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労働衛生調査分析センター

自律的管理の下での個人ばく露測定 ~リスク見積り測定と確認測定~

事業者は、労働者の化学物質のばく露の程度を最小限度とするため、リスクアセスメントの一環として、個人ばく露測定(リスク見積り測定)を行うことがあります。また、改正労働安全衛生規則に基づき、令和6年4月から適用の告示に定められている67物質についての濃度基準値については、把握した推定ばく露レベルによっては、技術上の指針に従って確認測定を行うこととなります。
中央労働災害防止協会では、リスク見積り測定や確認測定の需要に対応し、個人ばく露測定のサービスを提供しています。

1 ) 中災防地区センターにおいて、随時受け付けている濃度基準値設定物質(52)
* 分析実績を踏まえて一部料金を改訂(値下げ)しました(令和7年1月)。

アクリル酸エチル アクリル酸メチル アクロレイン
アスピリン アセトアルデヒド アセトニトリル
アニリン α-メチルスチレン イソプレン
イソホロン ε-カプロラクタム エチリデンノルボルネン
2-エチルヘキサン酸 エチレングリコール エピクロロヒドリン
塩化アリル キシリジン クメン
グルタルアルデヒド クロロピクリン 酢酸ビニル
ジエタノールアミン ジエチルケトン 2,4-ジクロロフェノキシ酢酸
1,3-ジクロロプロペン 2,6-ジ-tert-ブチル-4-クレゾール(BHT) ジボラン
N,N-ジメチルアセトアミド しよう脳(カンファ―) タリウム
チウラム トリクロロ酢酸 カルバリル
ニッケル(金属) ニトロベンゼン ベノミル
p-ジクロロベンゼン p-tert-ブチルトルエン ヒドラジン及びその一水和物
ヒドロキノン ビフェニル ピリジン
フェニルオキシラン 2-ブテナール フルフラール
フルフリルアルコール 1-ブロモプロパン ホウ砂
メタクリロニトリル MTBE りん酸トリ(o-トリル)
レソルシノール

2 ) 中災防分析部門において、個別調整後に測定分析を行う濃度基準値設定物質(15)

アセトンシアノヒドリン 1-アリルオキシ-2,3-エポキシプロパン 一酸化二窒素
エチレンクロロヒドリン o-アニシジン 塩化エチル
シクロヘキシルアミン 1,1-ジクロロエチレン ジフェニルアミン
ジメチルアミン 臭素 ダイアジノン
ジスルフィラム 4,4′-メチレンジアニリン りん化水素

* 補集方法や、捕集後の検体の保存や輸送の状況により、分析をお引き受けできないことがあります。
また、 捕集剤や試薬を輸入手配する場合など、分析実施時期の調整をお願いすることがあります。

3 ) 中災防地区センターにおいて、受付を開始した令和7年10月適用の濃度基準値設定物質等(16)

アミトロール ワルファリン エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
2,3-エポキシプロピル=フェニルエーテル 塩化ホスホリル 2-(ジエチルアミノ)エタノール
ニトロメタン ビニルトルエン フェノチアジン
DEHP メタクリル酸 メタクリル酸メチル
メチレンビス(4,1-シクロヘキシレン)=ジイソシアネート りん酸 塩化ベンジル*
メタクリル酸2,3-エポキシプロピル*

*濃度基準値を設定できないとされた物質

4 ) その他の物質の例(特別則対象物質について個人ばく露測定を行う場合など)

第1種、第2種有機溶剤 特別有機溶剤
ニッケル化合物 コバルト TDI
ナフタレン MOCA  
   
ナトリウム塩 MDI

※その他の物質については、中災防分析部門に直接お尋ねください。

リスクアセスメント対象物に対するリスクの見積り測定、または技術上の指針に基づく確認測定をご希望の方は、中災防の作業環境測定士を派遣しますので、地区安全衛生サービスセンターまでお問い合わせください。

