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32. ボイラー・圧力容器の安全



 ボイラー・圧力容器の安全確保については、日本における安全の草分けとも言えるほど古い歴史を有しており、製造段階から使用段階に至るまでの国の関与等を含めて詳細な規定がなされています。(4 Ordinaces on Machine, Etc.参照)
 なお、近年では、国際情勢等を踏まえて、規制の一部が緩和されてきています。(労働安全衛生法、ボイラー及び圧力容器安全規則)
1. 製造の許可、国の検査等
a. 製造の許可 (法第37条、規則第3,49条)
 ボイラー及び圧力容器については、都道府県労働局長の製造の許可が必要です。
(a) 対象
ボイラー(小形ボイラー、船舶安全法及び電気事業法の適用を受けるものを除く)
(注)小形ボイラー(例)
 ゲージ圧力が0.1 メガパスカル以下で使用する蒸気ボイラーで、伝熱面積が1 平方メートル以下のもの又は胴の内径が300mm 以下で、かつ、その長さが600mm 以下のもの
 ゲージ圧力が0.1 メガパスカル以下の温水ボイラーで、伝熱面積が8 平方メートル以下のもの
 ゲージ圧力が1 メガパスカル以下で使用する貫流ボイラーで、伝熱面積が10平方メートル以下のもの
第一種圧力容器(小形圧力容器、船舶安全法及び電気事業法、高圧ガス保安法、ガス事業法、液化ガス法の適用を受けるものを除く)
(注)小形圧力容器
 ゲージ圧力が0.1 メガパスカル以下で使用する容器で、内容積が0.2 立方メートル以下のもの又は胴の内径が500mm 以下で、かつ、その長さが1,000mm 以下のもの
 その使用する最高のゲージ圧力をメガパスカルで表した数値と内容積を立方メートルで表した数値との積が0.02以下の容器
(b)  許可の単位(型式)
 製造許可の単位となるボイラー、圧力容器の型式は、次のようになっています。
ボイラー
 水管ボイラー
 丸ボイラー(立てボイラー、炉筒ボイラー、煙管ボイラー、機関車型ボイラー)
 温水ボイラー
 鋳鉄製ボイラー
圧力容器
 円筒形第1 種圧力容器
 角形第一種圧力容器
 ジャケット付き第一種圧力容器
 多管式第一種圧力容器(U字管式又はコイル式を含む)
 うず巻き形第一種圧力容器
(c)  許可申請時に必要な書面
 製造の許可申請を行うときは、次の書類が必要です。
 強度計算書
 製造及び検査のための設備の種類、能力及び数
 工作責任者の経歴の概要
 工作者の資格及び数
 溶接によって製造するときは、溶接施行法試験結果
(d)  許可基準の概要(1972年告示第75号)
 製造の許可基準は、次のようになっています。
 構造規格に適合していること
 製造又は検査のための設備、工作者、工作責任者が一定の要件を満たしていること
b.  製造時等の検査(法第38条、規則第5 〜9,41〜43,51 〜55,76 〜78条)
(a)  構造検査・溶接検査(都道府県労働局長等)
 ボイラー・第一種圧力容器を製造した者は、都道府県労働局長又は厚生労働大 臣の指定した製造時等検査代行機関の構造検査を受けることが必要です。(廃熱ボイラーについては除外される場合がある。)
 溶接により製造したものについては、構造検査に先立って都道府県労働局長又は製造時等検査代行機関の溶接検査を受けることが必要です。
 なお、溶接は、特別ボイラー溶接士(溶接部が25mm以下の場合、又は管台、フランジ等の溶接の場合は普通ボイラー溶接士でもよい)が行うことが必要です。
 構造検査に合格したものについては、刻印を押し、明細書に構造検査合格印を押し、検査証が交付されます。
(b)  輸入時検査・使用検査(都道府県労働局長等)
 外国で製造されたものを輸入した者も原則として上記と同様に構造検査が必要です。
 製造されてから1 年以上(規制緩和により保管状況が良好なものについては、2 年)設置されなかったもの、使用を廃止したものを再び設置、又は使用する者は、都道府県労働局長又は製造時等検査代行機関の再使用検査を受けることが必要です。
 使用検査に合格したものについては、刻印を押し、明細書に合格印を押し、検査証が交付されます。
c.  設置・使用時の検査
(a)  設置届、落成検査(法第38,88 条、規則第10,11,14,56,59,90 条の2,91条)
 ボイラー・第一種圧力容器を設置しようとする事業者は、設置届を労働基準監督署長に提出し、落成検査を受けることが必要です。
 移動式ボイラー、小型ボイラーを設置しようとする者は、設置報告書を労働基準監督署長に提出することが必要です。
(b)  性能検査(法第41条規則第37〜40,72 〜75条)
 ボイラー、第一種圧力容器の検査証の有効期間は、1 年であり、更新を受けようする者は労働基準監督署長又は性能検査代行機関の性能検査を受け、合格することが必要です。
 有効期間は、検査の結果により、1 年未満又は1 年を超え2 年以内となります。
(c)  変更検査(規則第42,43 ,77,78条)
 ボイラーについて、胴、ドーム、炉筒、火室、鏡板、天井板、管板、管寄せ、ステー、付属設備、燃焼装置、据付基礎等を変更しようとするときには、労働基準監督署長の変更検査が必要です。(労働基準監督署長が必要ないと認めたときは除外)
 第一種圧力容器の胴、鏡板、底板、管板、ふた板、ステーを変更しようとするときには、労働基準監督署長の変更検査が必要です。(労働基準監督署長が必要ないと認めたときは除外)
 検査に合格したものについては、変更した部分が検査証に裏書きされます。
(d)  使用再開検査(規則第45〜47,80 〜82条)
 ボイラー、第一種圧力容器の使用を休止する場合には、労働基準監督署長に報告する必要があります。
 使用を休止したボイラー、第一種圧力容器の使用を再開する場合には、労働基準監督署長の使用再開検査を受ける必要があります。
d.  検定(法第44条、規則第84条)

