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37. 労働災害防止団体



 労働災害の防止は、事業者が措置すべき最低の基準等を定めた労働安全衛生法及び関連規則等の遵守や労働基準監督官の監督指導等により、かなりの成果をあげていますが、継続して実効を上げるためにはそれぞれの事業場の労使による自主的活動の活性化が不可欠であり、また、業種ごとの対策の共有も必要です。
 そのため、国は、労働災害防止を目的として事業者で組織する団体を法律に基づいた認可法人として設立させ、国の施策と相俟ってその団体の会員である事業者等の労働災害防止活動の促進を図っています。
 この労働災害防止団体の役割、業務等について定めた法律が、労働災害防止団体法(労働安全衛生法の制定時に一部改正)であり、この法律は労働安全衛生法(1972年)より前の1964年に制定され、それに基づいて中央労働災害防止協会及び業種別の労働災害防止団体が設立、運営されています。(労働災害防止団体法、労働災害防止団体法施行規則)
1. 団体の種類(法第8 条)
労働災害防止団体として設立されているのは、労働災害の発生率等を考慮して次のものが設立されています。
a. 中央労働災害防止協会
b. 業種別労働災害防止協会
建設業労働災害防止協会
陸上貨物運送事業労働災害防止協会
港湾貨物運送事業労働災害防止協会
林材業(木材製造業を含む)労働災害防止協会
鉱業労働災害防止協会
(注)業種別の協会については、会員会社の労働者数の合計が、指定の業種に常時使用される労働者の1/3 を超えるときでなければ設立ができないとの制限がある。
(法第43条、則第11条)
2. 業務
a. 中央労働災害防止協会(法第11条)
(a) 会員間の連絡及び調整
(b) 事業主及び事業主団体等が行う労働災害の防止のための活動の促進
(c) 教育及び技術的援助のための施設の設置、運営
(d) 技術的な事項についての指導、援助
(e) 機械及び器具についての試験及び検査
(f) 労働者の技能に関する講習
(g) 情報及び資料の収集、提供
(h) 国からの委託業務の実施
安全衛生教育に従事する指導員の養成及び資質の向上を図るための業務
化学物質等で健康障害を生ずるおそれがあるものの有害性の検査
快適な職場環境の形成に関する情報及び資料の収集、提供、啓発活動
都道府県で快適な職場環境の形成について活動している団体への技術的な指導援助、助言
労働災害防止団体が設立されていない業種に対する技術的な事項についての指導、援助
b. 業種別労働災害防止協会(法第36〜50条)
(a) 労働災害防止規程の設定(厚生労働大臣の認可が必要)(法第37〜41条)
なお、労働災害防止規程の改廃については、労働者及び学識経験者の意見を聞くことが必要です。
(b) 会員に対する技術的な事項についての指導、援助
(c) 指定の業種に関する
機械及び器具についての試験及び検査
労働者の技能に関する講習
調査及び広報
上記に関する付帯的な業務
(d) 厚生労働大臣から要請があったときには、指定の業種の会員以外に対する(c) の業務
3. 会員の資格(法第13条)
a. 中央労働災害防止協会
法人である協会
全国的な事業主の団体で、労働災害防止のための活動を行うところ
上記2 つのほか、労働災害防止のための活動を行うところで定款で定めがあるところ
b. 業種別労働災害防止協会(法第42条)
指定業種に属する事業の事業主及びその事業主の団体
全国的な事業主の団体で、労働災害防止のための活動を行うところ(指定業種に属するもの)
4. 技術的事項を指導、援助する者の資格(法第12条, 則第1,2 条)
全ての労働災害防止協会には、労働災害防止に関する技術的な事項を指導、援助する者として「安全管理士」、「衛生管理士」を置くことになっており、その資格の概要は次のとおりとなっています。
a. 安全管理士の資格
大学又は高等専門学校において産業安全についての学科を修めて卒業した者で、その後7 年以上産業安全についての実務経験を有するもの
高等学校において工業に関する学科を修めて卒業した者で、その後10年以上産業安全についての実務経験を有するもの
労働安全コンサルタント
大学又は高等専門学校において産業安全についての学科以外の学科を修めて卒業した者で、その後7 年以上国の産業安全専門官等として産業安全についての実務経験を有するもの
高等学校において工業に関する学科以外の学科を修めて卒業した者で、その後10年以上国の産業安全専門官等として産業安全についての実務経験を有するもの
(ただし、鉱業災害防止協会に所属する安全管理士については)
上級保安技術職員試験に合格した者
上級保安技術職員試験に合格した者と同等以上と認める者
b. 衛生管理士の資格
大学又は高等専門学校において労働衛生についての学科を修めて卒業した者で、その後7 年以上労働衛生についての実務経験を有するもの
高等学校において理科系統の学科を修めて卒業した者で、その後10年以上労働衛生についての実務経験を有するもの
労働衛生コンサルタント
大学又は高等専門学校において労働衛生についての学科以外の学科を修めて卒業した者で、その後7 年以上国の労働衛生専門官等として労働衛生についての実務経験を有するもの
高等学校において理科系統の学科以外の学科を修めて卒業した者で、その後10年以上国の労働衛生専門官等として労働衛生についての実務経験を有するもの 
(ただし、鉱業災害防止協会に所属する衛生管理士については)
医師、歯科医師、薬剤師の免許を受けた者で、その後4 年以上労働衛生についての実務経験を有するもの
大学又は高等専門学校において労働衛生についての学科を修めて卒業した者で、その後7 年以上労働衛生についての実務経験を有するもの
上記と同等以上と認める者
5. 運営の費用(法第15,42,54条)
各労働災害防止協会の運営費用は、会員から徴収する会費、事業活動による収益を充てることになっているが、国も労働保険特別会計の労災勘定の予算の範囲内において、費用の一部を援助できることになっています。
6. その他
労働災害防止協会は、法人とし、登記することになっています。(法第10条)
厚生労働大臣は、労働災害防止協会に対し、必要な報告を求めること、立ち入り検査を行うこと、適切でない運営について是正の勧告を行うこと及び是正されないときには業務の一部停止、認可の取り消し等ができます。(法第52,53 条)
中央労働災害防止協会は、学識経験者の中から参与を委嘱することができます。 (法第27条)

(次回は、じん肺に関する法律を予定)