お問合せ

中央労働災害防止協会(中災防)
技術支援部
国際課
TEL 03-3452-6297
FAX 03-5445-1774
E-mail: kokusai@jisha.or.jp

 

お知らせ

国からの委託事業であった 「国際安全衛生センター(JICOSH)」 別ウィンドウが開きます が2008年3月末をもって廃止されました。 永らくのご利用ありがとうございました。 同センターのサイトに掲載されていた個別の情報については、中災防WEBサイトの国別分野別情報にリンクして取り込んでおります。

 

Get ADOBE READER
PDF形式のファイルをご覧になるには、Adobe Systems Incorporated(アドビシステムズ社)のAdobe® Reader™が必要です。

 

各国情報・国際関係

機械安全に関するリスクアセスメント(韓国)

2011年4月6日

2010年度の1月25日から27日の3日間において、題目をリスクアセスメントとして、国際安全衛生セミナー※を開催しました。当該セミナーにおいて、韓国から機械安全に関するリスクアセスメントの取り組み状況について報告があり、リスクアセスメントを推進させる上で参考になると考え、韓国の報告要約を以下に紹介します。

※ 国際安全セミナーとは、厚生労働省から委託を受けて、当協会が平成19年度より実施している事業です。当該セミナーの開催目的、題目及び日程については、当協会ホームページをご参照ください。

機械安全に関するリスクアセスメント(現行制度及び今後の計画)
韓国産業安全保健公団(KOSHA)
ソール ムンスー氏

1.
序論
2.
韓国における機械災害
3.
安全認証制度(KCs mark)
3-1.
安全認証が適用される製品
3-2.
安全認証制度の査定および手順
4.
適合宣言
4-1.
適合宣言が適用される製品
4-2.
適合宣言の手順
5.
Sマーク安全認証制度
6.
安全検査
6-1.
検査が適用される機械
6-2.
自主検査プログラム承認制度
7.
機械リスクアセスメント
7-1.
リスクアセスメントの基準
7-2.
機械リスクアセスメントの公開プロジェクト
8.
リスクアセスメントの今後の展開
9.
結言

1.序論

韓国では、プレス機械のような危険機械による災害を防止するために、1991年から設計、完成、性能および定期の検査制度が導入されてきた。しかし、最近の10年間、労働災害の発生率は0.7%台で推移し改善されていない。又、年間労働災害発生件数の25%は機械災害である。このため、2009年にこれまでの制度は、機械の安全検証制度の強化を目的として安全認証および安全検査制度へと変更された。
EU加盟国では、全ての機械メーカーはリスクアセスメントの実施によって機械の基本的安全を確保するものとされている。日本では2001年の労働安全衛生法に基づき、機械メーカー及びユーザー(機械使用事業者)は機械のリスクと有害性の調査、および機械が使用されることによる労働災害を防止するために必要な措置をとることを(make a move safety measures)求められている。更に2007年7月7日には「機械の包括的な安全基準に関する指針」が改正導入された。

2.韓国における機械災害

KOSHAの労働災害要因の分析によれば、機械災害の発生は直近の10年間では年間平均20‚000件に及ぶ(参照:図1)。又、分析の結果をみると2006年から2009年の4年間、機械による災害は継続的に年間労働災害発生数の約25%を占め、その74%は検査制度適用外の機械に起因している(表1)。

図1 : 韓国労働災害および職業病年間発生状況

図1 : 韓国労働災害および職業病年間発生状況

表1:労働災害状況 2006年−2009年

合計 2006 2007 2008 2009
労働災害合計 318‚829 73‚399 75‚351 81‚042 89‚100
機械災害 小計 76‚408(24%) 17‚559(24%) 18‚390(25%) 19‚850(25%) 20‚609(23%)
危険機械(検査制度適用) 19‚801 5‚339 4‚311 5‚590 4‚561
その他の機械(検査制度適用外) 56‚607 12‚220 14‚079 14‚260 16‚048

更に、2008年から2009年に発生した労働災害総計のうち、機械災害53‚881件の起因物の分析結果によれば、プレス機械、フォークリフト、研削盤、鋸盤(木材加工用を除く)、断裁機の順に多発している。上記の機械を含む災害発生頻度の高い上位15の機械による災害は機械災害全体の40%を占めている(表2)。

