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モンゴル労働法(1999年)
LABOUR LAW OF MONGOLIA

(仮訳 国際安全衛生センター)


第6章

労働条件、安全衛生基準


第81条 労働条件の分類

第81条の1
 労働条件は、通常作業条件及び異常作業条件に分類されなければならない。

第81条の2
 使用者は、作業場の条件を評価するために、権限ある専門機関と連携しなくてはならない。

第81条の3
 異常作業条件のもとで作業する労働者を対象とした労災年金の設立に関する規定は、法律で採択されるものとする。

第82条 労働安全衛生基準の確立

第82条の1
 基準の作成にあたる団体は、中央政府の労働問題を担当する機関と協力の上、関連法令を遵守しつつ、この労働安全衛生基準を定めなくてはならない。

第82条の2
 労働安全衛生の一般規定は、中央政府の労働問題を担当する機関の承認を受けなくてはならない。

第83条 一般的な職場の要件

第83条の1
 作業をする場では、生産技術に係る必須要件が満たされ、安全衛生についての関連要件が遵守されなくてはならない。

第83条の2
 作業場における有害もしくは危険を伴う化学的、物理的、又は生物学的条件は、第82条の1に定める団体が作成する労働安全衛生基準値を超えてはならない。

第83条の3
 労働者が働く作業場では、該当衛生基準の定める設備が備えられなくてはならない。

第84条 工場の建物と施設の要件

第84条の1
 工場の建物及び設備を設計する場合、あるいはこうした建物の建設、改築、拡張、使用権委譲を願い出る場合は、労働安全衛生を担当する関連の専門機関の承認及び許可を得なくてはならない。

第85条 工場の建物又は施設が共同所有されている場合の要件

第85条の1
 二人以上の所有者が工場の建物又は設備を共有する場合、その所有者は、次の要件を満たしていることを確認しなくてはならない。

第85条の1の1 
 所有者は、協力して安全規定を作成し実行しなくてはならない。

第85条の1の2
 危険有害化学物質、毒性物質、爆発物、放射性物質、生物学的に活性を有する物質が製造過程で扱われる場合、こうした建物、設備の所有者は、所有者間で情報を交換し、該当安全規定を遵守するべく対策を講じなくてはならない。
第85条の2
 第85条の1に定める要件が満たされない場合、工場の建物又は設備の共同所有は禁止される。

第86条 機械と設備に関する要件

第86条の1
 機械、設備を使用する際は該当する安全規定を遵守し、こうした機械、設備についての技術マニュアルを整備しなくてはならない。

第86条の2
 機械、設備を設置する場合、及び、こうした機械、設備の主要部分が修理された後引き続き使用される場合は、関係した専門の監督団体の検査、承認を受けなくてはならない。

第86条の3
 リフト機械及び輸送用機械、圧力容器、パイプ、導管については、関連規定に従って定期的に検査を受け、安全の承認を受けなくてはならない。

第86条の4
 電気設備を設置する際は、該当作業文書で示された手順に沿って行わなくてはならない。又、その使用にあたっては、該当するすべての使用安全規定を遵守しなくてはならない。

第87条 特殊作業衣と保護具の要件

第87条の1
 使用者は、作業上必要であれば、該当安全衛生要件に従い、適正な特殊作業服及び保護具を労働者に対し与えなくてはならない。

第87条の2
 使用者は、こうした特殊作業服及び保護具を、洗浄、殺菌、修繕しなくてはならない。

第88条 化学物質、中毒性物質、爆発性物質、放射性物質、及び生物学的活性を持つ物質に関する要件

第88条の1
 使用者は、化学物質、毒性物質、爆発物、放射性物質、又は生物学的に活性な物質が生産の過程で使用される場合、労働監督機関及び関係専門機関に通知し、こうした権威ある機関が作成した関連の規制を遵守しなくてはならない。

第89条 防火要件

第89条の1
 使用者は、国内火災安全規則を採用し、遵守しなくてはならない。

第89条の2
 火災警報システム及び消火器を備えた企業及び組織は、こうした設備を常に作動できる状態にし、こうした設備を使えるよう労働者を訓練しなくてはならない。

第89条の3
 使用者は、生産の過程で発生する火災を防ぐため、あらゆる防止策を講じなくてはならない。

第90条 不良な気象条件下における労働に関する要件

第90条の1
 使用者は、屋外で働く労働者、あるいは暖房設備のない屋内作業所で働く労働者のため、該当労働基準に従い、休憩時間に休息を取り身体を暖めることのできる特別で快適な場所を設置し、設備を整えなくてはならない。

第91条 良好な労働条件の提供

第91条の1
 使用者は、労働者にとって好ましい作業条件を整え、生産の過程で発生する化学的要因、物理的要因、生物学的要因が、労働者の安全衛生、自然環境に悪い影響を与えることのないよう、手段を講じなくてはならない。

第91条の2
 使用者は、異常な作業条件のもとで作業する労働者に対し、保護具、特殊作業服、解毒剤及び食品等を支給しなくてはならない。

第91条の3
 使用者は、該当安全衛生要件を満たすために使われるお金の額を、年次作業計画書及び労働協約の中に明記しなくてはならない。

第92条 健康診断

第92条の1
 使用者は、管轄機関が公布した規定に基づき、職業性疾病防止のため、労働者が必要かつ作業遂行上関係のある健康診断を定期的に受けられるよう手配しなくてはならない。

