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各国情報・国際関係

Eurofoundによる労働と雇用における男女間差異についての報告書

2008年8月14日

Eurofound News 2008年5月号

欧州生活・労働条件改善財団(Eurofound–European Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions)
http://www.eurofound.europa.eu/ 別ウィンドウが開きます は、 EUの設置している諸機関のひとつで、ヨーロッパにおける生活と労働の条件の改善に関する情報、 助言、専門知識を提供することを任務としている。 男女均等問題に関しても、多くの資料(文献の項を参照)を作成してきたが、 この報告書は、全般的状況に関する情報を簡潔にまとめたものである。 Eurofoundから翻訳の許可を得て日本語訳を掲載する。

原資料題名と所在

Mind the gap:Women’s and men’s quality of work and employment

Background paper

© European Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions‚ 2008‚ Wyattville Road‚ Loughlinstown‚ Dublin 18‚ Ireland.

目次

  • 労働市場への女性参入の増大
  • 職業、業種別の分布
  • 男性の仕事と女性の仕事の大きな違い
  • ガラスの天井は壊せるか?
  • 柔軟性と安定性
  • 賃金格差が問題
  • 仕事と生活のバランス
  • ソーシャルパートナーの活動
  • 結論
  • 資料

国名略号:EU27カ国

国名略号:EU27カ国
AT Austria オーストリア LV Latvia ラトヴィア
BE Belgium ベルギー LT Lithuania リトアニア
BG Bulgaria ブルガリア LU Luxembourg ルクセンブルグ
CY Cyprus キプロス MT Malta マルタ
CZ Czech Republic チェコ NL Netherlands オランダ
DK Denmark デンマーク PL Poland ポーランド
EE Estonia エストニア PT Portugal ポルトガル
FI Finland フィンランド RO Romania ルーマニア
FR France フランス SK Slovakia スロヴァキア
DE Germany ドイツ SI Slovenia スロヴェニア
EL Greece ギリシャ ES Spain スペイン
HU Hungary ハンガリー SE Sweden スウェーデン
IE Ireland アイルランド UK United Kingdom 英国
IT Italy イタリア  

加盟候補国

V
HR Croatia クロアチア
NO Norway ノルウェー
CH Switzerland スイス
TR Turkey トルコ

ジェンダーメインストリーミング〔男女平等の考え方を政策やシステムに取り入れること。〕は、 Eurofoundによる研究の中でも非常に重要な位置を占める。労働市場への参加状況、労働条件、 労働市場における成果を分析すると、男女間における状況の違いは顕著である。 この調査は、労働市場における女性の状況に関する下記の重要事項に焦点を当てて行ない、 女性の社会参加における、重要な障壁がどこに存在するかを指摘するものである。

  • 雇用率
  • 労働市場における女性の位置付け−職種別および業種別分布
  • キャリア開発
  • 労働時間
  • 賃金格差
  • 生活と仕事のバランス
  • 労働市場における男女平等の促進を図るための、ソーシャルパートナーなどによる活動

労働市場への女性参入の増大

ヨーロッパにおける雇用の伸びによって、過去10年にわたり女性は男性よりも恩恵を受けてきた。 現在ヨーロッパの労働力の45%は女性が占めている。

ここ数十年の間に、女性の雇用率は目を見張る程上昇した。 2000年から2006年にかけての雇用率の伸びは、全人口において2.1%であったが、女性においては3.4%であった。 EU加盟国における全体の雇用率は減少しているにも関わらず、 その影響を受けたのは主に男性であり、各国の女性の雇用状況は上向きであった。

2006年の労働力調査によると、図1に示すように、この年のEU27カ国における女性の雇用率は57.1%で、 全人口の雇用率は64.3%であった。ヨーロッパ全体での女性の雇用率は未だ60%(リスボン条約で設定された目標)に届かないものの、 2000年以降男女間の差は狭まってきている。女性の雇用状況は加盟国間で大きく異なり、 最も高いのがデンマーク(73.4%)、スウェーデン(70.7%)で、低いのがマルタ(34.9%)、イタリア(46.3%)であった。

