Eurofound Latest updates 2010年11月16日
欧州生活・労働条件改善財団(European Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions- Eurofound
)は、欧州労働条件調査(European Working Conditions Survey- EWCS
)を1990年以来5年ごとに実施しており、第5回を2010年に実施した。その調査結果の一次報告を「労働条件変化の趨勢−第5回欧州労働条件調査結果の一次報告」と題する報告書の中で公表した。
今回の調査は、2010年の1月から6月の間、欧州ギャラップ(Gallup Europe)に委託して、欧州のほぼ全域にまたがる34ヶ国(EU-27、ノルウェー、クロアチア、マケドニア共和国(旧ユーゴスラビア)、トルコ、アルバニア、モンテネグロ、コソボ)の44‚000人の労働者に対し面接調査を行った。
この報告書は、「主要な調査結果 (Key findings)」及び「第5回欧州労働条件調査結果」から構成される。今回のトピックスでは、主要な調査結果、第5回欧州労働条件調査結果に係る見出し及び当該調査のうち健康確保と福祉の推進 (Protecting health and promoting well-being)について紹介する。
原資料の題名と所在
Changes over time First findings from the fifth European Working Conditions Survey
同 pdf file
- 1
- 主要な調査結果 (Key findings)
- 2
- 第5回欧州労働条件調査結果に係る見出し
- 3
- 健康確保と福祉の推進 (Protecting health and promoting well-being)
1 主要な調査結果
最近数十年の欧州における労働条件変化の趨勢
- 雇用態様は、欧州全域で継続的に変化しており、農業及び製造業からサービス産業への転換が進展しつつある。
- 雇用部門間の変化が進展しているが、部門内の固定的男女差別は、依然として変わっていない。
- より多くの女性が、管理的職務に就くようになってきている。これらの管理者が他の女性を管理することが多くなっている。
- 臨時契約労働者の比率は、全体において増加している。
- 週当たりの労働時間は、平均的には減少傾向で推移している。
- 標準的労働時間である週5日40時間、月から金の労働日は、ほとんどの欧州住民における典型となっている。
- 欧州の労働者の5分の1の労働者は、仕事と生活のバランスを確保することが難しいと感じているが、2000年以降においては、やや減少している。
- 2010年の過去12ヶ月における事業者の教育訓練への支出水準は、2005年と2010年の間で著しく高くなっている。
- 作業態様、すなわち、労働者が主体性を持って取り組むべき知的課題のある仕事については、ほとんど変化はなく、むしろ単純作業がより一般的になってきている。
- 健康と安全が仕事から起因されるリスクに直面していると感じている労働者は少ない。作業者が直面している身体的危険有害要因(重量物取扱い等)の範囲は依然として変わっていない。
- 煙草の煙へのばく露は、広範囲に施行されている法規制により過去5年間で減少している。
- 作業強度は、高い水準にある。
- 欧州住民のかなりの人々は、60歳まで現在の仕事に就いていることが出来るかどうか確信を持っていない。
2 第5回欧州労働条件調査結果に係る見出し
- 欧州におけるよりよい仕事(Better Jobs in Europe)
- 労働市場へのより多くの参加(More labour market participation)
より多い、多様な労働力(A bigger,more diverse workforce)
サービス産業の重要性増加の継続(Services continue to grow in importance)
雇用態様の柔軟性の増大(Greater flexibility in employment status)
仕事の安定性(Job insecurity)
- 仕事と生活のバランスと労働時間(Work-life balance and working time)
労働時間の平均的な短縮(Working time falling-on average)
標準的労働時間には、変化はない(‘Standard’ working hours still the norm)
仕事と生活のバランスは、多くの人びとにとってとらえどころがない(Work-life balance elusive for many)
- 仕事の発展(Developing in the jobs)
より多くの労働者が教育訓練を受けている(More workers undertaking training)
仕事は、労働者を意欲付けるか?(Does work challenge us?)
