国際安全衛生センターの業務は2008年3月31日をもちまして終了いたしました。ここに掲載されている情報は2007年度以前のものです。お問い合わせは,中央労働災害防止協会国際課までお願いします。 国際安全衛生センターの廃止にともない図書館の原典の閲覧はできません。 国際安全衛生センタートップ > 研修事業:海外調査報告 > インド(ムンバイ市)出張報告 |
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![]() インド(ムンバイ市)出張報告掲載日2008.03.31
出張者国際安全衛生センター業務管理課 職員 目的
訪問先と日程
T.訪問事業場等取材
住所:3rd Floor, Leela Business Park, Opposite Hotel Leela, Andheri-Kurla Road, Andheri (East), Mumbai 400 059 電話:+91-22-4077-2600Fax:+91-22-4077-2727 ACCコンクリート社(以下ACCと記載。)は、インド最大のセメント及びコンク リートの製造会社である。従業員は、約9000人を擁し、19のコンクリート製造プラントを保有する。 ACCは、法的な規制が確立されるよりはるかに早い時代から、環境保護や労働安全衛生対策に自主的に取り組んでいることで知られる企業である。 安全衛生課長氏は、昨年の国際センター研修の「石綿・粉じん対策」コースを受講した。 見学した事業場は、ムンバイ市郊外にあるセメント保管・搬出プラントである。 本事業場で、最も重要なことは、保管されている大量のセメントの粉じん対策である。粉じん対策は、作業者に対する衛生管理対策であると同時に、プラント周辺の環境保護対策ともなるからである。 セメントは、外部と屋根や仕切り等で区切られている区画に土積みされているが、外側とまったく隔離されているわけではない。そのため、スプリンクラーによって自動的に(かつ規則的に)散水される装置が配備されている。また、タンクローリー車が進入するため、建屋の開口部が大きな面には、合成樹脂製の“すだれ”が下げられ、車の出入りには支障なく、セメントの飛散を防ぐ対策が採られていた。 訪問当日は、天気がよく、風も吹いていたが、プラント内部及び周辺に粉じんが飛散している様子はまったくなかった。 また、安全面においても、インドの企業ではまだあまり普及していない、自己発光式の作業着や、作業塔上層階の墜落防止用鉄柵の靴があたる部分に、踏み外し防止用の鉄柵を新たに設けるなど、細かな安全対策が採られていた。 安全衛生課長氏が国際センターで研修を受けた成果も見られたが、安全衛生対策に優れた企業の印象は、国籍を問わず共通したものになっていくと感じた。 住所:Plot No. E1/2/3, M.I.D.C., Taloja, Dist. Raigad 410 208 電話:+91-22-2741-2464Fax:+91-22-2741-0261 TechNova Imaging Systems社(以下TechNovaと記載。) は、デジタル及びアナログオフセット印刷板や、化学系、インクジェット、レーザー、製図等のメディアの製作企業として世界最大級の企業のひとつである。 対応してくれた安全とプロジェクト促進課長氏は、2006年に国際センター研修の「機械設備安全管理・点検」コースに参加した。彼は、日本語の名刺を使用しているほどの日本通である。顧客にも日本企業は多いそうである。 TechNovaは、機械による災害の防止に関して、機械による要因(Machine factor)と人間による要因(Human factor)の二つを重視している。 Machine factorについては、 とし、Human factorについては、ゼロ災活動的手法を重視している。 すなわち、 である。 本社工場を視察したところ、可動式のホワイトボードで囲まれた、ツールボックスミーティング用のスペースがあらかじめ取られており、KYTに熱心な日本企業の工場内と、変わるところがない。生理整頓もやはりよく行われている。 また、インドにおいては、このような労働者の自主的活動を促進するためには、労働組合幹部(C.U.O)の理解と協力が不可欠とのことである。 住所:Pirojshanagar, Vikhroli, Mumbai 400 079 電話:+91-22-6796-1700Fax:+91-22-6796-1555 Godrej & Boyce Mfg. Co. Ltd(以下、Godrejと記載。)は、1897年に設立された総合製造企業である。当初は、錠前のメーカーとして出発したが、その後次々と生産品目数を増やし、2007年度の総売上高は、約1800億円に上る。 現在の主要生産品は、 などである。 生産品目の多様性という点では、日本の「ヤマハ」と共通点があるという印象を受けた。 本社及び本社工場は、Mumbai郊外のVikhroli地区に位置している。 Godrejの社是は、「家族主義的経営」である。それも並大抵のものではなく、かつての日本企業(松下電器等)が採っていた方針をさらに推し進めたものである。 広大な本社敷地内には、事務棟と工場等が複数あるが、その周辺に多くの社員住宅が建てられているのである。 幹部社員の住宅は規模の大きな一戸建てであり、中堅社員の住宅は、低層の集合住宅であるが、社外の一般的な住宅に比べて、はるかに立派なものである。 その上、敷地内には、社員の子弟が通う学校(小学校から高校)までが設置されている。 本社・工場の敷地内だけで、生活圏が完結しているのである。 次に工場の生産ラインを見学したが(錠前工場)、こちらは最新式というわけではないが、多くの安全衛生対策に優れた企業と同様に、整理整頓が行き届いていた。 Godrejを訪問したのは、出張最終日であったため、工場内にKYTの実施ボードが置かれているのも見慣れた光景になってきた。(手法は、独自に改変されているようだが。) 安全衛生担当副部長氏は、昨年当センター研修の「建設安全管理」コースを受講している。 幹部社員とのミーティングの席で、彼は、国際センターの研修内容、及び当方の研修に対する態度を絶賛してくれた。 彼と幹部社員は、訪問当日がインドの”National Safety Day”に当たったため、労働組合と共同で行われる安全集会の席に案内してくれた。 それは、若い組合員が寸劇で安全対策の大切さを訴えるものであった。 組合と経営幹部が対立的でないのも、家族主義的な社風によるところが大きいと感じた。 U.総括私のインドに対する印象を一言で言えば、「多様性」(diversity)である。 民族、宗教、言語等多くのものが多様性に富んでいる。インド人は、ディベートやプレゼンテーションに強いと言われるが、それはよく理解できる。 なぜなら、インドという国自体が、小さな世界のようなものだからである。 それに対して、日本の特徴は、「均質性」であろう。地域等によって小さな差異はあるが、インドで経験したような強烈な違いを国内で経験することはまずない。 そのため、ゼロ災運動等の小集団活動を有効に行うことは、日本の勤労者にとってはたやすく、インドのような国では困難であるというのが、私の長年の思い込みであった。 しかし、今回の出張によって、私のステレオタイプな考えはたやすく覆された。 今回の出張では、小集団活動に限らず、優れた安全衛生手法は文化の違いを容易に越境できることを身を以って体験することができた。 私に得がたい経験をさせてくれた、多くの方々に感謝する次第である。 |