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ガラス産業における安全衛生のための優先事項

資料出所:HSEホームページ
http://www.hse.gov.uk/pubns/gis1.pdf

(仮訳 国際安全衛生センター)



はじめに

 この情報シートは英国安全衛生庁(HSE)の金属・鉱石部によって作成された情報シートのうちの一つである。その内容は、ガラス(板ガラス、コンテナー、ガラスコンバータ)産業での災害や健康障害の主要な原因と次の点についての手助けとなる情報である。
  • 作業に存在するリスクのアセスメントを行う
  • 対策のための優先事項を識別する
  • 作業行動を同じ産業の他の事業場と比べる
  • 安全衛生の活性化(Revitalising Health and Safety)』を推進するためにこの産業内で行われている行動を理解する
 この情報シートは、災害や疾病の原因と対策の概要を示しているが、より詳細なガイダンスは文末に示した参考文献および関係監督機関からの情報で得ることが出来る。

 それぞれのガラス産業の災害発生率は製造業や全産業(製造、サービス、その他)のそれよりも高く、また、死亡災害や重大災害でも同様である。

ガラス産業の安全衛生の活性化

 『安全衛生の活性化』とは、1974年の安全衛生法の施行から25年後の再活性化を行なおうとするもので、政府が主導して産業の健康と安全の活動を促進することを目的としている。

 安全衛生庁のサポートによって、英国ガラス協会(British Glass)とはめ込みガラス協会(Glass and Glazing Federation)は、このキャンペーンをうけ、ガラス憲章 (ゴールは災害の少ない安全な職場 [ GLASS (Goal : Less Accidents Safe Sites) Charter] )を作成した。

 これを支援するために、企業は憲章に参加し、以下に寄与するように求められている。
  • 2010年までに、ガラス産業での災害と疾病による損失労働日数を30%削減すること(政府目標に基づく)
  • ガラス憲章の計画。
 合意事項の最初の段階で、企業に次のことが要求されている。
  • 会社の健康と安全について責任を持つディレクターを任命する。そして、健康と安全の問題を取締役会の議事事項とする。
  • 産業の安全成績が測定できるように基本的な災害統計を作成する。
  • 三つ以上の改善目標を設定した安全計画を準備する。必要な場合には、安全計画の立て方についてガイダンスを受けられる。
 さらに詳しい情報は英国ガラス協会またははめ込みガラス協会(住所省略)から得られる。


災害の主な原因 (ガラス産業全体の1996〜2000年のデータによる)


 第1表はこの円グラフの内訳である。重大災害(major accident)および休業4日以上の災害(over- 3-day accident)の定義については、HSEのリーフレット「RIDDOR explained」参照(文末の参考文献)。

重要な災害の要素と行動の優先事項

 第2表は、災害の主要な原因(墜落・転落、運搬、筋骨格系障害、および滑り・つまずき)を安全衛生委員会(HSC)のプライオリティプログラムに従ってリストアップしている。対策の重点は防止する手段の概略を示す。主要な改善が、『安全衛生の活性化』目標のために必要である。

 第3表は、ガラス産業内の第2表以外の災害の共通の原因をリストアップしている。


第1表 ガラス産業における重大災害及び休業4日以上の災害

重大災害 休業4日以上の災害
原因 板ガラス コンテナー ガラスコンバータ 板ガラス コンテナー ガラスコンバータ
取り扱い 21% 8% 10% 50% 34% 46%
滑り、つまずき 16% 30% 20% 12% 17% 14%
激突され 24% 12% 21% 14% 15% 13%
機械類 9% 16% 17% 5% 13% 6%
転落 10% 11% 9% 5% 5% 3%
激突 5% 7% 5% 8% 7% 7%
その他 15% 16% 18% 6% 9% 11%

