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中央労働災害防止協会(中災防)
技術支援部
国際課
TEL 03-3452-6297
FAX 03-5445-1774
E-mail: kokusai@jisha.or.jp
お知らせ
国からの委託事業であった
「国際安全衛生センター(JICOSH)」
が2008年3月末をもって廃止されました。
永らくのご利用ありがとうございました。
同センターのサイトに掲載されていた個別の情報については、中災防WEBサイトの
国別、
分野別情報にリンクして取り込んでおります。
2014年5月7日
原資料の所在:
https://www.osha.gov/dts/weather/winter_weather/index.html
冬季の天候は、毎日の仕事、作業に大きな影響を及ぼす各種の危険を生ずる。これらの危険には、滑りやすい路面/作業床、強風及び寒冷環境がある。
どのようにして冬季の作業に備え、疾病、負傷さらには死亡を生じる危険から労働者を保護するかを知ることは、安全な作業環境を確保し、仕事を成功裏に遂行するために基本的に重要なことである。
1) 寒冷環境に影響を受ける労働者は?
2) 低温ストレスとは?
3) 低温ストレスを防止するには?
4) 低温ストレスの種類
1) 寒冷環境に影響を受ける労働者は?
寒冷環境は、低温大気に曝されるすべての労働者に影響を及ぼし、労働者を低温ストレスの危険に曝す。風速が大きくなれば気温がより低く感じられるようになり、労働者が低温ストレスに曝されるリスクが大きくなる。娯楽施設の労働者、除雪従事者、建設労働者、警官、消防官などが影響を受ける。他には運送業、貨物取り扱い業、水運業、造園業、石油ガス取り扱いに従事する労働者も可能性がある。
低温ストレスのリスク要因には次のものも含まれる :
2) 低温ストレスとは?
低温ストレスの構成要素とその影響については、地域により変わってくる。寒冷気候に慣れていない地域においては、凍結をもたらす気温及びそれに近い気温は、低温ストレスの要因と考えられる。風速が増加すると身体から熱を奪う量も大きくなる(体感効果)。
湿気、汗は、体から熱を奪うのを速める。皮膚温の低下は低温ストレスを起こし、時には体内温度も低下させる。身体が自ら保温することができない場合には、重篤な低温関連疾患あるいは傷害が起こる可能性があり、細胞組織に永続的な損傷をもたらし、また死に至る可能性さえもある。低温ストレスの種類には、塹壕足/浸水足(trench foot)、凍傷及び低体温症がある。
3) 低温ストレスを防止するには?
寒冷作業環境に関する具体的な法令上の規定はないが、米国労働安全衛生法(1970年)に基づき事業者は、作業場において死亡または重篤な身体的傷害の原因となる低温ストレス危険を含む危険から、労働者を防護する義務がある。
事業者は、労働者の教育訓練を行う。教育訓練には次のことが含まれる :
事業者は以下を行う :
4) 低温ストレスの種類
a) 塹壕足/浸水足
塹壕足/浸水足は、湿った冷たい条件下に長時間曝されることによる足の非凍結障害である。足が連続的に湿った状態に曝されると16℃でも塹壕足が起こる。この障害は、湿潤条件下の足は乾燥条件下より25倍の速さで熱を奪うからである。
塹壕足の症状は?
皮膚の発赤、疼き、疼痛、腫れ、脚の痙攣、痺れ、水膨れなどである。
救急処置
b) 凍 傷
凍傷は、皮膚及び組織が凍ることにより発症する。凍傷は、身体に対し永久的な損傷をもたらし、重症の場合は、その箇所を切断することになる。凍傷発症のリスクは、血液循環が悪くなった場合、極低温に対する適切な服装をしていない場合に大きくなる。
凍傷の症状は?
赤くなった皮膚は、指、足指、鼻、耳たぶに灰色/白の反転を発症し、痛み、疼き、感覚喪失、水泡が損傷部分に発生する。
救急処置
c) 低体温症
低体温症は、正常な体温(約37℃)から35℃以下に下がった時に発症する。寒冷環境に曝されると身体が自ら温める能力以上に速く体熱を失われてしまう。寒冷環境への長期間の曝露は、体に蓄積されたエネルギーを使いきってしまう。その結果は、低体温症すなわち異常な低体温となる。低体温症は、非常に低い温度環境で発症しやすいが、低体温症は冷温環境(4.4℃)でも、雨、汗または低温水への浸漬により 体が冷やされると発症する。
低体温症の症状とは?
