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NSC発行「Safety + Health」2002年9月号

ニュース



労働省、議会、小企業の法令遵守支援へ動く

 ワシントン − 政府行政府および立法府は、小企業の労働安全衛生庁(OSHA)その他の連邦規制機関への対応の支援に向け、動き出した。
 エレイン・チャオ労働長官は、先日、複数の全米小企業関連行事で、共和党政権は、労働省内に「新しい責任文化」を打ちたてようとしており、「法令を余すところなく理解する」よう、小規模事業者を支援しようとしていると述べた。
 チャオ労働長官は、ワシントン市の全米自営業連合などの小企業団体は、競争相手ではなく、盟友という見方をされると述べた。長官は、労働省は、小企業を助成し、法令遵守に関し、小企業をできる限り支援していくため、遵法支援部長を新設しようとしていると付け加えた。
 OSHA自身、そのような支援を求める小規模事業者のために、「一ヶ所ですべて間に合う」事務所を創設している。また、OSHAは、とくにエルゴノミクス関連をはじめとする安全情報を小企業に提供するため、当局と小企業庁擁護室との協同活動に向けた、覚書を作成していると、長官は述べた。  
 一方、下院は、先日、小企業庁の規制機関に対する影響力を強化する法案を、発声投票で可決した。この法案は、小企業庁の予算を増やし、大統領の予算書の一項目を与え、規制・経済調査担当の副顧問2席を新設する。法案は、検討のため、上院へ送られた。


裁判所、ワシントン州エルゴ規則を支持

 ワシントン州タムウォーター − ワシントン州の新しいエルゴノミクス規則は、筋骨格系障害の予防をめざしたものだが、これに反対する企業連合の訴訟を、裁判所はこの度棄却、同規則を支持した。
 ワシントン州企業連合は、同州の労働産業省による同規則の制定は、権限を越えたものであり、恣意的かつ気まぐれな行為であり、正規の規則作成要件に従ったものではないと主張していた。
 サーストン郡上位裁判所のポーラ・ケイシー判事は、この主張を退けた。
 「これは、毎年5万件以上ものエルゴノミクス関連負傷に悩まされるワシントン州の労働者にとって、朗報である」と、労働産業省のゲイリー・モア部長は述べた。
 モア部長は、この判決で、州政府が2000年5月にこれらの法規を採択したのは、正当な行為であることが、確認されたと述べた。新しい規則は、7月1日に発効したが、施行は、2004年7月1日までに、段階的に導入される。


事実チェック

労働者の非意図的負傷による死亡件数と死亡率(アメリカ、1992〜2000年)

出所:全米安全評議会(NSC)、「Injury Facts」、2001年


下院小委員会、暴露限界に関する証言を聴聞

 ワシントン − 下院労働力保護小委員会は、先日、許容暴露限界の更新に向け、コンセンサスをどう築いていくか、その方法について、公聴会を設けた。
 公聴会は、労働安全衛生庁(OSHA)の現行の規則作成手続きの長所、短所を評価しようと設けられた、一連の公聴会の第3回である。現行の暴露限界は、1971年に採択され、その後、1980年代にOSHAが更新を試みたものの、連邦控訴院はこれを退けたため、今日に至るまで、未更新である。
 イリノイ州デスプレインズ市のアメリカ安全技師学会は、公聴会に関するコメントを小委員会のチャールズ・ノーウッド委員長(共和党、ジョージア州)に送付、暴露限界の更新に向け、コンセンサス醸成プロセスを確立するよう、要請した。「現行の許容暴露限界の一部については、その更新に向けて、また、新たな化学物質の許容暴露限界の設定に向けて、コンセンサスを打ち立てるのに充分信用に足る科学的な情報がある」と、同学会は書き送った。
 ワシントン市のアメリカ鉄鋼研究所を代表して証言したリチャード・シュウォーツ氏は、新しい暴露限界は、いずれも「各々のメリットを法的に弁護できる」ものでなくてはならないと強調した。また、ワシントン市の米国商工会議所を代表して証言したエドウィン・フォルク・ジュニア氏は、新しい暴露限界は、「技術的かつ経済的に可能な」ものでなければならないと述べた。


