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各国情報・国際関係

英国安全衛生庁は、2015年7月6日に、2014年4月1日から2015年3月31日までの間の職場における死亡災害統計を速報値(暫定的な数字)として公表しました。

要約

2014/2015における(英国においては2014年4月1日から2015年3月31日までの期間を意味する。)労働者(自営業者(原文では、Self-employed)を含む。以下同じ。) の死亡災害の件数は、暫定的な統計として142人(訳者注;被雇用者(Employee)のみでは99人)で、労働者10万人当たりの死亡災害発生率は、0.46(訳者注;被雇用者(Employee)のみでは0.38)であった。 この142人の数字は、過去5年間(2009/10〜2013/14)の平均の死亡災害者数が156人(訳者注;被雇用者(Employee)のみでは106人)であったことと比較すると、それよりは14人、9%減少している。

原資料の題名と所在

Statistics on fatal injuries in the workplace in Great Britain 2015
Full-year details and technical notes
http://www.hse.gov.uk/statistics/fatals.htm

概要

この情報は、2014/2015における最新の職場での死亡事故に関する統計であり、概略は次のとおりである。

1 総括的な状況
  • 2014/2015の労働者の死亡事故の暫定的な数字は142人で、これは労働者10万人当たりでは0.46の(発生)率に相当する。
  • 2014/2015の142人との数字は、過去5年間の平均値よりは9%低いものである。
  • 2013/2014の確定値は136で、労働者10万当たり0.45人の発生率に相当する。
  • 過去20年以上の期間において、死亡事故の発生率では減少の傾向があったが、近年(2008/2009以降)ではこの傾向は明瞭ではない。
  • 2014/2015では、一般国民で102人の死亡事故(鉄道に関連するものを除く。)があった。
  • 労働者についての死亡事故数及び発生率 (1995/96から2014/2015(暫定的なもの)まで) の推移は、次の図 (figure) 1のとおりである。

Figure 1

Figure 1:Number and rate of fatal injury to workers

2 2014/2015における主要な業種ごとの状況
  • 農業では33人の労働者の死亡事故があり、これは5年間平均(33人)と同じであった。2014/2015の死亡事故発生率は、5年間の平均死亡事故発生率10.07と比較すると、9.12である。
  • 鉱業及び採石業では、過去5年間の平均である5人と比較すると、1人の労働者が死亡した。
  • 製造業では、過去5年間の平均である24人と比較すると33%低く、16人の死亡事故があった。過去5年間の平均である死亡事故発生率0.84と比較して最新の死亡事故発生率は0.55である。
  • 廃棄物及びリサイクル業では、過去5年間の6人と比較して5人の死亡事故があり、年々かなりの変動がある。過去5年間の平均発生率5.19と比較すると、最新の発生率は、10万人当たり4.31である。
  • 建設業では、過去5年間の平均である45人よりは22%低い35人の死亡事故があった。過去5年間の平均発生率2.07と比較すると、最新の発生率は、10万人当たり1.62である。
  • サービス業では51人の死亡事故があり、過去5年間の平均である42人と比較して21%多くなっている。最新の死亡事故発生率は、過去5年間の平均0.18と比較して0.21である。
  • 一般国民では、2014/2015における作業と関連する123人の死亡事故があった。そのうち、21人(17%)は鉄道で起きたものであった。
  • 主要な業種における死亡事故の数(2014/2015暫定値)は、次の表 (table) 1のとおりである。

 

Table 1: Number of fatal injuries by main industry - 2014/15p

Main Industry SIC 2007 (Section)EmployeeSelf employedWorkers1Members ofthe publicTotal fatal injuries
Agriculture (A)141933437
Mining and Quarrying (B)1-112
Manufacturing (C)15116218
Gas, electricity and water supply:
sewerage, waste and recycling (D,E2)
516713
- of which waste and recycling (SIC38)415611
Construction (F)241135439
Services (G-U)401151105156
All Industries (A-U)9943142123265

p = Provisional.

