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中央労働災害防止協会(中災防)
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E-mail: kokusai@jisha.or.jp
お知らせ
国からの委託事業であった
「国際安全衛生センター(JICOSH)」
が2008年3月末をもって廃止されました。
永らくのご利用ありがとうございました。
同センターのサイトに掲載されていた個別の情報については、中災防WEBサイトの
国別、
分野別情報にリンクして取り込んでおります。
2010年9月30日
イギリスでは、タワークレーンの倒壊という重大な事故が、2000年から2009年までに、5件発生したことから、安全衛生庁(HSE)は付属機関である安全衛生研究所(Heath and Safety Laboratory、HSL)に要請して、世界中で起こったこの種の事故(86件)について調査し、調査報告書を刊行した。その調査結果の概要を紹介する。
なお、事故の生々しい写真が図1から図30にわたって掲載されている原資料は、他のHSE刊行物と同様に、無償でダウンロードすることができる。
イギリスでは、タワークレーンの倒壊を含む重大な事故が2000年以降に、カナリーワーフ(2000)、ワーシング(2005)、バターシー(2006)、リバプール(2007)、クロイドン(2007)及びリバプール(2009)において発生している。
HSLの支援によるHSEの調査によれば、これらの倒壊事故は、異なった原因によるものであることが判明している。HSLは、揚重装置及び揚重操作の規制を所管するHSEの要請により、1989年から2009年までに世界中で発生したタワークレーン事故の状況とそれらの原因を研究することとなった。
調査研究の意図するところは、得られた情報を活用してイギリスのクレーン製造者に対して必要な指導を行おうとするものである
調査対象のクレーンは、イギリスの建設現場で多く使用されている、従来型の頂部旋回型の水平ジブ及び傾斜ジブ型タワークレーンに限定した。
水平ジブ型タワークレーンは、通常地上の基礎上に取付けられた中央マスト又は塔とクレーン部分から構成される。クレーン部分は、水平の釣合いジブ、主(水平)ジブ、運転室(取付けられている場合)、釣合い重り及びAフレーム又は旋回タレットから構成されている。これらは、旋回リングを介してマスト部又は塔に取付けられ、360°旋回できるようになっている。つり上げ部分は、主ジブに沿って走行し、ジブの旋回により位置決めされる。
傾斜ジブ型タワークレーンも通常地上の基礎上に取付けられた中央マスト又は塔とクレーン部分から構成される。クレーン部分は、水平釣合いジブ、主(傾斜)ジブ、運転室(取付けられている場合)、釣合い重り、Aフレーム又はタワーヘッドから構成されている。また、それらは旋回リングを介してマスト部又は塔に取付けられ、360°旋回できるようになっている。つり上げ部分は、主ジブの先端に取付けられ、ジブの起伏及び旋回により位置決めされる。
本調査においては、クレーンの倒壊事故、ジブなどの主要構造部分の損壊事故を対象としている。荷の落下、墜落、挟まれ・巻き込まれ、火災、滑り・つまずき及び感電災害は対象としていない。
また、次のクレーンによる事故は対象としていない。
調査は、原則としてインターネットに掲載された情報により実施した。調査において最も有用であったサイトは、次のものであった。
情報源がインターネットによるものであるため、その正確さについては限度があることに留意する必要がある。
1989年以降、タワークレーンの倒壊、主要構造部分の損壊による事故は86件確認された。これらの事故は、概略次の7つの類型に分類することができる。
1989年から2000年までに、世界中で起こったタワークレーンの倒壊または主要構造部分の損壊による事故で確認されたのは86件で、年別の確認数は下表のとおりである。
1989年 | 1990-1998年 | 1999年 | 2000年 | 2001年 | 2002年 | 2003年 |
---|---|---|---|---|---|---|
1件 | 未確認 | 2件 | 3件 | 1件 | 5件 | 3件 |
2004年 | 2005年 | 2006年 | 2007年 | 2008年 | 2009年 | 日時不明 |
3件 | 10件 | 7件 | 18件 | 15件 | 15件 | 3件 |
86件中の65件は、2005年から2009年の間に発生している(76%)。1990年から1998年の間は確認されていない。
2005年から建設工事がブームとなり、結果的にクレーンの使用が増え、事故も増加したものと考えられる。しかし、情報源には古いデータが保管されてないこともあり、実数はもっと多いことにも留意する必要がある。
アーカイブ情報としては、主として次のウェブサイトによった。
確認された58件(2009年に発生したリバプールの事故は調査中であり除外、また、原因不明の28件も除外)は、次のいずれかの類型に分類される。
組立て/解体/クライミング及び悪天候の2つの類型で76%を占めている。
この類型は、29件と最も多く発生しており、タワークレーンはこれらの工程に対して最も敏感であることを示している。組立て/分解/伸張工程では、大型で重い部品をつり上げ、動かし、取付ける作業があり、これらは高所において厳密な手順で作業をしなければならない。さらに、身体的にも厳しく、かつ長時間にわたることが多く、少しのミスが大きな事故になることが多い。
天候によるものは、15件発生しており、これらのうち2件は地震によるものである。他の13件のうち6件は傾斜ジブ型、5件は水平ジブ型、2件は分類不明である。このことは、水平ジブ型タワークレーン、傾斜ジブ型タワークレーンともに、強風には影響を受けやすいことを示している。
2007年1月のリバプールの事故を含め、いくつかの事故では、強風時にクレーンを運転していた。
強風時の運転以外の事故の要因としては、下記がある。
基礎に原因があった事故は2件確認された。このうちの2006年のシアトルでの事故は、クレーンが4本のコンクリート支柱に取付けられたアイビームに設置されていたもので、一般的な設計方法ではなかった。2003年のデュッセルドルフの事故においての基礎の詳細は不明である。
4件が確認されている。このうち、2006年のバターシー及び2008年のニューヨークの事故のクレーンは、使用暦20年を超えた老朽クレーンであった。
ニューヨークの事故のクレーンは倒壊前に修理が行われていた。この状況から次のことに対し留意する必要がある。
2006年のバターシーの事故と2009年のトロントの事故では、旋回リングが破損している。
誤使用による事故は、6件確認された。これらの原因は、
などである。