軽度の低体温症は制御できない震えであり、これは軽視できない。震えは体が熱を失いつつあることを示しているものであるが、また、身体自らが温めようとしているものである。中等度から重度の低体温症では、体を思うように動かせず(協調運動障害)、発語錯乱不明瞭、心拍数・呼吸数の低下、意識喪失、さらには死亡の可能性もある。低体温症は本人が何か起こっているのか気がつかないことと何の対処もできないがゆえに、特に危険である。
救急処置
基本的生命維持(必要な場合)
寒冷で風の強い条件下の屋外労働者は、気温と風速に応じて体が感じる寒さによる低温ストレスのリスクに曝されている。風速冷却(Wind chill)という用語は、低い気温と風速の複合効果による人体から熱を奪う割合を表すのに用いられる。体感温度は、気温と風速を考慮した単一の値により示される。例えば、気温が40°F(4.4℃)で風速が35mph(マイル/時)の場合、体感温度は28°F(-2.2℃)となり、この値は露出皮膚に対する実際に感じる寒さを表している。
低温ストレスは防止可能
事業者が体感温度を知ることは重要なことで、これにより的確に労働者のリスク曝露を把握することができる。また、労働者の作業中の身体的状況を観察すること、特に寒冷環境下での作業に慣れていない新規雇い入れ労働者、または作業からある期間離れていた労働者について観察することが大切である。
米国海洋大気庁(The National Oceanic and Atmospheric Administration NOAA)の気象放送は、全国ネットで最寄りの測候所から常時気象情報を放送しており、体感条件が危険状況(Critical thresholds)なった場合には必要な情報を提供している。風速冷却警報は、体感温度が命の危険に至るようなときに発せられる、一方、風速冷却注意報は、体感温度が潜在的に危険(potentially hazardous)な時に発せられる。
米国政府産業衛生専門家会議(The American Conference of Governmental Industrial Hygienists, ACGIH)は、気温と風速を考慮した4時間シフト作業における作業/採暖表を作成し、休憩と非緊急作業中止についてのスケジューリングに関する勧告を発表している。
作業/採暖計画表(4時間作業シフト)
気温(℃) 天気晴 |
顕著な風無し | 風速5mph | 風速10mph | 風速15mph | 風速20mph | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
最長作業時間 | 休憩回数 | 最長作業時間 | 休憩回数 | 最長作業時間 | 休憩回数 | 最長作業時間 | 休憩回数 | 最長作業時間 | 休憩回数 | |
-26〜-28 | 休憩1回 | 休憩1回 | 75分 | 2回 | 55分 | 3回 | 40分 | 4回 | ||
-29〜-31 | 休憩1回 | 75分 | 2回 | 55分 | 3回 | 40分 | 4回 | 30分 | 5回 | |
-32〜-34 | 75分 | 2回 | 55分 | 3回 | 40分 | 4回 | 30分 | 5回 | 非緊急作業中止 | |
-35〜-37 | 55分 | 3回 | 40分 | 4回 | 30分 | 5回 | 非緊急作業中止 | |||
-38〜-39 | 40分 | 4回 | 30分 | 5回 | 非緊急作業中止 | |||||
-40〜-42 | 30分 | 5回 | 非緊急作業中止 | |||||||
-43以下 | 非緊急作業中止 |
*5mphは、約2.2m/s
屋外作業、特に厳しい冬季の天候条件においては、適切な準備が必要である。米国労働安全衛生法では、寒冷作業環境を取り扱う具体的な基準を定めてはいないが、同法第5節(a)(1)において「事業者は確認される危険に対して安全な雇用の場を提供する責務を有する」とされており、これには労働者を死に至らしめ、または重篤な身体的障害をもたらす原因となり若しくは可能性のある冬季の天候による危険も含まれる。
したがって、事業者は仕事に関する危険について、及び労働者の安全と健康を確保するための技術的管理方法と安全作業方法などの安全対策について、雇用する労働者を教育訓練することとされる。
