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各国情報・国際関係

アメリカにおける市民への電話インタビューによる業務上傷害発生状況調査

2010年11月30日

Morbidity and Mortality Weekly Report (CDC)2010年7月30日 別ウィンドウが開きます

アメリカでは、労働統計局(BLS)などが事業者からの報告に基づいて作成している傷害統計の件数が過小ではないかとの指摘がなされ、この問題に関する検討が、労働安全衛生局(OSHA)の施策に取り上げられている。
この調査は、各州が有している、無作為に抽出された市民への固定電話インタビューにより、リスク要因への行動状況を調査するシステム(BRFSS)を利用して、傷害を受けた労働者の比率及びその治療費の給付を労災保険から受けた比率について行われたものである。
アメリカ疾病予防センター(Centers for Disease Control and Prevention -CDC 別ウィンドウが開きます )から定期的に刊行されている傷病、死亡週報(Morbidity and Mortality Weekly Report-MMWR 別ウィンドウが開きます ) Weekly July 30‚ 2010 / 59(29);897-900にその結果が掲載されたので概要を紹介する。

原資料の所在と題名
2007年に10州において、業務上傷害を受けた労働者及びその傷害の治療費を労災保険から給付された者の比率
Proportion of Workers Who Were Work-Injured and Payment by Workers' Compensation Systems 別ウィンドウが開きます
− 10 States‚ 2007
Weekly: July 30‚ 2010 / 59(29);897-900

1
報告の概要
 
表1 調査結果表
2
追記

 

1  報告の概要

業務上の傷害は、アメリカにおける傷病原因の多くを占め、2007年における事業主からの報告では、おおよそ400万件の負傷災害及び疾病が発生している。

各州ごとの無作為に抽出された市民人口ベースの業務上傷害の発生率の推定は、最近までほとんど行われていないが、自己申告による負傷災害の発生率が、事業主または労災保険システムによる報告を上回っていることが、わずかながら行われた研究によって明らかとされている。

2007年の10州におけるBRFSS(Behavioral Risk Factor Surveillance System―リスク要因への行動状況を調査するシステム)調査において、過去12ヶ月以内に業務上の傷害を受けた労働者の比率及び傷害を受けた労働者が、労災保険から医療費の給付を受けた比率を推定するモジュールを追加して実施した。本報告は、その結果の要約である。

過去12ヶ月以内に職場において傷害を受け、医師の診察・治療を受けた労働者の比率は、最高がニューヨーク州の6.9%、最低はケンタッキー州の4.0%、中央値が5.9%であった。また、この傷害について、治療費の給付を労災保険から受けた労働者の比率は、最高がケンタッキー州の77%、最低はテキサス州の47%、中央値は61%であった。(各州ごとの数値を表1に示す。)

この研究により、既存の傷害統計を補完するために、市民ベースの調査が、実施可能であることが明らかとなったが、傷害の治療費が給付されない理由については、さらに調査する必要があるとしている。

BRFSSは、各州ごとの年齢18歳以上の市民人口ベースの健康に関する状態及び行動に関するデータを収集するための固定電話によるRDD(random digit dialed)方式調査システム(無作為抽出)であり、回答者が雇用されていて、過去12ヶ月以内に医療または診察を受ける必要のある業務上傷害を受けたか及び傷害を受けた場合、医療または診察の費用を労災保険から給付を受けたかについて、下記の手順により調査した。

  • 学生、退職者、労働不能の者、主婦を除外した後、「過去12ヶ月以内にフルタイム、パートタイム、自営業のいずれかで就労したことがあるか?」との質問をした。
  • この質問に肯定した対象者に、「過去12ヶ月以内に、仕事中に診察または治療を必要とする怪我をしたことがあるか?」との質問を行った。
  • これを肯定した対象者に、「最近の仕事中の怪我に対する治療費を誰が払ったか?」との質問を行った。
  • 州、連邦または軍の労災保険により支払われたか、労災保険に対する請求をしていると回答した対象者は、労災保険によって支払われたとした。

自営業者は、労災保険への加入が通常義務付けられていないので、比率算出の対象から除外した。

BRFSSのサイト
http://www.cdc.gov/brfss/index.htm 別ウィンドウが開きます

表1  調査結果

表1 調査結果
自己申告による業務上の傷害を受けた18歳以上の者の比率
及び労災保険から治療費の給付を受けた者の比率
2007年の10州におけるBRFSS調査
回答者数 傷害を受けた労働者の率 労災保険から給付を受けた労働者
100人率 (95% 信頼限界)   %   (95% 信頼限界)
ケンタッキー 2‚552 4.0 (2.8--5.2) 77 (65--89)
マサチューセッツ 2‚310 4.2 (3.1--5.4) 60 (45--75)
ニュージャージー 1‚730 4.3 (3.1--5.5) 64 (51--78)
コネチカット 3‚778 4.7 (3.7--5.6) 63 (53--74)
オレゴン 2‚425 5.9 (4.6--7.2) 62 (50--74)
テキサス 4‚643 5.9 (4.6--7.5) 47 (35--59)
ワシントン 7‚348 6.0 (5.2--6.7) 61 (55--67)
ミシガン 1‚482 6.3 (4.8--8.2) 56 (41--69)
カリフォルニア 2‚758 6.3 (5.1--7.4) 61 (55--66)
ニューヨーク 3‚173 6.9 (5.6--8.2) 50 (39--60)

2  追記

アメリカにおける連邦及び州レベルの業務上傷害に関する主要な統計は、労働統計局(Bureau of Labor Statistics-BLS 別ウィンドウが開きます ) による、事業主による件別報告に基づく「業務上傷害及び疾病調査」(Survey of Occupational Injury and Illness (BLS SOII))である。

事業主の報告に基づく統計は、労働者が事業主に傷害を報告しないことがある他、事業主による記録が不完全であるため、傷害発生の全体より、低めの推計となる。BRFSSによる人口ベースの調査は、これを補完するものである。

BRFSSによる調査の利点は、BLS SOIIよりも広い範囲の傷害を把握できることである。例えば、BLS SOIIの対象が、OSHAによる記録保管規則(recordkeeping rule)の対象に限られているが、BRFSSで報告されるものは、これより範囲が広い。

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