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中央労働災害防止協会(中災防)
技術支援部
国際課
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FAX 03-5445-1774
E-mail: kokusai@jisha.or.jp
お知らせ
国からの委託事業であった 「国際安全衛生センター(JICOSH)」 が2008年3月末をもって廃止されました。 永らくのご利用ありがとうございました。 同センターのサイトに掲載されていた個別の情報については、中災防WEBサイトの国別、分野別情報にリンクして取り込んでおります。
ゼロ災運動の人間尊重の理念を実現するために、職場で展開するための具体的な手法が、安全先取り手法である危険予知訓練や指差し呼称などです。また、この手法を組み入れ一体的に行う活動を危険予知活動といいます。
*KYT(K = 危険、Y = 予知、T = Training)
職場や作業の状況を描いたイラストシートを使用して、あるいは現場で現物を使用して作業をさせたり、作業して見せたりしながら、職場や作業の状況の中に潜む“危険要因"(労働災害や事故の原因となる可能性のある、不安全行動や不安全状態)とそれが引き起こす“現象"(事故の型)を職場小集団で話し合い、考え合い、分かり合って(あるいは1人で自問自答して)、危険のポイントや行動目標を決定し、それらを指差し唱和したり、指差し呼称で確認したりして行動をする前に安全を先取りする訓練です。
危険予知訓練には、KYT基礎4ラウンド法、短時間ミーティングをベースに作業指示者レベルでの作業指示STK訓練、個別KY、問いかけKY、チームレベルでのワンポイントKY、SKYT、一人レベルでの1人KYT、自問自答カードKYT、1人4ラウンド法、交通KYT、ミーティングKYT、災害事例KYTなどがあります。
これらの手法のベースになるKYT基礎4ラウンド法は、イラストシートに描かれた、職場や作業の状況の中に「どんな危険が潜んでいるか」をメンバーのホンネの話し合いで問題解決の4つのラウンドを経て段階的に進めていきます。
KYTとは、危険を危険として気づく感受性をミーティングで鋭くし、危険に対する情報を共有し合い、それをミーティングで解決していく中で問題解決能力を向上させ、作業の要所要所で指差し呼称を行うことにより集中力を高め、チームワークで実践への意欲を強化する手法なのです。
作業を安全に、誤りなく進めていくために、作業の要所要所で、自分の確認すべきことを「○○○○ ヨシ!」と、対象に腕を伸ばして確り指差し、ハッキリした声で呼称して確認することを「指差し呼称」という。
指差し呼称は、意識レベルをギアチェンジして正常でクリアな状態にし、作業の正確性と安全性を高めるための手段ですが、人間尊重の理念に裏付けられた安全確保のための全員参加の実践活動として、事業場全体で展開されてはじめて定着します。
1994年、(財)鉄道総合研究所が行った指差し呼称の効果検定実験結果によると、その効果は“何もしない場合”に比べ、“指差し呼称する場合”には作業の誤りの発生率が約6分の1以下になるということが示された。
指差し呼称は原則として、1人で行うが、複数の人間で行う場合を指差唱和という。全員で対象 を指差し、唱和して確認することにより、その目標について気合を一致させ、チームの一体感・連 帯感を高めることをねらいとした手法です。
指差し唱和する際に、全員でスキンシップをしながら行うタッチ・アンドコール(タッチ型・手かさね 型・リング型など)があります。
などがあります。
人間特性から生ずるいわゆる誤操作・誤判断・誤作業などのヒューマンエラーが、事故や労働災害の原因とされることが多い。そしてそのエラーの殆どは、人間の心理的な要因にかかわるものと言われています。労働災害の発生の仕組みをみると、不安全状態、すなわち機械設備や作業方法の欠陥等による事故が全体の80%を占めており、作業のあるところにはヒューマンエラーの問題が常についてまわります。いわゆる不安全行動、これは技術が未熟なるが故の事故もありますが、主としてヒューマンエラーによる事故が、全体の90%程度に達します。
錯誤(錯覚)、不注意などの人間の行動特性を「人間特性」といい、人間特性によって引き起こされるエラーを「ヒューマンエラー」といいます。
ヒューマンエラー事故に対処するには
ヒューマンエラー事故を防止するには、まず物の面(設備・機械・環境・原材料など)の安全衛生対策を進めることが重要です。
ハードウエア対策と同時に、マン・マシン・システムの立場から、人と物のかかわり合い、人と作業のかかわり合いを整えることが必要です。
ハード、ソフトの安全衛生管理と一体のものとして、人×心(ヒューマンウエア)のヒューマンエラー対策として、ゼロ災運動、危険予知訓練(KYT)・指差し呼称などを一体的に組み込んだ危険予知活動が有効です。
中央労働災害防止協会(以下「中災防」という。)は、1964年いわゆる高度経済成長期に労働災害防止団体法に基づいて、事業主の労働災害防止活動を支援することを目的に設立され、既に40年が経過しました。
