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国からの委託事業であった 「国際安全衛生センター(JICOSH)」 が2008年3月末をもって廃止されました。 永らくのご利用ありがとうございました。 同センターのサイトに掲載されていた個別の情報については、中災防WEBサイトの国別、分野別情報にリンクして取り込んでおります。
2009年8月26日
アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH)は、グリーンエコノミー(環境保全経済)への移行に対処し、 この分野における仕事の安全衛生を確保するための意識の高揚と指針の提供などを推進する活動を開始し、 NIOSH安全衛生トピックに「環境保全(緑)に向って:安全で健康的な仕事」の項目を追加した。 このトピックの概要を紹介する。
NIOSH安全衛生トピック
環境保全(緑)に向って:安全で健康的な仕事
NIOSH Safety and Health Topic:
グリーンエコノミー(環境保全経済)への移行については、便益とともに様々な課題がある。 グリーンジョブ(緑の仕事)とは、環境改善に資する仕事であると広範に定義されている。 これらの仕事は、景気後退との戦いに資する機会を創出し、人々に仕事を与えるものと期待されている。 グリーンジョブと環境維持への期待が高まってきているが、労働者の安全と健康の軽視がなされないようにすることが重要である。 NIOSH及びパートナーは、これらについての関心を高め、ガイダンスを提供し、 そしてグリーンジョブと環境維持努力に関連する労働安全衛生に取り組むための枠組を開発してきている。
アメリカ再生・再投資法(2009年制定)は、国家の将来に新たな投資を促すものである。 これは、エネルギー、公益事業、建設業および製造業への投資をするための仕事を創出するとともに、 これらの仕事に関する教育・訓練を含むものである。 アメリカがエネルギー効率の高く、また、環境に優しい国家へ移行することに伴って、 従来の仕事の変化と新たな仕事が出現してくる。
一方、技術進展に伴う新たなリスクに対する労働者保護に十分留意する必要がある。 従来からの仕事を新たな課題に適合させるために労働者は、以前は影響がなかったリスクに直面する可能性がある。 これらの変化に伴う危険について、 計画、組織及び工学的手法−「設計を通じての災害防止」というNIOSHの概念−によりリスクを除去することができる。
業務上の危険とグリーンジョブを検討するための枠組を以下に示す。
業務上の危険とグリーンジョブを検討するための枠組
古い | 新しい | |
---|---|---|
従来からの仕事 グリーンジョブ |
知っている 建設業 エネルギー効率のよい家を建てることにおいて、 労働者が断熱材に用いるホルムアルデヒドにばく露することなどによる健康障害を生ずる可能性がある。 |
知らないということを知っている エネルギー ソーラーパネルとその発電機の設置の過程で感電する危険が生じる。 農業 グリーン業務に関連する新たな危険、設備、化学物質 |
知っているということを知らない サービス リサイクル労働者に対する危険の多くは、他の仕事において確認されている。 エネルギー及び建設業 風車発電の建設と保守は、従来の建設職種の経験と類似している。 |
知らないということを知らない 医療 商品供給管理方法の意図しない変化による影響 サービス グリーン関連化学物質及びドライクリーニング用溶剤などの未知の健康リスク |
環境に優しい(環境保全に資する)製品については、 それを作る仕事自身も〔作業〕環境に優しいものでなければならない。 それは、また、周辺環境と最終消費者の保護のみでなく、それをつくる労働者をも保護するものでなければならない。 環境への優しさは、労働者に対する安全を含めるものでなければならない、 そしてグリーンジョブは安全な仕事でなければならない。 我が国は環境に(地球に)優しい国づくりに向っており、 新たな仕事及び新たな働き方のための労働者の教育訓練を早急に行う必要があることから、 我々は次のような、またとない前例のない機会に遭遇している。
農業は最も危険な産業に位置づけられている。農民は高いリスクに曝されている。 それらは死傷災害、胸部疾患、騒音による難聴、 化学薬品の使用に伴うおよび日光への長期ばく露によるある種のがんなどである。 農業は、また、家族(しばしば作業を分担し、同一場所に居住する)も負傷、 疾病および死亡の危険を共有する数少ない産業の1つである。
職場および作業行動における化学物質と化学へのばく露の危険が研究されてきている。 ばく露を最小限にするための危険審査と推奨事項は、アクリルアミド(acrylamide) からキシレン(xylene)までの化学物質についてNIOSHの研究成果から活用することができる。
1‚100万人を超える建設労働者が、道路、家、作業場および各種のインフラの建設、保全に従事している。 これらの作業は、本質的に危険な仕事である。 それらは高所、掘削、騒音、粉じん、動力工具・設備、密閉空間、電気に関連する作業である。 建設労働者は全労働者の約8%であるが、死亡災害の22%を占めており、最も死亡者数の多い産業である。