表2: 機械災害 2008年−2009年

機械名 順位 2008 2009
  21‚914 11‚161 10‚753
プレス機械 1 3‚150 1‚720 1‚430
フォークリフト 2 2‚487 1‚330 1‚157
研削盤(携帯用を含む) 3 2‚424 1‚221 1‚203
鋸盤 4 2‚083 719 1‚364
断裁機 5 1‚791 947 844
クレーン 6 1‚563 911 652
コンベヤー 7 1‚118 617 501
粉砕機 8 1‚070 615 455
ドリル 9 1‚040 567 473
プレスブレーキ 10 976 527 449
木材加工用機械 11 945 432 513
食材カッター 12 939 434 505
油圧ショベル 13 919 470 449
食材粉砕混練機 14 889 434 455
携帯用ドリル 15 520 217 303

上記と同じ期間に発生した災害の原因分析結果によれば、安全装置の欠陥または、安全カバーの未設置などの技術的要因(Technical causes)による災害が約73.5%、機械作業者の不注意、作業手順の非遵守(Managerial causes)によるものが23.9%、その他教育の未実施(Educational causes)などによるものが2.4%となっている(図2)。

図2:機械災害の原因

図2:機械災害の原因

機械災害のタイプ別分析によれば、稼働中の機械に巻き込まれたことによる圧迫、切傷事故は44.3%、稼働中の機械に激突(され)することによる激突災害は25.6%、研削による破片の飛来やつり上げ装置の欠陥により積荷が落下し直撃した事故は8.8%、その他墜落転落を含む機械関連の災害は約20%である(参照:表3)。

表3:機械災害の種類

区分 切れ、押しつぶされ 激突、激突され 飛来、落下 墜落、転落 転倒 その他
(%) 100 44.3 25.6 8.8 5.1 4.2 9.9
53‚881 23‚880 14‚856 4‚768 2‚761 2‚270 5‚346
2009 28‚441 12‚185 8‚619 2‚240 1‚056 1‚214 3‚127
2008 25‚440 11‚695 6‚237 2‚528 1‚705 1‚056 2‚219

3.安全認証制度(KCs mark)

1989年から実施されていた機械の基本的〈本質〉安全を検査および試験制度により確保しようとする取組みの限界を是正するため、又、2009年1月1日から導入されたKCマーク導入等の政府方針に従い、危険機械の設計、完成及び性能の検査制度並びに設計及び製造段階における個人用保護具や安全装置の試験制度は安全認証制度、適合宣言報告制度に変更された(図3)。

図3:制度改正の概要

図3:制度改正の概要

安全認証制度は、安全性が確保された製品を製造・販売・使用することにより、労働災害を防止する法的強制力を備えた認証制度である。法律に規定する全ての危険機械、安全装置及び個人用保護具は、設計及び製造の段階で適用条件を全て満たしていることを労働省が指定した機関により認証されなければならない。

3-1.安全認証が適用される製品

クレーンなどの危険機械8種、プレス機械の安全装置などの安全装置8種、保護帽などの個人用保護具12種を含む計28種の製品に安全認証制度が適用される。詳細は表4を参照。

表4:安全認証適用機械

区分 製品
危険機械 8種 クレーン、プレス機械、断裁機、ロール機、昇降機、圧力容器、射出成形機、移動式作業床
安全装置 8種 プレス安全装置、過負荷防止装置、ボイラー安全弁、圧力容器安全弁、圧力容器破裂板、絶縁用防護具、電気防爆装置、建設用仮設装置
個人用保護具12種 保護帽、安全靴、保護手袋、防じんマスク、ガスマスク、空気呼吸器、 空気清浄呼吸用保護具、防護服、安全ベルト、保護めがね、溶接用保護面、耳栓または、 エアマフ
3-2. 安全認証制度の査定および手順

安全認証制度では4種類の査定が行われる。第一は認証を申請した製品の技術構造資料が安全認証に係る全ての適用条件を満たしているかを査定する書類審査である。第二は申請製品の性能の安全性を継続的に維持するために、製品の技術的性能及びメーカーの製造システムが安全認証基準を満たしているかを確認する技術性能および製造システム査定である。第三は、申請製品の安全性能が安全認証基準に適合しているかを評価する製品査定である。最後は認証を受けた製品が認証後も継続的に安全認証基準に適合しているかを確認する追跡査定である。

