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国からの委託事業であった 「国際安全衛生センター(JICOSH)」 が2008年3月末をもって廃止されました。 永らくのご利用ありがとうございました。 同センターのサイトに掲載されていた個別の情報については、中災防WEBサイトの国別、分野別情報にリンクして取り込んでおります。
2014年12月19日
英国の安全衛生庁(Health and Safety Executive : HSE)は、建設現場の劣悪な安全衛生水準を向上させるために、全国一斉の監督を実施することとして、その実施要綱を公表した。 これは、改修工事または修繕作業が行われている建設現場に対して無通告臨検監督を2014年9月22日〜10月17日の間に実施するものである。
既に実施され今後その結果が公表されると考えられるが、以下、一斉監督実施要綱と同時に公表された2013年に実施されたキャンペーン結果、労働衛生関係一斉監督の結果及びHSE建設監督局の建設監督推進計画(2013/2014)の概要を紹介する。
1) 重点監督指導実施要綱(2014年9月)
2) 安全点検キャンペーン結果(2013年10月)
3) 労働衛生関係全国一斉監督結果(2014年7月)
4) HSE建設監督局 建設監督指導推進計画(2013/2014)
業務上の健康障害、死亡及び負傷を減少させるために、建設現場における劣悪な安全衛生水準と不安全な状態を監督指導の重点として全国展開することとしている。
2014年9月22日から10月17日まで、改修工事及び修繕作業が行われている現場に対して無通告臨検監督を実施する。
これは、これまで毎年実施しているキャンペーンの第9次の監督指導キャンペーンであり、HSEの監督官が労働者の健康障害に影響する高リスク作業が適切に管理されていることを確認するものである。
HSEは、劣悪な安全衛生水準は受け入れることはできず、行政処分を取ることとなるという、建設業界へのメッセージを強化するために監督指導権限を行使するものである。
前のキャンペーン結果
1カ月間の安全キャンペーンにおいて、ほぼ半数の建設現場が劣悪な安全水準であり、多くの危険状態がみられた。 全国一斉キャンペ-ン中にHSEでは、改修工事、修繕作業を行っている2,607カ所の建設現場を監督した。 その結果、1,105箇所の現場で基本的安全基準が守られていないことが認められた。644箇所の現場では、状況が非常に劣悪であったため、労働者保護のための行政処分(539件の使用停止及び414件の是正勧告)を実施した。
軒交換工事中の墜落転落リスク現場 (注:HSEのHPより)
最も多い問題点は、「高所作業の安全」、「有害粉じんへのばく露」及び「不適切な福利施設」であった。HSEの主任建設監督官、ヘザー・ブライアント氏は、以下のように話している。
"このように多くの建設現場が許容できる安全衛生基準を満たしていないことは残念であるが、さらに監督官は、このことが建設現場において安全基準の理解の欠如に関連しているが多いことに直面するのである。"
"このような一斉監督を通じて、我々はこれらのことが常態化する前に根本的問題に取り組むことができると考えており、産業界と水準を向上させるために努力することにしている。"
"しかしながら、我が国の労働力の健康と生命を危険にさらすような無謀な行為をするものは、厳しい結果に直面することを理解すべきである。"
間に合わせのサポート(注:HSEのHPより)
9月中に、監督官は、高所作業、有害粉じんへのばく露などの高リスク作業が適切に管理されていることを確認すべく、建設現場に対して無通知訪問を実施した。 また、監督官は、整理整頓の良い現場、足場等の丈夫な構造、基本的な福利施設などの好事例も見出すこととした。
建設労働者に対する健康リスクに重点をおいた全国一斉監督の結果、監督対象の数百の現場について、6現場に1の割合で行政処分を実施した。
2週間の集中一斉監督期間中にHSEは、必要な基準を満たしていない現場に対して改善を勧告し、必要に応じて作業の停止を命じた。
監督指導においては、シリカ含有粉じんによる呼吸器リスク、セメント、鉛塗料等の有害物質へのばく露リスク、人力による重量物取扱い、騒音及び振動などの健康リスクに重点を置いて行われた。
最終的数値は確定していないが、状況は非常に悪く、少なくとも13の事案においては即時作業停止が命じられた。
全部で560現場を監督し、これらのうちの85現場において強制執行通知(Enforcement Notice)が発せられた。また、13件の停止措置(Prohibition Notice 注:一定の作業において改善されるまで即時停止措置)及び107件の改善勧告(Improvement Notice)が発せられた。総合計として、201現場に対して、239件の健康関連の法違反通知が発せられた。
HSEの主任建設監督官のヘザー・ブライアント氏は、次のように話している。