電流は労働者を重篤な幅広い危険に曝しており、 実際に労働者の多くが日常の仕事を通じて電気エネルギーにばく露されており、 多くの種類の仕事において感電災害が発生している。 多くの労働者は、作業環境における感電の潜在的危険に気づいていないことが多い。 電気災害は、4つ種類がある、すなわち、感電(死亡)、電気ショック、火傷、 電気エネルギーへの接触による高所からの墜落である。
高所からの墜落危険は、ほとんどすべての作業現場に存在し、多くの労働者が日常的にこれらの危険に曝されている。 どんな歩行または作業面にも潜在的墜落危険があり得る。 6フィート以上の高さの防護されていない作業床の端などは、手すり、 防網の設置または安全帯の使用などにより墜落危険を防止する必要がある。 これらの危険へのばく露は様々な形で存在し、 電球を脚立上で取り替える作業から空中で高圧ボルトの取付け作業など多岐にわたっている。
吹き付け加工から西ナイルウイルスまで、 作業現場および作業活動における広範囲な業務上の危険とそれらへのばく露について研究が行われてきている。 危険源についての審査とばく露を最小限にし、また、危険源に取組む方法等は、NIOSHの研究成果から見出すことができる。
屋外労働者は、作業の種類、地域、季節、屋外で働く期間による様々な危険にばく露される。 屋外労働者を雇用する業種としては、農業、林業、漁業、建設業、鉱業、運輸業、倉庫業、公益事業、サービス業等がある。 屋外労働者には、農業従事者、林業従事者、造園工、グラウンド管理職、園芸職、塗装工、屋根職人、 建設労働者、労働工、機械工、その他屋外で労働する者が含まれる。 事業者は、これらの労働者に対して作業場所の危険、特に危険源の確認、 危険防止およびばく露制御をする方法について教育訓練を行う必要がある。
高速道路上での死亡災害は、業務上の死亡災害では最も多く、2007年では業務上の死亡者の4人に1人に上っている。 高速道路上の死亡災害は、2007年では、前年に比べて3%減少し、1993年以降最低であるが、今なお、1,311名に上っている。 工場などでの死亡事故は、増減していない。 車両または移動装置に激突される死亡事故は、2006年の379名から2007年は342名に減少した。
多くの労働者が機械・装置との危険な接触の結果により死亡し、負傷している。 負傷の主な原因のいくつかは、特に農業、鉱業、製造業および建設業において、激突・激突され、 挟まれ・または巻き込まれ、崩壊・倒壊によるものである。
製造業の製造活動は、食料、繊維加工と製造、金属加工と重機械製造、石油精製、化学品製造と多岐にわたっている。 製造工程は、鉱物、金属、化学品等のバラ物の製造、電子部品、特殊化学品、ナノ粒子などにわたっている。
NIOSHは、ナノ物質の健康への研究の最前線に立っている。 また、最新の科学的知見に基づいて中間的指針を提供している。
騒音は、新しい危険源ではないが、産業革命以来の継続的脅威である。 長期間の騒音へのばく露は、一時的に聴覚に変化をもたらし、また、一時的に耳鳴りのような症状をもたらす。 これらの短期間の症状は、通常は、騒音場所から離れれば消滅する。 しかし、強烈な騒音への長期間のばく露は、永久的、治癒不能の難聴または耳鳴りになる。 NIOSHは、作業場所の危険な騒音を可能な限り除去し、危険な騒音へのばく露が制御されず、 また、除去できない作業場所での保護具の使用について勧告している。
NIOSHが推奨している防護衣とこれら衣類の組み合わせプログラムは、作業場所およびテロリスト攻撃による皮膚、 その他諸々の健康障害を防護することを目的にしている。 このプログラムは、化学物質がバリア材をどのように浸透し、微小孔から侵入し、 あるいはバリア材の防護能力を劣化させるかなどの広範囲な研究の成果に基づくものである。
呼吸用保護具の使用はばく露管理順位において最下位に位置づけられるが、 NIOSHは、工学的対策またはその他の対策の実行可能性がない場合の呼吸用保護具の使用についての基準を推奨している。 これらの呼吸用保護具の使用基準および捕集効率の評価方法については、 連邦規則第84編第42項の呼吸用保護具規定に基づき、また、政府と産業界の間の協力によりNIOSHが資料を作成している。
6,500万人を超える労働者がサービス産業において雇用されている。 これらの産業における職業は、米国労働者の50.5%に、また死亡災害の29%および休業災害の23%に上っている。 サービス産業における死亡災害の主な原因は、交通事故と暴力である。
運輸、倉庫および公益事業の700万人を超える労働者が、死亡災害および休業災害を蒙るリスクに曝されている。 これらの産業での職業は、全米労働者の5%、死亡災害の15%に上っている。 トラック輸送に従事する労働者の死亡者数は、これらの産業における死亡者数の58%に上っている。 さらにこれらの死亡災害に加えて、交通事故、過重労働、感電、車両排ガスおよび墜落等による傷病の危険に曝されている。
NIOSH Science Blogにおいても “Going Green: Safe and Healthy Jobs” の項目が2009年7月1日に掲載された。