1
The term 'workers' covers employees and the self-employed combined.
2
Figures for SIC Division 38 'waste collection etc.' are also included in the overall figures for the combined Sections D and E.
  • 死亡事故の発生率(労働者、被雇用者及び自営業者10万人当たり)は、次の表 (table) 2のとおりである。

Table 2: Rate of fatal injuries (per 100,000 employees or self-employed)
by main industry - 2014/15p

Main Industry SIC 2007(Section)EmployeeSelf
employed
Workers1
Agriculture (A) 8.04 10.12 9.12
Mining and Quarrying (B) . . . . . .
Manufacturing (C) 0.56 0.47 0.55
Gas, electricity and water supply:
sewerage, waste and recycling (D,E2)
. . . . . .
- of which waste and recycling (SIC38) 3.64 . . 4.31
Construction (F) 1.86 1.28 1.62
Services (G-U) 0.19 0.31 0.21
All Industries (A-U) 0.38 0.89 0.46

p = Provisional.

1
The term 'workers' covers employees and the self-employed combined.
2
Figures for SIC Division 38 'waste collection etc.' are also included in the overall figures for the combined Sections D and E.
. . Rate not calculated as the employment estimates are small or potentially unreliable.

 

3 長期的な傾向について
  • 下の図 (figure) 2 (労働者についての死亡事故発生率の3年間平均の変動、1995/96-2014/15p(p;暫定的)) は、過去20年間における死亡事故の発生率の傾向を示している。この図2は、1年毎の変動の影響を減らし、傾向を強調して早期の変化を示していることが図1と違う点である。このことは、最近20年間の期間においては、死亡事故発生率は、ごく最近(2008/2009以降)では、その傾向は小さくなっているものの、総体として減少する傾向にあることを示している。

 

Figure 2: Rolling three-year average rate of fatal injury to workers1
1995/96 - 2014/15p
Figure 2: Rolling three-year average rate of fatal injury to workers

p = Provisional.
r = revised

1
The term 'workers' includes employees and the self-employed combined.

 

  • 職場における死亡事故は、稀な出来事である。その結果として、基本的な統計原則としては、年ごとの数字は、数字が少なければ少ないだけ、相対的により顕著になるという、偶然の変動が大きく影響することを決定付けている。さらに、この偶然の変動の影響は、仮に作業条件の固有の危険性がその年及び次の年に変化しないままでいるとすれば、総数が変動するという傾向をもたらすということが推測される。
  • 雇用の状況を考慮すると、142人の死亡事故は、労働者10万人当たり0.46の死亡率を示している。死亡事故が確定した前の年の136人の数字を最新の数字と比較すると、6人の増加は、統計的には有意なものではない。同じように、142人の数字を過去5年間の平均(156)と比較すると、9%の減少となっていることも、また、統計的には有意ではない。最近年の数字のほとんどは、常に暫定的なものであり、過去の年における経験に基づいて、次の年に確定される場合は、多少の増減があることを述べておかなければならない。

 

