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モンゴル労働法(1999年)
LABOUR LAW OF MONGOLIA

(仮訳 国際安全衛生センター)


第10章

集団的労使紛争に関する規制


第115条 集団的労使紛争の開始、及び要求の提出と対応

第115条の1
 労働者の代表者は、第12条の5にもとづく労働協約及び団体交渉による話し合いでは解決不可能な問題につき、集団的労使紛争の手続きを開始する権利を有し、さらに、このような契約事項の遵守を求める諸要求項目を提出する権利も有するものとする。

第115条の2
 一方の当事者から争議の場に持ち出される諸要求項目は、書式の形でもう一方の当事者に送付されなければならない。

第115条の3
 諸要求項目のコピー1部は、関係する地域の知事あて送付されなければならない。

第115条の4
 このような緒要求項目を受け取った当事者は、もう一方の当事者に対し、労働日3日以内に書式で回答しなければならない。

第116条 集団的労使紛争の調停

第116条の1
 集団的労使紛争は以下の方法で調停し解決を図るものとする。

第116条の1の1
 仲裁人を用いる。

第116条の1の2
 労働仲裁裁判所で解決を図る。
第116条の2
 双方の当事者は、第116条の1に記載された調停方法への参加を拒否してはならない。

第116条の3
 労働者の代表者は、かれらの緒要求項目をかかげて集会及び合法的なデモを組織する権利を有するものとする。

第116条の4
 労働者の代表者、調停者、及び労働仲裁裁判所の委員は、集団的労使紛争を解決すべく、こうした調停の過程であらゆる努力を傾けなければならない。

第117条 集団的労使紛争解決への調停者の導入

第117条の1
 使用者が、使用者に提出された要求項目に対し、第115条に記載された期限内に回答しない場合、又は、その使用者の回答が労働者の代表者に受け入れられないものである場合、調停者が招かれ、その集団的労使紛争の調停プロセスに参加するものとする。

第117条の2
 双方の当事者がその調停者を指名することについて同意できない場合、Soum(州) 又は地域の知事がこうした調停者の指名を行うよう求められる。

第117条の3
 関係のSoum(州)又は地域の知事は、こうした要請を受け、労働日3日以内に調停者を指名するものとする。

第117条の4
 双方の当事者は、知事が指名した調停者の受入れを拒否する権利を有しない。

第117条の5
 調停者の参加を得て集団的労使紛争を解決する時に適用される緒規則は、政府の承認を受けなくてはならない。

第117条の6
 調停者は、紛争当事者に対し、その集団的労使紛争に関する書類及び情報を提供するよう求める権利を有する。

第117条の7
 紛争当事者及びその調停者は、その問題を考察した上、その問題が解決されたのか又は合意に達しなかったのか、調停者の指名後労働日5日以内に書式で結論を出すものとするが、どちらの場合も、この仲裁プロセスは完了したものとみなされる。

第118条 労働仲裁裁判所による集団的労使紛争の審理

第118条の1
 双方の当事者が合意に達せず仲裁プロセスが完了した場合、関係の領域の知事は、労働日3日以内に労働仲裁裁判所を設立し、その集団的労使紛争を審理するための調停委員を指名しなければならない。

第118条の2
 この労働仲裁裁判所は3名の調停委員で構成され、その集団的労使紛争に参加している双方の当事者から選任された者が各1名、及び関係するSoum(州) 又は地域の知事から選任された者が1名とする。

第118条の3
 双方の当事者は、知事が選任した調停委員を拒否する権利を有しない。

第118条の4
 その集団的労使紛争に参加している当事者の代表者は、労働仲裁裁判所の委員となる資格を有しない。

第118条の5
 労働仲裁裁判所は、設立後労働日5日以内に、その集団的労使紛争について双方の当事者の代表と話し合い、勧告案を提案しなければならない。

第118条の6
 集団的労使紛争の双方の当事者が労働仲裁裁判所の勧告案の受入れに合意する場合、双方の当事者はこの勧告案の趣旨にもとづき和解案を締結しなければならない。

