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中央労働災害防止協会(中災防)
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E-mail: kokusai@jisha.or.jp
お知らせ
国からの委託事業であった 「国際安全衛生センター(JICOSH)」 が2008年3月末をもって廃止されました。 永らくのご利用ありがとうございました。 同センターのサイトに掲載されていた個別の情報については、中災防WEBサイトの国別、分野別情報にリンクして取り込んでおります。
労働安全衛生局の組織は、アメリカ合衆国の首都であるワシントンD.C.にある本部のほか、次の10か所の管区事務所(Regional Office)及び個々の管区事務所の下部に通常数か所の地区事務所又は地域事務所(District Office又はArea Office)が配置されている。
英語原文 | 日本語仮訳 |
---|---|
Region I: Boston | 管区Ⅰ:ボストン |
Region II: New York | 管区Ⅱ:ニューヨーク |
Region III: Philadelphia | 管区Ⅲ:フィラデルフィア |
Region IV: Atlanta | 管区Ⅳ:アトランタ |
Region V: Chicago | 管区Ⅴ:シカゴ |
Region VI: Dallas | 管区Ⅵ:ダラス |
Region VII: Kansas City | 管区Ⅶ:カンザスシティ |
Region VIII: Denver | 管区Ⅷ:デンバー |
Region IX: San Francisco | 管区Ⅸ:サンフランシスコ |
Region X: Seattle | 管区Ⅹ:シアトル |
次に、労働安全衛生局には、管区事務所(その傘下の地区事務所又は地域事務所を含む。)を含めて約2200人の安全衛生コンプライアンス監督官(compliance safety and health officer;CSHO)が配置されており、800万ヵ所を超える職場で雇用されている約1億3千万人の労働者の健康と安全に責任を持たされていると報告されている。(資料出所:https://www.osha.gov/OSHA_FAQs.html )。
これらの安全衛生コンプライアンス監督官(compliance safety and health officer;CSHO)は、労働安全衛生局による専門的な教育訓練を受けた者、安全工学技師(safety engineer)としての能力を有する者、認定インダストリアル・ハイジニスト(Certified Industrial Hygienist:CIH。訳者注:一定以上の教育歴(原則として理工系又は医学系の大学卒業者以上の学歴)を有し、関連する専門分野に関する大学院レベルの講座を履修済みで、一定の関連する分野で一定期間以上の実務経験を有し、さらにthe American Board of Industrial Hygiene®(アメリカインダストリアル・ハイジニスト認証機関;ABIH)が実施する試験に合格した者で、その後も継続して専門的能力の向上を行っていることが、(ABIHによって)認証されている者としての資格を有する者等によって構成されている。
最近3か年(2011年度から2013年度まで;10月から翌年の9月30日までが、アメリカ合衆国の会計年度である。)における労働安全衛生局の監督(Inspection)の実績は、次の三つの表のとおりである。(これらの資料出所:OSHA INSPECTION ACTIVITY:https://www.osha.gov/dep/2013_enforcement_summary.html )
事項 | 2011年度 | 2012年度 | 2013年度 | 2014年度 |
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Total Inspections(監督数の合計) | 40,614 | 40,961 | 39,228 | 36,163 |
Total Programmed Inspections(計画的な監督の合計) | 23,329 | 23,078 | 22,170 | 19,222 |
Total Unprogrammed Inspections(計画外の監督の合計) | 17,285 | 17,883 | 17,058 | 16,941 |
Fatality Investigations(死亡災害の調査) | 851 | 900 | 826 | 850 |
Complaints(申告によるもの) | 8,765 | 9,573 | 9,505 | 9,570 |
Referrals(他の機関との連携等によるもの) | 4,776 | 4,864 | 4,024 | 3,829 |
Other Unprogrammed Inspections(その他の計画外の監督;死亡・重大事故、監視、事後確認等を含む。) | 2,893 | 2,546 | 2,703 | 2,525 |
事項 | 2011年度 | 2012年度 | 2013年度 | 2014年度 |
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Total Violations(全ての違反の合計) | 85,514 | 78,723 | 78,196 | 67,941 |
Total Serious Violations(重大な違反の合計) | 62,115 | 57,112 | 58,316 | 49,616 |
Total Willful Violations(意図的な違反の合計) | 594 | 423 | 319 | 439 |
Total Repeat Violations(繰り返し違反の合計) | 3,229 | 3,034 | 3,139 | 2,966 |
Total Other-than-Serious(重大でない違反の合計) | 19,306 | 18,054 | 16,290 | 14,503 |
事項 | 2011年度 | 2012年度 | 2013年度 | 2014年度 |
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Criminal Referrals(刑事上の訴追への連携) | 10 | 13 | 3 | (公表されていない。) |
