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化学物質安全性データシート作成の指針
(Guidelines for the Formulation of a Chemical Safety Data Sheet)

(資料出所:人的資源省 労働安全衛生局 発行
「Guidelines for the Formulation of a Chemical Safety Data Sheet」)

(仮訳 国際安全衛生センター)


用語解説

急性作用
  一回の暴露で直ちにまたは間もなく生ずる作用。

エイムステスト
  化学物質が変異原性を持つかどうかを確認するため、細菌株を用いて行うスクリーニング・テスト。

解毒剤
 化学物質への過暴露に対する、当該化学物質または当該種の化学物質に(多少なりとも)特効のある治療。身体機能を維持するのに有効な治療とは異なる。

窒息(asphyxia)
  窒息(suffocation)

窒息物質
  窒息を起こさせる物質。

自然発火温度
  火花や炎などのような高温の点火源が無いところで発火させまたは自力で燃焼させるのに必要な最低温度。当てはまる物質は多くはない。

先天的欠損症
  誕生時に存在する、自然発生的要因または催奇形物質(奇形生成参照)を原因とする異常または異形。

沸点
  ある液体の蒸気圧が周囲の大気圧に比べ同じまたはわずかに高い時のその液体の温度。

ガン
  体の他の器官へ広がりうる悪性腫瘍。他の器官へ広がり得ない良性腫瘍とは区別される。
  [白血病およびその他の悪性の疾病は固形の腫瘍ではないが、それ以外の点でガンの特徴を満たしているので、この定義に含まれうる(そしてしばしば実際に含まれている)]。

発ガン物質
   ガン形成の原因となる物質。

発ガン性の
  吸入し摂取しまたは皮膚に浸透すれば人体にガンを誘発しまたはその発生率を高める物質または調製品をいう。

ケミカル・アブストラクト・サービス(CAS)番号
  ケミカル・アブストラクト・サービス(米国のレファレンス・サービス)が個々の化学物質に割り当てた番号で、化学物質の識別に役立つ。混合物(多数ではない)にもCAS番号が割り当てられている。一般に知られている化学物質全てをカバーする唯一の「一化学物質一番号」体系である。

化学物質安全性データシート
  化学物質または調合時の特性および用途を記載した文書。特性、化学的・物理的性質、健康に対する危険、使用上の注意、安全な取り扱い方法などを含む。

慢性作用
  化学物質に対する繰り返しまたは長期間の暴露により生じる有害な作用。慢性作用は暴露の終了後しばらくしてから現れることもありうる。

企業秘密
  機密情報(化学物質の特性や正確な組成など)を開示すれば純粋な商業的利益を害するであろう場合。

腐食性物質
  接触により物質や生体組織を破壊または損傷する化学物質。

密度
  物質の体積に対する質量の割合。

皮膚に関する(dermal)
  皮膚(skin)に対する意味。

胎芽毒性
  妊娠初期の胎児に有毒な作用をもたらす。

エンティティー
  個々の化学物質。

蒸発
  物質が液相から気相へ変化すること。

暴露基準
   化学物質の空気中濃度に関する国家基準(許容暴露限界値)。現在の技術データの評価と既知の悪影響の証拠に基づき、三者(政府、事業者、労働者)協議により労働者の健康に対するリスクが容認しうるものと認められた濃度。

胎児毒性
  妊娠中に胎児に有毒な作用をもたらすこと。

可燃限界
  点火源が存在すれば炎が広がりまたは爆発が起こりうる可燃性蒸気の空気中の濃度範囲。通例、この範囲は、上限と下限で表わされる(空気中のパーセンテージとして)。

