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41. 労働者派遣業務と安全衛生

       日本の事業場における安全衛生の確保については、雇用関係を基本とした労働基準法或いは労働安全衛生法を中心に進められてきましたが、雇用関係を変形した形の労働形態が多くなってきたことから、1985年に労働者派遣法(通称)が制定され、自己の雇用する労働者を、その雇用関係の下に、他の事業者の指揮命令を受けてその事業者のために労働させることができる制度についての規制が行われるようになりました。
 この労働者派遣は、派遣元と労働者との間には、雇用契約関係があり、派遣元と派遣先のと間には労働者派遣契約締結され、この契約に基づいて、派遣元が派遣先に労働者を派遣し、派遣された労働者は、派遣先の指揮命令により労働するという形態で、規制の上では労働基準法及び労働安全衛生法等の適用の特例として取り扱うことになっています。
 労働者派遣法は、この形態で労働させる場合の諸条件について詳細に規定していますが、労働者の安全衛生の確保等については次のように行うことになっています。
 (労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律、同施行令、同施行規則)
  労働基準法及び労働安全衛生法で規定されている事項の措置義務者
  a 労働基準法関係

    項          目

 派遣元

 派遣先

労働契約(第13〜23条)
賃金の支払い(第24〜28条,37 条)
時間外・休日労働の労使協定の届出(第36)
時間外・休日労働(第36条)
年次有給休暇(第39条)
危険有害業務の就業制限(年少者妊産婦等)(第62,63 条)
産前産後の休業(第66条)
生理日の就業が困難な女性の就業禁止(第68条)
災害補償(第75〜88条)
就業規則(第89〜93条)
寄宿舎(第94〜96条)
申告を理由とする不利益取扱いの禁止(第104 条)
記録の保存(第109 条)

  b 労働安全衛生法関係

      項         目

 派遣元

 派遣先

事業者の責務(法第3 条)
労働者の協力義務(法第4 条)
総括安全衛生管理者の選任等(法第10条)
安全管理者(法第11条)
衛生管理者(法第12条)
安全衛生推進者(衛生推進者)(法第12条の2)
産業医の選任(法第13条)
作業主任者の選任等(法第14条)
統括安全衛生責任者の選任等(法第15条)
安全委員会の設置(法第17条)
衛生委員会の設置(法第18条)
危険又は健康障害の防止措置(法第20〜25条の2
定期自主検査(法第45条)
化学物質の有害性の調査(法第57条の3)
安全衛生教育(雇い入れ時)(法第59条)
         (作業内容変更時)(法第59条)
特別教育(危険有害業務)(法第59条)
職長教育(法第60条)
就業制限(法第61条)
作業環境の測定(法第65条)
健康診断(一般・定期)(法第66条)
       (特殊)(法第66条)
病者の就業禁止(法第68条)
健康教育(法第69条)
快適職場の形成(法第71条2)
安全衛生改善計画(法第78条)
機械等の設置・移転等の計画の届出(法第88条)
申告を理由とする不利益取扱いの禁止(法第97条)

 (注)
  1 じん肺法、作業環境測定法についても同様の分担
  2 総括安全衛生管理者等を選任するか否かは、労働者数が基礎となるが、派遣労働者は派遣元、派遣先の両方に算入する。
  3 派遣された者が、衛生管理者の資格等を所持していても、この者を派遣先で選任することはできない。

      (次回は、労働者の災害補償を予定)