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中央労働災害防止協会(中災防)
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調査・研究

調査研究概要

介護労働者の安全と健康確保対策に関する調査研究報告書

Ⅰ.本調査研究の目的・手法等

介護労働者数は、平成14年から平成19年までの5年間に81万人から114万人に1.4倍に増加している一方、介護施設を含む社会福祉施設の事業*における労働災害(死亡及び休業4日以上の傷病)は、同じ5年間に、2,411件から4,338件に1.8倍に増加していることから、標記のテーマを取り上げることとし、介護事業者に対し、アンケート及びヒアリングを行ったものである。

※「社会福祉施設の事業」には、老人福祉施設のほかに、児童福祉施設、身体・知的障害者の援護施設などが含まれる。

このうち、アンケート調査は、WAM−NETに登録している全国の老人福祉・介護事業施設及び訪問介護事業所から、訪問系介護(訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護等)を行っている1,000事業者及び施設介護(介護老人福祉施設、介護老人保健施設、老人ホーム、デイサービス、ショートステイ等)を行っている 2,000事業者を無作為に抽出し、郵送で調査票を送り、685事業場(訪問系介護206、施設介護479、回収率22.8%)から回答を得た。

ヒアリング調査は、アンケート回答事業者等から7事業場を選定し、訪問して安全衛生担当部門のスタッフ等に直接質疑応答を行った。

また、調査の実施に当たっては、是枝祥子氏(大妻女子大学教授)を委員長とした委員会を設置、開催し、意見をいただきながら、検討を行った。

Ⅱ.本調査研究の目的・手法等

  1. 労働災害発生件数
    2007(平成19)年における1日以上の休業を伴う労働災害発生件数は、訪問系介護では0件が81.6%、1〜3件が10.2%、4件以上が2.5%であった。 施設介護では0件が75.2%、1〜3件が17.0%、4件以上が1.8%であった。
    ヒアリングで労働災害の発生状況を尋ねたところ、転倒及び腰痛が、休業するほどでないものも含めて多く発生しており、すり傷・打撲、通勤や訪問・帰社時の自転車、自動車による事故なども少なからずあるとのことであった。
    アンケートで、労働災害の発生件数と安全衛生活動状況の相関を見ると、訪問系介護において労働災害の発生(傾向)に応じた防止対策をとっている事業者のほうが、労働災害が少ない傾向があった。
  2. 安全衛生管理体制に関すること
    アンケートに回答のあった685事業者のうち、50人以上の労働者を有する事業者322(訪問系介護65、施設介護257)に対して、衛生管理者等の選任の有無を尋ねたところ、訪問系介護で78.5%、施設介護で77.0%が選任を行っていると回答した。
    衛生管理者等の安全衛生スタッフの職務を定めている事業者は訪問系介護で61.5%、施設介護で 61.9%であった。

