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各国情報・国際関係

EU-ECHA:REACH/CLPと動物試験に対する代替試験法に関する2報告書を公表

2011年9月29日

EU-ECHA News 2011年7月8日

欧州化学物質庁(ECHA 別ウィンドウが開きます )は、二つの報告書をEU委員会に提出した。一つは、REACHとCLPの運用に関する報告書で、他の一つは、有害性を評価するための動物試験の代替試験法である。本稿では、二つの報告書のうち、REACHとCLPの運用に係る報告書についての概要を紹介する。この報告書は、REACHの第112条に基づいて、5年ごとにEU委員会に報告するもので、84ページに亘る膨大なものである。REACHとCLPの運用に関しては、基本的に大きな変更は行われず、従来の方針どおりとのことである。

1
EU-ECHAは、REACH、CLP及び動物試験に対する代替試験法に関する2報告書を公表
2
REACHとCLPの運用のための報告書

1.EU-ECHAは、REACH、CLP及び動物試験に対する代替試験法に関する2報告書を公表

EU-ECHA publishes two reports on REACH, CLP and alternatives to animal testing 08. 07. 2011 別ウィンドウが開きます

ECHAは、REACH及びCLPの運用に関するものと脊椎動物に関する化学品を試験する代替試験法に関するものについての二つの報告書を公表した。本庁は、欧州委員会にこれらの報告書を提出することをREACH第112条により要求される。規則に関する報告書は、5年の間隔で、動物試験に関するものは3年の間隔で公表される予定である。

REACHは、7年間の徹底的な協議に基づき、2006年12月に採択された。2009年初期にREACHは、改訂された分類、ラベル付け及び包装規則(CLP)によって補完された。

REACHは、本庁が5年ごとに欧州委員会に対し、規則の運用に関し報告することを要求している。報告書は、新しい規則に基づき本庁の最初の活動についての経験と、それらを実施するうえでの主要な長所と短所を含むREACHとCLPの実行可能性に重点をおいて概説した。

REACHの制定と採用の主要な理由の一つは、多数の化学品が長年に亘り欧州市場に流通し、その有害性に関し限定的な情報しか利用できないことにある。要求される情報のギャップを満たす必要があると考えられた。

これは、産業界が化学品の製造及び使用による危険性についてより適切な評価を行い、人体への健康と環境を保護するための適切なリスクマネジメント対策を確実にすることを可能にするだろう。

これらのギャップを満たすために、化学品の新しい研究が行われなければならない。これらの研究の多くは、実験動物を用いて研究されている。しかしながら、動物に関する不必要な試験を避けるための規制にはいくつかの手法がある。

本庁は、企業が提出した登録関係書類から化学品の性質に関する情報をどう提供するか解析した。

2.REACHとCLPの運用のための報告書

PDF EU-ECHA: The Operation of REACH and CLP 2011 別ウィンドウが開きます

報告書の構成

長官の序文
 
序文
 
略語のリスト
 
規則のリスト
 
1
登録
2
データ公開
3
化学物質に関する情報の普及
4
登録関係書類一式の評価
5
承認
6
制限
7
分類とラベル付け
8
ガイダンス
9
ECHA支援 (ヘルプデスク)
10
供給チェーンにおけるコミニューケーション
11
科学的ITツール
12
EUの研究機関及び団体への科学的助言
13
委員会とフォーラム
14
上訴
15
コミニューケーション
16
国際協力
17
本庁の運用

Executive Summaryの概略

REACHは、規則の複雑性に鑑み7年間に亘る準備と徹底的な協議に基づき、2006年12月に採択された。

2007年6月1日にECHAが設立され、その後、2009年初期に、化学品の分類とラベル付けを連結した条項が新しいCLPによって改訂された。この報告書は、今までのところ、これら2つの規則の運用に関するECHAの見解である。

ECHAからの全体的なメッセージ(overarching message)は、REACHとCLPがうまく機能しており、それらの規則に対して責任を負うべき関係者は、立法者により想定され対応をしている。

これまでの規則の成功は、主要な関係者間(産業界、他の利害関係組織、加盟国、欧州委員会、本庁)の効果的な連携に大いに起因している。本庁の効率的な運営とそのスタッフの献身もまた、重要な役割を果たしている。

両方の規則には、本庁の構造安定性(robustness)テスト及び規則の有効性のテストとして見なされる一連の締切り期限が設定されている。最初は、事前登録のための締切り期限の2008年12月、最初の登録の締切り期限である2010年11月、そして直近ではCLP告示のために2011年1月が締切り期限である。他の規定による締切り期限も続く予定である。

それぞれの時点で、本庁は、事業のための準備を確実にし、そして膨大な作業量にうまく対処した。教訓は、最初3年間のREACHの運用、そしてCLPに関係する2年間から学んだことである。

第一に、事前登録に関しては、実際には、はるかに多くの物質について膨大で、予期しない数の登録が行われた。そのため産業界による物質あたりのSIEFs(Data Sharing & Substance Information Exchange Forum:データの共同利用と物質情報交換フォーラム)の制定は、複雑で、緩慢となった。最初の締切り期限における事前登録数は見積りを超える予期せぬ結果となったことは、結果的には見積りが著しく過大となるかもしれないシナリオ、いいかえるなら不測事態対応計画(contingency planning)が必要であったことを意味した。登録数のより正確な見積もりが、次回の登録締切り期限及びECHAによる後続の評価作業を計画するために必要とされている。

第二に、産業界との緊密な連携及び産業界の役割の重要性を過小評価すべきでない。産業界は、産業界の活動を計画し、責任を果たすために、REACHとCLPの要件の確実性を求めている。ECHAが産業界を支援する活動の一例は、登録のために必須であるITツールとガイダンスの開発を安定化させた最初の登録締切りまでの期間に例示される。委員会からの規則に関する明快で、時宜を得た法的助言もまた、明らかに必須である。