4 他の国々との比較
  • 地球規模での比較 (例えば、アメリカ合衆国、アジアの国々等) は、職場事故の定義、報告システム及び国内産業構造の違い等により困難である。しかし、他のいくつかのヨーロッパ諸国との比較は、欧州連合の統計機関(Eurostat)にまとめられたデータを通じて可能である。
  • 1990年以来、Eurostatは、欧州全域で職場における災害統計の統一性をもたらす調和計画に関して、欧州連合加盟国とともに作業してきた。加盟各国における産業の背景が異なっていることを考慮に入れて、Eurostatは、標準化された事故発生率を公表した。
    下の図(figure)3(2012年についての標準化された死亡事故の発生率(10万人の労働者当たり)(Eurostat)。数字は、道路交通事故及び通勤途上の事故を除外している。)及び表(table)6(2012年の標準化された職場での死亡事故発生率及び2009-2012の平均発生率(Eurostat)。数字は、道路交通事故及び通勤途上の事故を除外している。)は、Eurostatが公表した職場における死亡災害の最新の発生率を示している。これらは、英国安全衛生庁で毎年公表しているものよりは少し遅れており、利用できる最新の比較は、2012年のものである。2013年の数字は、2015年夏に公表される。2011年及び2012年のデータは、グレートブリテン及び北アイルランドを含むものが英国のデータとなっている。これ以前のデータは、グレートブリテン(イングランド、スコットランド、ウェールズの三つの地方)のみになっている。それゆえ、この報告に含まれている、2009-2011年の3年間平均の事故発生率は、グレートブリテン部分と英国部分のデータが入り混じっているが、このことは、災害発生率に関して無視できる影響を持つに過ぎない。

 

Figure 3: Standardised incidence rates (per 100,000 workers) of fatal accidents at work for 2012 (Eurostat)

Note: Figures exclude road traffic accidents and accidents on board transport in the course of work.

Figure 3: Standardised incidence rates (per 100,000 workers) of fatal accidents at work for 2012 (Eurostat)

Table 6: Standardised incidence rates of fatal accidents at work for 2012 and averaged rate from 2009-2011 (Eurostat)

Note: Figures exclude road traffic accidents and accidents on board transport in the course of work.

Member state1 Eurostat - standardised incidence rate
(per 100,000 workers)
2012 Average (2009-2011)
United Kingdom2 0.58 0.67
Netherlands 0.72 0.76
Sweden 0.80 1.26
Germany 0.90 0.80
Estonia 1.02 2.43
Denmark 1.18 1.10
Greece 1.20 0.85
Italy 1.29 1.58
European Union (15 countries) 1.30 1.55
Poland 1.42 3.30
Ireland 1.43 1.19
Belgium 1.46 2.04
Hungary 1.60 2.18
Finland 1.62 1.04
Switzerland 1.68 1.57
Malta 1.70 0.50
Slovakia 1.78 0.59
Spain 1.99 1.98
Czech Republic 2.10 2.01
Cyprus 2.25 3.48
Austria 2.37 2.13
France 2.64 3.22
Slovenia 2.70 1.93
Portugal 2.71 2.90
Luxembourg 2.91 2.53
Romania 2.94 4.53
Bulgaria 3.06 2.26
Croatia 3.17 1.68
Lithuania 3.93 3.75
Latvia 4.70 3.52

 

1
Whilst overall, work-related deaths are steadily reducing across the EU, in some cases the number of fatalities and employment levels in member states are relatively small, hence susceptible to considerable annual variation. This should be considered when making comparisons between countries. Standardised rates are not available for Norway or Iceland, and hence these countries are excluded from the above analysis.
2
2011 and 2012 rates include injuries for Great Britain and Northern Ireland, forming data for the United Kingdom, whereas data from 2009 and 2010 are based on GB data only. UK/GB injury rates shown in the above analysis may differ slightly from those elsewhere in this publication, as Eurostat standardise rates across all member states to take account of differing industrial backgrounds.

Further information on EU health and safety comparisons is available at www.hse.gov.uk/statistics/european/.

