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各国情報・国際関係

イギリス安全衛生庁、二酸化炭素(CO2)に潜在する重大危険性の評価

2012年1月26日

UK HSE News :2011年7月18日

イギリス安全衛生庁(HSE 別ウィンドウが開きます )は、大量のCO2を含む貯留施設の損傷(loss of containment)により生じるCO2の漏洩の危険性についての初期評価を述べ、このような事故に関連し後発する事故の可能性を議論し、ウェブサイト上に技術報告書を公表した、この報告書の概要について紹介する。

原資料の題名と所在
二酸化炭素(CO2)に潜在する重大危険性の評価
PDF Assessment of the major hazard potential of carbon dioxide(CO2)  Published: July 18 2011 別ウィンドウが開きます

序文

CO2は、多くの家庭及び商業用で利用されている物質である。また、何年もかけて、CO2により悪影響のある人々に対するリスクが許容レベル内で保たれるような基準及び法的管理が築き上げられている。

HSEでは、長い間、有害物質のばく露レベルにおける重大性及び有害物質の蓄積により引き起こされる被害に必要とされるばく露時間を含む危険物質から危険性を評価する手法が確立されている。

炭素隔離貯留技術(CCS)の登場は、現在より大量のCO2を取り扱う状況を生じさせるだろう。
例えば、1日あたり石炭を8000 トン(te)を消費する石炭火力発電所(1GW の発電)は、捕捉及び長期間貯留設備に移送されているCO2を最大30000トン生み出す。
既存のCO2取扱い設備に関しては、CO2の不注意な漏洩は、潜在的な小規模な危険性を引き起こすかもしれないが、局所的な影響だけである。CCS規模の操作によるCO2の大量漏洩は、広範囲にかなりの人数に悪影響をあたえる可能性がある。CO2を扱うCCSは、現在までに重大事故は一件も発生していないが、重大事故を引き起こす危険性(MAH:major accident hazard)を有している。

この報告書は、大量のCO2を含む貯留施設の損傷事故から生ずる危険性の初期評価を提示し、このような事故に関連し後発する主な危険性について議論する。

背景

二酸化炭素(CO2)の危険性
CO2は、100年以上にわたり重大な作業場における危険として認識されている。CO2の注目すべき性質は次のとおりである。

  • 標準温度・圧力では、低粘度で、空気(1.98 kg/m3)の約1.5倍の密度がある。
  • 大気圧で、−78.51℃の温度では、昇華によって固相から気相に直接的に変化し、または、沈着によって気相から固相へ変化する。
  • 超臨界流体は、物質の臨界温度と圧力(CO2の場合、31.04℃、73.82 bar)以上であることを示し、超臨界CO2は、液体の密度とガスの粘度を以上であることを示す。
  • ち密相は、液体と超臨界流体の両方を説明するための一般的な総称である。
  • CO2は、ばく露の濃度と時間とに関連した毒性量を示すことが明らかである。

一般的に、空気中の酸素を危険を伴う低水準まで下げ、CO2をそれに置換した場合、窒息による生命の脅威をもたらすと考えられている。空気中の酸素を低下させ、直ちに生命の危険を及ぼすCO2濃度は、50% v/vの状態である必要がある。
しかしながら、CO2の空気中濃度15%である場合に、吸引すると身体に対して毒性学的影響のため直接に生命の脅威をひき起こすことが、証拠により示されている。

ヒトにおいて、血中ガスに低濃度のCO2が正常成分として含まれるが、高ばく露吸入レベルにおける濃度では致死的なものとなる。また、呼吸に影響する最も強力な刺激物の一つは、CO2であり、その濃度の変化は非常に敏感にヒトに対し影響を与える。CO2の高い濃度の吸入は、呼吸、心血管、中枢神経系に対し、有害影響を誘因する血液酸性度を増加させる。

ヒトにおける毒性学的症状は、吸入したCO2濃度とばく露期間に関連し、頭痛(1時間あたり3%程度)から、呼吸と心拍数の増加、めまい、筋痙攣、精神錯乱、意識不明、昏睡、死亡(1分あたり15%程度以上)に及ぶ。

空気中50%超のCO2濃度においてヒトがCO2を吸入し死亡することについては、CO2の毒性影響または酸素低下かどうか明確でないが、論証上重要でなく、どちらの場合でも、致死的なものとなる。

物質の毒性を評価するために、HSEは、ばく露の濃度と期間に関してばく露状態を計算するためのDTL(危険物毒性負荷:Dangerous Toxic Load)の評価として知られているものを開発した。この評価では、SLOT(毒性規定レベル:Specified Level of Toxicity)とSLOD(有意な死亡可能性レベル:Significant Likelihood of Death)が定義された。

土地利用計画のために、HSEは、次を引き起こすものとしてSLOTを定義した。

  • 特定領域におけるほとんどの人々が重度の苦痛をともなう
  • ばく露集団の大部分が医療を必要とする
  • 何人かの人々が長期治療を必要とする重傷を負う
  • 人々を死亡させる影響力を持つもの、単回ばく露から、一定時間における特定濃度のばく露まで、1−5%の致死率

