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各国情報・国際関係

イギリスHSEが「揚重設備の詳細検査-事業者のための手引書」を刊行

2008年12月25日

HSE What’s New 別ウィンドウが開きます 2008年7月2日


イギリス安全衛生庁HSEが作成、提供している諸般の資料の中の手引書(guidance)のひとつである。

種々の揚重設備の詳細な検査の実施について、包括的に記載している。

原資料の題名と所在

表紙

揚重設備の詳細検査-事業者のための手引書 INDG422

はじめに

仕事に使用する揚重設備を提供する事業者又は自営業者若しくは揚重設備の使用を管理する者は、 揚重設備を安全な状態にしておかなければならない。 その主要な要求事項は、「作業装置の提供と使用に関する規則 (the Provision and Use of Work Equipment Regulation 1998, PUWER、以下「作業装置規則」)」 及び「揚重作業及び揚重設備に関する規則(the Lifting Operation and Lifting Equipment Regulation 1998, LOLER、以下「揚重規則」)」 に規定されている。

揚重規則では、何が要求されているか?

揚重設備の使用に伴う特定のリスクについて取り扱っている。 詳細な検査と試験がこの規則の鍵となる要求事項である。 これらの要求事項を満たすために責任者は:

  • 危険な状況に結びつく可能性のある劣化の原因となる状況に曝される揚重設備(付属部品を含む。) が詳細な検査を有資格者(Competent Person)により受けるように、
  • 有資格者に勧告されたすべての追加的点検及び試験を所定の期間内に行わなければならない。

劣化の原因となる状況は、湿気、磨耗、腐食環境などである。

揚重規則が適用する装置は?

規則の適用範囲は広く、種々の装置を含む(表1にその例を示す)。規則の適用に関しては、次の重要な定義がある。

  • 揚重設備は、荷をつり上げ及び下ろす作業装置をいう。 定義には、装置を固定し、又は支持する付属品も含まれる(天井クレーンのランウェイなど)。
  • 揚重付属品とは、つり上げるために機械に荷を取り付けるための揚重設備をいう。

表1 揚重規則が適用される設備

表1 揚重規則が適用される設備
Lifting equipment 揚重設備
Cranesクレーン
Workplace passenger and goods liftsv事業場内常用及び荷物用昇降機
Construction hoists建設用リフト
Dumb waitersダムウェイター
Vehicle tail lifts車両後部搭載リフト
Bath hoistsバスホイスト
Stair-lifts階段昇降機
Tele-handlers and industrial lift trucksテレハンドラー及びリフトトラック
Vehicle lifts車両用昇降機

 

Accessories for lifting揚重付属品
Slings玉掛け用ロープ
Hooksフック
Shacklesシャクル
Eyeboltsアイボルト
Rope used for climbing or work positioningクライミング又は位置決め用ロープ

揚重規則の適用のないものは?

つり上げに使用されるいくつかの装置は、揚重規則が適用されない。 この場合においても、作業装置を安全かつ適切に使用するための、作業装置規則に基づく義務を負っている。これらの例としては、

  • コンベヤー、トラクターの3点リンクなどの本来の機能がつり上げを目的としていない装置、
  • パレット、スキップ、使い捨てのロープなど荷の一部と見なされるもの、

がある。
一般公衆の用に供する揚重設備(ショッピングセンターや駅のエレベータなど)は、 作業装置規則又は揚重規則による義務はない。ただし、装置の安全を確保することについての労働安全衛生法の義務は適用される。 揚重規則に基づく要求事項を満足していれば、同法による義務を履行したことになると見なされる。

詳細検査とは

詳細検査とは、危険であり又は危険となる可能性のある欠陥を検出するための有資格者による揚重設備の系統的かつ詳細な検査をいう。
詳細検査の範囲は、この有資格者が決定し、実施に当っては多くの指導書を活用する。 HSEの契約調査報告である「揚重設備の各項目の詳細検査及び点検(CRR429)」も有効な参考資料である。

