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各国情報・国際関係

世界のタワークレーン事故に関する調査報告書

2010年9月30日

HSE What’s new 2010年7月22日 別ウィンドウが開きます

イギリスでは、タワークレーンの倒壊という重大な事故が、2000年から2009年までに、5件発生したことから、安全衛生庁(HSE)は付属機関である安全衛生研究所(Heath and Safety Laboratory、HSL)に要請して、世界中で起こったこの種の事故(86件)について調査し、調査報告書を刊行した。その調査結果の概要を紹介する。
なお、事故の生々しい写真が図1から図30にわたって掲載されている原資料は、他のHSE刊行物と同様に、無償でダウンロードすることができる。

原資料の題名と所在
Tower crane incidents worldwide RR820
Prepared by the Health and Safety Laboratory for the Health and Safety Executive 2010
報告書の概要(View 別ウィンドウが開きます )
報告書本文(PDF View the full report 別ウィンドウが開きます )

 

世界のタワークレーン事故に関する調査報告書の概要RR820

1
はじめに
2
クレーンの種類
3
情報源
4
確認された事故
5
事故の分析
5.1  事故の全数
5.2  各々の事故の状況
6
まとめ

1 はじめに

イギリスでは、タワークレーンの倒壊を含む重大な事故が2000年以降に、カナリーワーフ(2000)、ワーシング(2005)、バターシー(2006)、リバプール(2007)、クロイドン(2007)及びリバプール(2009)において発生している。

HSLの支援によるHSEの調査によれば、これらの倒壊事故は、異なった原因によるものであることが判明している。HSLは、揚重装置及び揚重操作の規制を所管するHSEの要請により、1989年から2009年までに世界中で発生したタワークレーン事故の状況とそれらの原因を研究することとなった。

調査研究の意図するところは、得られた情報を活用してイギリスのクレーン製造者に対して必要な指導を行おうとするものである

2 クレーンの種類

調査対象のクレーンは、イギリスの建設現場で多く使用されている、従来型の頂部旋回型の水平ジブ及び傾斜ジブ型タワークレーンに限定した。

水平ジブ型タワークレーンは、通常地上の基礎上に取付けられた中央マスト又は塔とクレーン部分から構成される。クレーン部分は、水平の釣合いジブ、主(水平)ジブ、運転室(取付けられている場合)、釣合い重り及びAフレーム又は旋回タレットから構成されている。これらは、旋回リングを介してマスト部又は塔に取付けられ、360°旋回できるようになっている。つり上げ部分は、主ジブに沿って走行し、ジブの旋回により位置決めされる。

傾斜ジブ型タワークレーンも通常地上の基礎上に取付けられた中央マスト又は塔とクレーン部分から構成される。クレーン部分は、水平釣合いジブ、主(傾斜)ジブ、運転室(取付けられている場合)、釣合い重り、Aフレーム又はタワーヘッドから構成されている。また、それらは旋回リングを介してマスト部又は塔に取付けられ、360°旋回できるようになっている。つり上げ部分は、主ジブの先端に取付けられ、ジブの起伏及び旋回により位置決めされる。

本調査においては、クレーンの倒壊事故、ジブなどの主要構造部分の損壊事故を対象としている。荷の落下、墜落、挟まれ・巻き込まれ、火災、滑り・つまずき及び感電災害は対象としていない。
また、次のクレーンによる事故は対象としていない。

  • 移動式クレーン
  • 自動組立てタワークレーン
  • クローラークレーン
  • 岸壁クレーン(門型クレーン、コンテナークレーン)

3 情報源

調査は、原則としてインターネットに掲載された情報により実施した。調査において最も有用であったサイトは、次のものであった。

情報源がインターネットによるものであるため、その正確さについては限度があることに留意する必要がある。

4 確認された事故

1989年以降、タワークレーンの倒壊、主要構造部分の損壊による事故は86件確認された。これらの事故は、概略次の7つの類型に分類することができる。

  • 組立て/解体/クライミング
  • 悪天候
  • 基礎
  • 機械部分又は構造部分
  • 誤使用
  • 電気/制御系統
  • 原因不明

5 事故の分析

5.1 事故の全数

1989年から2000年までに、世界中で起こったタワークレーンの倒壊または主要構造部分の損壊による事故で確認されたのは86件で、年別の確認数は下表のとおりである。

1989年 1990-1998年 1999年 2000年 2001年 2002年 2003年
1件 未確認 2件 3件 1件 5件 3件
2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 日時不明
3件 10件 7件 18件 15件 15件 3件