 第二種圧力容器を製造し又は輸入した者は、厚生労働大臣、都道府県労働局長又は個別検定機関の検定を受ける必要があります。
2. 使用の制限(法第37,40,42条、則第26,64,90条の2 )


 検査証を受けていないボイラー等は、使用できません。
 ボイラー等を譲渡し、又は貸与するときは、検査証の添付が必要です。
 検定を受けていない第二種圧力容器、小型ボイラー、小型圧力容器は、譲渡し、貸与し、設置することはできません。
 構造規格を満たしていないボイラー及び第一種圧力容器は、使用できません。
3. 就業制限(法第61条、令第20条、規則第16,23,24,25 条)


 ボイラーを据え付けるときには、ボイラー据付作業主任者を選任し、その者の指揮のもとで作業を行うことが必要です。


 ボイラーの取扱の業務は、特級、一級、二級ボイラー技士免許を有する者以外はできません。(小型ボイラーを除く)
 ただし、次のものについては、ボイラー取扱技能講習を修了した者が行うことができます。

 胴の内径が750mm 以下で、かつ、その長さが1,300mm 以下の蒸気ボイラー
 伝熱面積が3 平方メートル以下の蒸気ボイラー
 伝熱面積が14平方メートル以下の温水ボイラー
 伝熱面積が30平方メートル以下の貫流ボイラー


 ボイラーの伝熱面積の大きさ等に応じて、ボイラー技士の中からボイラー取扱主任者を選任することが必要です。(例:伝熱面積の合計が500 平方メートルの場合には、特級ボイラー技士)


 小型ボイラーの取扱の業務に労働者を就かせるときには、あらかじめ、特別教育を実施することが必要です。
4. 定期自主検査等(法第45条、則第32,33,67,84,94条)


 ボイラー、第一種圧力容器については、1 月以内ごとに1 回、事業者が定期に自主検査を行うことが必要です。


 第二種圧力容器、小型ボイラー、小型圧力容器については、1 年以内ごとに1回、事業者が定期に自主検査を行うことが必要である。


 ボイラーの点火は、ダンパーの点検、燃焼室及び煙道の内部の換気を行った後に行うことが必要です

(次回は、クレーン等の安全を予定)