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各国情報・国際関係

EU-OSHA:労働安全衛生向上のための経済的インセンチブをどのようにして創出するか−実施解説

2012年3月28日

欧州労働安全衛生機構(EU-OSHA 別ウィンドウが開きます )から2012年1月4日付け、標記の解説書が発刊されている。この資料は33ページに及ぶ膨大なものであるが、そのうちの概況(Introduction)を紹介する。

原資料の所在:
EU-OSHA:労働安全衛生向上のための経済的インセンチブをどのようにして創出するか−実施解説:
How to create economic incentives in occupational safety and health: A practical guide 別ウィンドウが開きます

実施解説の目次

概況
1
社会的枠組み及び財政的条件に関する解析
2
インセンチブスキームのための戦略の開発
3
対象グループ及び活動範囲の決定
4
効果的インセンチブスキームの開発
5
インセンチブスキームの推進
参考資料

概況

欧州各国は、事業場の安全衛生を向上させるために経済的インセンチブを導入し、労働者の保護に最善を尽くす事業場を報奨することにより利益を得ることができる。これは、EU-OSHAが推進している経済的インセンチブ事業のメッセージである。

いくつかの欧州の国々では、すでに、労働者の安全確保に投資する企業に対して様々な財政的報奨制度を提供している。これらの報奨制度は、国の補助・助成から税金の控除、銀行による貸付の優遇措置、好成績の企業に対する保険料率の低減など多岐にわたっている。

労働安全衛生に関する欧州戦略(2007−2012)において、企業が労働災害防止活動に好事例を用いるよう動機付けるための経済的インセンチブの必要性を認めている。
EU-OSHAは、最も成功すると考えられる各種の経済的インセンチブについての情報を提供することによりこの需要に合うよう貢献してきている。外部からの経済的インセンチブはすべての組織における災害防止投資を刺激することができ、かくしてより低い災害発生率をもたらすことが、研究の結果からも証明されている。例えば、

  • 2002年に独の食肉処理業において導入されたインセンチブスキームは、導入後6年間以上、要報告災害が全産業で16%の減少であったのに較べて28%の減少を見ている。このことは、災害全体で、インセンチブスキーム関連企業において年間1,000件以上の災害が減少したこととなる。
  • イタリア労働者災害補償機関が、中小企業に対する安全衛生投資を促進するため、銀行クレジットに対する補助制度を開始して以降、この制度に参加した企業において13%〜25%の労働災害の減少をした。
  • フィンランドでは、農業におけるインセンチブスキームにより5,000件の労働災害が減少し、災害率でも10.2%という大幅な減少を見ている。

このプロジェクトにおいて、各種のインセンチブスキームは非常に効果的であり、企業における労働安全衛生の改善努力を促進していることを明確に示している。エルスラー(Elsler)等によれば、EU各国においてインセンチブスキームに支出した1ユーロは、労働条件の改善により労働災害の防止、職業性疾病の予防及び欠勤率の低下を通じて4.81ユーロの節約効果があった。

企業に対する上記のようなビジネスケースのほかに、経済的インセンチブスキームについては次のような効果についても議論されている。

  • 企業の社会的責任の向上(特に大企業にとって)
  • 保険会社の評価の向上
  • 顧客に対するウィン−ウィン状況の創出
  • 競争上の優位性(民間保険会社にとって)

このプロジェクトは、2007〜2012年において労働災害を25%減少させるとしている欧州労働安全衛生戦略により加速され、最初のフェーズで次のようないくつかの成果がもたらされた。

  • 労働安全衛生に関する22ヶ国語の専用のウェブサイト
  • 経済的インセンチブに関する総合的な報告書「労働安全衛生を向上させる経済的インセンチブ:欧州の視点からの検討(欧州労働安全衛生機構2010)」
  • 22ヶ国語による概況報告書(Fact sheet)
  • 科学ジャーナルへの査読論文(2件)の掲載(作業、環境及び健康に係るスカンジナビアジャーナル)
  • 一連の専門家グループのワークショップ
  • 好事例の収集とデータベース化

第2フェーズにおいては、インセンチブスキームを開発し、最適化することに関心がある組織のためのより実際的な成果物が産み出されつつある。

  • インセンチブを付与する組織のための実施解説(practical guide)
  • インセンチブの対象となりうる革新的な労働安全衛生上の解決方法の分野別編集

この資料は、我々の経済的インセンチブプロジェクトにより得られた知見に基づいており、欧州域内のインセンチブ提供者がそのスキームを創出し、最適化を支援することを意図しているものである。第一義的な対象は、労働安全衛生を向上させるために経済的インセンチブを提供することができる組織体であり、例えば、保険会社、ソーシャルパートナー、政府機関などである。
これらの組織体は、保険機関の顧客など企業の更なる努力を促進させる重要な媒介体である。
欧州安全衛生機構の経済的インセンチブプロジェクトからの1つの結論は、「インセンチブスキームは単に過去の労働安全衛生管理についての結果を報奨するのではなく、将来の労働災害及び業務上疾病に対する防止努力に対しても報奨する」というものである。

関連情報

  • 2010年12月27日 欧州安全衛生機構の「安全衛生を向上させるための経済的優遇措置」に関する報告

全ての働く人々に安全・健康を 〜Safe Work , Safe Life〜

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