第118条の7
 双方の当事者は、第118条の6により合意された和解案を実施する義務を負う。

第118条の8
 議会は、労働及び社会合意に関する全国三者委員会が作成した緒提案にもとづき、労働仲裁裁判所の設立を許可する条例を採択しなければならない。

第119条 ストライキ権の行使

第119条の1
 労働者の代表者は、次の状況にあるとき、ストライキを行う権利を有する。

第119条の1の1
 使用者が、第116条の1に規定された和解方法に参加しない場合。

第119条の1の2
 使用者が、調停者の参加を伴う話し合いを経て合意された和解案に従わない場合。

第119条の1の3
 使用者が、労働仲裁裁判所が作成した勧告案の受入れにもとづく和解案に従わない場合。

第119条の1の4
 労働仲裁裁判所が集団的労使紛争を検討したにもかかわらず、その勧告案が受け入れられなかった場合、又は、裁判所の結論が出なかった場合。
第119条の2
 労働者はストライキに自発的に参加するものとする。

第119条の3
 労働者をストライキに参加するよう強制すること、ストライキに参加しないよう強制すること、ストライキを続けるよう強制すること、又は、ストライキを中止するよう強制することは、特に法律の定めがない限り禁止される。

第119条の4
 使用者の代表者がストライキに参加すること、又は、ストライキを組織することは禁止される。

第120条   ストライキ又は労働者が作業場へ立入ることの一時的拒否

第120条の1
 ストライキは、労働者の権利及び法律上の利益を代表し守る組織の集会、又は、すべての労働者による集会の場で決定されなくてはならない。

第120条の2
 企業若しくは組織の労働者、又は、労働者の権利及び法律上の利益を代表し守る組織の構成員による集会は、労働者、又は、労働者の権利及び法律上の利益を代表し守る組織の構成員の圧倒的多数(三分の二)の出席を得た場合、定足数に達したものとみなされる。

第120条の3
 集会に出席した者の過半数が、ストライキの提案を承認した場合、ストライキは宣言される。

第120条の4
 ストライキを宣言する声明書には次の項目が含まれなくてはならない。

第120条の4の1
 ストライキの原因となった問題点。

第120条の4の2
 ストライキ開始の日時、ストライキ予定期間、ストライキ参加者の概算予測数。

第120条の4の3
 ストライキを組織し統合する責任者の氏名、及び、和解交渉に参加する労働者の代表者の構成図。

第120条の4の4
 ストライキ期間中に国民の健康と安全を確保するための緒計画についての説明。
第120条の5
 ストライキを組織する者は、使用者に対し、ストライキを決定したことについて、ストライキ開始の少なくとも労働日5日前までに通告しなくてはならない。

第120条の6
 使用者が労働者の要求を受け入れることが不可能と思った場合は、使用者はストライキに参加している労働者が作業場に立入ることを一時的に拒否することができる。(ロックアウト)

第120条の7
 ストライキ中に使用者が他の労働者をその職場へ臨時採用することを防ぐため、労働者の代表者は人が企業又は組織へ立入ることを拒むことが出来る。(ピケ)

第120条の8
 使用者は、ストライキ又は労働者が作業場へ立入ることを一時的に拒否することによって影響をこうむると思われる顧客、納入業者、及びその他関係者に対し、少なくともストライキの労働日3日前までにストライキを通知しなくてはならない。

第120条の9
 第三者がストライキを組織することに係ること、労働者が作業場へ立入ることの一時的拒否に係ること、和解交渉に参加すること、又は合意を拒否する側の当事者がその自由意志を行使することを妨げることは禁止される。

第120条の10
 ストライキ参加者は、どのようなストライキ中においても、その争点を解決するべく最大限の努力を払わなくてはならない。

第120条の11
 ストライキ又は労働者が作業場へ立入ることの一時的拒否を組織する団体は、関係官庁の援助を得て、公秩序、国民の健康と安全、財産の保護を確保するための手段を講じなくてはならない。

第121条 ストライキを組織、停止、又は終了できる当事者

第121条の1
 ストライキは、労働者の代表者だけが組織することができる。

第121条の2
 ストライキを組織する者は、労働者の集会を開く権利、労働者の権利及び法律上の利益に関する情報を使用者から得る権利、及び、紛争点について労働者に助言するための専門家を招く権利を有する。