(作成者注;「Criminal Referrals (刑事上の訴追への連携)」についての2014年度の統計は、US-OSHAから公表されていないが、これは、US-OSHAがその2016年1月4日付けニュースレターで、「アメリカ合衆国労働省と司法省は、職場における安全規制の違反に対する捜査及び訴追に関して協力するための新たな発議(覚書)を締結し、実行に移した。」ことと関連するものではないかと推定される。)
労働安全衛生法違反の摘発は、一般的には労働省労働安全衛生局の管区事務所(その傘下の地区事務所を含む。)に所属する安全衛生コンプライアンス監督官(Compliance Safety and Health Officer (CSHO))が担当する。安全衛生コンプライアンス監督官は、施設に立入り、臨検(inspection)を行う権利を有する。臨検の優先順位は、第一に、急迫した危険が存在する場合、第二に、死傷事故が発生した場合、第三に違反の申告や通報があった場合、そして第四に、あらかじめ計画された臨検の順となっている。
雇用者側の代表者と労働者側の代表者は、臨検に立ち会う権利を認められている。臨検が終わると終了会議が開かれ、臨検の結果と以後の措置について、事業者及び労働者代表の同席の下で、又はこれらの者と個別に議論が行われる。
安全衛生コンプライアンス監督官は、急迫した危険を発見した場合、雇用者に対して、直ちに労働者を避難させ、自主的に危険を除去するよう求めるが、雇用者がこれに従わないとき、労働長官は、連邦地方裁判所にインジャンクション(injunction; 差し止め命令、禁止命令等)を請求することができる。
臨検により違反が見つかった場合、管区事務所長又は地区事務所長若しくは地域事務所長は、安全衛生コンプライアンス監督官の報告に基づいて、雇用者に違反通告(citation)を発する。その中において、違反の内容を明示した上、合理的な期間を定めて、雇用者に違反の解消(abatement)を命ずることとしている。この違反通告(citation)は、関連する違反があった場所の近くに、目に留まりやすい形で掲示されなければならない。
違反通告が出された場合、あわせて制裁金(civil penalty)の通知も雇用者に送付される。死亡等を引き起こす危険のある重大な(serious)違反の場合、各違反につき7000ドル以下の制裁金を必ず課さなければならない。重大でない(non-serious)違反の場合には、各違反に対して7000ドル以下の制裁金を課すことができると規定されており、課すこともできるし課さないこともできる仕組みになっている。再度(repeated)の違反又は故意(willful)の違反の場合には、70000ドル以下の制裁金を課すことができるとされ、さらに、違反解消命令を遵守しない場合には、一日当たり7000ドル以下、違反通告の掲示を怠った場合にはその都度7000ドル以下と定められている。
ただし、違反内容が極めて軽微な場合、違反通告にかえて、単なる通知(notice)を発するだけですませることもできる。違反通告を受け取った雇用者は、それを職場に掲示する義務を負う。
また、法第6条(労働安全衛生基準)に基づくあらゆる基準、規定、命令、又は本法に基づいて制定されたあらゆる規則に故意に違反し、その違反によって従業員の死亡をもたらした雇用者は、有罪となった場合には、罰金1万ドル若しくは6ヶ月未満の禁固、又はその両方に処せられる。なお、当該者が最初の有罪の後に再び違反を犯した場合には、罰金2万ドル若しくは6ヶ月未満の禁固、又はその両方に処せられる。
違反通告又は制裁金の通知に対しては、雇用者は、15営業日(原文では;within fifteen working days)以内に、労働長官に不服申立をすることができる。労働者と労働者の代表者もやはり15営業日以内に本件違反事案について不服申立をすることができるが、その理由は雇用者による違反解消のための期間が経過しすぎるというものに限定されている。
不服申立がなされた事件は、労働安全衛生審査委員会(Occupational Safety and Health Review Commission)に送付され、審査される。この委員会は、大統領により任命された三人の委員から成る独立の機関で、権限行使側の長である労働長官とは別個の中立的な立場で違反通告や制裁金の通知の当否を審査し、これを承認・修正・破棄し、あるいは他の救済を追加する権限を持っている。この審査委員会の決定に不服である当事者(労働長官も含む。)は、連邦控訴裁に司法審査を求めることができる。
以上の行政的制裁手続きの他、雇用者の故意により労働者が死亡した場合などについては、労働安全衛生法とは別個に刑法上禁固又は罰金の刑罰も定められているが、これは通常の刑事裁判と同様、司法省が訴追を担当する。
労働安全衛生局は、労働安全衛生法に基づくものではないものの、自主的労働災害防止プログラム(VPP: Voluntary Protection Program) を実施している。このプログラムは、効果的な安全及び健康の管理システムを実施し、傷害及び疾病発生率が関係する業種における国家労働統計局の平均よりも低い民間産業及び連邦の行政機関における雇用者及び労働者を対象として明確化している。
このVPPにおいては、経営側、労働者及び労働安全衛生局が協力して、危険有害要因の予防及び管理、作業現場分析、訓練、経営側の関与及び労働者の参画に焦点を当てているシステムを通じて、死亡災害、傷害及び疾病を防ぐために積極的に取組みを行うこととしている。雇用者は、このVPPにおける役割を担うためには、これに参加する旨の申請を労働安全衛生局に提出して、同局の安全及び衛生の専門家のチームによる厳格な現場評価を受けなければならない。申請には、対象職場における交渉単位としての労働組合による支持が求められる。VPP参加企業は、3年から5年ごとに、このプログラムへの参加継続について再評価される。VPP参加企業は、参加を持続している間、労働安全衛生局の計画的な監督(の対象)から除外される。
なお、このVPPには、①労働者が、包括的で、効果的な職場における労働安全衛生マネジメントシステムによって死亡、傷害及び疾病から効果的に守られており、その職場の安全衛生水準を十分に自主管理できる優れた状態が維持されているスタープログラム(Star Program)、②良好な労働安全衛生マネジメントシステムを有し、その職場における安全衛生水準についてスタープログラムの水準に高めようとする意欲、取組み及び能力があって、今後スタープログラムに位置づけられることを目指すメリットプログラム(Merit Program)、③かなりの分野で、現在のスタープログラムとして位置づけられる安全衛生水準マネジメントシステムには達しているものの、一定の分野で未だスタープログラムの安全衛生水準には達していないので、その改善を目指すデモンストレーションプログラム(Demonstration Program)の3種類が設けられている。