    アンケートに回答のあったうち、50人以上の労働者を有する事業者で、「安全衛生委員会を設け、腰痛や感染症予防、交通安全について議題にしている」と回答したのは、 訪問系介護で66.2%、施設介護で67.7%であった。
    また、50人以上の労働者を有する事業者で、産業医等の選任及び活用をしている事業者は、訪問系介護で80.0%、施設介護で78.2%であった。
    ヒアリングでは、本社において、各事業分野・拠点の担当者を集めて衛生委員会を毎月1回開催し、毎回産業医の参加・助言を得て、介護労働者の安全衛生に関する活動に取り組んでいる例があった。一方、法定の衛生管理者がおらず、衛生委員会を開催していない例や選任されている産業医がほとんど事業場に来ていない例があった。
    このように、安全衛生管理体制は、必ずしも十分とはいえない事業者が少なからずあることがわかった。
  3. 介護労働者の安全衛生のための活動に関すること
    アンケートで、介護労働者の安全衛生に関する実活動について尋ねたところ、最も実施率が高かったのは5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の励行で、訪問系介護の94.7%、施設介護の93.9%で行われていた。比較的実施率が低かった危険予知活動の実施は、訪問系介護で60.2%、施設介護で63.5%であった。
    ヒヤリハット活動の実施は、訪問系介護の88.3%、施設介護の95.4%で実施されており、リスクアセスメントは訪問系介護の72.8%、施設介護の81.4%で行われていた。これらは訪問系介護と施設介護でやや差があった。
    ヒアリングでヒヤリハット及びリスクアセスメントの内容について見たところ、報告のあったヒヤリハットの事例を他の労働者に周知している例、委員会などで対応を検討している例などがあった。
    しかし、これらの活動は、主として利用者の安全・健康対策を目的・対象としており、利用者の安全・健康に関する内容がほとんどとなっており、介護労働者の安全と健康確保の観点を含めていくことが必要である。
    ヒアリングでは、次のような活動の例があった。
    1. 衛生管理者や衛生委員会による事業場の施設の巡視(パトロール)を、チェックリストに従って、毎月行っている。
    2. リスクマネジメントの観点から、事故の分析、評価に取組みを事故防止に結びつけている。
    アンケートで、施設介護のみを対象に、施設面の安全衛生上の配慮(厨房内のガス漏れ警報機の設置、休憩場所と時間の確保、空気調和設備、ボイラー、エレベーター等の自主点検、防火扉や排煙装置の定期点検)について尋ねたところ、いずれの項目も83.7%〜87.1%で実施されていた。移動式洗身台、リフトなど介助機器を導入している事業者は69.7%であった。
    ヒアリングでは、次のような活動の例があった。
    1. 既存設備の改善や施設の新設にあたり、介護労働者の意見を聞いて、手すりの高さ、段差等の仕様に反映している。
    2. 入浴介助の際の身体負荷の軽減のためのリフトや利用者が座ったまま入浴できる浴槽等を備えている。
  4. 健康管理等に関すること
    アンケートでの定期健康診断の実施率は、訪問系介護では93.7%、施設介護では96.5%であったのに対して、雇い入れ時健康診断の実施率は訪問系介護で75.2%、施設介護で76.2%であった。
    ヒアリングでは、健康診断を定期に実施してはいるが、法令で義務となっている週30時間程度以上勤務する労働者全員に対して、必ずしも受診させていない例が認められた。
    腰痛(=動作の反動、無理な動作)は、介護労働者の労働災害で近年最も多くなっているが、アンケートで、腰痛の予防のためのストレッチや体操が行われているかどうかを尋ねたところ、訪問系介護では41.3%、施設介護では37.4%で実施されていた。
    ヒアリングでは、オリジナル体操を労働者全員で毎日朝礼前に10分程度行うとともに、入浴介助用のリフトを備え、使用する等の予防対策によって、近年腰痛での休業者が出ていないという例があった。また、腰痛防止ベルトの貸与は多くの事業者が行っていた。
    アンケートで、厚生労働省が平成18年に公表した「『労働者の心の健康の保持増進のための指針』を知っている」と答えたのは、訪問系介護で51.5%、施設介護で49.3%と半数程度であった。
    介護労働者が仕事の悩み等を相談できる仕組について聞いたところ、訪問系介護で78.2%、施設介護で69.9%があると回答した。また、「一定時間を越える時間外労働を行った労働者に医師による面接指導等をすること」の実施は訪問系介護で16.5%、施設介護で21.5%であった。
  5. 介護労働者の安全衛生教育に関すること
    アンケートで、事業場で行っている安全衛生教育について聞いたところ、最も実施されているのが「感染症予防」(訪問系介護で95.6%、施設介護で97.5%)、続いて「福祉用具の使い方や介護技術等」(訪問系介護で93.2%、施設介護で95.4%)、「交通安全」(訪問系介護で73.8%、施設介護で68.1%)、「腰痛予防」(訪問系介護で70.4%、施設介護で64.9%)の順であった。
    安全衛生教育担当者を定めているのは訪問系介護で55.3%、施設介護で63.3%と半数程度であったが、テーマごとに担当者を交代するという声もあった。
    ヒアリングでは、次のような介護労働者の安全衛生に関する教育を行っている例があった。
    1. 管理者を対象に3か月に1回、安全衛生勉強会を開催している。
    2. 介護労働者全員を対象とした研修で感染症予防、腰痛予防等について研修を行い、参加できなかった者には資料を直接送付している。
    3. 外部の研修会に参加した者が職場に戻って他の労働者に伝達研修を行っている。
    4. 感染症予防等のマニュアルを写真つきでわかりやすく作成し、事務所で介護労働者のすぐ手に取れる場所においている。
    5. 交通安全については、物損のみの事故を含め事故に至った状況を現場の図入りで事務所に張り出して注意喚起している。また、警察署の安全運転管理者講習や無事故キャンペーンに参加している。
    このほか、報告書では、介護労働者の安全衛生に関する好事例を様式、写真等を含めて紹介している。
    また、以上の調査結果を踏まえて、介護事業者が今後取り組むべきこと、また関係団体等が行うべき指導、援助の実施事項を示している。
    さらに、今後の介護労働者の安全衛生の確保を図るために、訪問系介護用及び施設介護用の安全衛生状況チェックリストと、関連用語の解説を添付している。

全ての働く人々に安全・健康を 〜Safe Work , Safe Life〜

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