第三に、一般的な教訓は、REACHとCLPのさまざまな側面において相互関係があることである。例えば、物質の同定は、多くのREACHとCLPのプロセスのための出発点である。あいまいな物質の同定は、SIEFsの成立と機能における問題、関係書類の評価の困難、その後の分類とラベル付け及びリスクマネジメント活動に対する困難を生じさせる。これは、我々が次の締切り期限に先立ち、産業界と委員会と協力して更なる作業が必要であると考える。

近い将来、ECHAは、2013年5月までに質の高い関係書類の登録をするために、可能性のある登録者が複雑で時間を要する作業に、できるだけ早く着手するように要求するメッセージを産業界に送っている。このために、産業界は、規則の登録関連部分の安定性と予測可能性を必要とする。

報告書で提起された論点の多くは、規則を修正しなくても、より効率的な実行で向上できる。REACHは全体的にうまくいっている。これらのことから、将来規則が修正される可能性に関し、委員会にいくつかの提案がされているが、短期的にはREACHまたはCLPの修正は議論していない。

また、ECHAは、ガイダンスとITツールの劇的な変更を考えていない。代わりに、以前の経験を踏まえ計画されるガイダンスの限定的改訂及びITツールの改良は、産業界と規制当局(regulators)の便益となる。

経験により、REACHとCLPの運用の向上の余地のある三つの主要な領域がわかった。

第一に、中核的には、REACHは産業界に責任をもたせる。産業界は、性質、使用、生じる危険性の評価に基づいて化学物質の安全な使用を保証しなければならない。規制当局から産業界へと責任をシフトするという思考の変化は、規制当局及び産業界にとっての課題であり、まだ、十分に実行されていない。物質の性質とヒト及び環境への影響は、新しく動物実験を行わなくても、いくつかの証拠により、適切に予測される可能性がある。しかし、産業界は、確固とした科学的事実を示さなければならないし、前述の証拠の質は一般的に十分に高くない。それに加え、多くの化学品安全性評価の質が懸念されている。これを克服するために、産業界はECHAへの提出後も含めた登録関係書類に完全な主体性を持ち、そして、次の締切り期限のために関係書類を準備している間、先を見越してそれらの質を改善することが求められる。

第二に、更なる作業を必要とするREACHとCLPの基本的な事柄は、川下の使用者、消費者、公衆に対する供給チェーンに沿って物質をどのように安全に使用するかについての情報を提供することである。産業界によってECHAへ提供された情報は、以前も現在も広められている。使用、操作条件によるばく露シナリオ及びリスクマネジメント対策の必須情報は、異なる関係者に理解でき有益な形態で供給チェーンの川下に伝えられなければならない。これを有効に達成する手段は強化され、情報提供の促進のために開発または向上されたツールが必要である。

第三に、資源を有効に活用するために、REACHとCLPのプロセスにおいてさらに検討すべき事柄に関し、どの化学物質を選択するか優先づけの問題がある。REACHの登録は、関係書類一式、物質評価、SVHCsの同定、制限の提案、分類及びラベル付けの調和の目的のために、必要な場合には、公共機関による追加的措置のための物質選定で、使用可能な物質についての情報の膨大な収集をもたらしている。

ECHAは、物質の安全な使用を促進するために当局の最適な形でリソースを集中させるために登録データの利用を促進させるための方法を現在計画している。

多数のより具体的でかつ横断的なテーマがこの報告書で明らかになった。

  • 2013年の登録締切り期限の産業界の成功を確保するために、委員会とECHAは、2010年に学んだ教訓から便益を得ることが必要である。これは、コミニューケションキャンペーン、SIEFの構築と機能強化に関するガイダンスの開発、そして締切り期限前に登録者が適切な登録をするように導くための奨励が含まれる可能性がある。
  • 同一性化学物質であると結論を下した場合において、企業が従う原則を明らかにすべきである。委員会は、著しく成分が異なる物質を一つの書類にまとめないことを確保する規則をREACHにおいて公表することを促されている。
  • いくつかのREACHプロセスのための締切り期限は、委員会とフォーラムがかそのプロセスにおける作業量をうまく管理できることを確保するために、適切な時期に見直されることが考えられる。
  • ECHAは、委員会とMSCAs(Member State Competent Authority:加盟国所管官庁)と共同で、化学物質の候補リスト、規制及び調和された分類とラベル付け(CLH)に関する提案書の作成及び質を向上させるための活動を発展させ、実行する予定である。
  • 委員会は、次の登録締切りの前にREACHの料金規定の更新を考慮し、その目的に貢献する照会を行うよう促されている。
  • 更に、REACHとCLPは、ナノ材料として製造及び使用される化学物質に、どう適用されるべきか、はっきりさせる必要がある。
  • 他の機関からのこの分野における質問と要請により良く応じるために、規制機関としての能力及び科学的な能力を強化するだけでなく、本庁によりREACHとCLPの規制プロセスの一貫性及び持続的な成功を確保するために十分なリソースが必要とされる。

次の数年間、ECHAは、成功した新規事業を活かし、欧州委員会、加盟国所管官庁と共に作業し、そして利害関係者と共にEUにおける化学物質の理解と管理を一層強力にすることを継続していくことを望んでいる。

関連情報

ECHA: PDF The Use of Alternative to Testing on Animals for the REACH Regulation 2011

JISHA海外トピックス
2011年6月30日 化学物質/REACH:EUで段階的に廃止6種の危険有害物質
2011年6月30日 欧州化学物質庁がラベル付け及び包装に係る手引書を改定

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