図1 EU27カ国における雇用率の男女間の差(%)

職業、業種別の分布

しかしながら職業や、業種による女性の雇用の偏りは依然として強く残っている。 教育および保健の部門における女性の雇用率は非常に高く(70%+)、反対に製造業、建設業、公益業においては低い。

女性の雇用率の増加の一因として、サービス部門の成長が挙げられる。 図2に示すように、女性の雇用分布は一部の業種において集中している。 第4回ヨーロッパ労働条件調査によると、女性は主に個人住宅における家事(この中の82%を女性が占める)、 保健(79%)、教育(72%)や他の社会および個人に対するサービス(59%)などの経済活動において優勢である。 一方、建設(89%)、電気・ガス・水道(80%)、輸送と通信(73%)、製造業(69%)、産業(63%)においては、 大多数を男性が占めている。

図2 業種間の男女の雇用の偏り

男性の仕事と女性の仕事の大きな違い

男女それぞれの雇用が40%以上である職場、 つまり男女が同じように働く職場に雇用されている労働者は、総労働力の4分の1弱である。

労働市場への女性の参加が増加する中で、男性が従事する仕事と、女性が従事する仕事にはその比率に顕著な違いが存在する。 図3は、男女間の雇用の場における職種別の差異を示している。 それによると、事務職(69%)、サービスや販売業(58%)における労働者の大多数が女性である一方で、 技能労働者(87%)や、機械運転者(81%)は男性が多くを占めた。 また、様々な分野の専門家に男女がほぼ同じ比率で存在するのに対し(男性48%、女性52%)、 上級管理者の比率は71%が男性で、僅か29%が女性であった。

図3 職種と雇用形態別の男女の占める割合

ガラスの天井は壊せるか?

上司が女性であると回答した労働者は、調査対象4件につき僅か1人であった。 また、その場合においても女性が女性の上司であることが多い。 ヨーロッパの男性労働者の直属の上司が女性である例は10人につき、1人にも満たなかった。

保健や教育など、女性の活躍が著しい部門においてさえも、男女間の雇用の場における差別的状況は否めない。 女性優勢な部門においてさえも、女性は職業的に低い地位を占める傾向がある。 (大抵の場合は事務職か、良くても中間管理職である。) 調査によると、女性は女性の管理をする場合が多く、男性を管理する機会は少ない。 教育の場においても、女性教員が増える一方で、学校長は男性に偏っている。

しかしながら未来は決して暗くなく、変化の兆しはある。 ヨーロッパ労働条件調査の前版のデータによると、 女性の上司をもつ労働者の割合は1995年〜2004年にかけて21.3%から24.8%に上昇した。 この増加は、2004年にEUに新しく加盟した10カ国における女性の活躍によるところが大きい。 (2005年の調査によると、EU15カ国で24.2%に対し、新加盟国においては28.6%である) この数値も国によって幅があり、ヨーロッパ平均が25%に対して、フィンランド39%、キプロス15%である。

図4 直属の上司が女性である労働者(%)

柔軟性と安定性

女性はフルタイムの範疇から外れている仕事に多く就業している。 ヨーロッパにおけるパートタイム労働者の5分の4、また非正社員の大半も女性である。

Eurofoundの報告書「性別とキャリア形成」によると、 仕事と作業組織(work organization)の性質が変化した結果、キャリアの概念も進展し、 「一つの職場での継続的で中断のない」というだけではなくなった。 組織から外れたフリーランスや、他の形態の独立した仕事、 民間部門から公共部門への転職、中断など、キャリアの概念は現在多岐に渡り、かつ包括的である。 今日にいたるまで、女性が労働市場でキャリアを継続するには、非常に不利な傾向にあったが、 真のボーダーレスなキャリアモデルを発展することにより、不利な条件を課せられることなく、 私生活と仕事のバランスをとることが可能になるかもしれない。

