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2012年4月17日
EU化学物質庁(EU-ECHA
)は、二つの報告書をEU委員会に提出した。一つは、REACHとCLPの運用に関する報告書で、他の一つは、有害性を評価するための動物試験の代替試験法(alternatives)である。本稿では、二つの報告書のうち、REACH規則のための動物試験に対する代替試験法の利用についての報告書の概略を記す。
(The use of alternatives to testing on animals for the REACH Regulation 2011)
報告書の構成
長官の序文
概要
序文
略語のリスト
用語のリスト
REACH規則のリスト
調査報告書
付属書 Ⅰ
REACH規則の目的の一つは、非動物試験を促進することである。これは、REACHが、登録目的のための情報を作成するのに使用される非動物試験法及び代替試験戦略の現状に関する最新の情報を提供することとされてから、欧州委員会に対しECHAによって書かれた最初の報告書である。
この報告書の目的は、登録者がREACH規則付属書ⅦからⅧに示された情報の必要要件を満たすための登録関係書類の中で非動物試験法を使用した程度と、彼らが付属書ⅨとⅩの高次評価研究(higher-tier studies)のための取り組み方に、どの程度利用するよう提案したか、について記述したものである。ECHAは、3年ごとにこのような報告書を作成する予定である。
2008年6月1日から2011年2月28日までに登録者によって提出された24,560の登録関係書類は、この報告書のための資料として使用された。登録関係書類の関連情報は、ECHA’s IUCLIDデータベースに保存されたデータを利用するために、即ち、開発されたデータ抽出ツールを使用することにより、特定され、抽出され、解析された。
データの共有の仕組み(mechanisms)は、質問プロセスからの情報と主たる登録者の関係書類のデータと共同で提出された関係書類(1物質あたり2人以上の登録者がいるところ)の両方を使用し解析した。データ抽出ツールは、また、登録者が物質の性質に関し非標準的情報の利用を説明するのに使用される標準的情報の必要要件の翻案(adaptations)をどう利用したかを解析するため使用された。
焦点は、大量のデータ、即ち、年100トン以上の量を輸入されたまたは製造された物質に係る関係書類である。この報告書の目的に連動して、脊椎動物での試験が要求されるであろう危険性のエンドポイント(end-point)だけが調査された。登録関係書類で提案する試験の数と内容は、すべて容積トン数レベルで解析した。
データ共有は、REACHの核心的な原則であり、そして、目的の一つは、脊椎動物での試験は、繰り返されないことを要求することである。登録者は、不必要な動物試験を避けるためのデータの共有の仕組みを利用することである。
REACH規則は、データ共有を確実にするためのいくつかの仕組みを提供している。
事前登録していない、非段階的導入物質(non-phase-in substances:非段階的導入物質は、REACHの発効以前に上市されていなかった物質)または段階的導入物質(phase-in substances:予備登録ができる物質は、段階的導入物質と呼ばれる)についての潜在的登録者は、データ共有の目的で、登録が同一物質でなされているかかどうか、ECHAに問い合わせるべきである。
質問プロセスは、同一物質の登録者間の既存データの共有を確実にする。ECHAは、潜在的登録者から寄せられたおよそ1,500の質問を首尾よく処理し、そして、約50%についてその後の登録に導いた。
段階的導入物質の場合、期日までに事前登録し、その後、物質を登録することを望んでいる各事業者(legal entity)は、ECHAへ関係書類を同じように提出する。もし、同一物質で2人以上の登録者がいれば、登録者は、データを収集し、共有するために、物質情報交流フォーラム(SIEF)を形成しなければならない。