86件中の65件は、2005年から2009年の間に発生している(76%)。1990年から1998年の間は確認されていない。
2005年から建設工事がブームとなり、結果的にクレーンの使用が増え、事故も増加したものと考えられる。しかし、情報源には古いデータが保管されてないこともあり、実数はもっと多いことにも留意する必要がある。

アーカイブ情報としては、主として次のウェブサイトによった。

http://www.vertikal.net/ 別ウィンドウが開きます
- April 2001
http://www.cranestodaymagazine.com 別ウィンドウが開きます
- January 1998
http://towercraneincidents.blogspot.com 別ウィンドウが開きます
- May 2000
http://craneincidents.com 別ウィンドウが開きます
- January 1995

5.2 各々の事故の状況

5.2.1 事故の類型

確認された58件(2009年に発生したリバプールの事故は調査中であり除外、また、原因不明の28件も除外)は、次のいずれかの類型に分類される。

  • 組立て/解体/クライミング−29件(51%)
  • 悪天候−15件(26%)
  • 基礎−2件(4%)
  • 機械部分又は構造部分−4件(7%)
  • 誤使用−6件(10%)
  • 電気/制御系統−1件(2%)

組立て/解体/クライミング及び悪天候の2つの類型で76%を占めている。

5.2.2 組立て/解体/クライミング

この類型は、29件と最も多く発生しており、タワークレーンはこれらの工程に対して最も敏感であることを示している。組立て/分解/伸張工程では、大型で重い部品をつり上げ、動かし、取付ける作業があり、これらは高所において厳密な手順で作業をしなければならない。さらに、身体的にも厳しく、かつ長時間にわたることが多く、少しのミスが大きな事故になることが多い。

5.2.3 悪天候

天候によるものは、15件発生しており、これらのうち2件は地震によるものである。他の13件のうち6件は傾斜ジブ型、5件は水平ジブ型、2件は分類不明である。このことは、水平ジブ型タワークレーン、傾斜ジブ型タワークレーンともに、強風には影響を受けやすいことを示している。
2007年1月のリバプールの事故を含め、いくつかの事故では、強風時にクレーンを運転していた。

強風時の運転以外の事故の要因としては、下記がある。

  • 風に対するジブの回転(自由旋回)が制限されていた、
  • ジブ角度が大きすぎたために、自由旋回が有効でなく、大きな風荷重を受けた。
5.2.4 基 礎

基礎に原因があった事故は2件確認された。このうちの2006年のシアトルでの事故は、クレーンが4本のコンクリート支柱に取付けられたアイビームに設置されていたもので、一般的な設計方法ではなかった。2003年のデュッセルドルフの事故においての基礎の詳細は不明である。

5.2.5 機械部分又は構造部分

4件が確認されている。このうち、2006年のバターシー及び2008年のニューヨークの事故のクレーンは、使用暦20年を超えた老朽クレーンであった。

ニューヨークの事故のクレーンは倒壊前に修理が行われていた。この状況から次のことに対し留意する必要がある。

  • 修理について評価し、承認し、そして実施した人または会社の権限/資格はどうであったか。
  • 修理に当っての検査基準はどうであったか、修理後、使用に当っての検査基準はどうであったか。
  • 修理は、特定の基準により行われたか。

2006年のバターシーの事故と2009年のトロントの事故では、旋回リングが破損している。

5.2.6 誤使用

誤使用による事故は、6件確認された。これらの原因は、

  • 過負荷
  • つり上げ中に荷がひっかかり、またはジブへの横荷重
  • 他のクレーンとの衝突

などである。

6 まとめ

  • 1989年から2009年までに世界で起った86件のタワークレーンの倒壊または主要構造部分の損壊による重大な事故について確認した。
  • これらのうち、57件について、原因または関連状況を把握した。
  • 最も多い類型は、組立て/解体/クライミングであり、次いで悪天候であった。
  • 特に事故を起しやすいクレーンまたはクレーン製造者を特定するには至らなかった。

関連情報

  • JISHA海外トピックス
    2010年3月31日HSEタワークレーン届出規則順守のための手引き
  • アメリカ労働安全衛生局(OSHA)
    建設工事用クレーン及びデリックの改正規則の全文は下記サイトで閲覧可能である。
    PDF http://www.osha.gov/doc/cranesreg.pdf 別ウィンドウが開きます

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