そのような新しいキャリアモデルは、フレクシキュリティー(flexibility と security)にうまく適合し、 各々が雇用の柔軟性と安定性のバランスをとり、キャリア設計をできるようになるであろう。 しかしながら、この概念は男女間で二分化されているようである。 男性が変わらず安定したキャリア進路を歩み続ける一方で、 女性はフレックス制と呼ばれる部類の仕事に多く就業している。 そのような部類において、柔軟性は「調整」や「選択」という肯定的な意味合いよりむしろ 「境界の」「基準的でない」「非定型の」というように捉えられがちである。 しかし最も特筆すべきは、図5に示すように、ヨーロッパのパートタイムの労働者の大半(5分の4)が女性であるという点である。

図5 国別 パートタイム労働者の比率

賃金格差が問題

長い間、法令が賃金の平等と雇用の平等を定めているにも拘らず、女性の平均賃金は男性よりも15%劣っている。 部門や職種を考慮し、類似した条件で比較した場合でも、5%不利な状況に置かれている。

部門と職種による待遇の差別、雇用形態、訓練を受ける機会、 およびキャリアアップは全て、各人の収入を増やす機会に多大な影響を与えている。 未調整の、性差による賃金の差は、この不平等な実態を明示している。 これは労働市場における1時間当たりの男女の賃金の不均衡を示す構造的な指標である。 このような調整をする前の性差による賃金の差 (ここで言う調整をする前とは、個人、職業、あるいは企業の特徴を考慮していないものである)は推定平均15%である。 (2007年European Commissionによる)これはすなわち、女性の集団レベルにおける1時間平均賃金は、 男性平均の85%でしかないということである。部門や職種を考慮し、 類似した条件で比較した場合でも、女性は収入面で5%不利な状況に置かれている。

図6は男女の収入金額の分布を示している。労働人口を収入金額によって、 高収入・中収入・低収入の3つのグループに分けた場合、大半の女性が低収入に当てはまることは明確である。 女性と比較して、高収入に該当する男性は多いが、絶対的に見ても、男性の大多数は非常に高い収入を得ている。 これについては社会福祉体制の形態に関わらず同じことが言える。

図6 収入金額の男女別高、中、低の分布

仕事と生活のバランス

多くの働く女性が、仕事と生活のバランスを考える背景には、 彼女達が大半の時間を家庭と職場で働いて過ごしているという実態がある。 労働市場での有給の仕事と、家庭における無給の仕事(介護や家事)を合計すると、 パートタイムの女性はフルタイムで働く男性よりも各週の労働時間が長いことになる。

働く女性を含めて女性は未だ、不均衡な割合の家事や介護の責任を背負っている。 女性の労働市場の参加が増大する中で、女性は未だ家事と労働市場の仕事の二重負担から自由になっていない。 男性が育児や家事に1時間費やす間に、女性は3時間費やしていることになる。 第4回ヨーロッパ労働条件調査結果から、労働市場における主要な仕事(2番目の仕事も含む)と、 家庭内労働、介護、通勤時間を含む労働時間から成る複合指標が計算された。 その結果、女性の週の労働時間は男性よりも遥かに長いことが判明した。

図7 雇用形態と男女別の週間労働時間構成

ソーシャルパートナーの活動

ソーシャルパートナーは、労働市場における性差別への取り組みに中心となって関与している。 ETUC、Business Europe、UEAPME、CEEPより採択された 「男女平等の活動のフレームワーク」はこの問題に対するソーシャルパートナーの関与の度合いを示している。 そのフレームワークにおいては、4つの優先的活動分野を挙げている。

  • 男女の役割に取り組む
  • 意思決定する立場への女性の配置の促進
  • 仕事と生活のバランスの援助
  • 性差から生じる賃金の差への取り組み

この問題を解決するための、最適な戦略(強制手段、包括的規制、個人的取り決め)の選択はソーシャルパートナーによって異なる。 一般的に事業者団体は、男女平等の問題の解決を、多様な政策や、会社レベルでの個別的な解決策を通じて行うことを好む。 反対に労働組合は普遍的で強制的な解決を望む傾向にある。

