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欧州連合の労働安全衛生の状況−パイロット調査

資料出所:European Agency for Safety and Health at Work発行
「The State of Occupational Safety and Health」
http://osha.europa.eu/publications/reports/#stateofoshsum
http://osha.europa.eu/publications/reports/404/en/summary_report.pdf
(PDF format in English)

(訳 国際安全衛生センター)

3.5 新たに脅威となりつつあるリスク

新たに脅威となりつつあるリスクに関連して、フォーカル・ポイントの回答数がもっとも多かったのは以下の諸課題である。

課題

フォーカル・ポイント
の回答数

労働組織の変化

8

とくに影響を受けやすいリスク・グループ:若年労働者

8

ストレス

8

手作業

8

リスクが不明な新しい化学物質の使用

7

「医療およびソーシャルワーク」産業に関する研究の必要性

6

とくに影響を受けやすいリスク・グループ:高齢労働者

6

暴力

6

反復性疲労

6

上の表から、労働生活の変化による影響、さらに従来からの心理社会的、エルゴノミクス的、化学的リスクに関する懸念に関心の高いことがわかる。

課題

影響

変化する労働パターン

労働組織の変化が大きな懸念として指摘された。労働の組織化や組み立ての方法が大幅に変化したということである。具体的には、個別作業を完了するための勤務時間の体系や順序を変更する場合もあるし、また経営組織や会社組織を変更する場合もあり、いずれも労働者のリスク増大につながる可能性がある。

とくに影響を受けやすいリスク・グループ

若年労働者とは18歳未満を意味する。彼らが「リスクのある」グループとされるのは、職場に存在する危険有害要因を熟知していないとみられるからである。成人と比べ、リスクに安全に対処するための職場の経験に欠ける場合が多い。またリスクに対する理解も成熟した労働者より低い場合がある。

心理社会的側面

ストレスが大きな懸念として指摘された。受け持ちの仕事が制限時間内に達成できない、またはその能力がないと個人が考えたとき、ストレスが発生するおそれがある。また異常な騒音、気温、湿度、照明などの環境条件もストレスの原因になりうる。リラックスできる時間が少なすぎる場合もストレスを生む。仕事以外の義務を果たせないことに対する心配も、深刻な問題につながる。ストレスは業務成績の低下とミスの増大につながり、したがって災害の可能性を高める。

エルゴノミクス

手作業が重大な懸念として指摘された。職場で、重い、または扱いにくい荷物を動かすことは、労働者に深刻なリスクを及ぼすため、可能な場合は自動化するか、または職場の配置を改善するなどして作業慣行を変更し、荷物の移動や取り扱いの必要性を減らすべきである。たとえばトラックからの荷卸しに際し、フォークリフトが使用できるかもしれないのに手作業で行っている職場の例がある。


課題

影響

化学的リスク要因

農薬、医療用の低温消毒剤といった新しい化学物質は、安全な使用を確保するために必要な身体的影響に関するデータが不足している場合がある。事業者が製品に熟知していない可能性があるため、十分な防御策や関連リスクに対する理解なしに当該化学物質を使用するリスクが高まる。

産業別の研究

研究の必要性がある産業として「医療およびソーシャルワーク」が指摘された。この労働分野での主たる懸念事項は、単独での作業、派遣労働者、手作業である。

とくに影響を受けやすいリスク・グループ

高齢労働者も、とくに影響を受けやすいリスク・グループとして大きな懸念が指摘された。高齢労働者に特有の筋肉の問題をもつ場合があり、物を持ち上げ、または移動する能力が低下している可能性がある。また異常な気温の影響も受けやすく、また反応速度が低下している場合もある。

心理社会的側面

暴力は職場でのいじめや、リスクの高い地域で作業することによる暴力の脅威という形態をとる場合もある。たとえば公立病院の事故/救急部門での顧客からの暴力、教員に対する生徒の暴力、犯罪多発地域の建設現場での住民からの暴力などがある。

エルゴノミクス

反復性疲労が大きな懸念として指摘された。反復性疲労傷害は、身体の特定部分を長時間にわたって過度に反復動作させることで発生する。高リスクの作業としては、タイピング、コンピューター関連の作業、スキャナー上で物体を移動させる点検オペレーターなどがある。

国別報告では「変化する労働パターン」「心理社会的側面」「エルゴノミクス」「化学的リスク要因」という重要な4分野に大きな関心のあることがわかる。その重要性の程度は、新たな防止策が必要な分野としたフォーカル・ポイントの回答数から判断できる。心理社会的な課題としてはストレスの回答数が多かった。この点は、10のフォーカル・ポイントが新たな防止策の必要な問題として指摘したことからも確認できる。

手作業、持ち上げ/移動、反復性疲労をはじめとするエルゴノミクスも、新たな防止策の必要性があるとの回答が多かった。

新しい化学物質の取り扱いと使用も、8つのフォーカル・ポイントが新しい防止策を導入して職場のリスクを制御する必要があると指摘した。

新たに脅威となりつつあるリスクについては、年齢範囲の両端にある労働者(若年労働者と高齢労働者)が、それぞれ別の理由で、とくに職場の危険有害要因の影響を受けやすいリスク・グループとして指摘された。



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