ホワイトハウス、市販の炭疽菌実地試験はあてにならないと宣言

 ワシントン − ホワイトハウスは、先日、営利的な炭疽菌実地試験は、信用できるものではないと宣言、各当局にはこれを利用しないよう勧告した。
 ホワイトハウス科学技術政策局は、250もの連邦政府機関、地方行政官、警察、消防局に対し、回覧を送付した。これは、炭疽菌と疑われる物質については、FBI(連邦捜査局)試験所に送付するよう、また、営利的な炭疽菌実地試験は、その購入、利用、依存を止めるよう、各当局に求めたものである。
 ホワイトハウスによると、FBI試験所は、6時間以内に、炭疽菌かどうかを示す暫定数値を出さねばならない。また、連邦政府機関には、各々、郵便室で行っている日常の炭疽菌試験を止めるよう、勧告している。大半の郵便物は、現在、放射線照射されているからである。
 ホワイトハウスの調査によると、営利的な炭疽菌実地試験は、いずれも、わずかな炭疽菌を見落とすこともあれば、炭疽菌がないにもかかわらず、誤って、菌が存在すると判定する場合もある。


2002年度安全功労賞(DSSA)受賞者

 イリノイ州アイタスカ市 − 全米安全評議会(NSC)は、サンディエゴ市での第90回年次会議&展示会で、以下の安全衛生専門家に対し、安全功労賞(Distinguished Service to Safety Award:DSSA)を授与する。安全功労賞は、安全の専門分野で顕著な実績を挙げた個人に対し、NSCが授与する最高の栄誉である。受賞者は、同業者により選ばれた。

農業部門
マリー・マドセン氏、アイオワ州アイオワ市、アイオワ大学公衆衛生労働環境衛生学部プログラム・コンサルタント

商業・産業
サルバトア・カチャバル氏、イリノイ州マレンゴ市、ヴァルスパー梶Aエンジニアリング・プラスチック・ソルーションズ、環境マネジャー、公認有害物質マネジャー(CHMM)、公認環境監査人(CPEA)