有資格者とは

有資格者は、

  • 揚重設備についての十分かつ適当な実務及び技術的知識と経験を有し、欠陥、脆弱部分を検出し、 そして設備にとって安全又は継続使用の面でどの程度重大か評価することができ、
  • 自身の仕事に関する部分を審査する定常的なメインテナンスを行う者と同じ者でなく、
  • 客観的な決定を行うことができるように独立し、公正であり、
  • 別の会社に雇用されている者か、その会社に雇用されている者の中から選任された者である。

揚重設備及びその付属装置の詳細検査の頻度は

揚重設備は、

  • 最初に使用される前に −ECの適合宣言の後1年未満の場合で現地組み立てでない場合には必要でないが、 現地組み立ての場合は正しく組み立てられ、安全かどうかについて有資格者による検査を受ける (建物に設置されるプラットフォームリフトなどのように)。
  • 組み立てた後及びそれぞれの場所での使用の前に −使用の前に組み立てて設置する必要がある設備(タワークレーンなど)。
  • 稼動中定期的にー設備が危険な状態に至る可能性のある劣化の原因となる状況にばく露される場合、 この場合には表2のような選択肢があり、詳細検査を次のように行うことができる。
    −定期的に(設備が荷物専用か人を乗せるものかにより6月ごとか12月ごとか)
    −有資格者により作成された検査計画に沿って。

詳細検査を実施しなければならない。
付属装置も詳細検査計画に沿って6月ごとに詳細検査を行う。

表2 検査間隔

表2 検査間隔
設備の種類6月12月詳細検査計画
揚重付属品 
人の昇降設備 
その他の揚重設備 

又、損傷、故障、長期間未使用の使用再開、性能に大きく影響する変更などの場合には、常に詳細検査を行わなければならない。

詳細検査計画とは

詳細検査計画には、 詳細検査及び揚重設備の操作条件に合うように計画された点検についての細部の日程計画、 検査技法並びにテストに関する要求事項が含まれる。
詳細検査計画は:

  • 詳細に検査すべき揚重設備の部分を明確にしておく。
  • 同じ操作条件の下にある多くの類似の事項をカバーすることができる、例えば使用期間、 使用の頻度などが類似している工場におけるすべての揚重付属品などである。
  • 定期の検査間隔(6月又は12月)と異なる(短い場合又は長い場合)期間を定めることができる。 しかし、期間の長い場合は厳密なリスク評価によらなければならない。
  • 必要な能力を持っていれば、使用者、所有者、製造者又は他の独立した者により策定することができる。
  • 定期的に見直しをする(詳細検査ごとに及び揚重設備に伴うリスクを変更するような事案の後に)。 又、設備の使用によるリスクに影響する事案があった場合には、有資格者に報告しなければならない。

揚重設備について、いつ(詳細検査以外の)随時検査を行うべきか

揚重規則のもとにおいては、詳細検査の間隔の間においての適当な間隔で揚重設備を検査する必要がでてくる場合がある。 これは、一般的にはリスクアセスメントで使用による重要なリスクを確認した場合である。
これらの随時検査が必要な場合:

  • 範囲と頻度は、有資格者が決定する。
  • 多くの製造者は、当該設備の検査頻度の指針を提供することができる。
  • 検査には、通常目視検査と機能検査がある。
  • 検査は、定期的(週、月、四半期)に実施し、通常、機械(クレーンなど)に対して行われる。 玉掛け用チェーン、ロープなどの揚重付属品については、適当な間隔に詳細検査を受け、 使用前の検査を受けたものであれば、通常は必要とされない。
  • 検査の日程についても詳細検査計画に含まれる。

揚重設備の揚重と関係ない部分についても随時検査が必要か

PUWERの規定により、危険な状況をもたらす可能性のある劣化の原因となる条件にばく露されるすべての作業装置については、 検査しなければならない。フォークリフトなどの揚重設備については、 揚重に関係する部分とともに関係ない部分についても検査する必要がある。
フォークリフトを使用する場合の例:

