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国からの委託事業であった 「国際安全衛生センター(JICOSH)」 が2008年3月末をもって廃止されました。 永らくのご利用ありがとうございました。 同センターのサイトに掲載されていた個別の情報については、中災防WEBサイトの国別、分野別情報にリンクして取り込んでおります。
2010年6月11日
欧州労働安全衛生機構 (European
Agency for Safety and Health at Work
(EU-OSHA))の次期安全衛生キャンペーン(2010〜2011)は、EU域内事業場における保全作業の安全の重要性及び保全作業が適切に実施されない場合におけるリスクについての認識の向上を目的として実施されることとなり、2010年4月28日に公式に開始された。その手引きの概要を紹介する。
また、キャンペーンのためのサイト(Healthy
Workplaces Campaign 2010-2011
)が、設置されており、関連資料が逐次掲載される。
原資料の題名と所在
Healthy Workplaces
Campaign guide. A European campaign on safe maintenance 2010-2011
キャンペーンの内容 | ||
キャンペーンの目的 重要な関連行事 |
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保全とは?それがなぜ重要か? | ||
保全過程の不適切な連絡調整による損失:パイパーアルファー事故 保全業務の労働者の安全衛生に対する影響 保全に関連する危険及びリスク |
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正しい保全とは? | ||
正しい保全業務の一般原則 安全保全の5つの基本規範
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2010〜2011年の安全衛生キャンペーンは、EU-OSHAと加盟各国の連携により実施し、安全な保全(Maintenance)を推進するための各国レベル及び欧州レベルにおける広範囲な活動を支援することとしている。
キャンペーンについては、2010年においては、欧州連合議長国のスペインとベルギーが支援し、2011年においては、ハンガリーとポーランドが支援するとともに、欧州議会および欧州理事会並びに域内の社会的パートナーも支援する。
キャンペーンは、EU加盟国を含む30カ国以上の国を対象としている。
最終目標は、当然のことであるが、現在及び将来にわたって、不適切な保全または保全の欠如の結果として、人々が負傷しまたは健康を害することを少なくすることに資する。
キャンペーンは、2010年4月28日、世界労働安全衛生日から開始する。
キャンペーン行事の多くは、欧州労働安全衛生週間(2010年10月及び2011年10月)に焦点をあわせて行われる。この安全衛生週間は、職場の安全衛生の改善を推進することを目的として2000年から毎年実施されてきている。安全衛生週間には5つの目的、「安全衛生意識の向上」、「安全衛生情報の提供」、「安全衛生支援へのアクセスの開発と提供」、「職場へインパクトを与える活動の実施促進」及び「改善事例の確認と認定」がある。
キャンペーンの一環として、EU-OSHAは安全衛生に関する改善事例表彰を行っている。この表彰は、一貫性のある保全業務を定常的な職場管理に取り入れるための革新的な方法を開発した組織体に対して行うものである。受賞者は、100名未満の企業と100人以上の企業を対象としている。
1988年7月、世界中のメディアは一斉に油田掘削施設(オイルリグ)が火玉(Fire ball)となった凄惨な映像を流した。この悲惨な災害は、北海のオイルリグにおいてコンデンセート油が引火し、オイルリグが一瞬にして地獄絵図となり、167人の労働者の生命が失われたパイパーアルファオイルリグ災害として知られている。
この災害は、オイルリグのコンデンセートポンプの保全のために、その安全弁を取り外されていたが、もう1つのコンデンセートポンプが故障したため、安全弁が取り外されメンテナンス中のコンデンセートポンプを起動したことから、コンデンセート油が放出され、引火し大災害に至ったものである(メンテナンス中のコンデンセートポンプの使用禁止の書類は、作成されていたが操作室には届いていなかった。)。
この災害は、保全業務における連絡調整が不適切であるために大災害に至った極端な事案である。このような災害は、他の産業においても起こり得ることであり、不可抗力または天災などではなく、保全業務における安全衛生面が軽視されたことによるものである。
*コンデンセートはもともと凝縮物という意味で、凝縮水を指すこともあるが、普通、地下で気体状で存在している炭化水素を地上で採取する際、凝縮する液体(油)をコンデンセート油、または単にコンデンセートという。