第2表 ガラス産業における災害の主要な原因
原因 主要な要素 対策の重点
墜落・転落
もろい屋根からの墜落


作業床の崩壊と正しくない昇降方法

  • もろい屋根には、屋根への昇降場所に表示を出す
  • 仕事を開始する前に、屋根のもろさを試す。確認されなければ、もろいものとする。明かり取りには特に注意する
  • 作業は有資格者が行なう
  • 工事責任者自身のスタッフを監督指導し、請負業者を監視する 
  • 安全な昇降方法を確保する
  • 作業床を用意するか、作業のための労働者や材料の重量を支えるために、もろい材料の上に覆いを設置する
  • 労働者が2m以上落下するか、傷害を起こし得る距離を落下するかもしれない場所には手すりを設ける 
  • 有資格者により作業床を組み立て、検査し、解体する
  • 移動昇降式の作業床の使用を考慮する
運搬 ガラスを車に積載する
  • 車両やフォークリフトトラックは運転の訓練を受けた者のみが運転する
  • 車両の運転者に実際に使う車で訓練をする、再訓練をする
  • 車両の方向転換を減少するか無くする
  • 人と車のルートを分離する
  • 作業場所付近での車両の使われ方を注視し、ドライバーや歩行者の行動を監視する
  • 歩行者と車両が混在するところでは、見えやすい衣類を着用する
  • ガラス運搬用の専用車を使用する
不安定な積荷や過積載
  • 荷物の取り扱いや車からの荷下ろしは、安全な作業手順による
  • 車に残っているガラスが動かないよう注意を払う
  • 車に残っているガラスは縛っておく
  • 車に積み込む作業の安全のための訓練と意識高揚を行なう
  • 最大積載荷重を車に表示しておく
筋骨格と上腕の傷害 ガラスの持ち上げと積み重ね
  • 処理を機械で行い、マニュアル・ハンドリング(人力作業)の必要性をなくす
  • すべてのマニュアル・ハンドリング作業を評価し、その結果にもとづき対策をとる
  • 有資格者によるリスクアセスメントを実行する 
  • 重い荷物を持ち上げることを避ける。高すぎたり低すぎるところに手をのばさない。また、急に持ち上げたり、ひっぱったりしない、極端な高温・低温や日照りを避ける
  • 持ち上げることが必要な仕事は、連続しないようにローテーションを組む
  • すべての労働者に正しいマニュアル・ハンドリングの方法を訓練する
  • 板ガラスを取り扱う場合には、適切で効果的な保護具を用意し、使用させる
手押し車等でのガラスの運搬
  • 過積載しない
  • 動かす前にガラスの安定を確認する
  • 通路に障害物がないか、表示があるか、床が平らであるかを確認する
  • 手押し車を定期的に点検し、維持する
腕の傷害
  • 仕事が繰り返される場合は定期的に休憩する
  • 動作に変化を与える
  • 必要な場合には、調整可能な作業台を使用する
  • 作業台の設計に当たっては人間工学的要素を考慮する
  • 作業のための適切な姿勢と作業方法を訓練する
切り傷
  • 安全作業の情報を与え、ガラスの取扱い方法を訓練する
  • 充分な個人用保護具を与え使用させる。保護具には、エプロン、手袋、目の保護具、手首の保護と(規定されている場合)つま先保護具、保護帽、および胴体上部の保護具を含まなければならない
  • 作業の安全システムを開発し実施する
整理整頓(つまずきと滑りの防止を含む) つまずき
  • 作業環境の設計、配置を改良し、整理整頓を行なう
  • 適正な照明を実施する
  • 通路を確保し障害物を除去する
  • 効果的な清掃をする、作業時間外に行なうことが望ましい
  • 馬鹿騒ぎをしない
滑り
  • 床の上にものをこぼしたり、漏らしたりしない
  • こぼしたものはすぐにふき取り、床を乾燥させる
  • 階段を点検し、特に滑りの危険を減らし、手すりを配置する
  • 清掃後の床は乾燥させる
ガラスの積み重ね及び保存
  • 倉庫のラックは固定する
  • ラックに積み過ぎない
  • ラックの破損を防止し、定期的に点検する
  • 破損したパレットやラックを使用しない
  • 正しい角度でガラスを積み重ねる。固定式ラックでは3度から5度まで、移動式のラックでも6度を超えないようにする


第3表 ガラス産業におけるプラント、機械類及び危険物質を含む災害の主要な原因
原因 主要な要素 対策の重点
プラントと機械類 個別機械
  • 手による拭き取りの必要を無くしまたは減らすために、自動拭き取りシステムとするか恒久的なコーティングを行なう
  • 安全な作業システムの開発、実行を行なう
  • 操作者に対し安全作業法の適切な訓練を行なう
機械の不安全または不適切な操作、例えばガードの取り外しや不適切なガード
  • 正常な使用の際の危険を避けるための、適切に防護された機械を使用する 
  • よくあけるガードはインターロックにする
  • 機械の設定は、適切にガードするか、スイッチを切り、絶縁し、静止した状態で行う
  • 操作者や監督者に安全な作業方法を訓練する
  • ガードが適切に使用できるかを定期的に点検する
遮断物のとりはずし及び清掃と補修
  • 適切にガードするか、またはマシンを絶縁し静止させた上で、機械や防護物を清掃する
  • 安全な作業システムの開発、実行を行なう
  • 作業開始前にリスクアセスメントを行なう
  • 機械のロックを解除するときは作業許可システム(permit-to-work system)を使用する
  • 欠陥を発見するため定期的に機械を点検する
  • 適切な職員に全ての欠陥を報告し記録する
危険な物質 ラミネートガラスを切断するためのメチレート(methylated spirits:変性アルコール)の使用
  • 可燃性の強い液体は使わない、ヒートガン(熱線銃)などの代替物が使われるべきである
  • リスクを評価し、必要なコントロール手段を実施する
  • 適切で十分な個人用保護具を提供し、使用する


