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各国情報・国際関係

イギリス安全衛生庁によるカーボンナノチューブのリスクマネジメント

2011年5月6日

HSE What’s new 2011年1月17日 別ウィンドウが開きます

イギリス安全衛生庁(HSE 別ウィンドウが開きます )がカーボンナノチューブの製造と取扱いについて資料を作成した。また、本資料は、新たに出現しているカーボンナノチューブに係る毒性の証拠に対応し作成されている。本資料で詳述されるリスクマネジメントの原理は、類似のアスペクト比(aspect ratio)を有する他のナノサイズの生物耐性繊維に対し適応可能である。

原資料の題名と所在
PDF Risk management of carbon nanotubes, 別ウィンドウが開きます pdf file

カーボンナノチューブのリスクマネジメント
PDF Risk management of carbon nanotubes 別ウィンドウが開きます

1
本文の項目
2
本文の概要

1.本文の項目

  • 背景
  • 法律上の義務
  • カーボンナノチューブ(CNTs)物質の供給
  • リスクマネジメントの助言
  • 健康診断
  • 廃棄物

2.本文の概要

この情報は、カーボンナノチューブ(CNTs)の製造と取扱いに関連する安全衛生の指針を提供する。CNTsは、単層と多層からなる3次元構造の物質である。性状は、長く、真っ直ぐな繊維若しくはからみあった繊維と考えられる。成分は、純粋な炭素、若しくは金属または他の物質が存在する場合がある。強度は、スチールの60倍以上、更に、6倍以上軽い。

CNTsの職業ばく露は、次の作業で生じる。

  • 製造過程
  • 他の物質への混和、例えば、ポリマー複合材、医療への応用、エレクトニクス
  • 非密閉系でのナノ粒子の使用
  • ナノ粒子の性質及び用途の研究
  • 集じんしたナノ粒子の粉じん捕集装置の清掃
  • 不適切な処理
  • 偶発的飛散

新しいデータでは、CNTsを吸引すると肺の炎症及び線維症を誘発する可能性を示している。CNTsのタイプ、その物理的形態、不純物の存在及び表面の状態が深刻な反応に影響を与えるのかもしれないが、現在のところ、どの要因が最も関連しているのかについて確定的な情報はない。また、吸入したCNTsが身体の肺以外のその他の部位に不逆的健康影響を生じる役割を持つかどうかについて明らかではない。しかし、細くて、長い、真っ直ぐで鋭利なCNTs及び他のナノ粒子(高アスペクト比等)は、特有の危険を示唆する証拠が増えている。

ナノ粒子の職業的使用には、危険物質管理規則(COSHH2002-Control of Substances Hazardous to Health Regulations 2002)が適用される。リスクアセスメントの原理がCOSHHに組み込まれ、たとえナノ粒子に必要なすべての情報を入手できなくても、その原理を適用する。

CNTsを他の会社または大学に提供するときには、この物質とともに安全衛生情報を提供しなければならない。この情報には、CNTの含有量(%)または濃度とともに、CNTsを含む物質である警告をともなうべきである。“警告:物質の毒性は十分に分っていない” というラベル表示は、良い事例である。

CNTsは懸念物質であり、吸入による危険性に対し信頼性のある証拠が入手できるまでは、予防措置として、すべてのCNTsに対しリスクマネジメントが採用されるべきである。もし、CNTsの使用が避けられなければ、CNTsのばく露する作業場所に対しリスクマネジメント計画をたて、CNTsのばく露を可能な限り最小にしなければならない。そのための計画に盛り込む要素は次のとおりである。

  • 労働者の作業評価を行い、ばく露の可能性を裁定すること。
  • 適切な作業工程、システム、工学技術を用い、外部流出の見込みを最小にする適切な装置及び材料を提供すること。
  • HEPA(高性能)フィルターを使用したダクト式ヒュームカップボード(ducted fume cupboard)またはHEPAフィルターを使用した適切な局所排気装置(LEV)での廃棄物の包装を含め、すべての作業を行うことにより、発生源でばく露管理をすること。
  • 無ダクトHEPAフィルター付き安全キャビネット及び再循環HEPAフィルター付きマイクロ微生物(micro-biological)安全キャビネットは、少量(<1gram)のCNTsの取扱いに使用出来る。
  • LEVは、常に適切なばく露管理の達成と維持を確実にすること。
  • CNTs取扱い労働者数を減少させ、ばく露期間と使用量を最小にすること。
  • もし可能ならば、大気への飛散のリスクを減らすために湿潤な状態に保持すること。
  • 呼吸用保護具(RPE)を提供すること。HSEは、防護係数(Assigned Protection Factor:APF)40またはそれ以上のRPEを使用することを勧告する。
  • 個人用保護具を提供すること(例えば手袋、不織布カバーオール)。
  • CNTsのばく露管理に対し、リスクアセスメントにより、保守、フィルター交換、貯蔵、廃棄について配慮すること。
  • 清掃を行う場合には湿らせた布(Wet-wiping)を使用し、真空掃除機の使用は避けること。もし、真空掃除機が唯一の使用可能な器機である場合には、HEPAフィルターを通して再使用前に浄化すること。
  • 汚染した湿らせた布は、危険廃棄物として二重に袋詰めし、処理すること。
  • 適正にナノマテリアルを取扱うように労働者に、教育訓練を行い、訓練の記録を保存すること。

ナノ粒子の製造及び使用する労働者に対する特別な医学的スクリーニングを正当化させるかどうかを判断するための利用可能なデータの継続的な再評価とあいまって、ナノ粒子の危険性の研究は、必要とされる。CNTs取扱い者のための健康診断に係る法規定はない。しかし、COSHH健康記録様式と同様にCNTs取扱い者すべての記録の保存が最良の方法である。

廃棄物の取扱いは次のとおりである。

  • イギリス環境庁(Environment Agency 別ウィンドウが開きます )は、CNT廃棄物を危険廃棄物として分類し、コード化することと忠告している。
  • 現状の情報によれば、危険廃棄物焼却炉での高温焼却が適切な処理法である。
  • 廃棄物が安全であると立証できるならば、他の技術も適切であろう。
  • CNT廃棄物は、シールされたポリエチレン製袋で二重包装にすべきである。
  • 上述の行為が出来ないならば、専門廃棄物業者に委託すべきである。
  • 処理施設は、処理法及び焼却温度に係る適切な文書を提出すべきである。

関連情報

JISHA海外トピックス

  • 2009年4月14日 NIOSH ナノマテリアル加工材料ばく露作業者の健康診断に関する指針(中間報告)

全ての働く人々に安全・健康を 〜Safe Work , Safe Life〜

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