保全業務(工場、施設、機械、作業場などの)は、作業場の危険源を除去し、安全な作業環境を確保するための必須項目である。保全業務は、保全作業者及び付近の作業者に対する防護措置を講じたうえで安全な方法により行われなければならない。
保全業務には、
多くの事故は、何かが故障し、または、うまくいかなくなったときの事後保全中に起こるとも言われている。
保全業務には、作業場の建物及び施設、機械装置あるいは運搬装置の検査と試験、並び調整、修理及び部品の交換作業がある。保全業務は、しばしば軽視されることがあるが、正規の保全が実施されなければ、事態は破滅的に悪化し、死亡または重大災害を招くこととなる。いかなる小さな部品であっても、若し適切な保全がなされなければ、重大な問題を惹起するおそれがある。これらの問題は、直接の作業者のみならず他の作業者あるいは一般公衆にも影響を及ぼす。
適切な保全業務は、作業場所の危険源(Hazard)及びリスク管理のための必須事項である。一方、保全作業それ自身は、高リスクを伴う作業行動であり、死亡災害の10%〜15%、全災害の15%〜20%が保全業務に関連していると推定されている。
保全作業者は、他の作業者より、化学的、物理的、生物学的、心理社会的危険源などの多様な危険源に曝される機会が多い。
保全作業者が直面する危険源
物理的(危険源) |
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化学的(危険源) |
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生物学的(危険源) |
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心理社会的(危険源) |
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保全過程は、安全衛生作業の実施そのものである。保全業務の内容は、業種業態に応じて変わるが、適切な保全業務についていくつかの共通原則を知っておくことは重要でる。
これらの共通原則は、
また、保全業務を単一、単純な仕事としてではなく、系統的に管理されているかどうかのプロセスとして保全業務を見ることが大切である。
事業場において必要とすることは、保全業務に対する総合的かつリスクアセスメントに基づくアプローチである。言い換えれば、保全の各段階において安全衛生面を考慮し、保全管理過程に作業者を参加させることである。
作業場における安全衛生向上キャンペーンでは、事業者がこの総合的アプローチを取ることを推奨している。
EU-OSHAは、5つの基本規範による安全保全への体系的アプローチを推進することとしている。
5つの基本規範は、計画/作業場所の安全化/適切な装置等の使用/計画通りに作業すること/最終的点検の実施より成る
保全業務は、適切な計画樹立からはじめる。事業者は、関係作業者を参加させた保全業務のリスクアセスメントを実施する。考慮すべき事項は、
保全作業者(付近の作業者を含む。)に対する教育訓練は、計画段階の重要な事項である。保全作業者の能力、特に検査、試験の際の能力は、安全にとって死活的に重要であり、能力、経験がない者を保全業務に従事させた場合には、事故となる危険が大きい。
事業者は、作業者が仕事に必要な技能を有し、安全作業手順が知らされており、教育訓練で得た能力の範囲を超えたときに取るべき方法を知っていることなどについて、的確に対処(確認)する必要がある。事業者は、また、保全業務に従事する者に関する指揮命令系統及び作業中の手順、例えば、問題が発生した場合の報告手順などについて注意深く検討する必要がある。特にこのことに関しては、保全業務を下請け業者に行わせている場合に大切である。
作業者の意見を聴き、また計画を周知することは、計画段階の全体にわたって非常に重要である。保全業務に従事する者が当初のリスクアセスメントの結果について知らされているだけでなく、アセスメントの実施に参加させるべきである。作業者は作業場の状況に精通していることから、危険源を確認するのに最もよい立場であり、また、危険源に対処する最も効率的な方法を見出すことができる。計画の過程での作業者の参加は、保全業務の安全性を向上させるのみならず、その品質の向上にも寄与する。
計画段階において作成された手順を実施するに当っては、作業場所をキチンと確保する必要がある(例えば、許可なく立ち入りを禁ずるために柵を設置し、または立入禁止を標示する。)。
作業場所の清潔、動力源の遮断・施錠、機械作動部分の安全化、臨時換気装置の設置及び、出入り口の安全通路の確保などにより安全を確保する。機械には動力源施錠の日時・期間、開錠できる者の名前を記載した警告板を掲示する。このことにより、保全業務を行う作業者が、他の作業者の不注意による機械の起動により危険に曝されないようにする。