健康障害−行動の優先事項

 健康障害統計に関する報告は少ないため、入手できた情報に基づく行動の優先事項は次のとおりである。
  • 有害な作業、非常に体を使う作業、反復するマニュアル・ハンドリング作業は避ける。避けることが出来ないマニュアル・ハンドリングは、傷害のリスクを評価し、減少させる。
  • 有害物質管理規則(Control of Substances Hazardous to Health Regulations)の適用を受ける有害物質のアセスメントでは、職場内の暴露レベルを考慮すべきである。
  • 局所排気装置等の管理手法が適切に設計されて、稼働され、保全されているか、適切な整理整頓の基準が維持整備されているかを確認する。
  • エアーサンプリングを行い、法定の暴露許容限度と比較する。
  • 必要に応じ、鉛についてのアセスメントを行なう。
  • 鉛の場合、産業医が要求した場合または、かなりな程度に労働者が暴露されていることが予想される場合(労働者が、気中暴露限度の半分の鉛に暴露する可能性があり、または鉛を摂取する確実なリスクがあるとき)には、健康診断調査を行なう。
  • 労働者が皮膚炎を起こすと知られている物質を取り扱っているところでは、他の全ての防止対策を行なうほか、責任者を指名して毎月、皮膚検査を行なう。その責任者は皮膚炎の徴候を認識できるように訓練されていなければならない。
  • 個人用保護具が使用されているところでは、目的に応じた充分な機能を備えたものであるか、適切に着用されているか、適切な間隔で点検および交換されているかを確認する。
  • 労働者は適切に訓練され、起こりうる健康リスク及びそれを最小にするために必要な予防法について教育されていることを確認する。
  • いままでに、業務上の疾病が発症したことが知られている場合、暴露防止の有効な手段として個人用保護具に頼っている場合、業界における同様な作業において健康障害が発症した証拠がある場合において以下が当てはまるときには、有資格者による健康調査を行なう。
    • 関連する作業が、特定の場合に健康を損なうことが知られているとき
    • 疾病や健康状態を検知する妥当な方法があるとき
    • 特定の状態があれば健康を損なうであろう合理的な可能性があるとき
  • 正しい方式の健康調査を導入する。この健康調査を実施する過程では、医師を直接関与させることは必ずしも必要ではない。医師の果たすべき役割は医学的な面での指導監督及び助言を行なうことである。職業性疾病の疑いがあれば、労働衛生専門家の助言を求めることである。
  • 健康調査計画の推進に際しては、労働者が積極的に役割を分担することを奨励する。
  • 騒音を減少させるために、合理的で実行可能な方法が取られるべきである。
  • 聴力保護具が必要なところでは、適切なものが選択され、使用および保全されていることを確認する。

参考文献

General access scaffolds and ladders Construction Information Sheet CIS49 HSE Books 1997 注1)

Getting to grips with manual handling: A short guide for employers INDG143(rev1) HSE Books 2000 (single copy free or priced packs of 15 ISBN 0 7176 1754 8)

Introducing the Noise at Work Regulations INDG75(rev) HSE Books 1999 (single copy free or priced packs of 15 ISBN 0 7176 0961 8)

Managing vehicle safety at the workplace: A short guide for employers Leaflet INDG199 HSE Books 1999 (single copy free or priced packs of 10 ISBN 0 7176 0982 0)

Preventing slips, trips and falls at work Leaflet INDG225 HSE Books 1996 (single copy free or priced packs of 15 ISBN 0 7176 1183 3)

RIDDOR explained: Reporting of lnjuries, Diseases and Dangerous Occurrences Regulations HSE31 (rev1) HSE Books 1999 (single copy free or priced packs of 10 ISBN 0 7176 2441 2)

Working on roofs INDG284 HSE Books 1999 (single copy free)

詳細情報

HSE priced and free publications are available by mail order from HSE Books, PO Box 1999, Sudbury, Suffolk CO10 2WA Tel: 01787 881165 Fax: 01787 31 3995 Website: www.hsebooks.co.uk (HSE priced publications are also available from bookshops and free leaflets can be downloaded from HSE's website: www.hse.gov.uk.)

For information about health and safety ring HSE's Infoline Tel: 08701 545500 Fax: 02920 859260 e-mail: hseinformationservices@natbrit.com or write to HSE Information Services, Caerphilly Business Park, Caerphilly CF83 3GG.

This leaflet contains notes on good practice which are not compulsory but which you may find helpful in considering what you need to do.



注1)General access scaffolds and ladders(足場、はしごの安全な使用方法)の仮訳はこちら