主たる登録者は、物質の性質と危険性について記述し、共同の情報として関係書類を提出し、そして、他のSIEF参加者は、企業特有の情報についての関係書類を提出する。一般的に、情報の共同提出は、総登録の共同提出比率で示されるように良好に機能した(総数のおよそ90%、残りの部分もまた、非段階的導入物質の個別の提出であった)。
およそ20,000の関係書類を含む約3,000の共同提出から、REACH第11(3)条及び第19(2)条で記述されているように、一つまたはそれ以上のエンドポイント共有の拒否(opt-out)は135の一部の関係書類だけである。情報共有拒否の主な理由の概観は、REACHの第117(2)条に従って提供される「REACHとCLP 2011の運用」報告書で提供する。しかしながら、いくつかの事例で登録者は情報共有拒否の代わりに、共同提出の範囲内で、別々に関係書類を提出する代わりにより詳細な解析が明らかとなっている。
約250の物質の場合、ECHAは、同一物質に関し、複数の共同提出かまたは共同提出に加え、一つまたはそれ以上の個別の提出のいずれかを受理した。ECHAは、現在、これらの状況についての説明を考察している。
一般的に、情報の共有と共同提出は、機能しており、そして、登録者が情報の必要要件を充足し、不必要な動物実験を避けるために利用されている。しかしながら、同一物質に対する別途の登録関係書類は、情報の共有と共同提出はまだ、更なる改良を必要とすることを示している。また、登録者は、REACH規則によって提供されている翻案の可能性を十分に利用している。
登録に必要な標準情報は、通常、脊椎動物を用いた標準的実験からの情報に基づくところの多数の危険性のエンドポイント(例えば反復毒性、刺激性)を包含するものである。標準的データの必要要件は、物質のトン数と関連しており、REACH規則付属書ⅦからⅩに示されている。
中核データは、付属書ⅦとⅧ、及び付属書ⅨとⅩに明記されている高次評価のデータである。もし、データ不足(data gaps)が確認され、他の方法で満たすことが出来なければ、研究は、行われる必要があるだろう。高次評価データがないのに気づいた場合には、試験計画が主たる登録者から提出されなければならない。
この報告書は、脊椎動物に関する研究を必要とするであろう15のエンドポイントに関し焦点を合わせる。物質に関する各エンドポイントの情報は、登録関係書類の中のエンドポイント研究記録(ESR:endpoint study record)に含まれている。ECHAのデータベースで利用可能なESRsからのデータは、この報告書の場合、2方法で解析された。
一番目は、主たる登録者と独立型の関係書類のESRsの全部を要約することである(即ち、この報告書の目的の範囲内で、すべての関係書類と物質に関してすべての利用可能な情報を要約すること)。二番目の解析は、物質の情報の必要要件を満たすときに、登録者によって使用された実験研究、試験計画または代替試験法の際の相対存在量または年1000トン以上のどちらかについて洞察することである。
調査結果を示すこれらの2方法を考慮するとき、ESRsは、登録者によって提供され、そして、これらESRsの内容の質がECHAによって細かく調べられていないことを、理解することが重要である。少しでも欠陥のあるものは、関係書類の評価の一部であるコンプライアンスチェックを通じて同定され、そして、ECHAが脊椎動物で更なる研究を要求することになるので、この報告書には含まれていない。
年100トン以上の物質の場合、ESRデータは、登録者が中核及び高次評価の情報の必要要件の両方を満たす情報の主源として、REACHの施行より前に実施された研究からのデータを使用したこと示している。
特に、長期動物実験の場合、情報の必要要件を満たすための2番目に一般的な必要要件の情報を満たす手段では、外挿による読み取り法(read-across)によって物質の性質を予測している。また、標準試験の必要要件の他の翻案が研究を省略するのを正当だと理由づけるために使用された。これらの選択の利用は、エンドポイント間で異なる。
すべての関連性のある物質の有益な情報を評価するとき、物質が高比率で、有効な高次評価の毒性学的エンドポイント(例えば生殖毒性、反復毒性)より、急性毒性での実験研究であることが明らかである。