大学安全部門
レイ・リチャーズ氏、カナダ、アルバータ州エドモントン市、アルバータ大学環境衛生安全室室長代行

支部関係
ゲイリー・W・オーマン氏、オハイオ州デイトン市、ダンラヴィ、マハン&ファーリ法律事務所、弁護士

建設部門
リチャード・G・サンダーズ氏、テネシー州ヘンダーソンビル市、クワンタ・サービシズ、地域安全マネジャー

労働部門
マニュエル・A・メデロス氏、カリフォルニア州ウォルナット・クリーク市、IBEW地方組合1245、ビジネス代表

公益事業部門
アーサー・J・フェティグ氏、ノースカロライナ州ヒルズボロー市、グロウス・アンリミティッド社社長

チャールズ・J・ケリー公認公益事業管理者(CUSA)、ワシントン市エジソン電気研究所、産業人的資源問題部長

ジェームズ・C・マキーオウン公認公益事業管理者(CUSA)、カリフォルニア州タスティン市、SBCコーポレーション、安全操業、地域マネジャー

ビリー・F・カーバー技術士(PE)公認安全専門家(CSP)公認公益事業管理者(CUSA)、アトランタ市、サザン・カンパニー・サービシズ、安全衛生マネジャー

若年者部門
ロジャー・トーモレン氏、インディアナ州ラファイエット市、パドゥー大学、公開講座スペジャリスト


労働省、障害者向け助成金を発表

 ワシントン − 労働省は、先日、「地域社会雇用助成金により、自由、機会、真の選択をめざすイニシアチブ(Working for Freedom, Opportunity and Real Choice through Community Employment Grant Initiative: WorkFORCE)」のため、6百万ドルの助成金を用意すると発表した。イニシアチブは、WorkFORCE調整助成金とWorkFORCE行動助成金の2つからなる。
 調整助成金プログラムでは、労働省は、平均10万ドルから15万ドルまでの助成金を、総額で400万ドル、交付する。助成金は、障害者が、所属する地域社会で生活し、働くことができるよう、地域社会内で、競争原理に基づき、かつニーズに合った雇用機会を調整し、戦略を練り、創出することを支援する。
 助成金の応募適格者は、州政府機関、非営利団体、宗教関係団体、地域社会団体、公私法人の共同企業体、インディアン、アメリカ先住民の部族民法人である。
 行動助成金プログラムでは、労働省は、障害者のため、地域社会での雇用機会の提供、実現を拡大する非営利団体に対し、40万ドルから75万ドルを交付する。
 これらの助成金は、障害者の就職者数、再就職者数、就労者数の拡大をめざす大統領の新自由イニシアチブを支える。助成金の管理には、障害者雇用政策局があたる。
 関連情報は、www.dol.gov/odepで閲覧できる。


スーパーファンド、基金不足

 ワシントン − 先日公表された報告書によると、環境保護局(EPA)地域事務所を通じて要求している清掃費用の全額を支給されない州は、18州にのぼる。
 2002年には、全米でもっとも有毒な用地の清掃基金として設けられたスーパーファンドには、総額4億5千万ドルの予算要求があったが、EPAが割り当てたのは、わずか2億2千4百万ドルであった。
 スーパーファンド用地向けに要求した全額を受給できない州は、ニュージャージー、フロリダ、テキサス、ルイジアナ、モンタナ、ネブラスカ、オクラホマ、コロラド、イリノイ、インディアナ、マサチューセッツ、ミシガン、ニューハンプシャー、ニューヨーク、ペンシルバニア、テネシー、バーモント、バージニアの18州。米国領バージン諸島も、基金不足の影響を受けた。
 今年のスーパーファンド予算の縮小は、モンタナ州の古い炭鉱や、フロリダ州の化学工場、ニュージャージー州で、過去にオレンジ剤(強力枯葉剤)を製造したこともある工場など、全米でもっとも汚染された用地も対象となっている。報告書によると、スーパーファンド予算の縮小で、多くの州は、清掃活動に手間取り、長期間を要することとなり、清掃活動の開始を阻むことにもなりうる。
 1980〜1995年の間、スーパーファンドは、化学、石油会社に課せられた特別税で維持されていたが、議会は、その法律を更新しなかった。その結果、過去7年間で、スーパーファンドは、36億ドルから2003年度末には推計2,800万ドルに激減した。
 ブッシュ政権は、特別税の復活に反対しており、議会は、この問題を取り上げてはいない。しかし、新しい「汚染者負担」法案が、今年はじめ、上院に提出された。(本誌8月号、11頁、「ニュース」欄参照。)


労働者の喫煙暴露、低下

 アトランタ − アトランタ市を拠点とする疾病対策予防センターの喫煙・健康室の調査員らが実施した調査によると、近年、職場での禁煙が拡大したため、非喫煙者の職場における副流煙暴露は、著しく減少した。
 労働環境医学ジャーナル(the Journal of Occupational and Environmental Medicine)(Vol.44, No.6)に発表されたこの調査は、1991〜1994年間に約5千人の労働者を網羅、自宅に喫煙者がいないとする非喫煙労働者の55.3%に、ニコチンの主要な代謝産物である血清コチニン(serum cotinine)を検出した。この調査は、連邦政府の「第3回全米健康・栄養調査概観」の第2段階である。
 1988〜1991年間に同様に行われた第1段階の調査では、調査対象の労働者の71.8%に、血清コチニンが検出された。調査によると、ホワイトカラーより、ブルーカラー、サービス産業労働者のほうが、血清コチニンのレベルが高かった。
 双方の調査結果は、直ちに比較できるものではないものの、暴露の減少は、1988〜1991年の調査結果と、現行の全米健康・栄養調査概観で、非喫煙者の中度の血清コチニンが75%減少した1999年度のデータとの間にみられる、長期にわたる減少傾向と一致するものであると、調査員らは語った。
 また、1988〜1991年度と、1991〜1994年度の調査期間では、職場でタバコのにおいがすると答えた労働者は、39.1%から24.8%に減少した。
 職場の禁煙は、1986年には全米労働力人口のわずか3%が享受するにすぎなかったが、1992〜1993年にはおよそ46%、1999年には、70%近くになったと、調査は指摘する。
 昨年12月には、労働省は、地方レベルや職場の多くで、禁煙が浸透していることを挙げて、OSHAによる職場の喫煙規制をめざした規則作成を廃棄した。


