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各国情報・国際関係

欧州安全衛生機構:働く女性の安全と健康に関する新しいリスクと動向

2012年2月29日

EU-OSHA News 2011年9月13日 別ウィンドウが開きます

欧州安全衛生機構(EU-OSHA 別ウィンドウが開きます )は、女性の安全と健康に影響する要因つまり、女性の雇用と労働条件の動向及びOSH(occupational safety and health)への影響についての調査研究結果の概要をまとめ、政策提言のための調査研究報告書を公表した。調査研究は、主要な危険因子として、女性が多い業務のタイプ、若年女性及び中高年女性の直面する問題、サービス産業の拡大、暴力とハラスメント、ますます多様化する労働時間のパターンに焦点をあてている。

原資料の所在
働く女性の安全と健康に関する新しいリスクと動向:
New risks and trends in the safety and health of women at work 別ウィンドウが開きます

ニュースの概要

2009年と2010年に、EU-OSHAは、職場でのジェンダー問題に関する以前の調査研究の更新を委託され、職場内、職場外の両方での男女不平等が、働く女性の安全と健康に影響する可能性があることが分った。この要約は、政策の展望を示し、そして、“女性の働く場の拡大(extensive integration in labour market)により発生した安全衛生上の特定の課題を調べて、”EU-OSHAのEuropean Risk Observatory(欧州リスク管理部門)の欧州労働安全衛生戦略に基づく活動に貢献することを目的としている。

この調査研究は、職場における女性の雇用及び労働条件の状況、危険物ばく露、業務上災害、健康問題等に関する統計的な概要を提供する。また、特定の問題を掘り下げて調査している(複合ばく露、職業性がん、リハビリテーションへのアクセス、女性とインフォーマル作業(informal work)、在宅介護・家内労働のような新たに出現しつつある女性の職業)。

調査研究は、主要な危険因子として、女性が多い業務のタイプ、若年女性そして中高年女性が直面する問題、サービス産業の拡大、暴力とハラスメント、ますます多様化する労働時間のパターンに焦点を当てている。

報告書の目次

  1. 序文
  2. 手法
  3. この報告書はどのような知識を加えることになるか
  4. 加盟国間の差異
  5. 女性の雇用動向及びそれがOSHにどのような影響を与えるか
  6. インフォーマル作業(informal work)
  7. 業務上災害
  8. ばく露、健康問題及び職業性疾病
  9. 混合ばく露
  10. 障害とリハビリテーション
  11. 政策、調査研究及び予防のための結論
  12. ジェンダーの主流化とOSH-成功事例

政策、調査研究及び予防のための結論(概要)

大部分の働く女性は、訓練、昇進の機会が提供され、安全な仕事に就いている。しかしながら、そうでない者も少なくない、それが政策立案者及び調査研究者の課題とされることが重要である。標準的でない労働条件で働く女性の増加に関して、調査研究、法令、及び予防で対処する必要がある問題は、次のとおりである。

  • 週末、パートタイム、交代制勤務で働く女性を対象にする方法
  • 労働基準監督官またはOSH専門家の事業場監督の際に対象とする方法
  • ばく露を評価する方法
  • 労働者としての権利の代弁を確実にする方法
  • 使用者の建物/家庭で、個人的サービスを行う女性のOSHを確実にする方法
  • 複数の使用者のために働く女性のOSHを確実にする方法

リスクアセスメントに関し、物的リスクと同様に心理社会的リスクを考慮に入れることが、女性にとって重要である。これは、ほとんどの女性が男性よりも消費者及び顧客と対面接触することが必要な教育、医療保健、小売り及びホテル、レストラン、ケータリング部門で働くという事実に基づく。更に、女性は、依然として育児と家事の大部分をしている。

女性は、男性と同様に、雇用者集団の一構成員ではなく、多様な労働力であることを記憶しておくべきで、そして、この雇用者集団の異なる年齢層や異なる文化(行動様式)では、ニーズが異なっているかもしれない。このため、調査研究及び予防のためにより的を絞った性別に配慮したアプローチが必要である。

長年にわたり言われているように、女性の性と生殖に関する健康(women’s reproductive health)と労働条件の関連を探求するために、さらなる情報、及びそれに関しての調査研究が必要である。これはまだ、政策または調査研究の議題の中で優先されておらず、変更する必要がある。

更に、女性は、乳房、結腸直腸、子宮内膜のようなある種のがんにり患することが高率であり、環境因子と作業条件と関連があった。そして、これらの関連を一層解明するための更なる調査研究が必要である。

