アメリカ労働安全衛生局(US-OSHA
)は、安全衛生対策、法令等を分り易く解説した概説書(Fact sheet)を公表しているが、わが国においても多く使用されている高所作業車について簡潔にまとめられているものが公表されているので、以下のとおり紹介する。
原資料の所在:
Aerial Lifts Fact Sheets as pdf
- 1.
- 高所作業車
- 2.
- 高所作業車による危険源
- 3.
- 教育
- 4.
- 再教育
- 5.
- 高所作業車を操作する前に行うべき事項
- 6.
- 高所作業車の操作中に行うべき事項
- 7.
- 適用基準
1.高所作業車
高所作業車は、車両に搭載され、人を昇降させるために使用される次に掲げる装置をいう。
- 伸縮ブーム式作業床
- 高所作業用梯子
- 屈曲ブーム式作業床
- 垂直タワー
- 上記の組合せによる装置
高所作業車は、その機動性と柔軟性により多くの作業現場で梯子や足場に代って使用されてきている。これらは、金属、ガラス繊維強化プラスティック、その他の材料でつくられており、動力により作動するものと手動によるものがある。また、作業床が垂直軸に対して回転するものとしないものがある。
多くの作業者が、毎年、これらの高所作業車の使用により負傷または死亡していることから、労働安全衛生局では、事業者及び作業者が高所作業車の使用による危険について認識し、これらの危険源を除去することができるような以下の情報を提供している。
2.高所作業車による危険源
多くの危険源のうち、次のものは負傷または死亡に結びつくことが多い。
- 高所からの墜落
- 物の飛来落下
- 機体の転倒
- 作業床の突起物
- 構造の欠陥(崩壊)
- 感電
- 巻き込まれ危険
- 物との接触
- 天井または頭上の障害物との接触
3.教育
教育を受け、許可された者のみが高所作業車を操作することができる。教育内容は次のとおり。
- 電気危険、墜落危険及び飛来落下危険
- 危険源への対処方法
- 作業段取りでの不安全状態の確認とその除去
- 高所作業車の正しい操作(積載荷重を含む。)の指導
- 高所作業車を操作する前に必要な技能の実演と知識の確認
- いつ、どのように点検・検査を実施するか。
- 製造者の要求事項
4.再教育
次の状態が発生した場合には、作業者の再教育を行う。
- 高所作業車を使用中に事故が発生
- 高所作業車を含む作業場の危険源が判明
- 機種の異なる高所作業車を使用
事業者は、また、操作者が高所作業車を不適切に操作していることを見た場合に再教育する。
5.高所作業車を操作する前に行うべき事項
作業開始前の点検
その日の各作業開始前に装置及び各部品が安全な状態にあることを確認するため、チェックリストを使用して点検を行う。
車両部分
- 液レベルが適当か(潤滑オイル、油圧オイル、燃料及び冷却水)
- 液の漏洩
- 車輪及びタイヤ
- 下部操作レバー
- 警笛、計器、灯火、バックアップ警報器
- 操縦及び制動装置
昇降部分
- 操作レバー及び緊急操作レバー
- 個人保護具
- 油圧、空圧、燃料及び電気系統
- ガラス繊維及びその他の絶縁部品
- 名札、警告、または操作、指導、制御に関するマークなどが欠落し、または読みにくくないか。
- 締め金具及びロックピン
- ケーブル及び電気配線ハーネス
- アウトリガー、スタビライザー及びその他の構造部分
- 部品の緩み又は欠落
- 手すり
高所作業車の部品に欠陥がある場合には、これらが修理されるまで操作しない。欠陥ある高所作業車を故障中の表示(Tag-out)をし、使用対象機械から除外すること。
作業範囲の検査
事業者は、作業前及び作業中に作業範囲内の危険源の有無について検査し、危険の除去措置をとる。
- 崖(急斜面)、穴、汚れている不安定な表面
- 不十分な天井高さ
- 傾斜、溝、突起
- 瓦礫類、床上の障害物
- 架空送配電線、通信線
- その他の頭上障害物
- 強風、氷その他の悪天候条件
- 作業中、他の作業車等の有無
6.高所作業車の操作中に行うべき事項
墜落防止
- 作業床への出入り口または開口部が閉鎖されていること。
- 作業床が床上において確実に自立していること。
- 手すりに寄りかかったり、よじ登ったりしないこと。
- 作業位置に板、梯子その他のものを使用しないこと。
- ハーネスまたは安全ベルトを着用しこれをブーム又は作業床に結びつけること。
操作、走行、負荷
- 積載荷重を超えて使用しない。作業者の体重に工具及び材料の質量を加算する。
- 高所作業車をクレーンとして使用しない。
- 作業床より大きな寸法の物を載せない。
- 作業床を上昇させたまま走行しない(製造者の仕様書で可能としている場合を除く)。
- 作業床にいる作業者の了解を得ずに下部の操作レバーを操作しない(緊急の場合を除く)。
- 垂直及び水平限界距離を越えない。
- 油圧、電気及び機械式の安全装置を無効にしない。
頭上の安全防護
- 天井を含む上部の間隔及び障害物に注意する。
- 上部危険がある場合には、できるだけ高所作業車を設置しない。
- すべての架空送配電線、通信線を充電部分とみなし、最小限3メートル以上離し設置する。
- 電力会社が作業付近の送配電線の電気を遮断することを確認する。
作業範囲の安定性
- 敷き鉄板、または水平堅固な地盤にアウトリガーを設置する。
- アウトリガーを使用する場合には制動装置を作動させる。
- 円錐標識などの作業範囲警告表示をする。
絶縁型高所作業は、電撃及び感電から作業者を防護する。しかしながら、作業者が他の部分に接触すると通電回路が形成され、感電することに注意する。
7.適用基準
- 連邦安全衛生規則
29 CFR 1910.67, 29 CFR 1910.269(p), 29 CFR 1926.21, 29 CFR 1926.453, 29 CFR 1926.502
- アメリカ国家規格
ANSI/SIA A92.2-1969, ANSI/SIA A92.3, ANSI/SIA A92.5, ANSI/SIA A92.6.