創立以来労働災害防止にかかわる様々な取り組みを行ってまいりましたが、ゼロ災害全員参加運動(略:ゼロ災運動)は、中災防が設立され10年を経過した頃、労働災害防止活動における新しい運動を展開すべく、当時アメリカの全米安全評議会(NSC)で、「Zero in on safety」(安全に照準を合わせよ)というキャンペーンが行われており、そうした考え方を取り入れ、またQC活動等の手法も参考にして体系化し、1973年に旧労働省の運動後援を得てスタートしました。
「ひとりひとりカケガエノナイひと」という人間尊重の基本理念の下働く人の立場に立って人 間一人ひとりを大切にし、厳しく一切の労働災害を許さず、ゼロ災害・ゼロ疾病を究極の目標 に安全と健康を先取りすることにより職場の危険や問題点を全員参加で解決し、明るくいき いきとした職場風土づくりを目指す運動です。
かけがえのなさを持った一人ひとりの人、これは固有名詞の一人ひとりの人です。誰一人ケガをしてもよい人、死んでも仕方のない人などいない。職場の誰一人絶対ケガをさせない、そのために、全員参加で安全と健康を先取りしていこうというのがゼロ災運動の心であり、原点です。
ゼロ災運動では、人間尊重の「理念」を、ただ理念だけの精神運動と捉えているのではありません。理念をどうやって実現するか、具体的にどう進めるかが「手法」であり、その手法を現場で生かすのが「実践」です。まず「理念」(心)がありそこに有効な手法があってはじめて「実践」に血がかよってきます。ゼロ災運動は、理念・手法・実践を三位一体のものとして推進するものであり、どれが欠けてもゼロ災運動ではありません。
ゼロ災運動は、「ゼロ」・「先取り」・「参加」の3つの原則に立脚しています。
これを基本理念3原則といいます。
「ゼロ」とは単に死亡災害・休業災害だけがなければよいという考えではなく職場や作業に潜む危険はもとより働く一人ひとりの日常生活に潜むすべての危険(問題)を発見・把握・解決し根底から労働災害・職業性疾病をはじめとして交通災害を含めたあらゆる災害をゼロにしていこうとすることです。
「先取り」とは究極の目標としてのゼロ災害・ゼロ疾病、さらに明るくいきいきとした職場を実現するために職場や作業に潜む危険はもとより働く一人ひとりの日常生活に潜むすべての危険(問題)を行動する前に発見・把握・解決して事故・災害の発生を予防したり防止したりすることです。
「参加」とは職場や作業に潜む危険(問題)を発見・把握・解決するために、トップ、管理監督者、スタッフ、作業者が全員一致協力して、それぞれの立場・持ち場で、自主的自発的にヤル気で問題解決行動を実践することです。
ゼロ災運動を推進しようとするとき「トップの経営姿勢」、「ライン化の徹底」、「職場自主活動の活性化」という基本的に重要な3つの柱があります。この3つの柱が相互に関連し合い、支え合ってゼロ災運動は進展していくのです。
安全衛生はまずトップのゼロ災害・ゼロ疾病への厳しい経営姿勢に始まります。「働く人一人ひとりが大事だ」、「一人もケガ人は出すまい」というトップの人間尊重の決意から運動はスタートします。トップの意識が変わればすべてが変わります。ゼロへの発想の転換はまずトップからです。
安全衛生を推進するには、管理監督者(ライン)が作業の中に安全衛生を一体に組み込んで率先垂範して実践することが不可欠です。このことを安全衛生のライン化といいます。このラインによる安全衛生管理の徹底が第二の柱です。
労働災害のほとんどにヒューマンエラーが伴っており、誰にも責任を転嫁することはできないことを働く人一人ひとりが肝に銘じておく必要があります。自分は家族や係累を持つかけがえのない存在だと気づいて、安全と健康を自分自身、ひいては仲間同士の問題として捉えていくことからゼロ災小集団活動が始まります。
一人ひとりが、「自分は決してケガしない」、「仲間からケガ人を出さない」、そのためにみんなで「やろう」、「こうしよう」という実践活動がなければ、職場の安全を確保することはできません。
トップが安全衛生方針を表明し、安全衛生目標を達成するための安全衛生計画を立て、ラインの各級管理者の役割、責任、権限を明確化しそれぞれの立場でPDCA(Plan・Do・Check・Act)サイクルをまわし、危険又は有害要因を特定し、除去又は低減する労働安全衛生マネジメントシステムは、ゼロ災運動の推進3本柱である「トップの経営姿勢」、「ライン化の徹底」、「職場自主活動の活発化」を具体化する有効な方法です。
システムは人間が運用するものである以上、それを十分に機能させるのは、人間つまりトップ・ライン・職場の人々の意欲であり熱意である。労働安全衛生マネジメントシステムは、そうした意欲・熱意を持って取り組む職場風土づくり、人づくりを行うゼロ災運動と一体的に運用することにより、一層の効果を発揮し、労働災害防止に寄与するものと考えます。
Y(株)では、約20年前に労働災害の被災者数がそれまでの2・5倍と大幅に増加した時期がありました。 そこで、労働災害の減少に効果的なKY活動を実践手法とするゼロ災運動を事業所全域に導入しました。
ゼロ災運動を導入してから、まず教育に力を入れ、各職場でのKY活動を活性化させた。 日常作業の中で指差し呼称が定着するとともに、社員の安全衛生に対する取り組みが非常に積極的になりました。
ゼロ災運動の導入により、実際に労働災害も大幅に減少しました。 導入してから5年後には導入前の約3分の1に、 17年後には約10分の1となりました。度数率は0・16という低い水準を維持しています。(Y社の事例)
ゼロ災運動は、1973年に中央労働災害防止協会によって提唱され、今日まで有力な災害防止活動として連綿とゼロ災運動・KY(危険予知)が展開されています。