[本文へ]
アメリカの労働安全衛生庁(OSHA)がこのほど発表したエルゴノミクスに関する計画(ergonomics plan)は、包括的かつ実用的な施策によるエルゴノミクス傷害の大巾な減少をめざしている。「計画を実施すれば、すぐにでも傷害の発生件数は減るでしょう」と労働安全衛生庁行政官ジョン・L・ヘンショーは語る。この計画は産業別ガイドライン、厳しい監督、きめ細かな指導援助、調査の実施で構成され、ヒスパニック系などの移民労働者の保護に力を入れているのが特徴である。 「筋骨格系障害は重大な傷害です。我々は職業性傷害による痛みや苦しみを和らげることに専心しています。今回の計画は非常に包括的で、即効性が期待できる最善の施策をとっています。」とヘンショーは語っている。 「一刻も早くエルゴノミクス傷害の発生件数を減らすことで労働者たちを支援していきたい。それが我々のめざすところです。」と労働長官エレイン・L・チャオは述べている。「すでに却下された旧計画と比べると、この新しい計画は画期的な進歩をとげています。エルゴノミクス傷害が発生する前に、それを予防することによって現在危険にさらされているより多数の労働者を守ろうとしているからです。」 今回の計画を作成するにあたり、組織労働者、労働者、医療専門家、経営者など幅広い利害関係者から意見が寄せられた。労働省は昨年一年間にわたって三つの大きなテーマに即した公開討論会をアメリカ各地で開いてきた。そして数多くの利害関係者と相次いで面談し、数百にもおよぶ意見書を集め、百人にのぼる人々の証言を求めてきた。労働安全衛生庁はそれらの意見や助言を慎重に分析評価した上で、さまざまな代案について模索してきた。 ガイドライン 「労働安全衛生庁はさまざまな利害関係者と調整を重ねたうえで、予防と柔軟性と実効性を確実にする産業別および職業別ガイドラインの設置を目指していきます。」とヘンショーは語っている。「われわれはこの目標にむかって邁進し、年内にガイドラインを作成したいと考えています。」 最も迅速かつ如実に効果が現れる産業および職業から着手するというのがヘンショーの意向である。そこで、労働安全衛生庁はエルゴノミクス傷害と密接な関係にある産業や職業のなかから、すでに有効な戦略が見つかっているものに絞り、そこからとりかかっていく心づもりである。「現実に即した解決法は実体験からうまれる」という言葉をヘンショーは心に留めている。 こうした方法をとれば、事業者や労働者が自分たちの職場に合わせて勧告や優良規範を微調整するだけの融通性が残せるとヘンショーは確信している。「あらゆる場所に適合する方法などないことはわかっています。しかし、柔軟に対処することで傷害は減らせます。」 厳しい監督の実施 労働省(DOL)は、法規制に基づく監督の強化を含む、エルゴノミクスに関する実行計画を作成した。同省は重大なエルゴノミクス傷害が発生する業界に特に力を入れ、計画の実行をめざしていく意向である。労働安全衛生庁(OSHA)及び労働省(DOL)の代理人は、労働安全衛生法の一般義務原則(General Duty Clause)での経験を生かし、実行計画を策定していく。 労働安全衛生庁は今回はじめて、エルゴノミクスに関する規則違反の指摘を目標に実施戦略をたてたことになる。そして、「労働安全衛生庁はエルゴノミクスに造詣の深い特別チームを編成し、労働省の代理人及び選ばれた専門家たちと緊密に協力しながら、違反者を厳重に取り締まっていきます。」とヘンショーは語っている。 きめ細かな指導援助 労働安全衛生庁のプランは、職場のエルゴノミクスに取り組む労働者や企業側(とくに中小企業)を支援していくものである。労働安全衛生庁は企業側に、有効なエルゴノミクスプログラムを作成させるために、産業別、職業別に策定されたガイドラインにそって助言を与えたり、教育を行っていく予定である。 また、労働安全衛生庁はエルゴノミクスに関する豊富な情報をウェブサイトにのせ、企業のエルゴノミクスに関する資料や研修の開発を支援する。そして、全米各地にある12カ所の教育センターで、エルゴノミクス研修が利用できるようにする。新計画は、エルゴノミクス傷害率の高い業界で多くの人が働くヒスパニック系などの移民労働者の保護に特に力を注いでいる。 OSHAは又、エルゴノミクスについて模範的又は新規なアプローチをもつ作業場の業績にハイライトをあてた新しい表彰プログラムを開発することを計画している。
ページの先頭へ