他の広範な問題

ワークライフバランスは、過去20年ほど一貫して調査研究されている。そして、女性の場合、仕事と家庭を両立させる能力が問題であり続けており、男性よりもはるかに精神的な健康に影響を与えることが明白に示されている。

一般的に、女性は、社会制度の中で家庭の世話係(carers)とみなされ、家庭及び子供と親に対する責任を負う傾向がある。それ故、仕事と家庭の需要が組み合わされたとき、男性より多くの責任をもち、長時間労働になる。

女性労働者に対する家庭責任を配慮した(family-friendly)政策がある国でさえ、女性は、男性よりしばしばストレスを経験し、就業不能による労災補償(work-related compensation)に関して、家事をする能力のために、差別されている。

一部の女性は、しばしば、子供及び高齢者のケアの義務のために、パートタイム労働のような交替勤務で働くことを選択する。移民労働者(migrant women)やインフォーマルで働く女性は、更に、これらの労働形態で就労する可能性が高い。これらの労働形態は、ジェンダーに特化されたものではないが、女性が職業上のリスクとハザードにさらされる可能性が高くなる。OSHのリスクは、職種だけでなく、性別、業種によって分析されることが重要である。

実務と調査研究への意味合い(implication)

この研究は、働く女性とOSHの課題を多くの局面から調べている。しかしながら、調査研究にはギャップがあり、対処する必要がある。そして、労働者の視点から推進されている政策で、女性雇用者より男性雇用者により効果的な政策もある。

この研究が示唆するように、より多くの調査研究が、非標準的な労働条件、複数の家庭または複数の事務所で就労する家庭内労働者(ホームヘルパーなど)、保健分野の高齢労働者、作業強度の増加率、女性労働者のリスク評価、多重ばく露(multiple exposure)、リハビリテーションや労働市場への再参入(re-insertion)、インフォーマル作業のような領域で必要である。

これらの拡大しつつあるが、十分に調査研究されていない領域は、女性のOSHに影響を与える問題を広範に説明するような情報を提供することになる。仕事を労働者に合わせることより、労働者を仕事に合わせること、特に、労働者が、女性、若年者、移民、または障害をもっているなど、さまざまな観点から見ることが可能な場合、重要である。全体的に、OSHは、雇用者の特定のニーズを反映する必要がある。

政策提言

欧州安全衛生機構2007−2012 長期戦略(five-year Strategy for Safety and Health at Work 2007-2012)185は、2011年に改訂されることになっている。欧州議会が2008年1月に戦略に関する決議で言及したように、“業務災害と疾病の数の減少が特定の労働者(即ち、移民労働者、女性、若年者と高齢労働者)に反映されていないことが懸念される。”

戦略は、EUの法令(legislation)の完全で有効な実施のための支援を通じて、EU 27ヶ国について、業務上災害発生率を25%減少させる目標を設定している。戦略はまた、職場の健康に焦点を合わせたアプローチの奨励と支援、及び新しい潜在的リスクの特定のための国内戦略の策定を要請している。しかしながら、災害率は、病院部門または小売業のような、女性の割合が高いいくつかの部門で滞っているか、増加している明確な徴候がある。

OSHに関連する特定の活動もまた、男女平等戦略2010-2015 (Strategy for Equality between Women and Men 2010-1015)19を実行するための活動に関するスタッフ作業文書に含まれている。対策は次のとおりである。

政策と制度の健康とジェンダーの影響評価の促進
今度の欧州安全衛生機構2013-2020長期戦略20132020でジェンダーの視点を採用
Directive 2004/37/ECの考えられうる見直しのための準備作業だけでなく、筋骨格障害(WRMSDs)に関する法的作業でジェンダーの視点の採用
がん原性物質と変異原物質に関するDirective 2004/37/ECの考えられうる見直しのための準備作業でジェンダーの視点の採用

その他、上記以外の勧告として、教育や事務作業など伝統的には低リスクと考えられる部門のハラスメントとストレス等のリスクなどがあげられている。
また、Monitoring and statistics(監視と統計)、Violence at work(職場での暴力)、Accident and health effects(災害と健康影響)、Rehabilitation and reintegration(リハビリテーションと再統合)、Vulnerable groups of female workers(女性労働者の脆弱な集団)について提言を個別に報告している。

<参考資料>

Directive 2004/37/EC of the European Parliament and the Council of 29 April 2004
on the protection of workers from the risks related to exposure to carcinogens or mutagens at work ( PDF Sixth Directive within the meaning of Article 16(1) of Council Directive 89/391/EEC 別ウィンドウが開きます )

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