  • 上述したような、他の国と英国の主要な比較は、次のとおりである。
    • 2012年の英国についての標準化死亡事故発生率は、10万人当たり0.58で、3年平均の発生率と比較すると、0.67である。
    • 2012年の英国の発生率は、相当する欧州連合15か国の発生率(10万人当たり1.3)及びドイツ(0.9)、イタリア(1.29)、スペイン(0.99)やフランス(2.64)を含む多くの他の欧州諸国のものよりはかなり低くなっている。
    • 英国の3年間平均発生率(2009-2012)は、全ての欧州連合加盟国の中でも最も低いものの一つである。
    • Eurostatによって公表されている標準化されたデータは、輸送部門を除くすべての主要な産業部門において発生した死亡事故に基づいている。これらの発生率は、道路交通事故を含まないものとして意図されているが、これらの除外は、必ずしも完全なものではない。このことは、個々の国々について発生率を調査する場合に考慮されるべきである。
5 訳者解説
(1)
英国における2014/2015の職場における死亡災害が、暫定的なものであるとしても142件(employee;被雇用者のみでは99件)であったことは、我が国の2014年における労働者の確定死亡災害が、1,057人であったこと(資料出所;厚生労働省)と比較して、英国での死亡災害が、例年どおり極めて少ないことが注目される。
(2)
英国と我が国との主要な業種別(製造業と建設業に限る。なお、サービス業については、我が国と英国との業種分類がかなり異なるため、算出しなかった。)死亡災害者数、雇用者(Employee;英国におけるSelf-employed;自営業者を除いたもの。以下同じ。)数、雇用者10万人当たりの死亡災害発生率を、訳者が試算したところ、その結果は次の表のとおりとなり、いずれも我が国の死亡災害発生率は、英国のものよりはかなり高くなっている。
 日本英国
業種
(CとFは、国際標準産業分類での呼び方を示す。)
死亡災害者数
(2014年1月〜12月 )
雇用者数
(2013年 )
雇用者10万人当たりの死亡災害発生率死亡災害者数
(2014/15)
雇用者数
(2013年)
雇用者10万人当たりの死亡災害発生率
製造業
(C)
180人10,110千人1.7815人
(表(table)1の Employee)
2,698千人0.56
(HSE: 英国安全衛生庁の公表データ)
なお、左欄のデータで計算しても
0.56
建設業
(F)
377人9,810千人3.8424
(表(table)1 のEmployee)
1,278千人1.86(HSEの公表データ)
ただし、左欄のデータで試算すると
1.88
(3)
我が国と英国での死亡災害者数の相違がある要因について明らかではないが、次の要因等を踏まえて解釈(推測)することが必要ではないかと考えられる。
  • 英国の労働災害統計では、道路交通、空路及び海路での移動等で生じた災害は、対象から除外されているが、我が国のものはこれらを含んでいる。
  • 労働災害統計の第一義的なデータは、我が国の場合には平成23年(2011年)までは労災保険給付データ及び厚生労働省安全課調べのもの、平成24年(2012年)以降は労働者死傷病報告及び労災保険新規受給者数の併用のものであるが、英国の場合は、RIDDOR (The Reporting of Injuries, Diseases and Dangerous Occurrences Regulations; 傷害、疾病及び危険事象報告規則)による届け出(自営業者、一般公衆の災害を含む。)が基礎データとなっている。
  • 英国では、労災補償制度は我が国のような国営保険(労働者災害補償保険法等によるもの)ではなく、Employers' Liability(Compulsory Insurance) Act 1969(「雇用者の責任(法定保険)法1969年」)に基づき、少なくとも職場における労働災害が発生した場合に労働者の補償の要求に備えるための最低限度の保険(この場合、雇用者が契約できるのは、the Financial Services and Markets Act 2000(財政サービス及び市場法、2000年)の関係条項に基づき登録された保険会社等に限られている)に加入することが義務付けられており、その保険の補償額の上限は、少なくとも500万ポンドであり、さらに実際には雇用者は1000万ポンドまでの上限の保険に加入していることが多いとされている。ただし、このような労災保険制度の相違が我が国と英国の労働災害発生状況に影響しているかどうかは、つまびらかではない。(注:2015年7月 円対ポンドレート 1ポンド約195円)
6 この資料の英語原文―日本語仮訳の対訳

"Statistics on fatal injuries in the workplace in Great Britain 2015"、"Full-year details and technical notes"についての 全文の英語―日本語対訳 (PDF 1,617KB)を参照してください。

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