REACHによって要求される多くの毒性学的エンドポイントの場合、類似の動物実験の代わりに使用された試験管内(in vitro)試験を受理している。したがい、これらのエンドポイントにおいて試験管内試験は、動物研究に関するデータに対して別個に提示される。付属書ⅨとⅩは、多くの脊椎動物での試験を伴い、最も高価な情報を必要要件に含んでいる。
そのような試験を始める前に、登録者は、試験計画をECHAに提出しなければならない。試験計画が脊椎動物を必要とする研究に関係するとき、ECHAは、試験がウェブサイト上に、計画されている物質の名前と危険性のエンドポイントを公表し、そして、新研究を行う必要性を避けるために、第三者が現存の科学的に有効な情報であるものを提出するよう促す。
ECHAは、登録者が脊椎動物に関する研究を開始する前に、すべての試験計画に関し、考察し、判断しなければならない。
欧州委員会または関心のある科学者による事前評価に基づく予想より、高次評価のための試験計画の提出は少なかった。試験計画が少数であったのは、少なくとも一部の理由であり、登録者が、高次評価研究の場合のデータの欠損を満たすために、外挿による読み取り法またはカテゴリーアプローチを使用するためである。即ち、別の物質についての情報の必要要件を包含するための1つの物質に関する研究または多物質に関する研究である。
2008年から2011年2月の間に、ECHAは、3,308の段階的導入物質と1,347の非段階的導入物質の登録を受理した(すべてトン単位)。試験計画は、総数1,175試験に及ぶ574の関係書類が作成され、その内、711が脊椎動物研究である。総数には、17の化学カテゴリーと104の動物研究のための試験計画に及ぶ、カテゴリー関係書類として提出された78物質を含んでいる。
一般的に登録者が、試験計画に頼る前に、最初に高次評価データの必要要件を満たすための他の選択肢を考慮して、結論を下すのは合理的に思える。基準年の2009年またはそれ以降のデータに基づけば、解析した関係書類により、企業が登録関係書類のために相対的にわずかの新研究しか行っていないことが立証された。
総数で、1849の脊椎動物に関する試験を含む、3,340の研究が実施されている。総数で、107の高次評価研究が試験計画なしで実施されているのも明白である。この情報は、将来的にコンプライアンスチェックで更に解析されるだろう。
関係書類の評価の結果は、外挿による読み取り法とカテゴリー予測法の利用がたびたび十分に正当化できないことを、コンプライアンスチェックの一部として示されている。更に、関係書類で提供される実験データもまた、REACH下の情報の必要要件を十分に満たしていない多少の事例がある。
将来的に、提供されたデータの更なる解析とコンプライアンスチェックの結果は、ECHAと利害関係者がこれまでの登録者によって使用されている動物と非動物試験法の信頼性のより良い理解を発展させる手段を与えるだろう。
現在、更なる動物試験が化学物質の安全使用を保証するためにECHAによって要求される必要があるであろうと予想される。ECHAは登録によるエンドポイント情報を広め、そして、登録者が、自発的にまたは評価決定後に新データを提出するたびに、そうすることを継続するであろう。
これは、類似物質(analogus substances)に関する既存データに対し、外挿による読み取り法での彼らの物質の性質を予測するのを可能にするならば、将来的に登録者に支援となるだろう。
広められた情報の量と質は、更なる物質が登録されることによって、増加するだろうし、そして、試験計画後の高次評価研究に着手する登録者は、承認され、そして、登録された物質に関する予備的臨時研究は、コンプライアンスチェックまたは他のREACHプロセス、例えば物質評価の結果として行われる。
この報告書は、初めて、REACH下での情報の必要要件を満たすために登録者がよってたつ選択肢について総合的な洞察を提供する。これらの調査結果に基づいて、ECHAは、ガイダンス文書、意識高揚キャンペーン、イベント、ヘルプデスク、主たる登録者のための特別サービス、普及ウェブサイトを経て、動物試験の代替試験法及びその利用について登録者に積極的に情報を提供することで、非動物試験法の利用を促進する努力を継続することとしている。