ソーシャルパートナーは労働市場における男女の平等化促進に向けて、いくつかの具体的な対策を導入してきた。 その内容は以下の通りである。

  • 賃金の増大(フィンランド)
    性差による賃金の差の問題対策として、中央集中折衝を通じて、母子家庭や、低所得者の所得増大を行う。 これは前向きな対策ではあるものの、そもそもの給料が低すぎるため、個人の得る金額はかなり少ないと言える。
  • 職務の再評価計画(リトアニア)
    客観的基準に基づき、男女平等の観点から見た職務特性の見直しを行った。 その結果として、特に女性が多く、彼女たちの客観的価値よりも賃金が低いと思われるような職 (看護婦や教師など)に対して良好的な再評価が行われることになる。
  • 給料の随意調査(イギリス労働組合会議)
    潜在的な男女差別による賃金の差を確認するために、給料の見直しを実施した。 この監査による評価は、男女の賃金の平等化の問題を交渉の議題として押し上げ、 事業者が給料監査に協力するよう促すために大きく貢献した。
  • 職場における平等化計画(スウェーデン)
    スウェーデンの機会均等法令より導入された規定で、 従業員が10人以上の職場は平等計画をうちたて、積極的にその遂行を観察するよう義務づける。
  • フランス政府内合意文書
    フランス政府内における労働市場の男女平等と、男女数の均等についての協定が2004年4月に締結された。 賃金の差を縮めること、キャリアの妨げにならぬような妊娠による退職を防ぐこと、 労働市場における男女の差別的待遇を解決することが課題となっている。

結論

ヨーロッパ全土において、男女間の仕事と雇用の質の違いは明らかである。 その上、女性の雇用は特定の部門に集中し、パートタイム労働者の (一般的にフルタイム労働者よりも賃金が低い)圧倒的多数が女性である。 組合との協約では、年毎の昇給の交渉対象となるのはフルタイム労働者に限り、 パートタイム労働者は含まれないことがある。男女の賃金の差別問題は、 人生における長い時間の中で蓄積され続ける。 その結果として女性に一生を通じての低賃金と、育児や近親老齢者の介護によるキャリアの中断を強いることとなり、 さらに、年金拠出金の減少より生じる年金給付額の減少にまで結びつくのである。 加えて、フレキシブルな雇用条件においては、年金制度への加入の機会が失われている場合もある。

ソーシャルパートナーは男女平等を推奨するよういくつかの活動を行ってきたが、依然これに関する問題は山積みである。

今後、女性の早期の職業選択に対する理解を深めるため、 特定の職業や部門の何に女性が魅力を感じるかについて、さらなる研究を遂行しなくてはならない。 あるいは高賃金を支払う雇用主がどのような技能や個性を求めるのか調べるのも、 若い女性の技能を向上させるために役立つかもしれない。

最後に、男女の賃金の差の原因を研究分析し、この問題の起こる原因と、 教育的、社会的、あるいは個人的サービスに関する他の政策分野が与えることができる影響を解明しなくてはならない。

資料 References

European Commission Employment in Europe, 2006 and 2007.
European Commission, Tackling the gender pay gap between men and women, COM (2007) 424 final.

註1:上記各機関名とアドレス
ETUC - EUROPEAN TRADE UNION CONFEDERATION - BD. DU ROI ALBERT II, 5 - 1210 BRUXELLES
UNICE - UNION OF INDUSTRIAL AND EMPLOYERS’ CONFEDERATIONS OF EUROPE ?AVENUE DE CORTENBERGH, 168 - 1000 BRUXELLES
UEAPME - EUROPEAN ASSOCIATION OF CRAFT, SMALL AND MEDIUM-SIZED ENTERPRISES - RUE JACQUES LALAING, 4 - 1040 BRUXELLES
CEEP - EUROPEAN CENTRE OF ENTERPRISES WITH PUBLIC PARTICIPATION - RUE DE LA CHARITE, 15 BTE 12 - 1040 BRUXELLES
註2:上記の原資料に掲載されたもの以外の情報源例

全ての働く人々に安全・健康を 〜Safe Work , Safe Life〜

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