可燃性の
  空気中で発火燃焼しうる。

引火点
  極めて可燃性の、非常に可燃性の、そして可燃性の化学物質の引火点とは、液体が発火するのに十分な蒸気を発生させる最低温度(摂氏)のことである。

総称的名称
  ある分類あるいは種類に属する化学物質に適用される名称(例えばアゾ染料、ハロゲン化芳香族アミンなど)。

遺伝毒性
  遺伝物質を損傷する作用。

遺伝性の
  遺伝によって受け継ぐことが可能な。

摂取
  飲み込むこと。

吸入
  吸い込むこと。

刺激物質
  皮膚や眼などの組織や粘膜と接触すると、あるいは吸入されて鼻や肺の組織と接触すると、局所的刺激や炎症を引き起こす化学物質。

LCLO
  人や動物に死をもたらすと報告されている化学物質の最低濃度(通例空気中の)。

LC50
  短期間の吸入により実験動物母集団の50%に死をもたらすと推定される化学物質の濃度(通例空気中の)。

LDLO
  人や動物に死をもたらすと報告されている化学物質の最低投与量。

LD50
  摂取、注射、または皮膚への塗布により実験動物母集団の50%に死をもたらす化学物質の投与量。通例、体重1kg当たりmgで表示される。

局所作用
  接触した箇所または体内へ入った箇所での化学物質の有害な作用。

融点
  物質が固体および液体の形で存在しうる摂氏温度。通例、気圧が760 mm Hgで測定される。

代謝産物
  吸収された化学物質に対する体の反応により生成される物質。

mm Hg
  水銀柱ミリメートル。圧力の単位。

粘膜
  外部と接触する体腔を覆う膜。労働衛生の観点から最も重要なのは鼻と喉を覆う粘膜である。

変異原性物質
  吸入、摂取または皮膚に浸透した場合に、精子または卵子の中で遺伝的変化を誘発するかその発生率を増加させる可能性のある物質または調製品をいう。

腫瘍形成の
  腫瘍を発生させうる。

経口の
  口から、口で。

揮発分
  化学物質の、蒸発により失われうる割合。

周期律表
  原子番号の小さい順に元素を並べた表。最外殻の電子数が同じ元素が縦に並んでいる。

経皮の
  皮膚を通ってまたは横切って。通常、化学物質の吸収について使われる。

pH
  溶液の酸性またはアルカリ性の強さを示す値。水はpH7で中性である。酸類のpHは7未満である。数が小さいほど酸性が強い(最小は0)。アルカリ類は7超である。数が大きいほどアルカリ性が強い(最大14)。

1 2 3 4 5 6 7
14
強酸 中性 強アルカリ

感作
  化学物質の作用に対して敏感/アレルギー性になること。
感作物質
  人や動物が繰り返しある化学物質に暴露された後、彼らの中にかなりの割合で正常な組織にアレルギー反応を引き起こす化学物質。

衝撃感度
  物質が、落とされたり乱暴に扱われると爆発する傾向。

比重
  液体を水と比較した時の密度の比。

STP, standard temperature and pressure (標準温度および標準圧力)
  気体に関する便利な基準状態。温度は摂氏0度、気圧は1気圧(760mm Hg)である。

物質
  CSDS作成において、作業上で使用される物質とは、固体または液体の形状であるか、あるいは気体または蒸気の形状であるかにかかわらず、作業場での使用を目的とした、製品以外の天然または人工の物質と定義される。

全身作用
  化学物質を吸収後接触した点から離れたところで体の器官および体液に及ぼす当該化学物質の作用(局所作用に対して)。

TCLO
  人や動物に有毒な作用をもたらすと報告されている化学物質の最低濃度(通例、空気中の)。

TDLO
  人や動物に有毒な作用をもたらすと報告されている化学物質の最低投与量。

催奇性
  妊娠中の女性が吸入、摂取しまたは皮膚に浸透した場合に、胎児に奇形を誘発しまたはその発生率を増大させる可能性のある物質または調製品についていう。

催奇物質
  奇形生成を引き起こしうる物質。

毒性
  物質が生物体に障害をもたらしうる力。通例は機能(全身)障害を指すが、胎芽の場合には組織および骨格の発育障害を指すこともある。障害は永続的な場合もあり一過性の場合もある。