図4:安全認証手順

図4:安全認証手順

安全認証の手順は製品の製造タイプに基づいて二つのモジュールに区分される。第一の認証モジュールは作業現場で組み立て又は使用されるクレーンや建設用エレベーター等の書類審査と製品査定をカバーする。書類審査は製品の種類ごとに、製品査定は申請された全製品を対象に個々に行われる。第二の認証モジュールは製造現場に搬入され組み立てられるプレス機械や射出成形機の書類審査、技術性能および製造システム査定、更に製品査定をカバーする。この場合、製品査定は製造段階で製品種別毎に抽出査定を行う。このモジュールでは申請製品が認証された後、毎年追跡査定が行われる。(参照:図4)

4. 適合宣言

適合宣言には法的強制力がある。危険機械、安全装置、個人用保護具のメーカーや輸入業者は取り扱う製品が労働省の自主的安全基準に定められた必要条項に適合していることを宣言し、KOSHAにその旨を書面で提出する。KOSHAの承認後、当該製品にKCsマークを貼付する。KCsマークのある製品のみ市場での取引が許可される。

4-1.適合宣言が適用される製品

適合宣言の対象となる製品は14種類となる。製品の詳細は表5を参照。

表5: 適合宣言の対象製品

区分 製品
危険機械3種 遠心分離機、エアコンプレッサー、 ゴンドラ
安全装置8種 アセチレン溶接用安全装置、 溶接用自動電撃防止器機、ロール機緊急停止装置、研削盤カバー、丸鋸盤安全装置、動力鉋盤安全装置、産業ロボット用安全マット、建設用仮設装置
個人用保護具3種 保護帽、保護めがね、溶接用防護面
4-2. 適合宣言の手順

適合宣言制度が適用される機械のメーカーおよび輸入業者は、当該製品の導入マニュアルおよび自主的安全基準に規定された必要条件に適合していることを証する試験報告書を添付してKOSHAに適合宣言書を提出する。KOSHAは申請日より15日以内に当該書類を検証し、メーカー又は輸入業者に認証書を発行する。(参照:図5)適合宣言に対して認証書の発行を受けたメーカー又は輸入業者は当該製品にKCマークを貼付した後、製品を市場に出す。韓国政府は認証を受けた製品が市場に出てからも自主的安全認証制度の必要条件に適合しているかを監視する。

図5:適合宣言の手順

図5:適合宣言の手順

5.Sマーク安全認証制度

Sマーク安全認証制度とは法定の自主的安全認証制度で、KCマーク適用外の産業機械や設備のメーカーは労働省が認可した機関の認定を自主的に取得し、製品にSマークを貼付して認証製品として販売することができる。Sマーク認証制度の手順はKCマーク認証制度の手順と同様である。
1997年7月のSマーク認証制度導入後、セミコンダクター製造設備や光電子工学安全装置などの製品が毎年800から1‚000件のSマーク認証を取得している。2010年4月には7‚000件目の認証が行われた。更に、KOSHAは韓国に輸出しようとする海外の業者に、SGSおよびTUV Rheinland等の世界的な公証機関との間で覚書を作成するよう要請している。

6.安全検査

安全検査は法的強制力のある検査制度で、危険機械を使用している事業者は、その機械の安全機能が安全検査基準に適合していることを確認するために労働省が指定した検査機関によって定期的な検査を受けなければならない。

図6:使用段階における改正の概要

図6:使用段階における改正の概要
6-1. 検査が適用される機械

クレーンやプレスなどの12種の危険機械は労働安全衛生法(参照:表6)に基づき、検査を受けなければならない。最初の安全検査は新規に機械を導入後3年以内に実施されなければならず、その後2年ごとに検査を受けなければならない。

表6: 検査適用機械

区分 製品
危険機械・装備12種 プレス、断裁機、クレーン、リフト、圧力容器、ゴンドラ、局所排気装置、遠心分離機、化学設備および付属装置、乾燥設備、ローラー、射出成形機
6-2.自主検査プログラム承認制度