SLODは、単回ばく露により50%の致死率となるものとして定義されている。この計算におけるデータは、定期的に動物毒性試験から収集され、警戒を要する結果を利用する。SLOT及びSLODの計算に関するより詳細な情報は、HSEのウェブサイト(www,hse.gov.uk/hid/haztx.htm)で確認することができる。

表1は、CO2におけるHSEの DTL評価の結果を示す。この表は、もし、空気中約7%(即ち、>70,000ppm)以上のCO2濃度を吸入すると、ヒトに対し有意な危険があることを示している。また、特定レベル以上におけるわずかな濃度変化で、急速に毒性が増加する影響を強調している(即ち、SLODとSLOT値間の大きな変化はない)。

さまざまな致死レベルとばく露時間におけるCO2濃度の差異は、相対的に小さい:同一のばく露時間における1−5%と50%の致死レベルにいたる濃度は、33%だけ異なる。CO2を硫化水素と比較した場合、CO2はヒトに対し弱毒性である。CO2の空気中濃度が約7%を超える場合、ヒトに対しより一層反応が大きくなる。

表1 CO2吸入の場合の濃度と時間の関係

吸入ばく露時間 SLOT:1−5%致死率 SLOD:50%致死率
空気中CO2濃度 空気中CO2濃度
ppm ppm
60分 6.3% 63,000ppm 8.4% 84,000ppm
30分 6.9% 69,000ppm 9.2% 92,000ppm
20分 7.2% 72,000ppm 9.6% 96,000ppm
10分 7.9% 79,000ppm 10.5% 105,000ppm
5分 8.6% 86,000ppm 11.5% 115,000ppm
1分 10.5% 105,000ppm 14% 140,000ppm

<注> 容量濃度
CO2を吸入した場合に引き起こされる危険性に加え、CO2が大量に高圧で取扱われた場合に生じるち密相CO2に関連した付加的危険性がある。これらは、漏洩が生じ、圧力が突然に低下、または完全に消失した場合に発生する。これらの危険性には、凍傷(cryogenic burns)、配管作業での材料の脆化(embrittlement)、有毒物汚染、隣接プラントのグリットブラスト(grit blasting)の可能性を含む(また、グリットブラストの効果を得るためには固体CO2を圧縮する必要があるとの情報もあるが)。

結論

今までの議論に基づき、次の一般的結論が導かれた。

1
大きな空間を占めている大規模で、冷たい、液相貯留施設では、貯留施設からの瞬時の漏洩の危険範囲は50〜400mの広範囲に生じるだろう
2
50mmの穴から絶え間ない漏洩の危険範囲は、100m以上となるであろう
3
圧力貯留施設(冷温と外気温の両方)からの漏洩は、重大災害を引き起こす危険性がある
4
故に、技術的証拠は、CO2が危険有害物質の許可枠組(permissioning regimes)により現在規制されている他の危険物質と同様に重大事故の可能性があると提示している

CO2MAH分析モデルに関連して、次の結論が得られる。

5
貯留からのCO2の瞬時及び連続的な漏洩のモデル化に関し、重大な不確実性がある、適切なモデルが開発される前にかなりの調査を完了させる必要がある
6
現在のHSEの瞬時ソースタームモデル(source term model)は、CO2用に更新する必要があろう
7
DNV PHAST 6.6.0モデルは、CO2のためのソースターム予測に、いくつかの改良を含めて更新されている
8
PHAST/DRIFTモデル併用の使用は、PHAST 6.6.0で予測された危険範囲が不変でないことを示している、これは、上述の結論3と4で与えられた結論を強化するだろう

報告書の構成

  • 序文
  • 問題
  • 背景
    CO2の危険性
  • CO2吸入事故
    消防システム
    メンヒェングラットバッハ(ドイツの都市名)
    ニオス湖(カメルーンの北西州に所在する火山湖)
  • 炭素捕捉と貯蔵工程
    捕捉
    加圧
    移送
    注入
    永久貯蔵
  • CO2を使用する他の産業
  • 継続中の研究
  • 典型的な危険な距離
  • 結論
  • 参考文献
  • 添付書類
    1. 評価モデル
    2. IRATE/DRIFT/DDCの感度研究
    3. CO2の漏洩による危険範囲の決定するスコープ(scoping)計算
    4. C15 PHAST 6.54評価のHSEの再考
    5. CO2の漏洩による危険範囲の決定する更新計算
    6. DRIFTインプトの作成を利用する典型的なPHASTアウトプット
    7. PHAST 6.6.0とPHAST/DRIFT間の比較
    8. PHASTアウトプットでの平均濃度に基づいたPHAST/DRIFTを有するPHAST 6.6.0とPHAST/DRIFT間の比較
    9. CO2の危険範囲のためのスコープ計算(100 te 以下の保有量)
    10. D5気象の結果(突発故障)
    11. F2気象の結果(突発故障)
    12. 50mmホールの結果

全ての働く人々に安全・健康を 〜Safe Work , Safe Life〜

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