  • 詳細検査と補完的検査(必要に応じ)をLOLERの規定に基づき行うが、揚重機構(チェーンとフォーク)に限定される。
  • PUWERに基づく検査は、非揚重部分(ブレーキ、灯火、落下防護)に限定される。
  • 揚重及び非揚重部分のメインテナンスは、PUWERの規定に基づき行われることになる。

このような場合には、LOLERとPULERの検査を適宜組み合わせることができる。 有資格者がこの点についてのアドバイスを行うことができる。又、さらに必要なら、 英国産業トラック協会(BITA)、フォークリフト協会(FLTA)及び安全審査連盟(SAFed)から情報を得ることができる。

詳細検査又は検査は定期メインテナンスと同じか

通常、メインテナンスに含まれるのは、点検及び磨耗し若しくは損傷した部品の交換、 給油、期限が来た部品の交換、液体(液面)の補充及び定期的調整であり、検査とは異なる。 メインテナンスは、設備が所定の目的どおりに継続稼動することを確保するものであり、 磨耗又は劣化によるリスクを排除しようとするものである。
詳細検査はメインテナンスの不十分さを示すことがあるが、メインテナンスに代わるものではない。 詳細検査の結果を待ってメインテナンスを行うということではない。 メインテナンスは、PUWERに基づく要求であり、揚重設備を含むあらゆる作業装置に適用するものである。

記録を保管する必要

すべての揚重設備についての詳細検査及び検査の記録を保管しておかなければならない(表3 参照)。
有資格者は、詳細検査の報告書及び当該有資格者が行った随時検査の報告書を提出しなければならない。 報告には、欠陥がある。場合にそれを明確にし、是正することについて記載しなければならない。

表3 記録の保管

表3 記録の保管
詳細及び随時検査の種類 記録の保管期間
最初の使用前の詳細検査 揚重設備:当該設備の使用を廃止するまで
揚重付属品:2年間
設備の安全が設置条件に関係する場合の使用前の詳細検査 揚重設備が設置され又は組み立てられた場所での使用を廃止するまで
稼動中の詳細検査(6月又は12月若しくは検査計画) 次の報告が行われるまで又は2年間のいずれか長い期間
稼動中の随時検査及び試験 次の報告が行われるまで

揚重設備に欠陥が発見されたときの措置は

  • 有資格者が詳細検査又は随時検査中に人に危険を及ぼす恐れのある欠陥を発見したなら、 その有資格者は直ちに使用者等に連絡するとともに検査報告書に明確に記載しておかなければならない。
  • 有資格者が重大な死傷災害または死傷に係る切迫したリスクを伴う欠陥を発見したなら、 同様に直ちに使用者等に連絡するとともに報告の写しを関係規制当局(HSE又は地方管轄当局) に提出しなければならない(たとえ欠陥が直ちに補修されたとしても)。 有資格者が現場で補修できたからと言って報告しなかったということは、 当該有資格者が潜在的に危険な状態を覆い隠していることとされる。
  • 使用者等は報告に基づき是正しなければならない。 使用者等が重大な又は重要な欠陥についての報告を受けたときには直ちに当該揚重設備の使用を欠陥が是正されるまで中止しなければならない。 そうしない場合は、法律違反行為を行ったことと見なされる。
  • 一定期間内に是正する必要がある欠陥に対しては、当該期間内に修理し又は欠陥のある装置を交換しなければならない、 そして欠陥が十分に是正されるまで使用を中止しなければならない。

その他の義務

このリーフレットは、LOLERにおいて規定している詳細及び随時検査についての情報を提供するものである。 検査の他にもLOLERによる義務(揚重装置の標識、揚重作業の組織など)、さらには他の安全衛生法による義務が課せられている。 例えば、作業安全衛生管理規則(1999)によるリスクアセスメントの義務がある。

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