第92条の2
 第92条の1にある健康診断に係る費用は、使用者が負担しなくてはならない。

第93条 労働安全衛生の責任を負う部門又は委員会(council)

第93条の1
 企業あるいは組織は、安全衛生問題を担当する専従を一人雇うか、又は使用者と労働者の代表からなる協議会を設置しなくてはならない。

第93条の2
 労働安全衛生要件を定める規則は、労働問題を担当する中央行政府機関が取り決めなくてはならない。

第94条 生命及び身体に悪影響を及ぼす条件下での労働の停止

第94条の1 
 作業の過程で、生産に係る安全規定が無視され、労働者の生命身体に脅威を与えるような事態が発生した場合には、労働者は作業を中止し、その状況を使用者に通知しなくてはならない。

第94条の2
 使用者は本法第94条の1に示された安全規定無視の状況を改善するため、ただちに対策を講じなくてはならない。

第95条 労働災害、職業性疾病、急性中毒の記録

第95条の1 
 使用者は、労働災害でけがをした労働者を使用者の費用でただちに病院へ運び、事故の原因と結果に対する対策を講じなくてはならない。

第95条の2 
 使用者は、中央政府が採択した規則に基づき、すべての労働災害を調査し報告し、その事故原因を究明する非責任の常設委員会を設置しなくてはならない。

第95条の3 
 その委員会による事故調査結果は、国の労働監督官によって承認されなくてはならない。

第95条の4 
 使用者が第95条の2及び第95条の3に定める規定に従わない場合、あるいは、労働者がその事故原因調査の結果に不満ある場合には、その労働者は、国の労働監督官庁に対し、その旨意見を述べることができる。

第95条の5 
 使用者は、本法第95条の4により行われた苦情を配慮した結果定められた取り決めを、実行する義務を負わなくてはならない。

第95条の6 
 事故を起こした企業又は組織は、その事故調査、報告に係る費用を負担しなくてはならない。
 
第95条の7 
 職業性疾病、急性中毒の発生は労働災害と同義とみなされ、該当する労働監督官庁がそうした事態を調査し報告し、適正と思われる対策を講じなくてはならない。
 
第95条の8 
 使用者は、労働災害、職業性疾病、急性中毒の発生に関して持っているあらゆる情報を提供しなくてはならない。
 
第95条の9 
 職業性疾病あるいは急性中毒、又は労働災害の発生を隠蔽してはならない。
 
第95条の10 
 労働災害、職業性疾病、又は急性中毒に係る調査及び登録に関する規定は中央政府の承認を得なくてはならない。

第96条 職業性疾病

第96条の1
 健康問題を所轄する中央行政府は、職業性疾病のリストを公表しなくてはならない。

第96条の2
 職業性疾病を定義する基準は、関連専門機関が定めなくてはならない。

第97条 労働災害、急性中毒、又は職業性疾病を原因とする損害の補償

第97条の1
 労働者が、労働災害、職業性疾病、又は急性中毒のための傷害保険によって補償されると否とに関わらず、その者が労働災害、職業性疾病、若しくは急性中毒の被災者になった場合、又は死亡した場合には、使用者は、こうした労働者、又はその遺族に対し、次に示す方法で補償を行わなくてはならない。

第97条の1の1
 労働者が労働災害あるいは職業性疾病、又は急性中毒を原因とし働く能力の半分までを失った場合には、月平均賃金に相当する金額を9ヶ月以上補償しなくてはならない。又、働く能力をすべて失った場合には、月平均賃金に相当する金額を18ヶ月にわたり補償しなくてはならない。

第97条の1の2
 労働災害、急性中毒、又は職業性疾病を原因とし死亡した労働者の家族に対しては、その死亡した労働者の月平均賃金を36ヶ月にわたって補償しなくてはならない。
第97条の2
 第97条の1による補償は、負傷した労働者が社会保険法(Social Insurance Law)やその他の法の下で権利を与えられている年金や給付金に影響するものではない。

第97条の3
 補償額を最低生活基準の上昇にスライドさせるための取り決めは、労働協約で定めなくてはならない。

第98条 労働医事専門家委員会 (Labor and Medical Examination Commission)

第98条の1
 作業の結果被災した労働者の被災原因及び損傷の程度は、労働医事専門家委員会が決定しなくてはならない。

第98条の2
 労働医事専門家委員会を設置するための許可証は、中央政府が認証しなくてはならない。

第99条 労働安全衛生基準に違反した企業及び組織の業務停止及び終了

第99条の1
 企業活動あるいは組織の活動が、労働者の健康と安全に有害な影響を与えていると認められる場合には、関連の労働監督官庁あるいは国の調査官が使用者に対し、そうした状況を改善するための適切な対策を講じるよう指示することができる。

第99条の2
 使用者が、第99条の1にある危険な状況を改善しない場合には、関係労働監督官庁あるいは国の監督官が、状況が改善されるまでの間その使用者の企業活動の一時停止を命令したり、あるいは永久にその企業活動の停止を命令することができる。


目次
第1章 / 第2章 / 第3章 / 第4章 / 第5章
第6章 / 第7章 / 第8章 / 第9章 / 第10章
第11章 / 第12章 / 第13章 / 第14章 / 第15章