第121条の3
 ストライキを組織する者は、ストライキを停止する権利を有する。

第121条の4
 停止されていたストライキが再開された場合、第116条の1に記載された労働仲裁裁判所は、その事実を,ストライキの決議がなされたものとはみなさない。

第121条の5
 ストライキの復活決議がなされた場合、その復活させる日の少なくとも労働日3日前までに、使用者に対し、ストライキを復活させる旨通知しなくてはならない。

第121条の6
 ストライキは、双方の当事者が和解合意案に署名した場合、又は、そのストライキが違法であると宣言された場合には、終結したものとみなされる。

第122条 ストライキの禁止、延期、又は一時的停止

第122条の1
 ストライキを組織することは、国家の防衛、国家の安全保障、又は、公秩序を担当する組織においては禁止される。

第122条の2
 団体争議に関する交渉が進められている間、又は、調停者、労働調停委員、あるいは労働仲裁裁判所がその紛争を考察している間は、ストライキを組織することは禁止される。

第122条の3
 ストライキにより人命及び健康に対し直接の脅威が発生した場合、労働仲裁裁判所は、ストライキを最大30日間延期させる権利、又は、既にストライキに入っている場合は、同様の期間ストライキを一時的に停止させる権利を有する。

第122条の4
 公共の電気と暖房、公共水道、公共輸送、国際通信、都市間の通信、又は鉄道による交通を担当する企業におけるストライキが、国家の安全保障、人権又は個人の自由を脅かす場合、政府は、14日間を限度とし、労働仲裁裁判所が本件に関して結論を下すまで、そのストライキを延期することができる。

第123条 違反なストライキ及び作業場への立入拒否

第123条の1
 つぎの場合、集団的労使紛争の結果組織されるストライキは、違法とみなされる。

第123条の1の1
 第119条の1の規定条項に違反した場合。

第123条の1の2
 ストライキが、第122条の1に定める団体で組織された場合。

第123条の1の3
 ストライキが、第18条及び第19条に記載された労働協約が定めるところの利害関係と関連のないことがらについて組織された場合。
第123条の2
 そのストライキを組織すること又は労働者が作業場へ立入ることの一時的拒否を法律違反と考える者は、裁判所に提訴することができる。

第123条の3
 裁判所は、ストライキ又は労働者が作業場へ立入ることの一時的拒否が法律違反かどうか判断しなくてはならない。

第123条の4
 裁判所が、そのストライキ又は労働者が作業場へ立入ることの一時的拒否は法律違反であると判断した場合、双方の当事者はただちに行動を中止しなくてはならない。

124条 集団的労使紛争の解決に関与した労働者の権利の保証

第124条の1
 集団的労使紛争の解決に関連して調停者又は労働調停委員として働く労働者は、紛争の解決にあたる間、主たる仕事を欠勤することを許され、かれらの平均賃金を引き続き受け取る資格を有する。

第124条の2
 使用者が、集団的労使紛争の和解交渉で労働者の代表者として活動するすべての労働者に対し、その者を解雇すること、転勤させること、又は、懲罰を課すことは禁止される。

第124条の3
 使用者が、非合法とされないストライキに参加するすべての労働者に対し、その者を解雇すること、転勤させること、又は、懲罰を課することは禁止される。

第124条の4
 集団的労使紛争の和解交渉で一方の当事者がストライキに参加している労働者に対し、報酬を与えることを決定することができる。

第124条の5
 ストライキ又は労働者が作業場へ立入ることの一時的拒否が裁判所により非合法とされた場合で、ストライキには不参加の労働者がそのストライキ又は労働者が作業場へ立入ることの一時的拒否のため職務を遂行できなかった場合、その者は平均賃金と等しい額の支払いを受け取る資格を有する。



目次
第1章 / 第2章 / 第3章 / 第4章 / 第5章
第6章 / 第7章 / 第8章 / 第9章 / 第10章
第11章 / 第12章 / 第13章 / 第14章 / 第15章