自主検査プログラム承認制度とは、危険機械を使用する事業者が労働者代表と合議の後、当該危険機械の自主検査プログラムを作成し、労働省が認可した承認機関から承認を受けた場合は検査制度の適用から除外される制度である。

7.機械リスクアセスメント

7-1. リスクアセスメントの基準

KOSHAは2000年にメーカーとユーザーに対し、リスクアセスメントによって機械安全を確保することを目的として“機械リスクアセスメントガイド”第一版を作成した。ガイドの主な内容は、リスクアセスメントの概念、手順、リスクの見積り等を含み、ISO14121-1(機械安全−リスクアセスメントの方針)の原則に基づいている。ガイドは化学工場の機械のリスク評価に使用され、自主的規約となっている。
更に2008年には“4Mリスクアセスメントガイド”を制定することにより、労働者が事業場の危険源や危険要因を効果的に査定し特定することが可能になった。4Mリスクアセスメントとはリスク要因を機械(machine)、媒体(media)、人(man)、管理(management)、の4項目に分類し、特定されたリスク要因各々の低減及び除去方法を指示している。機械安全に関連するリスクアセスメントの手法として、構造的欠陥、安全装置のエラー、基本的(本質)安全設計の欠落、使用される事業場および機械搬入の欠陥等によるリスク要因の存在を確認する。

7-2. 機械リスクアセスメントの公開プロジェクト

2010年にKOSHAは安全な機械の需給促進のために機械リスクアセスメントの公開プロジェクトを実施した。昨年、KOSHAは5700企業に対しリスクアセスメントの手法、機械を設計・製造するうえで不可欠な安全衛生要件の教育を実施した。更に、500のメーカーの製品にリスクアセスメントを実施後、特定されたリスク要因に対する安全設計手法を指示した。

8.リスクアセスメントの今後の展開

韓国政府は、設計・製造段階での機械の本質的安全を確保するために、近い将来での機械リスクアセスメント導入を進めている。リスクアセスメントを適用される機械に関しては、下記の二点が挙げられている。一点は安全認証制度や適合宣言制度適用の対象となる製品以外の全ての機械を含むこと、二点目は事故が多発している特定の機械に照準を絞ることである。国外で生産された製品にも適用される。
又、韓国政府はメーカーと輸入業者がリスクアセスメントの報告書を一定期間保存すること、更にエンドユーザーがリスクアセスメント結果の信頼性を確認できるように、エンドユーザーに対して報告書を提出することを目指している。
更に、韓国政府は、安全認証や適合宣言制度およびメーカーのリスクアセスメントが適用される製品を機械のリスクレベルに基づいて分類し機械安全の制度を整理している。

表7:リスクレベルに基づく安全確保計画

リスクの程度 安全確保の計画 機械
法的強制安全認証 プレス機械等の危険機械
適合宣言 エアコンプレッサー、遠心分離機等
製造業者のリスク評価 上記二種を除くその他全て

9.結言

作業者が十分な注意を払って機械を使用しても、機械の根本的な安全性が確保されない場合は災害を防ぐことは不可能に近い。更に社会状況の変化や雇用構造の転換に伴い、高齢労働者、非熟練労働者、期間労働者および外国人労働者が増加し、その一方で近年製造された機械の管理システムが複雑になったため、安全に機械を使用するには専門的な教育と訓練が必要とされる。このような状況を考慮すれば、災害を未然に防ぐためには本質的に安全な機械の設計・製造は不可欠である。
韓国では特に危険な機械に関しては設計・製造段階での根本的な安全性の確保をメーカーに求めている。しかし、現状では機械の多くは安全性が確保されていない状況で製造、販売および使用されている。このような問題を改善するために、韓国政府はリスクアセスメントの導入および実施、機械認証制度の調整など制度および法令の改正を継続的に進めている。

全ての働く人々に安全・健康を 〜Safe Work , Safe Life〜

中央労働災害防止協会
〒108-0014 東京都港区芝5-35-2 安全衛生総合会館

  • 厚生労働省
  • 安全衛生マネジメントシステム審査センター
  • 安全衛生情報センター