1)事業者の実施すること
a) 労働者に対する教育訓練
最小限、次のことについて実施 :
b) 工学的対策
工学的対策は低温ストレスを減ずるために有効な場合が多い。例えば、警備ステーションなどの作業場所で暖を取るために輻射式暖房器を使用する。可能ならば、隙間風、風による風速冷却を減じるために作業箇所に遮蔽措置を講じることも有効である。
c) 安全作業法
事業者が労働者を死傷病災害から守るために実施する安全作業法には次のようなものがある。
d) 保温のための保護衣服について十分留意する
事業者は、墜落災害防止のための個人保護具を備えることが義務付けられている。また、冬季の防寒具について、米国労働安全衛生法上、無償支給は義務付けられていないが、多くの事業者は冬用コート、ジャケット、手袋などの防寒具を無償で支給している。
2) 寒冷環境における服装
寒さに対して適当な衣服を着用することは低温ストレスを防止するために非常に大切である。寒冷作業環境と低温を避けることができない場合には、以下が労働者を低温ストレスから守るのに役立つ :
3) 労働者の安全心得
低温ストレスに加えて、雪中での運転、屋根上での除雪作業、落下または破損した送配電線近傍での作業など、労働者が作業中に曝される様々な危険がある。それらの作業は以下の通り
1) 冬季の運転
2) 作業場内の交通安全関係作業
3) 車両内への閉じ込められ
4) ショベルでの除雪作業
5) 噴射式除雪機などの動力機の使用
6) 屋根からの除雪及び高所作業
7) 雪上、氷上の歩行
8) 落下または損傷した送配電線の修理
9) 落下または損傷した送配電線近傍の作業
10) 倒木の除去
1) 冬季の運転
事業者は、道路条件を変えることはできないが、運転者が氷雪で覆われた道路上などの冬の天候の危険を認識するよう適切に教育訓練を受け、また必要に応じて運転車両に適応する免許を受ければ安全運転マナーを向上させることができる。冬季の安全運転については、US-OSHAの Safe Winter Driving
を参照すること。
事業者は、運転者の社内の安全規則を定め、執行すること。また、事業者は、労働者が操作するすべての車両及び機械設備についての有効な保全計画を作成し実施すること。
事業者は、適切な教育訓練を受けた者に次に掲げる検査をさせ、それらが的確に作動しているかどうか決定すること。
次の非常用品を備えておくこと :
2)作業場内の交通安全
毎年、作業場内で、労働者が車両または移動動力機により多くの死傷災害が発生している。雪または氷で覆われた道路上での運転では横滑りしたり制御が効かなくなったりする。したがって、労働者を構内交通災害から守るために、標識、円錐、たる、柵などにより作業場内に交通管制を定めることが大切である。車両通行に曝される者には運転者等によく見えるベストを着用させる。
3) 車両内への閉じ込められ
仮に、車両内に閉じ込められたときには車両内にとどまる。必要なら緊急支援を要請する、しかし激しい冬の天候の下では応答が遅れることがあることに注意する。上司に現在の状況を連絡する。救援が100ヤード(約91メートル)以内で視認できるのでなければ車両を離れてはいけない。車両を離れると吹雪と地吹雪のなかで方向を見失い迷ってしまう。明るい色の布を車両のアンテナに掛け、またボンネットを上げてトラブルサインを表示する。1時間ごとに10分程度エンジンをかけ暖をとる。追加的信号としてエンジンをかけ車両の室内灯を点灯する。一酸化炭素中毒に注意し、排気管が雪で覆われないようにし、窓を少し開けておく。
凍傷と低体温症に注意する。体内の血液の循環を良くするために小さな運動を行う。手ばたきをし、腕を動かす。同じ姿勢でじっとしていないようにする。目を覚ましていれば、寒さによる身体へのダメージを抑えることができる。
放熱に対する抵抗を高めるために毛布、新聞、地図、さらには車両マットも利用する。寒冷気候は心臓に過度な負担をかけるので無理をしない。ショベルでの除雪、車両を押すなどの慣れない運動は、心臓発作やその他の疾患を誘引することもあるので留意する。
4) ショベルでの除雪作業
