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各国情報・国際関係

業務に関連した癌:ヨーロッパは何を認定しているか?(Eurogip報告書)

2011年5月6日

本報告書は、 Eurogip 別ウィンドウが開きます (フランスの社会保障システムによって設立された公益団体)が2010年7月に発表した報告書である。Eurogipは、癌の業務関連性について、EU 12カ国の各国の労災保険機構(Occupational health and safety insurance organization)で認定した症例数の統計及び14カ国のデータを解析した結果を発表している。報告書は52ページからなり、職業ばく露の分類及びばく露集団に基づき、職業性疾病の各国のリストで業務関連と認定された癌を概観している。報告書の大部分は、2000-2008年の詳細な各国の統計と全体像の解析である。また、ばく露労働者の医学的モニタリングのシステムについても報告している。

原資料の題名と所在

業務に関連した癌:ヨーロッパは何を認定しているか?
PDF Work-related cancer:What recognition in Europe? 別ウィンドウが開きます

1
内容の概要
2
主な目次

1 内容の概要

  • 本報告書は、ドイツ、オーストリア、ベルギー、デンマーク、スペイン、フィンランド、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、オランダ、ポルトガル、チェコ、スイス、スウェーデンの14カ国のデータを参考にしている。
  • CAREXシステム(CARcinogen EXposure)は、発癌性物質を評価するために、1990年代にEUプログラム“Europe Against Cancer”の一部としてCAREXデータベースが準備され、EU 15カ国が参加し、1990から1993年における発癌物質のばく露に関連する情報と国別、発癌性物質別及び産業別のばく露労働者の推計人数を公表している。1998年に公表されたCAREXシステムの結果によると、1990から1993年の間にEU-15で約3‚200万人(全労働人口の約23%)が発癌性物質にばく露されている。
  • リスト方式(List system)による発癌性の認定においては、業務関連性のある癌の種類、または起因物質が示されている。この情報は、各国の労災保険機構(Occupational diseases insurance organisation)から提供されている。各国は認定(Recognition)すべき基準を持っている。国の法令が、職業性疾病の認定において、オフ-リスト方式(Off-list system)による補完システムを規定している場合、どんな疾病も、各国の定めた条件において、最終的には職業上のリスクから起因する疾病の補償対象となることができる。疾病の業務関連に起因する証拠を提出するのは、患者自身であるので、このシステムで認定された件数はわずかである。
  • 業務に関連性のある癌は、各国の労災保険機構(Occupational injury and disease insurance organisation)で認定された癌の人数が既知データとして活用可能である。しかし、実際の人数より極めて少ない。理由として、リスク因子を同定する潜伏期の長さ及び職業性ばく露の可能性が難しく、業務との関連性を同定する医学的専門性が困難であるためである。
  • Eurostat(the Statistical Office of the European Union)は、EODS(European Occupational Diseases Statistics)手法で、2001年の統計データを基に、EU15カ国(当時)のうち、12カ国の労災保険機構で認定された業務関連性のある癌の人数を公表している。これらのデータは、労働人口の割合に応じてEU-15に外挿しており、業務関連性のある癌における外挿値は2‚481人と推定している。また、Eurostatは、癌の症例は、中皮腫、悪性肺腫瘍、悪性膀胱腫瘍、鼻腔の悪性腫瘍、白血病、その他の悪性腫瘍で、主たる原因物質は4物質(石綿、炭化水素、芳香族アミン、木屑粉じん)が最も頻度の高い業務に関連する癌であると指定している。
  • EUの2006年の統計を基にした、労災保険加入者10万人あたりの癌の人数の割合は、オーストリア 2.72、ベルギー 9.86、チェコ 0.85、デンマーク 4.98、フィンランド 6.53、フランス 10.44、ドイツ 6.07、イタリア 5.15、ルクセンブルグ 4.65、スペイン 0.03、スウェーデン 0.99、スイス 3.51である。
  • EU 10カ国の2008年の5‚556症例を基にした最近の患者の割合は、呼吸器癌(胸膜、腹膜、心膜中皮腫を含む) 86%、膀胱癌 4%、鼻腔癌 3%、血液癌 2%、皮膚癌 1%で、その他の癌は4%だけである。
  • EU 12カ国合計の業務に関連した癌の起因物質は、石綿による癌が5‚734例中4‚607例と突出している。これは、すべての業務関連性のある癌の80.7%を占める(For more detailed information: Asbestos-related occupational deseases in Europe; Eurogip‚ March 2006)。
    また、ドイツ、オーストリア、ベルギー、デンマーク、スペイン、フランス、イタリア、チェコ、スウェーデン、スイスに関する、これらの国の2000-2008年における、発癌性起因物質別に業務関連と認定された癌患者の人数のある統計も示している。
  • すべての国は、企業が経費を負担する労働衛生サービスの一部として、労働者に対し発癌性物質へのばく露についての医学モニタリングを実施している。しかし、このモニタリングは失業または退職による労働市場からの離脱で実施されなくなる。欧州において少数の国々では、発癌性物質にばく露された年金受給者のモニタリングのための体系的なシステムを設立している。その他のいくつかの国においても発癌性物質、特に石綿にばく露した元労働者に対し特定のシステムを構築している。
  • フランスでは、1995年以来、発癌物質にばく露された労働者のための離職後の医学的モニタリング(post-occupational monitoring)システムが存在する。
    イタリアでは、ISPESL(Istituto Superiore Prevenzione e Sicurezza sul Lavoro 注1))が設立され、発癌性物質の職業ばく露の記録システム(SIREP:System for recording occupational exposure to carcinogenic agents)により、最新の情報が保持されている。2008年12月31日現在、5‚500の企業と70‚000人のばく露労働者の情報が登録されている。

注1) :Higher institution for occupational health and safety

2 主な目次

要約
序説
謝辞
1
職業ばく露とばく露集団の類型
1.1
発癌性物質の分類
1.1.1
IARCの分類(WHO)
1.1.2
EU分類
1.2
業務関連性のある発癌性リスクと化学的、物理的及び生物学的薬剤
1.2.1
化学的薬剤
1.2.2
物理的薬剤
1.2.3
生物学的薬剤
1.3
発癌性物質のばく露:CAREXシステム
2
業務関連性が認められる癌
2.1
リスト方式での認定
2.2
オフ−リスト方式での認定
3
業務関連性のある癌の統計
3.1
WHOによる評価
3.2
職業性疾病として認定される癌症例
3.2.1
Eurostatの統計
3.2.2
国の統計 2000-2008年:概要
3.2.3
詳細な国の統計 2000-2008年
4
ばく露労働者の医学的モニタリング
4.1
発癌性物質をカバーする体制
4.2
石綿による疾病に係る体制
4.3
発癌性物質ばく露に係る個別の届出方式:イタリアのSIREPの例
付録
オープンシステム(Open system)に基づき、認定された癌発症の事例
付録1
ドイツ 2004-2008年
付録2
フランス 2004-2008年

関連情報

JISHA海外トピックス

  • 2010年6月11日 国際労働機関(ILO)が職業性疾病リストを改訂
  • 2008年10月30日 世界の業務関連死傷病発生状況(世界労働安全衛生会議資料より)

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