若し可能なら、機械の覆いを取り外す保全より、さらに小規模で保全ができるように覆いを設計することが望ましい。覆いを取り外し、または機械の停止措置を講じなければならない場合は、ロックアウト(機械等を停止し、施錠し、警告板を掲示する。)手順に従わなければならない。保全運転者または作業者については、覆いをどのような状態のもとでどのような取り外すかについて十分な教育をする必要がある。
保全業務従事者は、通常使用している工具、装置とは異なるものを使用することが多いので、作業に合った適切な工具、装置を使用する。保全作業者は、人が作業するように設計されていない箇所で作業し、多様な危険に曝されることを考慮し、当該作業者には適切な個人保護具を使用させる。
例えば、排気装置のフィルターを清掃し、交換する作業者は、高濃度の粉じんに曝される恐れがある。また、フィルターは、しばしば屋根上に設置されていることから、安全な接近手段を確保する必要がある。作業に要する工具、保護具はいつでも使用できるようにしておく(必要に応じ、取扱い説明書等も用意しておく)。
保全業務は、しばしば多様なプレッシャーのもとで行われる−失敗は、生産工程の停止に結びつくからである。
作業計画については、たとえ時間的プレッシャーがあっても順守する必要がある。ショートカットにより事故、負傷、設備の損傷が発生した場合には、非常に高くつくことになる。若し、何か想定外のことが発生した場合には、監督者に報告し、専門家に相談することが必要となってくる。作業者の技量及び能力を超えることは、重大災害に結びつくおそれがあることに、十分留意すべきである。
保全過程は、最後に点検をして終了する。保全業務の最後には、任務が完了したこと、保全対象が安全な状態にあること、保全過程で発生した廃棄物が片付けられていることを確認する。すべてを点検し、安全であることが確認された時点で保全の任務は終了し、監督者に報告し、他の作業者にも周知されることとなる。
最終段階としては、実施作業の内容の記述、保全中に直面した困難についてのコメント及びこれらの改善のための提案を含めた報告書を完成させることである。
理想的には、この内容を関係作業者を含めた会議において検討し、保全過程の改善についての提案を行う。
E-fact 及びFactsheet
Title | Date of publication | Type of publication | |
---|---|---|---|
E-fact 49:採石業における保全作業の安全 E-fact 49: Safe maintenance - quarrying sector |
27.04.2010 | E-facts | |
E-fact 48:アスベスト使用建物保全作業の安全 E-fact 48: Safe maintenance - asbestos in building maintenance |
26.04.2010 | E-facts | |
Factsheet 90 - 保全作業に関する労働安全衛生統計 Factsheet 90 - Maintenance and OSH - A statistical picture |
03.02.2010 | Factsheets | |
Factsheet 89 - 事業主が保全作業において、作業者の安全を守り、費用を節約するための手引き Factsheet 89 - Safe maintenance - For employers Safe workers - Save money |
01.02.2010 | Factsheets | |
Factsheet 88 - 安全な保全作業のための作業者向け手引き Factsheet 88 - Safe maintenance - Safe workers |
18.01.2010 | Factsheets |
リーフレット、ポスター、パワ−ポイント等
欧州安全衛生機構(EU-OSHA)は、下記の通り、毎年テーマを変えて安全衛生キャンペーンを実施してきた。それぞれのサイトには多くの資料が掲載されており、その一部は、海外トピックスにおいて紹介してきたところである。
2000年: 筋骨格系障害の防止
Turn your back on musculoskeletal disorders
2001年: 成功は無災害
Success is no accident
2002年: 仕事上のストレス
Working on stress
2003年: 危険有害物質
Dangerous substances, handle with care
2004年: 建設業の安全
Building in safety
2005年: 騒音の防止
Stop that noise
2006年: 若年労働者
Young people
2007年: 筋骨格系障害
Lighten the Load, Musculoskeletal disorders (MSDs)
2008-2009年: リスクアセスメント
Risk Assessment