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最近の各国の労働安全衛生プログラム - EU

(資料出所:ILO発行「Promotional Framework for Occupational Safety and Health」
International Labour Conference, 93rd Session, 2005, Report IV (1), Annex I, pages33-48)
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(仮訳 国際安全衛生センター)
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 EUは2002年、社会政策アジェンダの一環として、安全衛生基準の向上を目指した共同体戦略(2002〜2006年)を定めた。

 より多くの良質な雇用の創出、これは2000年にEUがみずから定めた目標であった。言うまでもなく、安全と衛生は労働の質を考えるうえで不可欠の要素である。EU域内の労働災害件数は1994年から1998年までの間に10%減少したが、絶対数は高い水準にとどまっており、同期間中の死亡者は5,000人を超え、休業3日以上の災害は480万件に達している。さらに、1999年以来、一部の加盟国および一部の部門において災害の拡大傾向が再び顕著になっている。同年には、労働災害や健康上の問題に起因する労働損失日数は5億日にのぼった。EUでは、業務上の傷害や仕事で健康を損なったことが原因で転職や配置替え、若しくは労働時間の短縮を余儀なくされた人の数は約35万人にのぼっている。

 新たな共同体戦略には、次のような3つの新しい特徴がある。

この戦略は労働現場における変化と新たなリスクの出現、とりわけ社会心理的側面を考慮しつつ、労働福祉に対するグローバルなアプローチを採用している。これは、労働の質の向上、安全で健康的な労働環境を不可欠な要素の一つとみなしている。

この戦略はリスク予防文化の強化と徹底、さまざまな政治的手段---立法措置、社会的対話、漸進的施策と最善の慣行(ベスト・プラクティス)、企業の社会的責任と経済的インセンティブ---の連携、および、労働者を含めて安全衛生に携わるあらゆる関係者の間でのパートナーシップの構築を基盤に据えている。

この戦略は意欲的な社会政策が競争の公平性を期すための一つの要因であることを指摘する一方で、これと表裏一体の関係にある事実として、「ポリシーを持たないこと」がコストを生み、このコストが経済と社会に重くのしかかることを強調している。

 戦略ではこれを受け、労働現場における変化をはじめとして、共同体戦略の実現に必要な各種政策と行動計画の策定にあたって考慮すべき種々の要因について検討を加えている。労働現場における変化としては、欧州が知識ベースの経済に移行していること、社会の女性化が進行していること、労働人口が高齢化していること、雇用形態が変化しており、特に一時雇用が急速に伸びていること、ストレスや不安といった疾病の出現など、リスクの性質が変化していることが挙げられている。

 最後に、労働安全衛生に関する共同体政策は、ILOやWHOなどの各種国際組織が進めている作業と連携させなければならないとされている。