ショベル作業は、激しい運動であり、特に寒冷気候では体に過酷な負担をかける。極度の疲労、脱水、腰痛、心臓発作の危険がある。ショベル作業においては、低温ストレスを避けるために、暖かい場所で頻繁に休憩をとるとともに、作業前に準備運動をし、1回にすくう量を少なくし、できるだけ持ち上げるよりも押すようにすくう。持ち上げるに当たって適切な方法及び姿勢で行う、背中をまっすぐに保ち、脚部で持ち上げ、体を曲げたりひねったりしない。
5) 噴射式除雪機などの動力機の使用
噴射式除雪機などの動力機を使用するときは、当該機械による感電防止のため、適切に接地されていることを確認する。保全、清掃を行うときは、刃部等の防護措置がなされ、電源が遮断されていることを確認する。
噴射式除雪機では、操作者が詰まりを除去しようとしたときに装置が作動し、裂傷や手指の切断事故を起こすことがある。手で詰まりを取り除くとこは絶対にしない。まず、装置の動力源を切り、すべての可動部分が停止するまで待ち、長い棒を使って雪やごみの詰まりを取り除く。手や足は機械の稼働部分から離しておく。起動する前に機械に給油するが、機械が稼働中または熱いときには給油しない。
6) 屋根の除雪及び高所作業
事業者は、除雪作業の危険を検討し、安全に作業を行うよう計画する。労働者は、氷の層が環境温度を下げ、より滑りやすくなることなどの気候条件からもたらされる予期しない潜在危険があることに注意する。雪により荷重がかかっている表面において労働者がその上に乗っても耐えられるかどうか有資格者による点検を行う。雪に覆われた屋根の上は、天窓などが視認できないのでそこから転落する危険がある。架空電線または除雪装置による感電の危険もある。
事業者は、可能な時、及び場合によっては、労働者が屋根上に上がる必要のない作業方法を採用し、このような危険な作業条件を回避する。事業者は、実施作業について、適当な用具、装置(梯子、高所作業装置など)及び個人用保護具(墜落防護システム、滑り止め付き安全靴等)を決め、労働者に正しい使用方法を教育訓練し、使用させる。詳しくは、 OSHA's Hazard Alert : Falls and Other Hazards to Workers Removing Snow from Rooftops and Other Elevated Surfaces
(PDF*).を参照する。
7) 氷上、雪上の上の安全な歩行
滑り、つまずき、転倒を防止するため、雪または氷の歩行面はきれいにしておき、大雪などの後はすみやかに解氷剤をまいておく。
8) 落下または損傷送配電線の修理
冬季の厳しい天候下での活線状態の損傷送配電線の交換は、特に危険である。重大危険源は雪であり、そのため防護器具の絶縁抵抗値は湿気のために低下し、感電の危険が増大する。これらの状況においては停電状態で作業するのがより安全であるが、活線作業を避けえない場合には資格を持っている作業者及び監督者が天候条件を評価し、作業をどのように安全に行うかについて評価することを含めた危険解析(hazards analysis)を最初に実施しなければならない。
その他次のような危険がある :
9) 落下または損傷した送配電線近傍の作業
すべての送配電線は活線状態にあると見なし、落下、損傷送配電線から離れる。送配電線からの安全な離隔距離を保ち、関係当局に報告する。専門的教育訓練を受けた電力会社の作業員のみがこれらを取り扱う。
10) 倒木の除去
厳しい冬季条件下での倒木の片づけ作業は、重大かつ危険な仕事である。道路をブロックし、送配電線を損傷している倒木を除去することは緊急を要する。緊急処置班が通常これらの任務を遂行する。
次のような潜在危険がある :
倒木処理に適した個人用保護具を着用する。倒木を片付けるためにチェーンソー及びチッパーを使う場合には、手袋、皮ズボン、脚の保護具、保護眼鏡、聴力保護具、墜落防護具及び頭部の保護具を使用する。
屋外用及び湿潤用に設計された動力用具のみを使用する。用具を目的外の用途には使用しない。常に使用可能な状態にメンテナンスしておき、使用する前には十分知識のある者に欠陥の有無を点検させる。正しく機能しない用具は使用しない。用具は適当な接触防止覆いなどの防護装置を備え、安全防護装置を絶対にオフにしない。すべての操作装置及び安全装置等は設計通りに機能しなければならない。