蒸気圧
  ある物質の蒸気がその液体または固体と平衡状態にある時の所定の摂氏温度で特有の圧力。

揮発性
  固体または液体の物質が、所定の摂氏温度で蒸気の状態に変化する傾向。具体的には、ある成分を液体または固体のモル分率(グラム分子)で割った時の蒸気圧。

W/V (weight per volume)
  溶液中における固体の含有量の単位。

W/W  (weight per weight)
  固体中における固体の含有量の単位。


1. 総則

1.1       当指針において、「化学物質安全性データシート(CSDS)」とは、作業場における化学物質または調製品の安全な使用方法を確立するのに極めて重要な、有害化学物質または調製品に関する適切な情報を記載した最新の印刷物または情報シートを指す。

1.2       CSDSは、(専門家でない)一般の人の言葉で記載するものとし、下記の目的を達成することを意図するものとする。

(a)      有害化学物質の使用者に安全に関する勧告を理解せしめると共に、勧告の理論的根拠を理解せしめること。

(b)      有害化学物質の使用者に、勧告に従わない時の結果を認識せしめること。

(c)      有害化学物質の使用者が、暴露超過の兆候を必ず認識できるようにすること。

(d)      有害化学物質の使用者に対し、それらの安全な使用に関する戦略と勧告の確立に向けて情報提供するよう奨励すること。

1.3       CSDSで提供する情報は、明確で簡潔、かつ使用者に広く受け入れられる書式で記載する。


2. CSDS作成義務

2.1       各有害化学物質について最新のCSDSを作成する義務は、労働安全衛生(有害化学物質の区分、包装および表示)規則1997 [P.U. (A) 143](以降「規則」という)則9(1)の定めるところにより、供給者が負う。供給者とは化学物質を供給する者を指し、調製者、製造者、輸入業者、または流通業者のことである。

2.2       供給者がCSDSにて提供すべき情報は規則の則9(2)に規定されており、下記から成る。

(a)      化学製品自体。当該化学物質の商品名または一般名ならびに会社識別と供給者の詳細。

(b)      有害性評価実施のために、有害化学物質を明確に識別できる成分構成。

(c)      有害性識別

(d)      応急処置

(e)      消火方法

(f)      事故による流出対策

(g)      取り扱いおよび保管

(h)      暴露管理と身体保護(作業場での暴露監視の可能な方法を含む)

(i)      物理的・化学的性質

(j)      安定性および反応性

(k)      毒性情報(体内への可能な進入ルート、作業中に出会う他の化学物質や有害物との相乗作用の可能性を含む)

(l)      生態学的情報

(m)      廃棄に関する情報

(n)      輸送に関する情報

(o)      化学物質安全性データシートの作成日

2.3       特定の有害化学物質に関して新情報があれば、供給者は必ずCSDSを見直し改定することと規則は定めている。


3. CSDSの書式

3.1       2.2項の情報は、CSDSが16項目に分かれている表1および表2に示した書式にまとめて提出する。付属資料IからXVIは、CSDSに記載すべき関連および追加の情報について説明し、情報の記載の仕方の実例を示している。

3.2       規則は情報を国語(マレーシア語)と英語で記載することと規定している。表1と表2はそれぞれCSDSの英語版と国語版である。作成するCSDSは同一文書に両言語で記載するものとする。それぞれ英語と国語で記載した別々の文書は受理されない。

3.3       CSDS作成に際し、英語から国語への翻訳が必要な場合は、マレーシア翻訳者協会(Persatuan Penterjemah Malaysia)またはマレーシア国立翻訳研究所(Institut Terjemahan Negara Malaysia Berhad)に登録された翻訳者により行うものとする。



目次 / 序文 / 用語解説
1 2 3
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表1 表2 / 参考文献
付属資料 I / II / III / IV / V / VI / VII / VIII
IX / X / XI / XII / XIII / XIV / XV / XVI