自分自身で決める−作業における主体性(Making one’s own decisions-autonomy at work)
- 健康確保と福祉の推進(Protecting health and promoting well-being)
作業強度 (Work intensity)
身体的危険有害要因は変わってない(Physical hazards as persistent as ever)
- 64歳になったときも、仕事についていることができるか?(When I’m 64? Remaining in work for longer)
3 健康確保と福祉の推進 (Protecting health and promoting well-being)
よりよい仕事の概念の基本的要素は、労働者の健康を確保すること−健康及び福祉を支援し、リスクを防止し、労働者が不健康のために仕事から離れることを防止する快適な作業環境を創造することである。1989年の枠組指令においては、仕事を個人に適応させることを強調しており、また、技術、作業組織(Work organization)、作業条件及び社会的関係を考慮する広範囲の考え方を採用している。
- 作業強度 (Work intensity)
大きな作業強度(作業の高速化、厳しい締め切り)を経験しており、労働者の福祉に強い負の影響を与えている。特に労働者の自主性に基づく作業分野が少なくなり、同僚、管理者からの支援が少ない場では顕著である。
この20年間に、ほとんどの欧州各国で作業強度が増加した。原資料にある図7で示されるように高速での作業及び厳しい締め切りのもとで作業する割合が徐々に増えている傾向にある
EU27における大部分の労働者(67%)にとって、作業ペースは人びとからの直接的な要求により決められる−たとえば、顧客との関係性などである。対照的に、欧州の労働者の18%は、その作業ペースが機械自体の速度によって決められており、この割合は、過去15年間で減少してきている。過去10年間では、より多くの労働者における作業ペースが当該労働者の上司によって決定されており、この割合は、33%から37%に増えている。作業ペースの決定要素が多くなればなるほど、労働者への要求が多くなり、労働者の健康への影響も大きくなる。製造業の労働者は、サービス産業の労働者の2倍の作業ペース決定要素を経験している。
労働者がいくつかの点において到達することが期待されている閾値は、より厳格になりつつあり、EU27域内労働者は、その仕事に対する厳密な品質基準に適合するよう要求されている比率が増えてきている(2000年の69%に対し、74%になっている。)。
- 身体的危険有害要因は変わってない (Physical hazards as persistent as ever)
欧州の労働者の多くの仕事には、今なお、多くの身体的労働があることにより、身体的危険有害要因へのばく露は20年前と変っていない。例えば、労働者の33%は、今なお、就労時間の少なくとも4分の1において重量物の運搬作業に従事しており、また、労働者の23%が振動に曝されており、これらの状況は2000年以降変っていない。重筋労働者に関する身体的危険有害要因としては、約半数(46%)が疲れやすいまたは苦痛を伴う作業姿勢で就労時間の4分の1を作業しており、この状況も変っていない。さらに、手指の繰り返し動作を伴う作業は、10年前より増加している。
身体的危険有害要因へのばく露は、男女間で相違があり、これは各産業分野における男女間格差によるものと思われる。当該要因の男女間にある相違点及び類似点は、また、多かれ少なかれ長い間、同じである。例えば、男性の33%、女性の10%のみが、常時、振動にばく露されていると同時に、男性の42%と女性の24%が重量物を取り扱っている。対照的に、女性の13%、男性の5%が仕事の一部として人を持ち上げ、運ぶ仕事を行っている。しかしながら、疲れやすい姿勢で作業しているのは、割合は男女とも同様である(男性48%、女性45%)、また、手指の繰り返し動作の割合についても同様である(男性64%、女性63%)。
他の種類の危険有害要因もある。作業環境において、騒音が大きく、著しく暑く、又は寒いなど、さらには病原性物質を含んでいるなどである。
- 2010年、30%近くのEU域内労働者が、就労時間の4分の1の間に対し、大きな騒音にばく露されており、この数値は2000年と変っていない。
- 一方、15%が煙、ヒューム、粉じんを吸入しており、また、危険有害な化学物質を取り扱っている−これも10年前と変っていない。
- 2010年では、2005年よりも多くの労働者が病原性物質を取り扱っている(男性11%、女性9%)。
- 2010年では、EU15の域内労働者の23%が低温環境にばく露されており、これは1995年と変らない。
禁煙に関する法令が域内全般にわたり導入されてきていることから、労働者が煙草の煙にばく露することは少なくなってきている。
EU27域内労働者が、健康と安全について、仕事から起因されるリスクに直面していると考えている割合は2000年以降減少してきており、31%から24%に下がっている(EU12域内では、1991年には41%であったが、2010年には28%となっている)。このことは、健康と安全に関する情報をよりよく提供していることが反映しているとも考えられる。労働者がその仕事に関する健康と安全に係る情報を十分提供されていると報告する労働者の割合は増えている−2010年には90%。