お問合せ
中央労働災害防止協会(中災防)
技術支援部
国際課
TEL 03-3452-6297
FAX 03-5445-1774
E-mail: kokusai@jisha.or.jp
お知らせ
国からの委託事業であった 「国際安全衛生センター(JICOSH)」 が2008年3月末をもって廃止されました。 永らくのご利用ありがとうございました。 同センターのサイトに掲載されていた個別の情報については、中災防WEBサイトの国別、分野別情報にリンクして取り込んでおります。
ここでは、労働安全衛生法に基づく監督のほか、労働安全衛生局が具体的にどのような安全衛生対策を実行しているか、また、現在、関心が高い労働安全衛生マネジメントの状況について紹介するために、三つの例(①The Hazard Communication Standard (HCS)(危険有害因子伝達基準、②若年労働者のための(労働災害防止)キャンペーンの展開、③労働安全衛生マネジメントシステム)に対する取組みを紹介する。
危険有害な化学物質へのばく露は、アメリカ合衆国の労働者にとって最も深刻な脅威の一つとなっているとの基本的考え方から、化学物質については、Hazard Communication Standard (HCS) (29 CFR Parts 1910, 1915, and 1926)が定められている。このStandardは、2012年3月26日に改正されて、従来採用されていたアメリカ合衆国の危険有害性分類の方法及び表示(ラベリング)については、国連のGHS(化学物質の危険有害性に関する分類とラベルに関する世界的調和システム)と整合性のあるものに改正され、2012年5月25日からこの改正は施行され、化学物質の製造者、輸入者及び頒布者は、2012年6月までにこの改正された基準(GHSに準拠した分類及び表示(ラベリング))にしなければならないこととされた。
今回の改正の目的は、化学物質の分類及び危険有害性の情報については、GHSに準拠させることで、化学物質の危険有害性に関する分類及び危険有害な情報が、共通で、首尾一貫したものとなるようにして、労働者が、危険有害な化学物質について容易に必要な情報を理解して、安全な取扱いを可能にすることである。
労働安全衛生局は、労働者のための特別のウェブサイト(https://www.osha.gov/youngworkers/)を立ち上げて、「2013年には335人の若年労働者が殺された。」とそのウェブサイトのトップに掲げて、キャンペーンを展開している。また、若年労働者に対して、次とおりの手紙を掲げている。
英語原文 | 日本語仮訳 |
---|---|
Letter to Young Workers
You have rights on the job, and your employer has the responsibility to provide a safe workplace. OSHA wants you to have a safe and rewarding work experience. This site can help you prevent job-related injuries and illnesses. |
若い労働者へ
貴方方は、仕事に関して権利を持っています。そして雇用者は、安全な作業場を提供する責任があります。労働安全衛生局は、貴方方が安全で価値のある仕事の経験を積むことを望んでいます。このサイトは、貴方方が仕事に関連する負傷や疾病を予防するための助けになります。 |
そしてそのサイトでは、「本当にあった話」、「危険有害要因」、「参考資料」等について、クリックすれば関連するウェブサイトに接続できるようになっている。
労働安全衛生マネジメントシステムの策定に至る経緯を振り返ると、国際標準化機構(International Organization for Standardization、略称ISO)は、1987年に品質管理規格としてのISO9000シリーズ、1996年に環境管理規格としてのISO14000シリーズを、それぞれ、制定した。これらは、いずれも関連するイギリス規格(British Standards)が基になったものである。また、1996年5月に、労働保健安全に関するイギリス規格として、BS8800:Guide to occupational health and safety management systemsが発行された。これらの分野で国際標準化あるいはイギリス規格の制定が行われたことは、その後における労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の国際標準化のきっかけとなったものである。ISOは、前述したように、1987年にISO9000シリーズ(品質管理規格)を制定(1994年、2000年に改正)し、また、1996年にISO14000シリーズ(環境管理規格)を制定した。
その後、ISOは、自らOSHMSの作成に取り組むべく、そのための技術委員会設置の可否に関し、ISO加盟国に諮ったが、投票の結果、主として、既にILO(国際労働機関)がOSHMSガイドラインの策定に取り組んでいたことから、国際的なダブルスタンダード化を避けることが理由となって、否決され、ISOは、当面、OSHMSの国際規格化を断念することになった。
結果的には、以前からOSHMSの作成に取り組んでいたILOが、2001年6月に理事会決定により、OSHMSに関するガイドライン("Guidelines on occupational safety and health management systems ILO-OSH2001")を制定した。
その後、2013年に、ISOでは、労働安全衛生マネジメントシステム(以下OSHMS)のISO規格化が加盟国により承認され、4年以上にわたる検討の結果、2018年3月12日に、ISO45001としてISOから発行された。これを受けて、アメリカ規格協会(American National Standards Institute;以下単に「ANSI」という。)は、そのウェブサイト(https://webstore.ansi.org/RecordDetail.aspx?sku=ISO+45001%3A2018)で、ISO45001:2018の内容等を報じた。ANSIとしてこのISO45001:2018に関して特別の対応をするかどうかについては言及していない。
ANSIは、従来からの労働安全衛生マネジメントシステムについての国際的な規格策定の動きに留意しつつ、1999年に、OHSS(Occupational Health and Safety Systems)のアメリカ合衆国国内規格を策定するための正式委員会ZD-10を、全米産業衛生協会(American Industrial Hygiene Association:略称AIHA)を事務局として発足させた。このZ-10委員会は、2001年2月7日及び8日に、第1回会合を開催し、構成メンバーとしては、労働安全衛生局(OSHA: Occupational Safety and Health Administration)、労働界(AFL-CIO: The American Federation of Labor and Congress of Industrial Organizations )、雇用者(アメリカ製造業協会:NAM; National Association of Manufacturers)、全米安全評議会(NSC:National Safety Council)等の専門団体も加わって、以後熱心に検討が進められて、最終案が2005年5月に取りまとめ、これを基に、ANSIは、2005年7月25日に"American National Standard-Occupational Health and Safety Management Systems"を承認した。
その概要は、次の参考資料のとおりである。
なお、その後、アメリカ産業衛生協会(American Industrial Hygiene Association;略称AIHA)が中心となって、2012年以降この2005年の"American National Standard-Occupational Health and Safety Management Systems"の改訂が検討されているが、未だANSIによる改訂の承認は得られていない。
ところで、労働安全衛生局のこのOHSS(Occupational Health and Safety Systems)への取組みであるが、US-OSHAのホームページで関連する資料を検索しても該当するものがなかなか見いだせないので、US-OSHAとしてはあまり重視していないようにも見受けられる。