写真と年表で辿る産業安全運動100年の軌跡 見直しの時代 (平成元年〜10年)

バブル景気とともに幕を開けた平成時代も平成2年には株価が、平成3年には地価が急落し、平成4年には第1次オイルショック以来のマイナス成長を記録するなど、バブルは一気に崩壊、深刻な不況期に入った。企業は、従来の日本的経営システムから、生産体制を含めた企業のあり方の総見直しを迫られることとなった。
就業構造の変化も進むなか、労働災害に占める第三次産業の割合は年々増加し、全産業の4割近くになった。また、バブル景気は働くことへの価値観の変化を生んだ。“3K(きつい、きたない、きけん)職場”をきらう若者が増えたのもこの時期であった。企業はこうした若者を呼び戻すため、職場環境の改善を進め、快適職場づくりも活発になった。
労働災害は、死傷災害、死亡災害ともに労働安全衛生法制定後の20年間で半減し、“災害未体験世代”へ対応が課題となり、危険を擬似体験するなどして、危険に対する感受性を高めようとする安全体感教育なども生まれた。

 

年表(平成元年〜10年)

 

平成元年1989年 労働省が死亡災害撲滅をめざし、労働災害防止緊急対策本部を設置する。
平成4年1992年 出来事・平成3年 広島市の広島新交通システムの高架橋建設現場で橋桁落下事故 死者15人
  • 労働安全衛生法が一部改正され、快適職場形成が事業者の努力義務として盛り込まれる。同年「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」が公表される。
  • 「騒音障害防止のためのガイドライン」が公表される。

平成6年1994年 「交通労働災害防止のためのガイドライン」が公表される。
平成7年1995年 出来事・平成7年 阪神淡路大震災が発生
解説
災害防止団体等が阪神・淡路大震災復興作業を支援
災害防止団体等が阪神・淡路大震災復興作業を支援
平成7年1月17日、死亡者6,432名の(消防庁平成12年発表)阪神・淡路大震災が発生した。震災後倒壊した建物などの除去で大量に発生する粉じんによる健康障害防止のため、中央労働災害防止協会は日本労働災害防止推進会の協力を得て、防じんマスク1万個を兵庫労働基準局を通して関係者に配布した。同年2月、(社)兵庫労働基準連合会内に「中災防兵庫安全衛生支援センター」を開設、安全衛生専門家を常駐させ、労働災害防止と健康確保に視点をおいた復興対策の支援活動を展開した。
建設業労働災害防止協会も兵庫県支部の中に「建災防兵庫安全衛生支援センター」を開設、安全・衛生管理士などを常駐させ、兵庫支部の安全指導者、建設安全衛生管理アドバイザー、専門工事業安全管理活動指導員などの協力を得て、各種の相談指導、現場指導を行った。
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解説
欧州機械指令の施行
かつて欧州連合(EU)加盟国では、機械の安全規格を各国が独自に作成していた。そのため、A国で製造した機械をB国に輸出するときはB国の規格に沿った検定を行い、C国に輸出するときはC国の規格で検定を行い、D国に輸出するときは・・・と、流通の大きな障壁となっていた。
欧州連合では機械の安全規格を統一化し、1995年から欧州機械指令として運用している。機械指令の必須安全要求事項を満足している場合は、製品に「CE」マークを表示することができ、このCEマークが表示されている機械は、EU各国を自由に流通させることができる。EU各国は国内基準をこの指令に対応させなければならないが、各国間の検定が省略されたため、製品流通の自由度が飛躍的に増大した。
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平成8年1996年
  • 「職場における喫煙対策のためのガイドライン」が公表される。
  • 中災防が安全衛生マネジメントシステム評価基準を策定する。

平成9年1997年 出来事・平成10年 自殺者が急増、3万人を超える。出来事・平成9年 ごみ焼却施設の敷地内とその周辺で高濃度のダイオキシン類が検出され、社会問題となる鉄鋼会社で安全体感教育設備が開発解説され、以後多くの企業で安全教育へ活用される。
解説
ごみ焼却施設の敷地内とその周辺で高濃度のダイオキシン類が検出
平成9年、大阪府豊能郡のゴミ焼却施設の敷地内や周辺土壌から、高濃度のダイオキシン類が検出された。また、同施設で働く作業者の血中ダイオキシン類濃度が一般住民より高いことも判明し、社会問題となった。
その後、平成11年に環境汚染防止のため排出基準を定めたダイオキシン類対策特別措置法が議員立法により成立し、翌年施行された。環境省が公表した「廃棄物処理施設からのダイオキシン類排出量の推移」によると、平成15年に国内で排出されたダイオキシン類は、平成9年の排出量と比較すると98%まで削減されている。厚生労働省もまた、平成13年に「廃棄物焼却施設内作業におけるダイオキシン類ばく露防止対策要綱」を公表し、作業者のダイオキシン類ばく露の防止対策の徹底を図った。

*ダイオキシン類とは
ダイオキシン類対策特別措置法の定義では、ポリ塩化ジベンゾ−パラ−ジオキシン(PCDD)7物質、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)10物質、コプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)12物質の総称。この他にもダイオキシン類は、多くの仲間があり、毒性の強さも異なる。2, 3, 7, 8-TCDDと呼ばれる物質が、ダイオキシン類の中で最も毒性が強いことが知られている。
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解説
災鉄鋼会社で安全体感教育設備が開発
住金マネジメント株式会社 提供
鉄鋼会社が安全体感教育設備を開発
住友金属工業と住金マネジメントは、製造現場における従業員への安全教育を目的として、平成9年に鹿島製鉄所に安全体感教育のための第1号の設備を設置。翌平成10年から社員、協力会社へと対象を広げ、現在では、幅広い産業分野から受講者を受け入れている。平成20年には受講者数が12万人を突破しその認知も広がった。また、国内企業のみならず、台湾企業への技術供与も行っている。
その他多くの企業が、その作業に合った体感教育設備を自主制作して、協力会社を含めた体感教育を行うようになった。実際に危険を体験できることから、危険への感受性を高める新たな安全教育として注目されている。
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エピソード
快適な職場環境の形成
昭和50年代後半から急激に進んだOA化、経済のソフト化・サービス化や企業活動の国際化の進展に伴う職場の労働環境、作業態様の変化等により、疲労、ストレスを感じる労働者が増加した。また、高齢化、多様な分野への女性の進出等により、職場環境の改善の必要性が高まった。
このような状況を背景として、平成4年に労働安全衛生法が改正され、快適職場づくりが事業者の努力義務とされた。また、「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」が公表されたことで、事業場における快適職場形成の取組みが進められた。都道府県労働局から快適職場推進計画の認定を受ける事業場も増加を続け、平成22年5月31日現在では36,000件を数えている。
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