"我々は、建設業における死傷災害が近年減少してきていると認識している。しかしながら、健康障害及び疾病による死亡の件数について容認できない数値であることは明らかである。"
"このため、HSEの監督官としては、建設業における安全関連リスク管理とともに、健康リスクの削減と制御に注目した監督指導を年間を通じて強化することとしている。"
"我々は建設業において「安全と同じように健康問題にも取り組む」ことを期待する。"
更なる情報については、 www.hse.gov.uk/construction を参照。
前書
経済の停滞にもかかわらず建設業は英国最大の産業であり、200万人が雇用者されているが、危険性が高く、大きな懸念の原因となっている。この業界の特徴と健康安全の課題についてはよく知られているところである。
2011/2012年度の暫定数値は、建設労働者の死亡者49名、一般人の死亡者1名となっている。この数は、前年度の死亡者50名、一般人2名より若干の減少となっているが、依然として容認できるものではなく、業務上の負傷及び疾病とともに、この死亡災害の減少を継続する必要がある。
HSE建設監督局の3カ年業務計画は、HSEの全体計画と整合させるために、さらに1年間(2014/2015年度まで)延長される。我々の主要優先事項には変更はなく、特定のプロジェクトにおける新たな事項とともに2013/2014年度においてもこれらに重点を置いて推進することとしている。
我々の計画の最初の2年間においては、その主体的能力の30%を小規模建設現場に、20%を石綿除去作業に充てることができた。2013/2014年度においては、死亡災害の70%が発生し、安全衛生水準が劣悪である小規模現場に、主体的能力の35%を充てることとしている。
2012/2013年度には、建設安全衛生規則(1989、頭部防護)及び普通塔型クレーンの届け出規則(2010)の廃止作業が完了した。これらの規則は2013年4月6日に廃止されたが、保護帽の着用については、個人用保護具規則(1992)に規定されている。2013/2014年度においては、建設安全衛生規則(設計及び監理、2007)の改正に向けて作業を進めることにしている。
2012/2013年度には、我々はオリンピックの開催準備及び建設中の業務死亡災害ゼロの安全安心を確保するという4カ年プログラムを成功裏に達成した。2013/14年度においても、このオリンピックの経験から建設業における安全衛生の貴重な選定継続に努めることとしている。
我々は、また、関係情報、特に小規模事業に係る情報を理解しやすく容易に得ることができる方法について検討することとしている。この一環として、建設業労働衛生管理基本情報(Construction Occupational Health Management Essentials COHME)のウェブページを更新することとしている。
2012年10月、HSEは、「介入料(Fee for Intervention)」として知られる費用回収制度を導入した。HSEの監督官により重大な法違反があると確認された場合に、事業所または個人から費用を回収するというものである。一方、法に違反していない場合には料金は課されない。このことはHSEの政策の大きな変更であるが、業務計画の優先順位に変更はない。
ヘザー・ブライアント 主任建設監督官
2013/2014年度の建設監督業務計画
2013年の業務に基づき、我々の主体的能力を最大限に活用して、建設業における労働安全衛生を向上させる使命を遂行する。
公正の確保
我々は、他者を危険にさらす者、特に故意に法に違反する者の責任を追及し続ける。我々は、また、業務上の事故及び健康障害を調査し、我々の方針に基づき適切な行政処分を実施する。我々は、人がその責任を無視することを選択し、また順守しなかった場合に、公正を確保するべくこれを行う。介入料制度もまた、法を順守しない人が、物事を正しい状態にするために費やす時間を負担するということに資するものである。
建設監督業務活動
下記に重点を置く。
臨検監督時に、破局的な事故の原因となる明確な懸念と潜在的危険がある事項について適切に取り組むこととしている。特に、下記の5つの一般的課題は取り組むべき対象と考えられる。
さらに下記事項についても考慮する。
特定の工事
関係機関等との協力
我々は、主要な関係者との協調のもとに業務を推進していくこととしている。協力する主要な分野は下記のとおりである。
まとめ
2013/14年度の我々の計画は、高リスクの業種と作業を対象として、建設業における安全衛生を向上させる建設監督局の任務を再確認するものである。我々は、事業者が法的義務を理解し、それを順守することに資する様々な考え方や具体的方法の実施のため、産業界のパートナーとともに活動していく。我々は、我々だけでは所要の目的は達成できないことを認めており、安全衛生成績の変化と向上をもたらすために全ての建設業の関係者に協力してもらうことを期待している。