トン以上) - -
(つり上げ荷重が5トン未満) -
建設用リフト - -
ゴンドラ - -
(注)
1 エレベーターについては、運転の方法及び故障したときの処置を運転者に周知する。
2 簡易リフトについては、合図を定めて運転を行わせる。
4. 定期自主検査(法第45条,クレーン則第34〜39,76 〜80,119〜124,154 〜158,192 〜196,208 〜212 条、ゴンドラ則第21〜23条)

 クレーン等については、次の周期で定期点検を行うとともに、作業開始前にまき過ぎ防止装置、ブレーキ等の点検を行うことが必要です。また、地震、強風等の後には臨時の点検が必要です。
 点検の記録は、3 年間保存するとともに、異常な個所の補修を行うことが必要です。
種   類 一年に一回 一月に一回 作業開始前 強風・地震等の後
クレーン
移動式クレーン -
デリック
エレベーター
建設用リフト -
簡易リフト -
ゴンドラ -

5. 作業時の安全確保

a 巻過ぎ防止等(クレーン則第18,19,20,65,66,105,106,149,182,204条)
クレーン、移動式クレーン、デリック、建設用リフトの巻き過ぎ防止装置、警報装置、安全弁、エレベーター及び簡易リフトの安全装置については、調整等を十分に行うことが必要です。

b 運転の合図(クレーン則第25,77,111,185,206 条、ゴンドラ則第16条)
クレーン、移動式クレーン、デリック、建設用リフト、簡易リフト、ゴンドラを用いて作業を行う時には、一定の合図を定め、合図を行う者を定めて作業を行わせることが必要です。(単独作業の場合は除く)

c 搭乗の制限(クレーン則第26,72,73,112,186,207条)
クレーン、移動式クレーン(作業のためやむを得ない時は除く)、デリック、建設用リフト(作業のためやむを得ない時は除く)、簡易リフト(作業のためやむを得ない時は除く)により労働者を運搬し、又は吊り上げることは禁止です。

d 立ち入り禁止(クレーン則第28,29,74,74 の2,114,187 条、ゴンドラ則第18条)
クレーン、移動式クレーン、デリック、建設用リフト、ゴンドラによる作業の場合には、吊り上げられている荷の下に労働者を立ち入らせることは禁止です。

e 組み立て時の作業指揮者の選任(クレーン則第33,75 の2,118,153,191 条)
クレーン・デリック・建設用リフトの組み立て解体、移動式クレーンのジブの組み立て解体、エレベーターの昇降路等の組み立て解体の時には、作業指揮者を定めて作業を行うことが必要です。

f 作業禁止等(クレーン則第30の2,31,31 の2,74の3,74の4,116,116 の2,152 条、ゴンドラ則第19条)
クレーンについては、ガーダ等の点検補修時、強風時等の際には運転・作業を行うことは禁止です。
また、屋外にあるクレーンについては、暴風時の転倒防止措置を行うことが必要です。
移動式クレーン、デリックについては、強風時等の際には作業を行うことは禁止です。また、暴風時の転倒防止措置を行うことが必要です。
屋外に設置されているエレベーターについては、暴風時の倒壊防止措置を行うことが必要です。
建設用リフトについては、暴風時の倒壊防止措置を行うことが必要です。
ゴンドラについては、悪天候時の作業は禁止です。

g 外れ止め装置の使用(クレーン則第20の2,66の3 条)
外れ止め装置の使用(クレーン則第20の2,66の3 条)クレーン・移動式クレーンについては、玉掛け用ワイヤーロープ等がフックから外れることを防止するため、外れ止め装置を使用することが必要です。
6. 玉掛け作業の安全

a 玉掛けワイヤーロープ等の安全係数(クレーン則第213,214 条)
 クレーン・移動式クレーン・デリックの玉掛けワイヤーロープの安全係数は6 以上、フック又はシャックルの安全係数は5 以上でなければ使用することは禁止です。

b 不適格なワイヤーロープの使用禁止(クレーン則第215 条)
 次のようなワイヤーロープをクレーン等の玉掛けワイヤーロープをとして使用することは禁止です。
ワイヤーロープ一撚りの間において素線の数の10% 以上の素線が切断しているもの
直径の減少が公称径の7%を超えるもの
キンクしたもの
著しい形崩れ又は腐食があるもの

c 就業制限(クレーン則第221,222 条)
吊り上げ荷重が1 トン以上のクレーン等の玉掛けの業務は、玉掛け技能講習を修了した者又は厚生労働大臣が同等以上と認めた者でなければ行うことは禁止です。
吊り上げ荷重が1 トン未満のクレーン等の玉掛けの業務に従事させる労働者には、あらかじめ特別教育を行うことが必要です。

(次回は、機械等の検定を予定)