対米テロ後の保険の大災害リスク

 カリフォニア州ニューアーク − 昨年9月11日の世界貿易センターの惨事で、人為災害リスクに対する損害保険業界の関心が高まっているが、大地震のような自然災害も、破滅的なレベルの損害請求を生起する。リスク・マネジメント・ソル―ションズの最近の報告書は、大地震による労働者災害補償保険の損失は、世界貿易センター惨事で経験した損失を上回る可能性を指摘する。
 報告書は、1906年のサンフランシスコ大地震が、今日、再度発生すると、7.万8千人が負傷、5千人が死亡し、労働者災害補償保険に70億ドルを超える損失をもたらすとしている。これに対し、世界貿易センターのテロ惨事による労働者災害補償保険の損失は、最新の見積もりでは50億ドルである。
 報告書はまた、リスクを細分化する際に有益なデータの種類を強調する。例えば、建物の構造特性や、特定地域における地質学的要因は、地震発生時の建物倒壊や死傷災害の起こる度合いに大きく影響を及ぼす。
 リスク・マネジメント・ソル―ションズのピーター・アーリック法人リスク担当常務取締役は、労働者災害補償保険の引き受け会社の間で、大災害の危険に対する関心が高まっていると繰り返した。
 「1994年以来、人的損害と労働者災害補償保険リスクを分析してきたが、今日の精査水準は、主として、昨年9月の大惨事後の再保険費用の増加により、今までになく最高である」とアーリック氏。
 「世界貿易センターの大惨事後は、企業は、最悪のシナリオが発生しうる、また発生するという事実に、より敏感になっている」。
 報告書は、www.rms.com/Publications/WorkersComp_1906_Scenario.pdfで閲覧できる。


屋内環境基準団体、カビ点検基準を発表

 ミネアポリス − 新しく結成された屋内環境基準団体は、屋内空気環境専門家に対し、居住用建物内のカビ汚染の有無の確認を支援する目的で、環境基準の初版を発表した。
 基準書は、屋内空気環境コンサルタント産業、同業者組合、保険、不動産、法曹界からの代表者間の合意により、開発された。基準書には、カビ汚染に関する屋内環境の試料採集や略式評価に関する、最低基準が含まれる。
 基準書は、確認されたカビ汚染の改善方法については、触れていない。その代わり、産業衛生士または環境コンサルタントの有資格者による再調査を勧告している。
 基準書は、屋内環境基準団体より、電話800-406-0256で入手できる。一部25ドル。また、同団体のウェブサイト、www.iestandards.orgで入手可。


NSC、応急手当訓練プログラムを無料で提供

 イリノイ州アイタスカ − 9月11日の対米テロ1周年を記念して、全米安全評議会(NSC)は、人々が、緊急時により良く備えられるよう、機会を提供している。NSCは、応急手当&CPR(心肺蘇生法)の基本についての訓練プログラムを、9月11〜18日の週に、オンラインで、無料提供する。
 「過去一年間、緊急事態への備えについては、強い関心が寄せられた」と、アラン・C・マクミランNSC会長は述べた。「緊急事態の最初の数分間の行動が、生死を分かつ。しかし、何をすべきかということは、自然とわかるものではない。効果的な訓練こそ、適切な行動を自然な対応としてとらせる、唯一の方法である。9月11日の教訓の一つは、われわれは、緊急事態に備えるべきであるということである。応急手当&心肺蘇生法訓練の受講は、大人、子供を問わず、備えに向けた良い出発点であると、全米安全評議会は信ずる」。
 対話式「応急手当&心肺蘇生法の基本」訓練コースは、明快に提示された学習要点、高等な図表、対話式アニメーション、臨場感のある音響効果、短い映像、多数の演習を採用している。受講者は、実際の緊急事態の光景や音響を経験しながら、総合的な知識を取得できる。同コースは、標準2時間で完了。
 同コースを受講するには、NSCのウェブサイト、www.nsc.orgにログオンされたい。