また、中災防では、これまで10年余にわたる国のばく露調査事業の成果を踏まえ、サンプリングのみを実施する作業環境測定機関に対し、分析業務を引き受けて支援しています。支援を必要とする作業環境測定機関の担当者は、労働衛生調査分析センター(03 3452-3145)または大阪労働衛生総合センター(06 6448-3788)まで直接ご相談ください。

手間をかけずに、簡便な個人ばく露測定をしたいとき

個人ばく露測定は、通常、作業環境測定士が立ち会い、作業状況を把握しつつ、ポンプや測定器具などの状況を随時確認しますので、手間や費用がかかります。しかし、

  • 建築工事などで、作業者にサンプラー器具やポンプの装着が困難な場合
  • 研究施設などで、外部の測定者の立入りが望ましくない場合
  • CREATE-SIMPLEによるばく露推定結果が予想外に高いなど、検証してみたい場合

などもあります。揮発性溶剤については、小型(直径3cm厚さ5㎜程度)のバッジによる簡易測定・分析をする方法が確立されていますので、一度お試しください。

濃度基準値設定物質

令和6年4月1日から、リスクアセスメント対象物のうち濃度基準値が設定された67物質を製造し、または取り扱う業務を行う屋内作業場においては、事業者は、労働者のばく露の程度を、濃度基準値以下とする必要があります。従来のような特別則の下での管理濃度(作業場所の作業環境の良否を判断する管理上の指標)とは異なり、濃度基準値を超えてのばく露は法令違反となり、健康障害のおそれがあるとして、漏洩事故における大量ばく露と同様に、リスクアセスメント対象物健康診断(第4項健診)を速やかに実施する義務が課されます。

労働者のばく露の程度は、リスクアセスメント対象物の取扱量や作業方法に応じて、労働者の呼吸域の濃度を計算により見積もることによっても把握できます。また、事業者(化学物質管理者)が明らかに低いと判断できる場合など、必ずしも実測が必要とはされていません。
しかし、国が公示する技術上の指針によれば、事業者による労働者の呼吸域の濃度の見積り等により、濃度基準値の2分の1を超えると判断される場合は、労働者の呼吸域の濃度を実測する「確認測定」をするよう定められています。

確認測定の結果、呼吸域における濃度が濃度基準値を超えた場合の措置としては、密閉化、換気装置の設置・稼働、管理的対策など様々なものが考えられ、呼吸用保護具の使用も選択肢の1つとなります。呼吸用保護具によるばく露防止措置を講ずる場合は、保護具着用管理責任者を選任し、保護具の適正な選択、使用と保守管理を管理させなければなりません。また、法令の義務付けはありませんが、技術上の指針で、フィットテストについても規定されています。

詳しくは、濃度基準値が定められた令和5年厚生労働省告示第177号および技術上の指針(令和5年技術上の指針公示第24号)を参照ください。これら確認測定の実務については、令和6年5月8日改正分を含め、化学物質管理者選任時テキスト第3版(令和6年6月7日中災防刊)別タブで開きますに掲載しております。

リスクの見積り測定と確認測定の違い

個人ばく露測定のサービスは、安衛法第65条に規定する作業環境測定の対象以外の物質に対して、労働者の呼吸域における物質の濃度を測定するものです。ばく露低減のためのリスクアセスメントの一環としての個人ばく露測定、濃度基準値設定物質に対する確認測定の2つがあります。

種類リスクの見積り測定確認測定
対象 リスクアセスメント対象物
(濃度基準値設定物質を含む。)
その他の化学物質
濃度基準値設定物質
利用例 簡易ツールでうまくいかない場合呼吸域濃度が濃度基準値の2分の1を超えるリスク見積りとなった物質
精度測定実施者が妥当性を判断作業環境測定士の関与による精度担保が望ましい

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中災防は、化学物質管理者研修を令和4年10月から、保護具着用管理責任者研修を令和5年5月から実施しており、質の高い研修を受講できます。
また、企業として、化学物質管理者研修や保護具着用管理責任者選任時研修を自社研修室などで開催し、出張研修サービスを利用して労働衛生調査分析センターの専門スタッフを講師とすることもできます。

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