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36. 作業環境の測定



 職場の作業環境を正確に把握しておくことは、健康管理の第一歩として重要なことであり、労働安全衛生法においては各種の環境条件を定期的に測定することを要求しています。
 特に、有害物質等を取り扱う職場の環境測定については、作業方法等についての理解を持つとともに、測定場所の設定、測定機器の取り扱い等について高度の知識、技術を必要とすることから、労働安全衛生法のほか、作業環境測定法により測定者の資格要件、測定結果の評価の適正な実施等を規定しています。(労働安全衛生法第65条、作業環境測定法、作業環境測定法施行令、作業環境測定法施行規則)
1.大臣の定める基準によって作業環境測定が必要な場所(安衛令第21条,安衛則第587〜592 条、第603,605,607,612 条)
次の場所は、厚生労働大臣の定める基準によって、作業環境の測定を行うことが必要です。
a. 土石、鉱物、金属、炭素粉じんを著しく発散する屋内作業場
b. 暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場
c. 著しい騒音を発散する屋内作業場
d. 坑内の作業場
e. 中央管理方式の空気調和装置を設けている建築物の室で事務所として使用されている  もの
f. 放射線業務を行う作業場
g. 特定化学物質等を製造し、若しくは取り扱う屋内作業場、コークス製造の作業場
h. 鉛業務を行う屋内作業場
i. 酸素欠乏危険場所
j. 有機溶剤を製造し、又は取り扱う作業場
2. 測定の基準(安衛法第65条の2 )
作業環境の測定は、厚生労働省の告示「作業環境測定基準」によって実施すること必要です。
  この作業環境測定基準には、試料空気の捕集方法(液体・固体・直接・冷却凝縮・ろ過捕集方法)、測定点の設計、分析方法等が定められています。
3. 測定結果の評価(安衛法第65条の2 )
作業環境測定対象のうち、(1)-a,g,h,j の屋内作業場の測定結果については、厚生労 働省の告示「作業環境評価基準」によって、おおむね次の3 つに区分して評価します。
a. 第1管理区分 第 1評価値と測定対象物ごとに定められている管理濃度を比較して管理濃度に満たない場合(注1)
b. 第2管理区分 第1評価値が管理濃度以上であり、かつ、第2評価値が管理濃度以下である場合(注2)
c. 第3管理区分 第 2評価値が管理濃度を超える場合
(注) 1 管理濃度(例)
(1) 土石、鉱物等の粉じん
E(mg/m3) =2.9/0.22Q+1
E:管理濃度
Q:粉じんの遊離けい酸含有率(%)
(2) アクリルアミド 2 PPM
(3) 石綿 5 マイクロメートル以上の繊維として2 毎立方メートル
(4) 塩素 0.5 PPM
(5) ニトログリコール 0.05PPM
(6) 硫化水素 10 PPM
(7) キシレン 100 PPM
(8) 四塩化炭素 5 PPM
(9) トルエン 50 PPM
2 第 1評価値及び第 2評価値は、測定値をもとに幾何学平均値及び幾何標準偏差を用いて計算する。(数式 略)
3 測定には、A 測定(作業場所の床面に6 メートル以下の間隔で縦横に引いた線の交点の上50〜150 センチメートル以下で測定)とB 測定(最も濃度が高くなる時間に測定)がある。(詳細 略)
4. 改善措置(安衛法第65条の2 、有機則28条の3 等)
事業者は、(3) の評価結果に基づいて、次の措置を行うことが必要です。
a. 第3管理区分の場合
直ちに、施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき施設等の設置・整備(局所排気装置等),作業工程又は作業方法の改善等を行い、第 1管理区分又は第 2管理区分になるようにすること。
労働者に有効な呼吸用保護具を使用させ、また、健康診断等を行うこと。
b. 第2管理区分の場合
施設、設備、作業工程又は作業方法の点検を行い、その結果に基づき施設等の設置・整備(局所排気装置等)、作業工程又は作業方法の改善等を行い、第 1管理区分になるようにすること。
5. 作業環境測定士及び作業環境測定機関(作環法第2,3,5,7,33条、作環令第1 条、作環則第3,5 〜7,52,53 条)
a. 作業環境測定士
作業環境の測定を適正に行うため、次の場所については、作業環境測定士免許を有する者による測定が必要です。
(a) 第一種作業環境測定士
(1)-a,,g,h,jの屋内作業場及びその他の作業環境の測定、分析
(b) 第二種作業環境測定士
(1)-a,f,g,h,j の屋内作業場の作業環境の測定(分析を除く)及びその他の作業 環境の測定
b. 作業環境測定士の資格
(a) 作業環境測定士試験に合格し、かつ、厚生労働大臣又は都道府県労働局長の指定する講習を修了した者で、指定登録機関に作業環境測定士として登録した者
(b) 厚生労働大臣が(a) と同等以上と認めた者
大学で理科系統の学科を修めて卒業した者で、大学又は高等専門学校で空気環境又はその他の環境の測定に関する教授、助教授の職に就いている者又は就いていた者
大学で理科系統の学科を修めて卒業した後、国、地方公共団体、民法の規定により設立された研究機関で10年以上空気環境又はその他の環境の測定に従事した経験を有する者  等
c. 作業環境測定機関
(a) 登録
事業場の依頼に応じて作業環境の測定を行おうとする者は、国に登録が必要です。
その都道府県内だけで測定を行う場合は、都道府県労働局長に登録
複数の都道府県で測定を行う場合は、厚生労働大臣に登録
(b) 登録要件
粉じん障害防止規則等に定める屋内作業場、放射性物質取扱作業室、特定化学物質等の製造等を行う屋内作業場、鉛業務を行う屋内作業場、有機溶剤業務を行う屋内作業場のそれぞれの測定について登録した第一種作業環境測定士がいること
作業環境測定・分析を行うために必要な機器、設備が整備されていること
6. その他の改善措置等
a. 上記(1)-a,f,g,j の作業場以外の作業場所については、作業環境の測定結果に基づいて、施設、設備の改善、作業工程・方法の改善、有効な保護具の使用等を行うことが必要です。
b. 作業環境の測定については、測定の周期、記録の保存等が義務づけられています。

(次回は、労働災害防止団体に関する法律を予定)